妖怪ウォッチif 妖怪学園Y~ワイワイがっこうぐらし~   作:主ノ中人

2 / 2
めちゃくちゃ遅(おく)れましたホントごめんなさい。
今回(こんかい)と次回(じかい)はラント視点(してん)の回想話(かいそうわ)です。
ちな脚注(きゃくちゅう)の説明(せつめい)はラントだったりラントじゃ無(な)かったりします。


第(だい)2話(わ):Y  始(はじ)まりの時(とき) それは突然(とつぜん)の事(こと)でした

───私(わたし)は霧隠(きりがくれ)ラント。Y学園(ワイがくえん)中等部(ちゅうとうぶ)生徒会長(せいとかいちょう)を務(つと)めている者(もの)だ。

 

 時(とき)は今(いま)より少(すこ)し以前(いぜん)の事(こと)。巨大(きょだい)エネルギー生命体(せいめいたい)『オズマ』を打(う)ち破(やぶ)り、現代(げんだい)へと帰(かえ)ってから数ヶ月(すうかげつ)。

 いつものようにYSP(ワイエスピー)クラブを中心(ちゅうしん)に、稀(まれ)に起(お)きる怨霊(おんりょう)騒(さわ)ぎの鎮圧(ちんあつ)をしつつ学園生活(がくえんせいかつ)を送(おく)っていたある日(ひ)の事(こと)だった。

 その日(ひ)、私(わたし)は風紀委員長(ふうきいいんちょう)『来星(くるほし)ナユ』の要請(ようせい)により校門前(こうもんまえ)へと駆(か)けつけていた。

 

「ここか、暴動(ぼうどう)があったというのは」

 

「ハイ。校門(こうもん)の方(ほう)から異音(いおん)がするとの通報(つうほう)があり、ポリスが駆(か)けつけたんですが……」

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

 

「暴(あば)れるなっ!」

 

「大人(おとな)しくしろ!!」

 

「む、アレが例(れい)の侵入者(しんにゅうしゃ)か」

 

「ええ。異音(いおん)騒(さわ)ぎも、あの不審者(ふしんしゃ)が校門(こうもん)を破壊(はかい)しようとしていた音(おと)だったようです」

「警察(けいさつ)への通報(つうほう)はもう済(す)ませました。身柄(みがら)を拘束(こうそく)し、到着次第(とうちゃくしだい)引(ひ)き渡(わた)すとしましょう」

 

「うむ。そうしてくれ」

「……しかし、なんだってこんなところへ侵入(しんにゅう)しようとしたのか……」

 

「それが、何(なに)を聞(き)いてもあの様子(ようす)で対話(たいわ)もままならず……」

 

 まるで得体(えたい)の知(し)れない物(もの)に触(ふ)れているかのような感覚(かんかく)に、私(わたし)は悪寒(おかん)を感(かん)じていた。

 

「怨霊(おんりょう)か妖怪(ようかい)にとりつかれている線(せん)は……無(な)さそうだな」

 

 左腕(ひだりうで)にA(エイリアン)ウォッチを装着(そうちゃく)し霊界(れいかい)チャンネルを合(あ)わせたが、特(とく)に怪(あや)しい霊的存在(れいてきそんざい)は探知(たんち)できなかった。

 

「……?これは…」

 

「どうかしたか」

 

「いえ、それが…」

 

 

 と、そこまで話(はな)しかけたところでポリス達(たち)に異変(いへん)が起(お)こった。

 

 

「痛(いて)ぇッ!」

 

「む……?!」

 

 なんと男(おとこ)がポリスの右腕(みぎうで)に噛(か)み付(つ)いたのだ。苦悶(くもん)の表情(ひょうじょう)を浮(う)かべる彼(かれ)の腕(うで)には男(おとこ)の歯(は)がくい込(こ)み、血(ち)が滲(にじ)み出(で)ている。

 

 その場(ば)に居(い)た他(ほか)のポリスがすぐさま引(ひ)き剥(は)がしたものの、腕(うで)の噛(か)み傷(きず)からは依然(いぜん)としてドクドクと血(ち)が流(なが)れ出(で)続(つづ)けていた。

 

「大丈夫(だいじょうぶ)か?」

 

