無事にホームステイ先も決まり、イギリスへと旅立つことになった俺。
「飛行機の音が結構うるさかったりするが、別に問題にならねぇ程度。あまり関係ねぇな」
飛行機酔いもないし、長旅も特に苦にならない。むしろこれからどんな出会いがあるのか楽しみにしてる。
「後一時間もすればイギリス、か」
イギリスと言えば、前世で日本の次ぐらいには思い出がある土地……というか、ほぼ第二の故郷といっても差支えがないほどには滞在していた記憶がある。
「なんなら第二のお仕事期間はほぼ欧州だったしな……おかげであっちの言葉はペラペラになったんだが」
アメリカとかオーストラリアにも行ったがそのほとんどがイギリスとかフランスとか。なのでほぼ問題ない。
「確か、向こうでトレセンの教員と落ち合う予定、だったか?その後システムとか説明してもらって生徒会長に会って……生徒会長に会う必要は果たしてあるのだろうか?」
まぁいい。その後はホームステイでお世話になる方のところへ挨拶だ。初日は結構詰めてあるなぁ。当然と言えば当然か。
そしてついにその時が訪れる。
《本機はまもなくイギリスへと到着いたします。シートベルトをしっかりとお締めになり──》
イギリスへと到着するその時が。
「え~っと、確かここで落ち合う予定だったな」
空港のエントランス。最初に指定された待ち合わせ場所へと到着すると、こちらへと手を振っているスーツ姿の女性が目に入った。もしかして……あれか?その人のところへと近づく。
「『初めましてミス・ヴァーディクトデイ。私はあなたが留学する予定のトレセン学園にて教官を務めている者です』」
どうやらあっていたらしい。差し出された手を握って、笑顔を浮かべながら応対。当然だが向こうは英語で話しているので俺も英語で話す。早速見せる時のようだな、俺の英語スキルを!
「『初めまして、ヴァーディクトデイです。これからしばらくお世話になります』」
「……『なるほど、しっかりと勉強してきているようですね』」
向こうは微笑みながらそう告げる。よしよし、好感触のようだな!
その後車に乗せられてトレセン学園へ。車の中で学園についての簡易的な説明があったが。
(ほとんど日本のトレセンと変わらないな。それは助かる)
授業に多少の差異はあれど、あまり変わらない。これならば問題なく行けるだろう。
「『それでホームステイ先のことなのですが、ナサニエル様が手を上げました。なのでナサニエル様のお知り合いの家にお邪魔することになります。どうか粗相のないように』」
「ブー!?」
「『どうされましたか?』」
「い、『いえ、特に』」
な、ナサニエルさんか……まさか過ぎる。別に面識があるというわけではないんだけど、その名前自体に聞き覚えがある。
(……待てよ?じゃあ俺のホームステイ先ってほぼ確じゃね?)
なんかもう、どこにホームステイするのかすでに決まったかのような感覚を覚える。ま、まぁまだ決まったわけじゃないし?もしかしたら違う可能性もあるし?
(別に嫌じゃないが……前世を考えると大体想像つくんだよなぁ)
果たしてどうなっているのか?期待半分、不安半分の気持ちで車に揺られる。
しばらくすると……辿り着いた。イギリスのトレセン学園に。
「『こちらになります、ヴァーディクトデイ様』」
「お、おぉ……!」
日本のトレセン学園と同じような敷地面積!だけどなんというかこう……歴史を感じるような建築!ここがイギリスのトレセン学園か!
