宝塚記念
| 枠順 | 番号 | 馬名 | 性齢 | 人気 |
1 | 1 | ユニコーンライオン | 牡5 | 8 |
2 | 2 | レイパパレ | 牝4 | 4 |
3 | 3 | メロディーレーン | 牝5 | 11 |
3 | 4 | ワイプティアーズ | 牡6 | 14 |
4 | 5 | アドマイヤアルバ | セ6 | 13 |
4 | 6 | シロニィ | 牡7 | 12 |
5 | 7 | クロノジェネシス | 牝5 | 2 |
5 | 8 | カデナ | 牡7 | 9 |
6 | 9 | ヴァーディクトデイ | 牡4 | 1 |
6 | 10 | アリストテレス | 牡4 | 5 |
7 | 11 | カレンブーケドール | 牝5 | 3 |
7 | 12 | モズベッロ | 牡5 | 7 |
8 | 13 | ミスマンマミーア | 牝6 | 10 |
8 | 14 | キセキ | 牡7 | 6 |
さて、1年ぶりの宝塚記念な訳だが……早速一つツッコミたいことがある。
(なんか、すんげー小さい子いない?大丈夫なのかあれ?)
俺の視線の先には、なんというか……めちゃめちゃ小さい馬がいた。その馬は俺の視線に気づいてか嬉しそうにとことこ来るのだが。
『わー!おっきい!』
(そりゃ君と比べたら誰だって大きいでしょうよ)
周りと比べても一回りも二回りも小さいぞ?本当に大丈夫なのか?もしかして3歳馬?それにしても小さい気がするが……。
『ねーねー!君なんて言うの?』
『ヴ、ヴァーディクトデイ。君は?』
『わたしメロディーレーン!今日はお互いがんばろーね!』
小さいのに偉いな。しっかりしている。レース前だってのに微笑ましくなりそうだ。
『あ!今小さいって思ったでしょ!?』
やっべ、思ってたことがバレた。ひとまず謝ろ『わたし、これでもおねーさんなんだから!5歳なんだから!』嘘だろ!?俺より歳上なのこの子!?
『す、すいません』
『分かればよし!』
メロディーレーンさんは満足そうに帰っていった……マジかよ、俺より歳上だったのか……。
ま、まぁ色々あったが返し馬を済ませよう。なんか前も会ったことがあるような牝馬と初めての牝馬の方々に絡まれそうになったがジェネ先輩に威嚇されてかみんなどっか行った。ありがたい限りである。
《第62回宝塚記念、順調に枠入りが進んでおります。阪神競馬場芝2200m、天候は晴れ、良馬場の発表となっております。本レースの1番人気はヴァーディクトデイ。大阪杯では驚異的な末脚を発揮しての大楽勝、この宝塚記念でもその末脚を見せてくれるのか?2番人気はクロノジェネシス。ヴァーディクトデイとは同厩舎の先輩後輩。これが3度目の対戦、先輩として負けられない意地があります。3番人気はカレンブーケドール。そろそろ勝ち取りたい重賞勝利、この宝塚記念でそれは叶うのか?》
ゲートインを済ませて、開くその時を待つ。今回は少し遅らせてスタートしよう。そうした方が最後方に位置しやすくなる。
ゲートが開くその時を待って……っ、開いた!ちょっと遅れて、俺はスタートする!そんなわけで、いい感じのスタートが切れたな!
(狙い通り後方に来れた!後はこんまま虎視眈々と脚を溜めるだけだな!)
レースの展開をしっかりと見ておかねぇとな。
《各馬ゲートに入って、あなたの夢が走ります宝塚記念っ、スタートしました!モズベッロはちょっとタイミングが合わなかったか?ヴァーディクトデイもわずかに出遅れた、しかしこれは狙い通りでしょう。キセキはちょっと外に立ちいきます、しかし持ち直しました。拍手が沸き起こります宝塚記念、7番クロノジェネシスは好スタート》
《ハナの奪い合いは1番のユニコーンライオンと2番の黒い帽子レイパパレがいきましたね。内枠の2頭がハナを奪い合います》
《ペースメーカーの奪い合い、と。これはユニコーンライオンがいきました。レイパパレはちょっと控えるか?レイパパレは2番手追走。3番手にグランプリホースクロノジェネシス。グランプリ三連覇を賭けてこの宝塚記念に挑みます鞍上はロメール。外からはキセキ、大外枠のキセキもいく!キセキ今回は先行争いの位置につけている!正攻法の競馬をしたいと言っていた増永、外からキセキが上がっていく!第1コーナーを回って先頭はユニコーンライオン!2番手にレイパパレ外から14番のキセキ!その後ろにクロノジェネシスが控えている!1番人気ヴァーディクトデイはやはり最後方!最後方で機会を窺っています!》
第1コーナーのカーブを回る、が。なんというか全員今回は外に回ってんな?もしかして、俺を警戒しているかもしれん。それだけ強くなったという証明でもあるし嬉しくはあるんだが……やっぱ煩わしいな。
(ひとまずは溜めの段階。頑張りますか!)