「は、はい会長(かいちょう)……!私(わたし)は問題(もんだい)ありませんが……この力(ちから)…尋常(じんじょう)ではありません……!」

 

 そう報告(ほうこく)するポリスは顔色(かおいろ)が悪(わる)く、足取(あしど)りもフラフラと覚束(おぼつか)無(な)い。

 支(ささ)えになって姿勢(しせい)を落(お)とさせてやり、彼(かれ)の状態(じょうたい)を軽(かる)く視診(ししん)する。

 

(呼吸(こきゅう)が荒(あら)いな……体温(たいおん)も急激(きゅうげき)に上昇(じょうしょう)している。…この男(不審者)……何(なに)かの病原菌(びょうげんきん)にでも感染(かんせん)していたのか……?)

 

 彼(噛まれたポリス)と男(不審者)を交互(こうご)に見(み)やり分析(ぶんせき)していくが、そうしている間(ま)にも彼(かれ)の容態(ようだい)は悪化(あっか)するのみだ。

 

「無理(むり)はするな。拘束(こうそく)は他(ほか)の者(もの)に任(まか)せて、すぐに保健室(ほけんしつ)でえんら先生(せんせい)に診(み)てもらえ」

 

「は……っあ゛……ぃ゛……かい゛ち゛ょ゛……」

 

 彼(かれ)は苦痛(くつう)に顔(かお)を歪(ゆが)めながら肯定(こうてい)しようとするが、言葉(ことば)にならない呻(うめ)き声(ごえ)を上(あ)げた末(すえ)にその場(ば)に倒(たお)れ込(こ)んでしまった。

 

「!」

「おい、しっかりしろ!」

 

 私(わたし)は彼(かれ)に手(て)を差(さ)し伸(の)べ 立(た)てるか?と尋(たず)ねるが、彼(かれ)は何(なに)も言(い)わずにフラフラと立(た)ち上(あ)がり 男(おとこ)を拘束(こうそく)しているポリス達(たち)の元(もと)へと歩(ほ)を進(すす)めた。

 

「お、オイ……?」

 

 

 

「ヴヴヴヴヴ……」

 

 

「…ハッ……!」

「皆(みな)、彼(かれ)から離(はな)れるんだ!!!」

 

 

 

 

 しかし、気(き)が付(つ)いた頃(ころ)にはもう後(あと)の祭(まつ)りであった。

 

 

 

 

 

 彼(かれ)は仲間(なかま)だったはずの者達(ものたち)に───

 

 

 

 

 

「ガア゛ア゛ア゛ア゛!!」

 

「痛(いで)ぇえッ!!!」

 

「ぐあああああ!!!」

 

 

 

 

 文字(もじ)通(どお)り、「牙(キバ)」を剥(む)いた。

 

 

 

 

 噛(か)まれたポリスはまた別(べつ)のポリスに噛(か)み付(つ)き、一瞬(いっしゅん)の内(うち)に数人(すうにん)のポリスが不(・)審(・)者(・)と(・)同(・)じ(・)よ(・)う(・)に(・)呻(・)き(・)声(・)を(・)上(・)げ(・)な(・)が(・)ら(・)人(・)を(・)襲(・)う(・)だ(・)け(・)の(・)怪(・)物(・)へ(・)と(・)変(・)貌(・)し(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)。

 

「なんだこれは……!!」

 

「ラント会長(かいちょう)…これではまるで、七不思議(ななふしぎ)の…!」

 

「あぁ……来星(くるほし)さんの思(おも)っている通(とお)り…まるで、『映(うつ)りたがりの友道(ともみち)くん』のようだ…!!」

 

 この学園(がくえん)にはかつて、七不思議《ななふしぎ》が3種類(しゅるい)存在(そんざい)していた。『学園七不思議(がくえんななふしぎ)』、『トワイライト7(セブン)』、『アメージング7(セブン)』。『映(うつ)りたがりの友道(ともみち)くん』とは、その中(なか)の学園七不思議(がくえんななふしぎ)の6(むっ)つ目(め)。

 『友道(ともみち)くん』というゾンビが映(うつ)った映画(えいが)は呪(のろ)われると言(い)われており、友道(ともみち)くんの『へそのきのこ』の胞子(ほうし)を浴(あ)びると、友道(ともみち)くんになってしまう……というもの。これが現在(げんざい)の状況(じょうきょう)と似(に)ているのだ。

