飛行機雲に焦がれて   作:カニ漁船

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もうタイトルでどこが出てくるのか分かるというね。


トレーナーと拉致

 入学してからそれなりの月日が経って。

 

 

「おーいヴァーディ。メシ行こうぜ」

 

 

「オッケー。誰誘うよラーシー?」

 

 

「ま~ディープボンドとパンサラッサで良いだろ」

 

 

「あいあーい。プボちゃんもそれでいい?」

 

 

「いいよ~」

 

 

「んじゃ、後はパンサラッサに「いく!パンもいくぞ!全力ダーッシュ!」あ、おい待てって!」

 

 

 交友関係も固まってきたところ。プボちゃんにラーシー、そしてパンちゃん。同じクラスではこの3人とつるむことが多くなった。自慢じゃないがこのクラスのメンバーとは仲良くなったと自負している……何故かレイパパレには睨まれるばかりだが。

 

 

(何故だ?何かした記憶はないのだが……)

 

 

 考えても仕方がないので思考を打ち切る。ラーシー達とカフェテリアでご飯を食べよう。

 そんな食事の最中、ラーシーがからかうように俺を見ている。

 

 

「そういやヴァーディ。お前、どうやって生徒会のメンバーを誑し込んだんだよ?」

 

 

「人聞きが悪いな!?」

 

 

「んなこと言ってもなー。放課後はジェンティルドンナ副会長とマンツーマンのトレーニングしてんだろ?どうやって取り入ったんだよ?」

 

 

「俺に言われても……ジェンティルドンナ副会長が俺のことを気に入った、としか」

 

 

「でも副会長さん本当にヴァーディ君には優しいよね……本当に

 

 

「ヴァーディは副会長と仲が良いのか?それは良いことだな!仲が良いのは良いことだ!」

 

 

 三者三様の反応。取り入った、と言われてもトレーニングしてるところにドンナ姉さんが接近してきたのだからそうとしか言えない。

 

 

「でもかなり助かってるんだよな。ジェンティルドンナ副会長のおかげでトレーニングも捗ってるし」

 

 

「羨ましいこって。……んで?お前チームとかもう決めてあんの?」

 

 

「チーム、チームか……まだ早くねぇか?」

 

 

 ラーシーは呆れたような視線を向ける。な、なんだよ?

 

 

「こういうのは早めに決めておいた方がいいだろ?強いチームはそれだけ競合率も高いし、スカウトされるなんてこともあるだろうが自分に合わなかったらどうしようもないからな」

 

 

「一理あるね。かく言うぼくもまだ決まってないんだけど」

 

 

「パンはもう決まってるぞ!」

 

 

 お、パンちゃんはもう決まってるのか。もしかして、すでにチーム入りも内定していたり?

 

 

「へー。どこのチームだよ?パンサラッサ」

 

 

「カノープス!ターボ師匠がいるところにパンも入るんだ!」

 

 

「「「ターボ師匠?」」」

 

 

「……誰よ?お前ら知ってるか?」

 

 

「一応名前だけは聞いたことあるぜ。確か……大逃げの先輩だったはずだ」

 

 

「大逃げ……大逃げ……あ~。じゃあパンちゃんも」

 

 

「そういうことだろうね~」

 

 

 俺は知らないが、ラーシーは知っているらしい。曰く、大逃げで走る先輩だとか。

 

 

「ターボ師匠はね!すっごいんだぞ!毎回毎回先頭で走ってビュビューンって逃げるんだから!パンの憧れ!」

 

 

 ターボ師匠を尊敬しているパンちゃんをちょっと微笑ましく思いつつ、そのターボ師匠にちょっとだけ興味が湧いてきた。後で誰かに聞いてみるか。

 ご飯を食べ終わって、午後の授業も終わって。今日も放課後にトレーニングだ。ドンナ姉さんは私用でいないから俺1人でのトレーニング。大分久しぶりだな。

 

 

「走りも大分完成してきたな。これもドンナ姉さんのおかげだ」

 

 

 筋トレも毎日欠かさずにやっている。継続は力なり、ってな。

 しばらくトレーニングをやって、水分補給がてら汗を拭きとって休憩を取る。そんな時だった。

 

 

「こ、これは……!なんてトモなんだ……!」

 

 

(ん?誰かに脚を触られているような……)

 

 

 ふと視線を自分の脚の方へと向けると。

 

 

「しなやかさ、筋肉のバネ!そんじょそこらのウマ娘とはわけが違う!まさに一線を画した筋肉のつき方をしている……!素晴らしいな!」

 

 

 俺の脚を触っている不審者がいた。……誰だこの人?