昨年の雪辱、果たさせてもらいますよ、ジェネ先輩!
(ペースはまずまず、うん。良い状況に持っていけてるネ)
宝塚記念は半分を過ぎてイル。現在は5番手、この展開とペースなら最後の瞬発力勝負にナル。そうなると前にいる方が有利なんだけド……その有利を覆す馬がいるのが本当に厄介ダネ。その馬というのが、ヴァーディクトデイだ。
(ヴァーディクトデイの末脚の速さは群を抜いてイル。いくらなんでも東京の良馬場だからっテ、普通は31.8のタイムは計測できナイ)
持って生まれた天性のスピード。末脚の爆発力が段違いダ。だけど、そんな彼にも
(そのためにもちょっと外に持ち出そうカ)
クロノジェネシスを外に持ち出ス。他の馬は内に入ってきたリ、外にいた子達は外へと膨らんできタ。うん、これで大外からの上がりを封じることがデキル。
(ヴァーディクトデイの勝ちパターンは全て大外からの捲り。秋天の時も大阪杯の時モ、全部が大外からの上がりだっタ)
まずはその大外からの上がりを封じル。そうすればヴァーディクトデイの得意なパターンには持ち込めナイ……って、普通はなるんだけどネ。それだけで済むなら苦労はナイ。
(間が空いたラ、金添とヴァーディクトデイは空いたところを突いてクル。それだけのことができるシ、ヴァーディクトデイは賢いから騎手の言うことに素直に従ウ。自分のしたい競馬をしない……
ほんの一瞬、ほんの一瞬だけでイイ。その一瞬が……彼らにとっての命取りダ!
《3コーナーに入っていきました。ユニコーンライオンが引っ張る展開!レイパパレはまだじんわりといく感じ、無理に差は詰めません。その後ろ3番手はキセキ、外に追い出そうとしている。大外を回ろうとしていますキセキ!そしてここでカレンブーケドールが来た!悲願の重賞制覇に向けてカレンブーケドールが差を詰めてきた!先頭は固まってきた後ろも徐々に差を詰めてきている!カレンブーケドールの外、内からクロノジェネシスも上がってきている!牝馬が固まっている!その外からモズベッロとアリストテレス!ヴァーディクトデイはまだ最後方!虎視眈々と前を狙っているヴァーディクトデイ!》
さぁ、勝たせてモラウヨ!
さて、第4コーナーに来た。発射台はもう整っている……後は、この末脚を最後の直線で爆発させるだけだ!
(さぁて、またかましてやりますかね!)
「行くよ、ヴァーディ……ッ!?」
(おっしゃあ!行くぜぇ……っ?)
第4コーナーを回って最後の直線に入る。その時俺の視界に入ってきたのは──
(あ、あれ?ど、どこ走ればいいんだコレ?)
ぶっちゃけ、どこも良いルートだ。一番良いのは大外のルートを走ることなんだけど……生憎とそのルートは使えないというか、あまりにも外に振らされるから使えない。だけどその分、内のいたるところが空いていた。どこをとってもそこから先頭に追い付くには苦労しないルートがたくさんある。だからこそ、
(ちょちょちょ!?どこ通ってもいいけど……どこ通ればいいんだコレ!?)
や、やっべぇ!?どの選択肢でも先頭に追い付く!だからこそ迷っちまう!?と、とりあえず!
『こっち「こっちだ!ヴァーディ!」ぐえっ!?あ、ちょ、そっち!?』
金添さんが取ろうとしたルートとは別の道だったせいか、ちょっと減速しちまった!?や、やべぇ!このままだと追いつくかちょっと怪しいぞ!?