 結果的(けっかてき)に友道(ともみち)くん…本名(ほんみょう)、友道(ともみち)ケンの無念(むねん)は晴(は)らされた為(ため)解決(かいけつ)したハズだったのだが、怪物達(かいぶつたち)は周(まわ)りにいる生徒(せいと)を襲(おそ)い始(はじ)め、被害(ひがい)が目(め)に見(み)えて雪(ゆき)だるま式(しき)に拡大(かくだい)しているのが分(わ)かる。

 

「ッ……!生徒諸君(せいとしょくん)は建物(たてもの)の中(なか)へ避難(ひなん)しろ!!!」

 

「うわあああああ!!!」

 

「キャーーーー!!!」

 

「クッ!!」

 

 A(エイリアン)ウォッチを嵌(は)めた左腕(ひだりうで)を顔(かお)の近(ちか)くに持(も)ってきてカバーをスライドさせ、『DS(ディープシャドウ)ゾディアック』の変身(へんしん)メダルを構(かま)えた。

 

「変身(へんしん)!!!!」

 

 ウォッチにメダルを装填(セットオン)し、カバーを元(もと)に戻(もど)す。

 

『ALIEN(エイリアン)…』

『OVER DRIVE(オーバードライブ)……』

 

 変身待機音(へんしんたいきおん)が流(なが)れ、私(わたし)の身体(からだ)に変身(へんしん)の処理(しょり)を実行(じっこう)していく。

 

 地球時計(ちきゅうどけい)をモチーフとした球体(きゅうたい)のパーツを回転(かいてん)させると、SF的(エスエフてき)なサウンドと共(とも)に辺(あた)りにデータの塊(かたまり)が幾(いく)つか放出(ほうしゅつ)され、一瞬(いっしゅん)で私(わたし)の肉体(にくたい)を黒(くろ)と赤(あか)を基調(きちょう)としたスーツに変化(へんか)させた。

 

『DEEP(ディープ) SHADOW(シャドウ)…』

 

 最後(さいご)に額(ひたい)に『Z(ゼット)』の文字(もじ)が浮(う)かび上(あ)がり、変身(へんしん)完了(かんりょう)。

 

 私(わたし)が変身(へんしん)するこの者(HERO)の名(な)こそ。

 

 

「『DEEP(ディープ) SHADOW(シャドウ) ZODIAC(ゾディアック)』!!!!」

 

 本来(ほんらい)ならば怨霊(おんりょう)や妖怪相手(ようかいあいて)にしか使(つか)いたくは無(な)いが、緊急事態故(きんきゅうじたいゆえ)、やむを得(え)ず使(つか)わせてもらう。*1

 

「ポリス諸君(しょくん)、彼(かれ)らを拘束(こうそく)するぞッ!!」

 

「了解(りょうかい)!!!」

 

 

 

 

 時(とき)を同(おな)じくして、学(がく)園(えん)長(ちょう)室(しつ)の『大王路(だいおうじ)キンヤ』学(がく)園(えん)長(ちょう)の元(もと)に来星(くるほし)さんの無線(むせん)通信(つうしん)が入(はい)っていた。

 

「何(なに)!?そんな馬鹿(バカ)な!!友道(ともみち)くんの七不思議(ななふしぎ)はYSP(ワイエスピー)クラブが解決(かいけつ)していたハズ……!!」

 

『ハイ。無念(むねん)を晴(は)らした怨霊(おんりょう)が、一度(いちど)解決(かいけつ)した七不思議(ななふしぎ)を復活(ふっかつ)させる事(こと)は有(あ)り得(え)ません。これは友道(ともみち)くんとは似(に)て非(ひ)なるもの……全(まった)く別(べつ)の異変(いへん)です』

 

 来星(くるほし)さんの声(こえ)は冷静(れいせい)だが心做(こころな)しか早口(はやくち)で、ひとつひとつの言葉(ことば)の中(なか)に一抹(いちまつ)の不安(ふあん)と焦(あせ)りが混(ま)じっているのが分(わ)かる。

 

「むむむ……すると…まさかとは思(おも)うが…」

 

 