 

 

「あの、俺の脚を触ってどうかしたんですか?」

 

 

 俺が声をかけると、その人は気づいたのだろう。自分が何をやっているのか。青ざめながら飛びのいて土下座してきた。

 

 

「す、スマン!あまりにも素晴らしいトモだったから衝動が抑えきれなかった!勝手に触って本当にスマン!」

 

 

「いや、それは別にいいですけど……そんなに良かったんですか?俺の脚」

 

 

 目の前の不審者?はすんごい驚いた目で俺を見てきた。あ、この人トレーナーバッジがあるな。ということはトレーナーさんか。

 

 

「あ、あぁ!一目見ただけで分かる、コイツはすげぇトモを持ったウマ娘だってな!そんな素晴らしいトモがあったもんだからつい我慢できずに触っちまった……!ほんっと~にスマン!」

 

 

「ほうほう」

 

 

「煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」

 

 

 別に煮る気も焼く気もないが……それにしてもそんなに素晴らしいトモをしているのか俺は。トレーナーさんに近づいて、その肩に手を置く。

 

 

「なぁ、あんた」

 

 

「な、なんだ?」

 

 

 そこまで褒めてくれるなんて……。

 

 

「いや~!良い人だなアンタ!」

 

 

「は、はぁ?」

 

 

「気にすんな気にすんな!ま~確かに勝手に触ったのはセクハラ云々でどうかと思うが……それも職業病ってヤツだろ?別に気にしてねぇよ。それよりも俺の脚をそんなに褒めてくれるなんてな!」

 

 

 これはかなり嬉しい!努力がちゃんと結果に結びついてきているという証拠だ!

 

 

「そこまで褒めてくれるなんて、きっとあんたは良いトレーナーなんだろうな!……ところで名前聞いても良い?」

 

 

「あ、あぁ……俺はチーム・スピカのトレーナーをしている沖野ってもんだ。よろしくな」

 

 

「おう、俺はヴァーディクトデイ。よろしく」

 

 

「あぁ、よろしくなヴァーディクトデイ」

 

 

 トレーナーさん改め沖野トレーナーと握手を交わす。向こうはいまだに戸惑っているが、なんでだ?

 

 

「なんていうか、普通だったら蹴られてもおかしくないことなんだが……」

 

 

「自分で触っといてそれ言うか?ま~確かにびっくりはしたけど、そこまでって感じだな。てか、あんたスピカのトレーナーさんだったのかよ?」

 

 

「お、スピカのこと知ってんのか?」

 

 

 そりゃあ知ってるでしょ。あのリギルと双璧を成すチームだぞ?

 

 

「そりゃあな。天下のリギル様と同じくらい強いトップチームだからな!……まぁ別名問題児軍団と呼ばれるからリギルと違って敬遠されてるけど」

 

 

「あ~……まぁ、悪いヤツらじゃないんだがなぁ」

 

 

 それは分かってる。だけどスピカの噂は大体がろくでもないもの。ゆえに敬遠されているチームである。

 

 

「にしても、お前さんは新入生か?」

 

 

「あぁ、ついこの前入学したばっかの新入生だ」

 

 

「じゃあチームも決まってないのか?」

 

 

「そうだな。まだどこに入るか決めかねてるとこ」

 

 

「じゃあウチのチームに来ないか?誰であっても大歓迎だ!」

 

 

 休憩がてら話していたら沖野トレーナーからまさかのスカウト。スピカは強豪チームだし、ここで沖野トレーナーのチームに入る、というのも悪くないのだろう。だけど。

 

 

「悪いな。一応、ここに入ろうかな~って希望はあるんだ。申し訳ない」

 

 

 ラーシー相手にあぁは言ったものの、希望のチームはあるにはある。先方がどういう反応するかは分からないけど。

 沖野トレーナーもそれほど無理強いする気はないようだ。すぐに手を引く。

 

 

「そりゃ残念。ま、お前さんがこの先活躍することを祈ってるよ」

 

 

「あぁ、悪いな。ついでに厚かましいんだが……どういうトレーニングを組めばいいと思う?一応懇意にしている先輩からメニューを組んでもらってるんだけど、トレーナーであるあんたの意見も聞きたいんだ」

 

 

「それぐらい構わんさ。どれどれ~……」

 

 

 その後沖野トレーナーからトレーニングメニューの相談。俺の脚を鍛えるために必要なものを教えてもらい、なんなら食事のメニューも教えてもらった。この人料理もできるのか……トレーナーには必須スキルなのか?しばらく話した後、沖野トレーナーと別れる。

 

 

「それじゃ、頑張れよヴァーディクトデイ!」

 

 

「おう!沖野トレーナーも相談に乗ってくれてありがとな!」

 

 

「良いってことよ!」

 

 

 それにしても、良い人だな~沖野トレーナー!まさかこんなにも相談に乗ってくれるとは!しかも俺の脚を褒めてくれたし、さすがはスピカの名トレーナーって感じだ!よ~し、良い感じに休憩できたしトレーニング頑張るぞー!