《最後の直線に入りました!ユニコーンライオンが粘るか!その外からレイパパレが来ている!レイパパレが来た!ユニコーンライオンにレイパパレが併せる!外からはクロノジェネシスが来た!グランプリホースクロノジェネシスがグングン差を詰める!さらにはキセキ!一番外からカレンブーケドールも詰めてくる!内からユニコーンライオンが粘る!》
《ヴァーディクトデイは手間取っているのかまだ最後方!ここから届くかちょっと怪しいところです!》
あ!やっと開けた!クッソ、ここから届くかどうか分かんねぇけど……届かせてやらぁ!俺は、無我夢中で脚を動かした。
《残り200を切りました!ヴァーディクトデイはまだ来ない!ヴァーディクトデイはまだこない!先頭はっあ、クロノ来た!クロノきたぁ!クロノジェネシスが並んで躱す!これで決まり……きたきたきたきたぁ!ここでヴァーディクトデイが飛んできたぁ!やはりすさまじい末脚!他馬を瞬く間に躱していく!》
《やはり末脚の次元が違う!ヴァーディクトデイがグングン順位を上げていきます!しかしこれは間に合うかどうか!?》
《クロノジェネシスがユニコーンライオンとレイパパレを躱した!残り100を切った!ヴァーディクトデイがグングン差を詰める!ヴァーディクトデイがグングン差を詰める!あっという間に3馬身、2馬身と詰めていく!漆黒の馬体がグランプリホースに襲い掛かる!昨年の雪辱を果たすかヴァーディクトデイ!グランプリ女王の意地を見せるかクロノジェネシス!完全に2頭の一騎打ち!去年と全く同じシチュエーション!ヴァーディクトデイが並ぶか!?並ぶか!?》
《さぁどっちだ!?》
(くそ、やっぱりそうしてきたか!)
やはりというか、ヴァーディの弱点を突かれた!ヴァーディの、賢すぎるという弱点を!
あぁそうだ。僕がずっと大外からの追い上げを選択していたのは、ヴァーディから
(ヴァーディは賢すぎるがゆえに考えてしまう!だからこそ……絶好のルートが複数あったら、必ずルート取りに迷う!)
これに関しては僕自身じゃどうしようもない問題だ!なんとか矯正しようとも考えたけどっ、ヴァーディはどうしても考えすぎてしまう!だからこそ、僕はずっと選択肢を絞り続けてきた!大外にだけ意識を割いて走ることに!
ただ、こうなった時用のことも考えていたけど……!やっぱり上手くいかなかった!
(多分だけど、ヴァーディが考えていたルートとは別の選択をしてしまった!だから仕掛けが遅れた!)
末脚勝負ならヴァーディに分がある。だけど!こうもペースが遅かったら前にいる方が絶対に有利だ!
万事休すか、そう思っていたけどぉぉぉぉぉ!?
「なんでなんとかなりそうなのぉぉぉぉ!?」
ヴァーディの末脚があまりにもぶっ飛んでる!他馬を瞬く間に躱していくし、もうすぐ先頭のクロノジェネシスに追いつきそうだった!いや、本当になんで!?
「エ?な、ナンデ!?」
く、クソ!届け、届け!だけど──
《クロノジェネシスとヴァーディクトデイの一騎打ち!どちらが勝つか!?どちらが勝つか!?どっちだぁぁぁぁ!?2頭並んでゴールイン!しかしこれは……わずかにクロノジェネシスが競り勝ったぁぁぁぁ!クロノジェネシス、牝馬として初のグランプリ三連覇ぁぁぁぁ!ヴァーディクトデイはまたも届かなかった!わずかに届かなかったヴァーディクトデイ!だが、恐ろしい競馬を見せつけました!やはりこの馬は強い!最早その強さは疑いようがないでしょう!》
《いやはや……前につけていた方が圧倒的有利だったスローの展開で、こうも凄い末脚を発揮するとは!やはり恐ろしいですねヴァーディクトデイは!》
《2着はハナ差ヴァーディクトデイ!3着は2馬身差でユニコーンライオンです!》
僅かに、届かなかった……!後100m、それだけあれば追い抜けたのに……!だけど、今回の敗因は。
(間違いなく僕だ……っ!)
色々とあるけど、完全に僕のせいだ!この末脚なら強引にでも外に持ち出せば、もしくはヴァーディの進路をもっと理解していれば……!それ以前に、もっと対策をしていればよかったんだ!
たらればを語っても仕方がないけど、もうちょっとやりようはあったんじゃないか?とも思ってしまう。今回のレースは、僕が上手ければ勝てたレースだったはずなんだ!
(フォワ賞……フォワ賞ではこうはいかない!もっと、もっと上手くならないと!)
せっかく凱旋門賞に乗れるチャンスなんだ!この機会を逃したら、今度はいつあるか分からない!だから……絶対に勝たなきゃ!
ちなみにレース後。
「金添」
「……ロメールさん?」
ロメールさんから話しかけられた。彼は、凄く困惑した表情で。
「なんでヴァーディクトデイはあそこから追いつけるノ……?ボク絶対に勝ったと思ったのニ……」
「僕も聞きたいです」
そう聞いてきた。僕だってビックリしてるよアレは……。
宝塚記念またも追いつけず。フォワ賞はどうなるか?