飛行機雲に焦がれて   作:カニ漁船

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ずっと3期OPをリピートして聞いてます。


始まる留学、最強との併走

 エネさんとの出会いは種牡馬としてイギリスに渡ってきた時。色々とあったものの、エネさんがいる牧場ではほとんど一緒の時間を過ごしたと言っても過言ではない。さすがにジェネ先輩みたいに馬房が隣同士にはならなかったけど、放牧では必ず一緒だったし俺がいると分かるとエネさんも露骨にテンションが違うと、明らかに元気だったなんて話もできたぐらいだ。

 そんなエネさんが俺の目の前にいる。

 

 

「~~~♪」

 

 

「じ、『上機嫌ですね』」

 

 

 ものすんごい機嫌良さそうに。さっきからずっと耳はピコピコ動いてるわ尻尾もぶんぶん振ってるわ誰がどう見ても機嫌が良さそうだった。なんなら表情もニコニコしている。俺がここに案内された時からずっとだ。

 

 

「『勿論です。あなた様に……ヴァーディ様にお会いできたのですから』」

 

 

「……『初対面、ですよね?』」

 

 

「『えぇ、初対面です。ですが……ヴァーディ様の写真を一目見た時からビビッ!っときたのです』」

 

 

 ビビッとって。なにがそんなに「『あの時の衝撃は、まさしく身体に電流が走ったかのようでした』」おや?エネさんの様子が……。

 

 

「『ヴァーディ様の長く黒い髪も、黄金色の瞳も、一途で真っ直ぐな意思も、整った顔立ちも、豊満な身体も、絹のような肌も、すらりと長く伸びたその脚も。なにもかもが愛おしく感じたのです!』」

 

 

「『ハァ。そんなに褒めてもらえると嬉しいですね』」

 

 

 なんかところどころおかしいような気がするがまぁいいだろう。

 

 

「『ヴァーディ様、当屋敷に滞在している間なにか不足していることがあれば遠慮なく仰ってください。すぐさまご用意いたします』」

 

 

「『あ、ありがとうございます。その時は遠慮なく頼らせてもらいますねエネイブルさん』」

 

 

「……『もっとフレンドリーに呼んでください。そのような呼び方では他人行儀のように感じてしまいます』」

 

 

 ヤバい、エネさんが頬を膨らませている!明らかに不機嫌だ!

 

 

「じ、『じゃあ、エネさんで』」

 

 

「『はい。大変よろしいです!』」

 

 

 凄い、表情が一瞬で戻ったししかも超楽しそうだ。俺の言葉一つでこんなに変わるの?

 

 

(そもそも他人行儀も何も今日が初対面だということに突っ込むのは野暮なのだろうか?)

 

 

 ……まぁ気にしなくていいか!

 

 

「『こちらに滞在している間、なにか分からないことがありましたら遠慮なく私にお申しつけください。一から十までお教えいたします』」

 

 

「『ありがとうございます!頼りにさせてもらいます!』」

 

 

「……フフ。『あぁそうだ、長旅に学園の手続きなどでお疲れでしょう?お風呂の準備は済ませておりますので、ご入浴なさってはいかがでしょうか?』」

 

 

 ふむ、確かにそうだ。イギリスに到着してからまだお風呂に入ってないから結構汗臭いかもしれない。

 

 

「『分かりました。それじゃあ早速頂きますね!』」

 

 

「『えぇ。それでは爺や?ヴァーディ様を大浴場へとご案内しなさい』」

 

 

「『かしこまりました』」

 

 

 うおっ、扉開けて爺やさんが入ってきた。いつの間に。

 そのまま爺やさんに案内されるまま俺は大浴場へと。

 

 

「……一人で入るにはデカすぎねぇか?」

 

 

 明らかに1人で入るには広すぎる大浴場に目を白黒させたがもう気にしないことにした。途中エネさんが。

 

 

「『ヴァーディ様、私が身体を洗って差しげますね?』」

 

 

「い、『いや。そこまでしていただくには……』」

 