 

 

「さ~て早速トレーニングっ、と、すいません」

 

 

 前を見ずに歩いていたらぶつかってしまった。反射的に謝って前を向くと。

 

 

「「「……」」」

 

 

 グラサンにマスクをした不審者共が立っていました。……おいおい、ガチもんの不審者が出てきたじゃねぇか。警備員さん何やってんだよ。

 

 

「あ、あの~……俺に何かご用で?」

 

 

 とりあえず相手を刺激しないように、フレンドリーを心がけていると……。

 

 

「スカーレット!ウオッカ!スペ!キタサン!や~っておしまい!」

 

 

「もがっ!?」

 

 

 な、なんだ!?急に視界が真っ暗になったんだけど!?なにされてんの!?というかなんか浮いている感覚が!持ち上げられて運ばれてる!?だ、誰か助けてー!

 

 

「「「えっほ、えっほ」」」

 

 

 誰も通りかからないのでなす術もなく。俺はどこかへと連れて行かれることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハッ!こ、ここは?」

 

 

 気づいたら縛られて椅子に拘束されていた。……本当になんで?

 

 

「あ、気づいたみたいですわ」

 

 

 声のした方へ視線を向けると……数人のウマ娘が立っていた。ただ、誰も見覚えがない。まさか……!

 

 

「な、なんだあんたら!俺を拘束して、なにをするつもりだ!?」

 

 

「まずは謝らせて「金か!金が必要なのか!?仕方ないが、俺の小遣いから……!」いや、違いまして「とにかく落ち着いて話し合おう!話し合えばきっと分かるはずだ!」とにかく謝らせて「とりあえず拘束を解いてくれ!こんな状況誰かに見られたら困るのはあんたらだぞ!」~~~!ゴールドシップさん!あなたのせいですわよ!」

 

 

「おいおい、なんでもかんでもゴルシちゃんのせいにするんじゃ「あ・な・た・が!攫ってきたんでしょうが~!!」止めてマックちゃん!チキンウィング・アームロックは洒落にならない!」

 

 

「し、親友~~!?しかし、マックイーンさんのプロレス技も良き!」

 

 

「オメーは見てねぇで助けろジャス!」

 

 

「いや、親友が悪いから僕は助ける気ないよ」

 

 

「裏切者~!」

 

 

 な、なんだ?俺はなにを見せられているんだ?テロリスト達が仲間割れ?してるんだけど。

 

 

「とりあえず拘束を解くわね」

 

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 

 デカいツインテのウマ娘が俺の拘束を解いてくれた。……え?じゃあなんで俺を拘束したの?

 

 

「ごめんなさいね。ちょっとあなたのことが話題に上がって、みんな気になってたものだから。そしたらあそこにいるゴールドシップが」

 

 

「じゃあアタシが連れてきてやるよ!って感じで。本当にごめんなさい!」

 

 

「いやまぁ、それは良いんですけど……ノリノリで攫ってませんでした?」

 

 

「「「……」」」

 

 

 おい、なんで誰も彼も俺から目を逸らすんだよ。

 

 

「……まぁいいや。俺、ヴァーディクトデイって言います。とりあえず、ここはどこですか?」

 

 

「ここはスピカの部室よ。私はサイレンススズカ、こんな出会いになっちゃったけど、よろしくね?」

 

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 

 サイレンススズカ先輩……スピカのエースか。確か、【異次元の逃亡者】って呼ばれてる人。

 それから自己紹介をしてもらう。

 

 

「僕はジャスタウェイ。よろしくねヴァーディ」

 

 

「はい、よろしく「ところで君、葦毛は好きかい?」……急になんですか?」

 

 

「良いから!好きかい?嫌いかい?どっちなんだい!」

 

 

 めっちゃ鬼気迫る表情で聞いてくるやん。それにしても葦毛……葦毛か。確か、ジェネ先輩みたいな髪色のことだよな?