 学園長(がくえんちょう)は一瞬(いっしゅん)の沈黙(ちんもく)の後(あと)、自(みずか)らの脳裏(のうり)に浮(う)かんだ最悪(さいあく)の仮説(かせつ)を唱(とな)える。

 

 

 

「本物(ほんもの)の、生物(バイオ)災害(ハザード)…だなんていうつもりじゃあるまいな……!?」

 

 

 

 学園長(がくえんちょう)自身(じしん)、信(しん)じたくはないが状況的(じょうきょうてき)にこれ以外(いがい)思(おも)いつくものもない。……いや、これ以外(いがい)に有(あ)り得(え)ないのだ。 

 

『…とにかくこのままでは危険(きけん)です。被害(ひがい)は未(いま)だに拡大中(かくだいちゅう)で、このペースだと数分(すうふん)も経(た)たずして学園(がくえん)エリアの外(そと)のエリア、生徒(せいと)にも被害(ひがい)が及(およ)びます』

 

「1人(ひとり)でも多(おお)くの生徒(せいと)を救(すく)わんとな…!一刻(いっこく)も早(はや)く避難(ひなん)誘導(ゆうどう)を開始(かいし)してくれ!」

 

『避難先(ひなんさき)はどこへ?』

 

「地下(ちか)シェルターを使(つか)う。ガッコウガー出動(しゅつどう)にも耐(た)えられる場所(ばしょ)だ、あそこならそう簡単(かんたん)に破(やぶ)られたりはしない」

 

『分(わ)かりました。風紀委員(ふうきいいん)、生徒会(せいとかい)、学園(がくえん)マフィア総出(そうで)で各(かく)エリアに居(い)る生徒(せいと)の地下(ちか)シェルターへの誘導(ゆうどう)開始(かいし)指示(しじ)を出(だ)します』

 

「うむ、頼(たの)んだぞ。校舎内(こうしゃない)に居(い)る生徒(せいと)と職員(しょくいん)の避難誘導(ひなんゆうどう)は任(まか)せたまえ」

 

『……学園長(がくえんちょう)も、早(はや)めの避難(ひなん)をお願(ねが)いします』

 

 来星(くるほし)さんの無線(むせん)が切(き)れると、すぐさま学園長(がくえんちょう)はY学園(ワイがくえん)全域(ぜんいき)に緊急(きんきゅう)事態(じたい)宣言(せんげん)を出(だ)した。

 

 

 Y学園(ワイがくえん)全域(ぜんいき)に警報(けいほう)がけたたましく鳴(な)り響(ひび)くと共(とも)に、校舎(こうしゃ)北側(きたがわ)にあるグラウンドの地下(ちか)にあるシェルターの入口(いりぐち)が開(ひら)く。

 

『緊急(きんきゅう)事態(じたい)宣言(せんげん)発令(はつれい)』

『シェルター、オープン』

『誘導(ゆうどう)に従(したが)って慌(あわ)てずに避難(ひなん)してください』

 

 警報(けいほう)は繰(く)り返(かえ)され、Y学園(ワイがくえん)の全生徒(ぜんせいと)たちは地下(ちか)シェルターへと向(む)かい始(はじ)めた。人(ひと)にぶつかり、転(ころ)んで怪我(けが)をする者(もの)や、逃(に)げ遅(おく)れて『感染者(ゾンビ)』に襲(おそ)われる者(もの)も居(い)た。

 だが来星(くるほし)さんの宣言(せんげん)通(どお)り、生徒会(せいとかい)、風紀委員(ふうきいいん)、学園(がくえん)マフィアは総出(そうで)で各地(かくち)の対処(たいしょ)に当(あ)たっていた。

 

 

 

「オゥラァ!!」

 

「ガッ!!!」

 

 感染者(ゾンビ)の後頭部(こうとうぶ)に学園(がくえん)マフィアの強烈(きょうれつ)な飛(と)び蹴(げ)りがヒットし、怯(ひる)んだところを羽交(はが)い締(じ)めにされる。

 

「今(いま)のうちだ!さっさと行(い)きやがれゴラァ!!」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「…ケッ、マフィアに礼(れい)は要(い)らねぇっつの」

 

 

 

「焦(あせ)らないで下(くだ)さ~い!」

 

「慌(あわ)てず騒(さわ)がず落(お)ち着(つ)いて!!」

 

