〖ブルーロックRPG〗実況プレイ   作:マルメロ

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傀儡人形

 

 

「ど……どどどどうすんの!? あいつらめっちゃ強くなってるよぉ!?」

 

「ほう……達を倒すためにあそこまで高めてきたとしたら……その心意気、極オシャだ」

 

「いいね♪ そう来なくっちゃ!」

 

 

 先に2点を奪われ、TEAM・RED側も反応せざるを得ない。時光はその性格から慌てふためき、逆に蟻生や蜂楽は潔達の成長を喜んでいた。そして肝心の糸師凛は、特に表情を変えずにポジションに戻っている。

 

 

「どうする凛ちゃん? このままじゃヤバいっしょ。何か策でもある感じ?」

 

「黙れオカッパ頭。お前程度がわかった口を叩くな」

 

 

 凛の口調は至って冷静だ。点を取られ焦っているだとか、イラついているという感情は伝わってこない。まるでここからでも勝算があるような、そんな話し方なのだ。その様子を、潔は遠巻きから見ていた。

 

(見誤るな……勝った気になったらその瞬間刺される……! 俺の眼と脳は間違いなく凛に通用してる……! だけどそれはあくまで読みという一点においてだ。他の能力で俺は凛に何一つ勝ててない……!)

 

 

 リードした状況下でもあくまで冷静に分析する。超越視界(メタ・ビジョン)を用いた読みでは潔が凛を上回っているかもしれないが、それ以外のシュート、パス、ドリブル、ディフェンス、全てにおいて凛は潔より優秀だ。

 

 

 ホイッスルが鳴り、試合再開。蜂楽がボールを持って攻め上がってくる間も、潔は思考を止めていない。

 

 

「来いよパッツン前髪、抜いてみろ」

 

「およ、あんたが守備すんの王様(キング)?」

 

 

(馬狼が蜂楽に付いた……! 時光には姫宮が間に合うし、蟻生も凪がケアしてる。あとは俺が(コイツ)を止めるだけ……!)

 

 

 蜂楽からのパスを要求する動きをする凛と、それを警戒する潔。それを見た蜂楽はバチバチにやり合う2人ではなく、蟻生の方にパスを出した。

 

 

「チッ……!!」

 

 

 しかし蜂楽から蟻生までの距離は40m以上ある。ボールが着弾するまでに凪が十分追いつける距離だ。

 

 

「潰すよ、オシャモンスター」

 

 

(……! いや、あのパスは足元を狙ったモノじゃない……! 蜂楽の狙いは別の……!)

 

 

「なるほど……捉えるべきはにしか届きえない空中到達点」

 

「うっそ、もう飛ぶ?」

 

 

 凪でも届かない、蟻生にのみ許された空中のヘッドポイント。そこから彼は地面に叩きつけるようにヘディングを放った。

 

 

……乱舞」

 

「残念、届くよありりん!」

 

「……姫宮依桜!?」

 

 

 しかしその刹那、ブルーロックマンの横をすり抜け入ると思われたヘディングシュートを姫宮が弾き返した。そのアクションで戦場がまた色を変える。

 

 

「まだ……押し込むぅ!」

 

「やらせっかよ筋肉のバケモンが!」

 

「ああ!? ゴリラの人邪魔ですぅ!?」

 

 

 ルーズボールに反応した時光とそれをそれを追う馬狼。さすがの時光も馬狼のフィジカルで競られていてはゴールを枠内に入れるのは難しい。しかしそこに走り込んだ蜂楽が彼に次のアイデアを与える。

 

 

「ナイス蜂楽君!」

 

「まだ……俺がいる!」

 

 

 馬狼を引き連れながら時光は蜂楽にパスを出した。ゴール前、ワントラップでシュートを狙える位置だ。しかしそこには凪が走っていた。だがワントラップする時間を考慮してもギリギリ届くか届かない微妙な距離だ。

 

 

「ここだろ蜂楽!」

 

「……潔!?」

 

 

 だがパスと蜂楽の間に潔が入り込んできた。姫宮が蟻生のシュートを弾いた瞬間からフィールドの未来を読み、このラストパスにたどり着いたのだ。しかしその未来にもう1人、たどり着く者がいた。

 

 

「……ぬりぃぞ潔世一。この程度で俺を越えられるかよ」

 

(凛!? マジか、どっから来た!?)

 

 

 潔がボールをクリアしようとしたその時、潔の更に前に身体を入れてきたのは凛だった。潔より更に1歩先を読み……いや、恐らく見ていたビジョンは同じなのだろう。だがその優秀な能力で潔より1歩先にたどり着いたのだ。

 

 

(コイツ)どうやって……! まさか……(コイツ)超越視界(メタ・ビジョン)を!?)