「『まずは手続きから。ヴァーディクトデイ様の授業への参加は明日からになります』」
「わ、『分かりました』」
テンションが上がっている俺を微笑ましそうに見る教官の人。ちょっと恥ずかしいな。
教官の人に連れられて職員室へ。教科書類とか受け取って授業の説明を受ける。とは言ってもそこまで時間がかかるものではなかったが。
「『それでは次は生徒会長へのご挨拶となります。どうか粗相がないように』」
生徒会長への挨拶。ここって誰が生徒会長をしているんだろうか?実績的に思い浮かぶのは一名だけだが……。
辿り着いた生徒会長室。ドアをノックすると中から声が聞こえる。
「『どうぞ、入りたまえ』」
失礼します、と一言断って扉を開ける。目の前に座っていたのは──
「『きみが日本から留学してきたヴァーディクトデイ、か。ようこそイギリスへ。我々はきみを歓迎するよ』」
強い。ただ座っているだけでそう思わせるような、明るい鹿毛の髪をウルフカットにしたウマ娘が鎮座していた。彼女は微笑んでいるというのに、すげぇ圧を感じる。
気圧されそうになるが、俺は精一杯の笑顔を浮かべて。
「『初めまして、生徒会長。俺はヴァーディクトデイ、日本から勉強しに来ました。どうかよろしくお願いします』」
なんとか自己紹介をした。すると生徒会長は驚いたように目を見開いたかと思うと、次の瞬間には。
「……アッハハハハハ!」
笑い始めた。……なんで?
「『いやいや……ちょっと強めに圧をかけてみたけど、それに物怖じせずに普通に挨拶をするとは。しかも笑顔でときた!これは中々面白いな!うん、面白い!』」
……あの圧わざとかい!しかもなんかディープインパクト会長と似たような波長を感じるぞこの人!
「『さて、すまなかったねヴァーディクトデイ。ひとまず自己紹介をしておこうか。オレはフランケル、ここの生徒会長を務めている。短い間だが、きみと交流できることを嬉しく思うよ』」
椅子から立ち上がって俺のとこへと近づいてくる。俺と同じぐらいか。
フランケル。ここに来るまでの間に少し齧った程度だが……それだけでも凄いウマ娘だというのは知っている。
フランケル生徒会長から差し出される手。俺もその手を握って握手をするが……。
「~~~♪」
「あ、『あの。なんか力強くないですか?』」
すげぇ力強く握ってくる生徒会長。そして俺を引き寄せたかと思うと!?
「『なぁ、オレとレースをしようぜ?』」
耳元でそう囁かれた。……いや、レースって。
「『無理言わないでください……他が納得しないでしょう?』」
「『えー?きみも強くなるし、オレも楽しい。それにきみも強い相手との経験を求めてこっちに来たんだろう?まさにウィンウィンってやつじゃないか?』」
もっと段階ってもんがあるだろ!なんで初っ端ラスボスどころかクリア後の裏ボスレベルのヤツを相手にしなきゃいけねぇんだよ!
「『なぁお願い!ちょっとだけだから!ちょっとレースするだけだから!』」
「『だから無理言わないでくださいって!』」
「『良いじゃん良いじゃん!減るもんじゃないしさ!日本のウマ娘興味があるんだよ!』」
そっから続く押し問答。そんな中扉が開かれて。
「『留学生相手になにをしてるんだお前は』」
気だるげそうに鹿毛の茶色い髪を首の辺りで一つに結んだ長髪のウマ娘が現れた。そのウマ娘さんは呆れた表情でフランケル生徒会長を見ている。た、助かった……。
「『おいおいナサニエル。きみは空気が読めないなぁ。もうちょっとで押せそうだったのに』」
「……『黙れ。そもそも、嫌がる相手に併走を頼むな』」
あ、この人がナサニエルさんだったんだ。ということは、俺がお世話になる人ってことか。
ナサニエルさんは俺の方に向き直って申し訳なさそうな表情で頭を下げてきた。
「『すまないなヴァーディクトデイ、あなたに迷惑をかけた。先程アイツが発言したが……ワタシはナサニエル。教官から話は聞いているな?』」
「『い、いえ、大丈夫です。お陰様で助かりました。えっと……俺がホームステイする方、ですよね?』」
「『その通りだ。正確にはワタシではなく、ワタシの後輩のところ……なのだがね』」
ナサニエルさんの後輩、か。一体どんな方なんだろうと思いつつも多分あの人なんじゃないか?って予想がつくのが悲しいところだ。
「『おい、ワタシはもう行くからな。ヴァーディクトデイをホームステイ先に連れて行く』」
「『分かったよ。それじゃあヴァーディクトデイ、いつかオレと併走しような!』」
「き、『気が向いたら……』」
そして退出。それにしても……。
「『なんか、どっと疲れた……』」
「……『すまないな。アイツも、あれで大人しくなったんだが』」
あれで?昔はもっと酷かったの?というかナサニエルさんの顔には苦労がにじみ出ている。多分だけど、ほとんどこの人が対処してるんだな……お疲れ様です。
「『それで、俺のホームステイ先はどなたのところになるんでしょうか?』」
「『あぁそうだったな。あなたがホームステイするところは──エネイブルというウマ娘のところだ』」
……うん、そんな気はしてた。
「『エネイブルはワタシが目をかけている後輩でね。あなたがホームステイをするという話にも好意的……好意的……うん、好意的だ』」
「『ちょっと待ってください。どういうことですかそれは?なんか怖くなってきたんですけど!?』」
「『大丈夫だ。少なくともマイナスの感情は抱かれていない……プラス方向に振り切れているだけだ』」
小さい声でなんか言いましたよね?しかも俺が聞き取れないレベルの!何があったんですか本当に!?