「シェルターには全員(ぜんいん)入(はい)れますので!!!」

 

「こっちです!!!」

 

「怪我(けが)した人(ひと)は中(なか)でえんら先生(せんせい)に診(み)てもらって下(くだ)さいね!」

 

 

 

 

 

「これは……嫌(いや)な予感(よかん)がするぞ」

 

 学園長(がくえんちょう)が厳粛(げんしゅく)な表情(ひょうじょう)で独(ひと)り言(ご)つと、学園長室(がくえんちょうしつ)の扉(とびら)が開(ひら)き『エンマダイ・シュンスケ』理事長(りじちょう)が入室(にゅうしつ)する。彼(かれ)はこのY学園(ワイがくえん)の理事長(りじちょう)にして、妖怪達(ようかいたち)を統(す)べる王(おう)『エンマ大王(だいおう)』でもある存在(そんざい)だ。*2

 

「じいちゃん」*3

 

「煌炎(こうえん)よ……」*4

「頼(たの)みがある……!」

 

 

 

 

「クソ……キリがないな……!」

 

 学園(がくえん)エリアで戦闘(せんとう)を行(おこな)っている私達(わたしたち)の状況(じょうきょう)は芳(かんば)しくなく、こちらの戦力(せんりょく)が次々(つぎつぎ)と向(む)こうに吸収(きゅうしゅう)されてしまい、ジリ貧(ひん)に陥(おちい)っていた。

 

「ガァアアア!!!」

 

「ぐあッ!!この……!!」

 

 背後(はいご)から迫(せま)る感染者(ゾンビ)に気(き)が付(つ)けなかった私(わたし)は腕(うで)に噛(か)みつかれてしまい、咄嗟(とっさ)に引(ひ)き剥(は)がしたものの鈍(にぶ)い痛(いた)みが残(のこ)る。

 装甲(そうこう)のお陰(かげ)で傷(きず)付(つ)けられはしなかったが、変身(へんしん)した状態(じょうたい)の私(わたし)が痛(いた)みを感(かん)じるほどの力(ちから)を生身(なまみ)の人間(にんげん)が出(だ)しているという事実(じじつ)に焦(あせ)りが募(つの)る。

 

 …このまま消耗(しょうもう)し続(つづ)けたら、いずれ変身(へんしん)が解(と)けて無(む)防備(ぼうび)状態(じょうたい)になってしまう。大勢(おおぜい)の感染者(ゾンビ)に囲(かこ)まれているこの状況(じょうきょう)でそうなってしまったら感染(かんせん)は免(まぬが)れないだろう……まだ変身(へんしん)していられる間(あいだ)に無事(ぶじ)なポリスを連(つ)れて離脱(りだつ)するべきか……?

 いや、ダメだ。ここで退(しりぞ)いてしまっては学園(がくえん)エリア外(がい)の4エリアに居る、シェルターから遠(とお)い生徒(せいと)たちが危険(きけん)に晒(さら)されてしまう。

 

「かと言(い)って……!どうすれば……」

 

 長考(ちょうこう)し、一瞬(いっしゅん)硬直(こうちょく)してしまっていた私(わたし)に感染者(ゾンビ)が一斉(いっせい)に襲(おそ)いかかる。

 

 

 刹那(せつな)。

 

 

 私(わたし)に襲(おそ)いかかろうとした感染者(ゾンビ)達(たち)が全(・)て(・)凍(・)り(・)つ(・)き(・)、(・)外(・)側(・)に(・)居(・)る(・)感(・)染(・)者(・)避(・)け(・)の(・)氷(・)の(・)堤(・)防(・)を(・)築(・)く(・)。

 

 

「何(なん)…!?」

 

「無茶(むちゃ)しすぎよ!ラント!!」

 

 覚(おぼ)えのある声(こえ)が、頭上(ずじょう)から聞(き)こえた。

 

 

 ティアラを被(かぶ)り、コーリー星(せい)の衣装(いしょう)に身(み)を包(つつ)んだ怨霊(おんりょう)女王(じょおう)……エルゼが武器(ぶき)を構(かま)え、感染者(ゾンビ)達(たち)の真上(まうえ)に浮(う)かんでいた。

 

「という事(こと)は…」

 

「ちょ、待(ま)ってよエルゼぇ〜!!」

 