 

 

「お前にできることが俺にできないとでも思ったのか?」

 

 

 凛のダイレクトシュートがゴールネットに突き刺さり、TEAM・REDが1点を返した。だがそれよりも、凛も超越視界(メタ・ビジョン)を使っているかもしれない。その事実の方が潔には重要だった。

 

 

「な、ナイスゴール凛君!」

 

「今のプレー、(オシャ)1つあげよう」

 

 

(凛……まだ本気を出してなかったのか? ……いや違う、凛はこの試合で俺の眼の使い方を見て学習したんだ……!)

 

 

「クソ……1点返された。やっぱすげぇな凛、思考回路の次元が違うのか」

 

「でも世一ならわかるでしょ? 凛の考えてるコト」

 

「ああ……多分今の俺と凛の思考回路は同レベル……だけどそれじゃ俺の能力(スペック)で凛に勝てない。なんでもいい、凛を上回る何かがないと」

 

 

 凪と依桜の眼から見ても、潔と凛の思考回路は別次元だ。2人だけがまるで上からフィールドを見下ろしているかのような、そんな動きをしている。

 

 

(ああもう、どいつもこいつも……ボクがやりたいコトをアッサリとさ)

 

 

 ポジションについた後、依桜はどっとため息を吐いた。潔も凛も、依桜のやりたいこと(メタ・ビジョン)を平然とやってくる。まるでお前には無理だと突きつけられている気分だ。

 

 

(わかってるよ……ボクに透子みたいな才能はない。少なくとも……同じ才能は)

 

 

 だがそんなことで諦めるようなら最初からとうに諦めている。約束を果たすためならどんな犠牲も払う覚悟だ。

 

 

「行くぞ姫宮」

 

「……うん」

 

 

 試合再開、潔から依桜にボールが渡される。まだ1点リードしているとはいえ、油断はできない状況だ。

 

 

(まずはこの試合……勝たなきゃ始まらない。世一と凛の眼が同レベルなら……ボクが世一の視界(ビジョン)を押し上げる欠片(ピース)になる!)

 

 

「……! こいつら、攻め方変えてきたぞ」

 

 

 先程までとは違う攻撃パターンに蟻生が反応した。潔を中心に、依桜がその周りを動き回ることで潔の超越視界(メタ・ビジョン)を最大限に生かす攻め方だ。潔の空間認識能力と依桜のスピード、どちらが欠けても成立しないまさに彼らにしかできない攻撃手段。

 

 

「やばいぃ!? 全然止まんないよぉ!!」

 

「息ピッタリじゃんお二人さん(バカップル)

 

 

 時光をかわし、フォローに入ろうとした凪も意に介さずゴールを目指す。

 

 

(思い出せ……透子と世一のプレーを重ねて、最適の選択を……!)

 

「うっわ、やばいねコイツら」

 

「ここでしょ世一」

 

「最高だ姫宮」

 

 

 蜂楽をも抜き去り、ゴール前に飛び出した。完璧なタイミングだ、ブルーロックマンと1対1になれる絶好のチャンス。そこに依桜からのラストパスが通った。潔のダイレクトシュートなら間違いなく点が入る好機だ。

 

 

「見え見えの愚策連携(コンビネーション)だな」

 

「……凛!?」

 

 

 糸師凛だ。潔へのパスは死角から入ってきた凛にカットされた。超越視界(メタ・ビジョン)によって確かに凛の位置は把握していはずなのに、それでも届かない。

 

 

「クソ……! カウンター警戒!!」

 

「……もう行ってる!」

 

 

 TEAM・REDゴール前には凛と潔、そして依桜。対して向かい側、TEAM・WHITEのゴール前には蟻生、時光、蜂楽が走っている。馬狼と凪がカバーに入るがそれでも人数差は覆らない。ゴール前、蟻生に凛からのパスが通る。

 

 

「……なるほど、さっきの蜂楽廻のパスとは違いの限界を試す挑戦的なパス」

 

「高すぎ……反則だろコイツ」

 

 

 凛の蟻生の限界到達点ギリギリに出されたパスを蟻生がヘッドで叩き落とした。凪でも届かない位置から落とされたボールに向かって時光と馬狼が駆け出した。

 

 

「どいてくださぁい!!」

 

「バカが、俺が先に届く!」

 

「ああゴリラの人!? ごめんなさぁい!!」

 