 

「『大丈夫です。私がやりたいのですから……力を抜いてください?隅々まで、隅々まで!洗ってあげます』」

 

 

「『そこ強調する必要あります?……まぁいいですけど』」

 

 

 大浴場に乱入してきて一緒に入ることになったもののそれ以外は何事もなかった。

 その後は部屋に案内されたものの。

 

 

「……『ヴァーディ様、なんでしょうか?そのお召し物は?』」

 

 

「え?『シャツにショーパンですけど』」

 

 

 寝間着はこれ一択だ。だって楽だ「パシャ!」しってちょっと、なんで写真撮ってるんですか?

 

 

「『それではヴァーディ様、ごゆっくりと疲れを癒してくださいませ』」

 

 

「『あの、なんで写真撮ったんですか?』」

 

 

「『私はこれで失礼いたします。朝は爺やが起こしますので……一緒に登校しましょうね?』」

 

 

「『いや、なんで写真撮ったって』」

 

 

 エネさんは俺の質問に答えることなくそのまま去っていった。……まぁ写真一枚ぐらいいいけどさ。

 その後は風呂上がりのストレッチを済ませつつ母ちゃん達と通話をした。

 

 

「乗り物酔いしなかった?」

 

 

「向こうの人達は良くしてくれそう?」

 

 

「イギリスの料理は口に合う?」

 

 

「体調に問題はない?」

 

 

 と色々と心配されていたものの、特に問題はないと報告。そしたら母ちゃん達も安堵したようだ。

 通話が終わった後はすぐに寝る。明日も早いからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。エネさんと一緒に登校することになる。

 

 

「『それでは爺や、今日もよろしく』」

 

 

「『かしこまりました、お嬢様』」

 

 

 学園の授業は……特に目新しいものはない。問題なくついていけた。

 放課後、ついにやってきた。当初の目的である、強くなるためのトレーニングの時間が。

 

 

「『さて、今日はトレーニングを始める前に紹介したいウマ娘がいる。ここにいる……』」

 

 

「『ヴァーディクトデイです。日本からきました。留学期間中の短い間ですが、精一杯頑張ります!』」

 

 

「『みんな仲良くするんだぞ』」

 

 

 俺がこちらでお世話になるのはナサニエルさんとエネさんが所属しているチームだ。周りの反応はというと……。

 

 

「『ふーん、日本からねぇ』」

 

 

「『新入生って聞いてるよ?度胸あるね』」

 

 

「『どんな子なのかしらね?ちょっと走ってみたい』」

 

 

「『日本のウマ娘の実力……興味あるな~』」

 

 

 特に不安な要素はなさそうだ。

 

 

「『それではヴァーディ様、私と併走を……』」

 

 

「『ダメだエネイブル。お前とヴァーディクトデイは()()釣り合わない』」

 

 

 エネさんが俺との併走を提案するものの、ナサニエルさんが一蹴。ま、そりゃそうだ。今の俺とエネさんじゃ実力が全く釣り合わん。

 

 

「……『ヴァーディ様は強くなるために留学をしました。では、私が併走しても問題はないはずでございますが?』」

 

 

「『あなたも次のレースが控えているだろう?調子を落としてもらったら困る。分かってくれエネイブル』」

 

 

 エネさんは頬を膨らませて抗議するものの、ナサニエルさんはその提案をことごとく却下。というか何故エネさんはそこまで俺と併走したいのか。

 

 

「『トレーニング時間はワタシが面倒を見よう、ヴァーディクトデイ。分からないことがあれば遠慮なく質問するように』」

 

 

「『はい!よろしくお願いします、ナサニエルさん!』」

 

 

「『良い返事だ。では軽いウォーミングアップから行う。ついてきたまえ』」

 

 

 勿論エネさんの要求が通ることはなく、俺はナサニエルさんに指導してもらえることに。軽いウォーミングアップを済ませた後は俺が取り組む課題を見つけることに。

 

 

「『まずは質問だヴァーディクトデイ。あなたが考える自分に足りないと思っているものはなんだ?』」

 