 少(すこ)し離(はな)れた所(ところ)から天見(あまみ)さんの声(こえ)がすると、彼女(かのじょ)の他(ほか)にも妖怪(ようかい)HERO(ヒーロー)の仲間達(なかまたち)が駆(か)けつけて来(く)るのが見(み)えた。

 

「エルナ〜、お前(まえ)走(はし)るの遅(おそ)すぎだぜ。♪エルナ、ノロノロ♪参(まい)るなトボトボ♪」イエイ、カモフォ-♪

 

「ジンペイさん達(たち)は…鍛(きた)えてるから……早(はや)いんですよぉ……!私(わたし)……HERO(ヒーロー)……なりたて……!」*5

 

 文句(もんく)を言(い)い得意(とくい)のラップを披露(ひろう)する寺刃(じば)に、天見(あまみ)さんは息(いき)を切(き)らしながら悪態(あくたい)をつく。

 

「お前達(まえたち)、何故(なぜ)ここに……?」

 

「決(き)まってんだろ、会長(かいちょう)!困(こま)ってる仲間(なかま)が居(い)たら、例(たと)え火(ひ)の中(なか)水(みず)の中(なか)、土(つち)の中(なか)雲(くも)の中(なか)あの子(こ)のスカートの中(なか)でも颯爽(さっそう)と駆(か)けつける。それがHERO(ヒーロー)ってもんだぜ……!」

 

「火(ひ)の中(なか)水(みず)の中(なか)、キター!!」

 

「もう〜!ジンペイくんったらそんなこと言(い)っちゃって!」

 

「てゆーかアンタ、一言(ひとこと)余計(よけい)なのよーっ!!!」

 

「ひでぶッ!!!!」

 

 姫川(ひめかわ)さんの強烈(きょうれつ)な飛(と)び蹴(げ)りが寺刃(じば)に炸裂(さくれつ)する。

 

「マタロウくんも、アガってる場合(ばあい)じゃないでしょ!」

 

 小間(こま)に追加(ついか)でツッコまれた寺刃(じば)と玉(たま)田(だ)はあからさまにテンションが下(さ)がり、揃(そろ)って「えー」とジト目(め)を向(む)ける。

 

 小間(こま)はそんな2人(ふたり)を後目(しりめ)に「来星(くるほし)さんから要請(ようせい)があって、会長(かいちょう)の応援(おうえん)に来(き)たんです!」と私(わたし)に報告(ほうこく)し「そりゃ無(な)いぜコマく〜ん!せっかくカッコよく決(き)まったのに〜!!」と寺刃(じば)にボヤかれる。といったいつものやり取(と)りをしていたバカ4人組(バカルテット)*6*7をよそに、クマ子(こ)が私(わたし)やポリスの元(もと)へと駆(か)けつけた。

 

「ラント、大丈夫(だいじょうぶ)!?ポリスの皆(みな)さんも!!」

 

「あぁ、危(あぶ)ないところだったがエルゼのお陰(かげ)で助(たす)かった。心配(しんぱい)は無用(むよう)だクマ子(こ)」

 

「さぁ〜てと、コイツらぶっ倒(たお)せば良(い)いんだな?」

 

「ヤレヤレ、筋肉(きんにく)バカゴリラの考(かんが)えることはやっぱり野蛮(やばん)だね。」

 

「ん~だ~とォ~~!?このスケコマシ野郎(やろう)が!!!」

 

「元(もと)は人間(にんげん)なんだ、拘束(こうそく)に止(とど)めなきゃダメだってサルでも分(わ)かるだろう?」

 

「ちょっと〜!2人(ふたり)ともこんな時(とき)まで喧嘩(けんか)するの止(や)めてくださいよ〜!」

 

 拳(こぶし)を鳴(な)らしながら闘志(とうし)を燃(も)やす雷堂(らいどう)だったが九尾(きゅうび)に水(みず)を差(さ)され睨(にら)み合(あ)いになり、今回(こんかい)は玉田(たまだ)が止(と)める。いつも通(どお)りの一連(いちれん)の流(なが)れに安心感(あんしんかん)さえ湧(わ)いてくる。

 

「ま、こんなヤツら妖怪HERO(ぼくら)が全員(ぜんいん)揃(そろ)っちゃえば問題(もんだい)ないっしょ。ノーズ?」

 