 

 

「……まぁ好きですね」

 

 

「同志!」

 

 

 ジャスタウェイ先輩は俺の手をがっしりと掴んだ。なんだか良く分からんが……気にすることでもないか。

 

 

「それで……どうして俺のことが話題に上がったんでしょうか?」

 

 

「それなんだけどさぁ……」

 

 

「オメー!どうやってあの鬼婦人を丸め込んだんだ!」

 

 

 テイオー先輩の言葉を遮るように、先程までマックイーン先輩にプロレス技をかけられていたゴルシ先輩が詰め寄ってくる。丸め込んだ?丸め込んだって言われても……。

 

 

「貴婦人ってジェンティルドンナ副会長のことですよね?そもそもジェンティルドンナ副会長って優しくないですか?」

 

 

 そう言ったら、スピカのみなさんから信じられないものを見る目で見られた。え、俺がおかしいの?

 

 

「え~?そうかなぁ?ゴルシとかよく追いかけられているけどさ、すっごく怖いよ?あの子」

 

 

「そうですわね。まさに鬼のようというか……そもそも怒らせなければ普通なのですが」

 

 

「普段から怖いってわけじゃないけど、それでもヴァーディの時みたいに凄く優しいってとこはあまり見ないわよね?」

 

 

「だよな~。ヴァーディと接している時、すげぇ優しい目してるもん」

 

 

 そうなのだろうか?ドンナ姉さんは普段から優しいと思うんだが。

 そうして話している時、扉を開けて誰かが入ってきた。

 

 

「おっはよ~う!日直の仕事で遅れちゃった~……あ?」

 

 

 入ってきたのは鹿毛の髪をショートカットにした150cm後半ぐらいのウマ娘。勿論見たことはない。ただそのウマ娘は俺を視界に映したであろう瞬間固まった。

 

 

「……」

 

 

「あ、あの。何でしょうか?」

 

 

 そのままじーっと俺を見てくる。少しも動かさず、俺のことをただじーっと見たかと思うと。

 

 

「ズキューンッ!」

 

 

「口で言う人初めて見た……」

 

 

「ねぇねぇねぇねぇ君!名前!名前なんていうの!?」

 

 

 そのまま俺との距離を一気に詰めて……近い近い!めっちゃ近い!

 

 

「ヴぁ、ヴァーディクトデイです」

 

 

「ヴァーディクトデイ!ヴァーディだね!新入生?」

 

 

「まぁ、はい」

 

 

「何か好みのタイプとかある?そうだ!LANEやってる!?」

 

 

「好みのタイプと言われても……後LANEはやってますよ」

 

 

「じゃあじゃあ交換しよ!もしかしてスピカに入部希望!?」

 

 

「いや、違います「入るよね?入る!ハイ決定!じゃあこれからボクがビシバシ鍛えてあげるね!」押しが強い!」

 

 

 というか、この押しの強さ覚えがあるぞ!?絶対あの人だろ!

 

 

「ボク、()()()()()()()()!これからよろしくねヴァーディ!」

 

 

「だから俺はスピカに入りませんって!」

 

 

 やっぱりアレグリア先輩じゃねーか!そんな気はしてたよ!

 その後なんとかアレグリア先輩を離してもらって。今回の一件は謝罪を貰って帰路に着いた。翌日、ドンナ姉さんにゴールドシップ先輩と会ったことを話すと。

 

 

「良いこと?ヴァーディ。あの白饅頭と関わるのはお止めなさい」

 

 

「え?でも「良いから」あ、はい」

 

 

 そう忠告された。でも、向こうから関わってきそうなんだよなぁ……。




前回忘れたので一緒に。


ディープインパクト

身長:163cm

体重:少し減

B/W/H:77/55/83

一言メモ
トレセン学園生徒会長。腰まで伸ばした茶色のストレートロングの髪。威圧感が凄いが本人はかなりお茶目な性格。お喋り相手募集中。仕事はきっちりこなすタイプ。


ジャスタウェイ

身長:165cm

体重:微増

B/W/H:82/58/84

一言メモ
スピカ所属。黒に近い茶色の髪を肩甲骨までストレートに伸ばしたウマ娘。十字型の流星が特徴。ゴルシの相方。それ以上でもそれ以下でもない葦毛好き。優等生だが結構な変人。


グランアレグリア

身長:158cm

体重:か、完璧だから!

B/W/H:75/53/81

一言メモ
スピカ所属。茶色の髪をショートカットにした活発な印象を抱くウマ娘。ストレートに感情を伝えるため距離の詰め方がえぐい。ヴァーディクトデイがお気に入りの模様で猛アタックしている光景が見れる。
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