 

「『全て……ですが、とりわけスピードが足りないと感じます』」

 

 

「『スピード……それは加速か?それとも最高速か?』」

 

 

「『どちらも。最高速に関しては、まだまだ限界じゃない気がするのですが……加速をしようにも思うような加速が得られなくて』」

 

 

「……『なるほど。ひとまず走ってみよう。何事もまずは実践だ。あなたの日本でのデータも取り寄せてもらってある、しっかりと計ろう』」

 

 

 始まるタイム走。

 

 

「フッ!」

 

 

「……」

 

 

 ストップウォッチで計測しているナサニエルさんはただ淡々と、冷静にタイムを記録していた。

 一通り計測が終わってナサニエルさんのとこへと戻る。

 

 

「『さて、君のタイムだが……日本とほぼ変わらないな。だが、平均的にはこちらの方が速い』」

 

 

「……『やっぱり、ですか』」

 

 

「『本来であれば驚くべきことだ、ヴァーディクトデイ』」

 

 

 驚くべきこと?……あ、そういや忘れてたことがあったな。

 

 

「『こちらの芝と日本の芝は違うとは良く言われているな?日本のウマ娘がこちらのレースで思うような走りができない、最大の要因でもあることだ』」

 

 

「は、『はい』」

 

 

「『だが君は、日本とほぼ変わらないタイムを計測するばかりか、むしろ早い時もある。本来であれば苦戦してもおかしくないはずなのに、あなたは何事もなく順応した』」

 

 

 ……前世でもそうだったが、どうにも俺はこっちの芝が合っているっぽいな。だからといってこっちでデビューして走るかと言われたらしないが。

 ナサニエルさんは1つ咳払いをする。

 

 

「『すまない、話が少し横道に逸れたね。さて、あなたが課題だと思っているスピードだが……現時点でデビュー前と考えると素晴らしい数値であると思うが?』」

 

 

「……『そう、でしょうか?』」

 

 

「『あぁ。こちらの学生の基準値も上回っているしなんならトップクラスだ。今からデビューしても問題はない。()()()()()、満足するだろう』」

 

 

「……」

 

 

「……『もっとも、あなたは満足していないようだが』」

 

 

 ナサニエルさんは溜息を吐いている。申し訳ないけど、その通りだ。俺はこの数値に、全然満足しちゃいない。もっともっと、上にいかねぇと……!

 

 

「『あなたがなにを焦っているかはワタシには分からない。だが、焦りは最悪の結果をもたらす』」

 

 

「うっ」

 

 

「『まずは身体作りからだ。今日は一日、基礎トレーニングにあてる。分かったかい?』」

 

 

「は、『はい!』」

 

 

「『良い返事だ。ではまず……』」

 

 

 その後は一日身体作りの基礎トレーニングになった。……日本とやってること変わらんな。そんな風に思っていると。

 

 

「『やぁやぁ!楽しそう……ではないね。ではオレが楽しくしてやろう!』」

 

 

「うん?」

 

 

「……チッ」

 

 

 ナサニエルさんが露骨に不機嫌になったな。現れたのは──フランケル生徒会長。

 

 

「『何しに来た?フランケル。お前は別のチームだろ』」

 

 

「『言っただろう?オレは彼女に興味があると……というわけでヴァーディクトデイ、オレと踊らないか?』」

 

 

「お、『踊る?』」

 

 

 ダンスか何かする……いや、絶対違う。これはそういうヤツじゃない。直感で分かる。

 

 

「『さぁ、ともに走ろうじゃないか!』」

 

 

「『え?嫌です』」

 

 

「『何故!?』」

 

 

「『いや……実力差ありすぎるでしょ』」

 

 

 ただでさえエネさんとの併走を断っているのに、フランケルさんとの併走なんてさらに無理に決まっているだろう。だから断って「……『いや、お願いできるか?フランケル』」あるぇ!?