「チアキの言(い)う通(とお)りだな。むしろ過剰(かじょう)戦力(せんりょく)なんじゃないか?」

 

「無事(ぶじ)なポリスの皆(みな)さんは離脱(りだつ)してシェルターに急(いそ)いで下(くだ)さい!ジェットブーツ(この子達)、お貸(か)ししますので♪」

 

「わ、分(わ)かりました!」

 

「彼(かれ)らを……頼(たの)みます…!!」

 

 姫川(ひめかわ)さんから貸(か)し出(だ)されたジェットブーツを履(は)き、シェルターへと飛(と)んで行(い)くポリス達(たち)を見送(みおく)った我々(われわれ)は感染者(ゾンビ)達(たち)に向(む)き直(なお)る。

 天見(あまみ)さんを除(のぞ)いた相棒(あいぼう)妖怪(ようかい)、相棒(あいぼう)怨霊(おんりょう)の居(い)る6人(ろくにん)が召喚(しょうかん)メダルを構(かま)えると、天見(あまみ)さんの元(もと)にエルゼが降(お)り立(た)った。

 

「ほらほら、エルナも召喚(しょうかん)メダル構(かま)えて☆」

 

「え?でもエルゼはもうここに居(い)るじゃん」

 

「いーから!こーゆーのは皆(みんな)でやった方(ほう)がアガるの!」*8

 

「わ、分(わ)かった…?」

 

 エルゼに催促(さいそく)され、天見(あまみ)さんも召喚(しょうかん)メダルを構(かま)えた。

 

 

「よっしゃ、皆(みんな)行(い)くぜ!!」

 

「「応(おう)ッッ!!!!」」

 

続(つづく)

*1:
何(なに)?ゲーム版(ばん)で人間相手(にんげんあいて)にフツーに使(つか)えるのはなんなんだ、と?……それも緊急(きんきゅう)だ。致(いた)し方(かた)あるまい。

*2:
臼見沢(うすみざわ)先生(せんせい)曰(いわ)く、『私(ワタクシ)達(たち)妖怪(ようかい)にとっての絶対的(ぜったいてき)!キング的(てき)!ボス的(てき)!社長的(しゃちょうてき)!店長的(てんちょうてき)!バイトリーダー的(てき)な存在(そんざい)なのでうぃっす!!』…らしい。

*3:
※学園長(がくえんちょう)は、前世(ぜんせ)では先代(せんだい)の閻魔大王(えんまだいおう)をしており、理事長(りじちょう)の祖父(そふ)でもあった。

*4:
※『閻魔(えんま)』は苗字(みょうじ)。本名(ほんみょう)は煌(きら)めく炎(ほのお)という意味(いみ)の『煌炎(こうえん)』。ちなみに学園長(がくえんちょう)の前世(ぜんせ)の名(な)は業炎(ごうえん)。

*5:
※なおゲーム版(ばん)のとある玉ねぎ(マタロウ)は加入(かにゅう)直後(ちょくご)、妖術(ようじゅつ)なし生身(なまみ)の状態(じょうたい)で前宙(ぜんちゅう)ができたそうな

*6:
しどいっ!?

*7:
コマ・フブキ:てゆーかボク/私(わたし)も!?

*8:
※マタロウくんも内心(ないしん)そうだそうだと言(い)っています。




 はい、えーなんていうか色々(いろいろ)ごめんなさい。*1
 前書(まえが)きの通(とお)り、次回(じかい)も回想(かいそう)です。
 本当(ほんとう)は今回(こんかい)で終(お)わらせたかったんだけど、シナリオ書(か)いてくうちに膨(ふく)らんで膨(ふく)らんで……文才(ぶんさい)が無(な)いのがバレちゃいますね!*2…ごめん
 とにかく、こんな駄文(だぶん)に今回(こんかい)も付(つ)き合(あ)って頂(いただ)き誠(まこと)にありがとうございます。動画(どうが)作品(さくひん)と並行(へいこう)してこれからも執筆(しっぴつ)していく所存(しょぞん)ですので、どうかこれからもお付(つ)き合(あ)い頂(いただ)けたら幸(さいわ)いです。

*1:
※今更(いまさら)。

*2:
※今更(いまさら)。その2

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。