「『なんにせよ、悪い扱いはされないだろう。そこは安心して欲しい』」
「は、はぁ……」
「……『あなたの幸運を祈っているよ』」
絶対なんかありますよねぇ!?それ!
こうして一抹の不安を抱きながら訪れたホームステイ先であるエネさん……エネイブルさんの家。うん、デカい。ちょっとした豪邸だ。ナサニエルさんはウマホを取り出している。
「『ワタシだ、エネイブル。あなたのナイト様を連れてきたよ』」
「『ちょっと待ってください。何ですかナイト様って?』」
しかし答えてくれず。しばらく待っていると執事さんっぽい方が出迎えてくれた。
「『お待ちしておりました、ヴァーディクトデイ様。では、こちらへ。ナサニエル様もありがとうございます』」
「『構いませんよ。それではヴァーディクトデイ、また明日学園で』」
「『あ、はい。ありがとうございましたナサニエルさん』」
ナサニエルさんは手をひらひらしながら去っていく。……さて、問題はここからだ。
「『それにしても、罪なお方ですね。ヴァーディクトデイ様』」
「『な、なにがですか?』」
屋敷に入れられて歩いている最中、執事さんは微笑みながらそう言った。
「『エネイブルお嬢様はあなたを一目見て気に入りました。その日以来、あなたが来るのを心待ちにしております』」
「あ、あはは……」
前世とほぼ変わらんやんけ!
辿り着いた一室。おそらくここにエネさんがいるのだろう。ただ、初対面だから間違ってもエネさんなどとは言わないようにしよう。
「『お嬢様、ヴァーディクトデイ様をお連れしました』」
「『ありがとう爺や。もう下がって大丈夫ですよ』」
「『かしこまりました。それではヴァーディクトデイ様、どうぞ中へ』」
「『はい……』」
執事さん部屋まで付いてきてくれねぇのかよ!俺1人で入ることになるのか……。
「お、『お邪魔しま~す……』」
中に入って、出迎えてくれたのは──
「『ようこそヴァーディクトデイ様。お待ちしておりました。
亜麻色の髪をセミロングにした、ドンナ姉さんに負けず劣らずのナイスバディなウマ娘……エネさんが出迎えてくれた。
フランケル
身長;165cm
体重:増減なし
B/W/H:88/55/83
一言メモ
明るい鹿毛の髪をウルフカットにしたウマ娘。イギリストレセン学園の生徒会長。走るの大好き。よく周りを振り回している。ディープインパクトとは気が合いそう(ヴァーディ談)。
一方で人を見る目は確か。競走能力は圧倒的の一言。
ナサニエル
身長;162cm
体重:微増
B/W/H:83/53/84
一言メモ
暗めの鹿毛の髪を首の辺りでまとめているウマ娘。いつも気だるげにしているが大体フランケルのせい。フランケル相手に容赦なく物申すためフランケルからは気に入られている。
後輩であるエネイブルを目にかけている。