 

 

「『なんでですか!?ナサニエルさん!』」

 

 

「『ほう?どういう風の吹き回しだ?ナサニエル』」

 

 

 フランケルさんも訝しんでる。当のナサニエルさんは……俺の資料を見ている。

 

 

「『ヴァーディクトデイの併走時のタイムを計ってないからな。()()()()()()()()()()、それを検証したい』」

 

 

「『ほほう?それがオレでいいのかい?』」

 

 

「……『どうせお前は毎日押しかけてくる気だったろう?ならば、最初のうちに済ませておくに限る』」

 

 

 すげぇ疲れた顔だ……フランケルさんの性格を良く分かってるんだな、ナサニエルさん。

 そんなことで俺はフランケルさんと併走することに。マジでどうなるんだよ……。

 

 

(いや、結果的に見ればこれはチャンスか?)

 

 

 欧州最強ウマ娘の実力を肌で体感できる。それはかなり贅沢なことだ。しかもここでしかできないこと。ならば、これをチャンスだと思って俺の成長の糧にする!

 俺とフランケルさんはスタート位置につく。

 

 

「……『やるからには勝ちに行きます、フランケルさん』」

 

 

「ハッハッハ!『そうでなくては困るよ?ヴァーディクトデイ』」

 

 

「『両者スタート位置に就いたな?では……はじめ!』」

 

 

 俺とフランケルさんの併走が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『何故、フランケルとの併走を許可した?ナサニエル』」

 

 

「……『トレーナーか』」

 

 

 トレーナーは咎めるようにワタシに告げる。だが、ワタシはこれが最良だと判断した。故に、迷わずに答える。

 

 

「『フランケルはヴァーディクトデイに興味を持っている。たとえここで断っても毎日のように来るでしょう。ならば、早めの段階で済ませておくに限ります』」

 

 

「『だが、ヴァーディクトデイはまだデビュー前。これで彼女になんらかの不調があったら……』」

 

 

「『それはないでしょう』」

 

 

「……『なに?』」

 

 

 トレーナーはおそらくメンタル的に不調に陥る可能性があると踏んでいるようだが……()()()()()。今の併走を見てもそれは分かる。それに彼女は……いや、よしておこう。

 

 

「『彼女は強くなるためにイギリスに来ました。この状況もまた、彼女の望みを叶える一環とすれば間違ってはいません。それに先程から併走を見ていますが……彼女はそんなタマじゃなさそうです』」

 

 

 ワタシの目に映るのは10バ身は離されているだろうフランケルとヴァーディクトデイのレース。フランケルはすでに残り200を切った。そんな中ヴァーディクトデイは──飛んだ

 

 

「……ほう」

 

 

 トレーナーもわずかに目を見開いている。日本には飛ぶような走りをするウマ娘がいると聞いた。まさしく、あのような走りをしているのだろう。だが……彼女のそれは。

 

 

(未完成、だな)

 

 

 フォームに問題はない。問題があるとすれば「『身体能力があれば、惜しいな』」トレーナーも気づいたようだ。

 

 

「『()()()()()()()()()()()()()。それがあれば、あるいは』」

 

 

「『問題は、それだけじゃなさそうです』」

 

 

「……『そうだな』」

 

 

 フランケルとヴァーディクトデイの併走の結果は──フランケルの圧勝。当然と言えば当然か。

 楽しそうな笑みを浮かべるフランケル。そしてヴァーディクトデイは──

 

 

「……」

 

 

 練習前の態度からは信じられないくらい、冷たい目をしていた




エネイブル

身長;162cm

体重:ち、ちょっと増えました…

B/W/H:95/56/92

一言メモ
亜麻色の鹿毛の髪をセミロングにしたウマ娘。高貴な雰囲気を漂わせている。真面目な性格だがとある一個人の前だとその性格はどこへ行ったのやらになる。レースの実力はかなりのもので世界中が注目している。
ヴァーディクトデイを一目見て気に入った。


ヴァ―ディの寝間着ってシャツ一枚にショートパンツだけど、とんでもないことになってそう。
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