「くッ……! 筋肉強ぇ……つかもう一段階加速かよ……!」

 

 

 圧倒的なフィジカルで馬狼に競り勝ち、更に加速した時光がボールにくらいつく。邪魔する者はおらず、彼の放ったシュートはゴールネットに突き刺さった。

 

 

「や、やったぁ!! ナイスパス蟻生君!! ……あ、ごめん調子乗っちゃった!?」

 

「いや、オシャなシュートだったぞ時光」

 

 

 2ー2、同点だ。汗を拭いながら潔は状況を分析する。

 

 

(俺と姫宮の連携は間違いなくアイツらに刺さってた……だけど凛はそれすら読んでカウンターの餌にしたんだ……! クソ……! 超越視界(メタ・ビジョン)があれば凛にも食いつけると思ってた……! だけどこんな思考じゃダメだ……!)

 

 

「えっぐいなアイツ……あの攻撃初見で止めるかよ」

 

「ああ……それに蟻生と時光を使ったあのカウンター。あれは凛のパスから生まれたゴールだ。戦場(フィールド)の数手先まで予見して最適解かつギリギリのパスを出した……あれが凛のスペック……!」

 

「チッ! このままで終わるかよ……!」

 

「てかすごいね世一。ボクにはなんで凛にボールを奪われたかもわからなかったよ」

 

 

 今この場において凛に追いつけるのは潔だけだ。しかしその潔も空間認識以外の基本能力において凛に劣っている以上、よくて五分が関の山だ。

 

 

(……いや待てよ。凛は俺達の能力を全て理解した上でこっちの動きを読んでる。逆に言えば凛の思考の外側から不意をつければ攻略できるかも……だとしたら俺に使える手駒(ジョーカー)はアイツしかいない……!)

 

 

 試合再開と同時に攻め上がる。さっきと同じ、潔と依桜の連携を主軸にした攻め方だ。そこに凪のトラップを加え、ゴール目指しひた走る。

 

 

(他の奴らは抜けるけど……凛が厄介すぎるね。どうするの世一?)

 

 

 依桜はパスを回しながら潔と凛の動きを観察していた。自分には理解できない挙動、潔の眼には依桜など眼中になく、凛に勝つという一点に集中している。

 

 

「……!?」

 

 

 やはりゴール前、凛が立ちはだかる。潔と依桜と2対1の状況だが、一瞬の足止めで蜂楽のフォローが間に合うだろう。秒殺したいところだが、雑なプレーでは止められてしまう。

 

 

「……世一?」

 

 

 その時、ボールを持っている潔世一は足を止めた。ワンツーで凛をかわそうと動いていた依桜はそれを見てその場に立ちすくむ。潔の行動の意図はわからないが、まるで何かを待っているかのようだ。

 

 

「どうした? ビビって足でもすくんだか?」

 

 

 当然凛が悠長に待ってくれるはずもなく、身体を入れてボールを奪いに来る。体格では潔は凛に勝てない、接近戦に持ち込まれた時点で敗北は確定事項だ。

 

 

「来いよ王様(キング)。お前の好物(エサ)はここにあるぞ」

 

「!!?」

 

「貰ったぞ潔! 俺の(モン)だ!」

 

「ええ!? 味方から奪った!?」

 

 

 一瞬、横から忍び寄った馬狼が潔がキープするボールを横取りした。味方から奪う、そんなプレーなど想定していない者達は不意をつかれ驚愕する。それは凛とて例外ではない。

 

 

「チッ……! どんなサッカーだよ……」

 

(もしかして世一は待ってた……? 凛にも読めないバロりんの独裁行動(キングムーヴ)を……!?)

 

 

 味方から奪うなんて行動は凛の辞書には載っていない。それを見越したこそ潔は待っていたのだ、腹を空かせた王様(キング)が動く瞬間を。

 

 

(俺を喰うことだけに固執した馬狼の不合理的な行動は凛にも読めない俺だけの欠片(ピース)……! これだ! 凛にも読めない存在になれば勝てる!)

 

 

 馬狼の強力かつ正確なシュートがゴール左隅にねじ込まれた。これで3ー2、まだ油断できない状況ではあるが、1歩抜きん出たのも事実だ。

 

 

「ナイスバロりん!」

 

悪役王(キングオブヒール)!」

 

「だぁ!! 寄るな暑苦しい!!」

 

 

 馬狼に駆け寄る凪と依桜を彼は邪魔くさそうに引き剥がした。確かに今のゴールは凛の読みを崩したが、しかしこの流れも恐らく潔の想定通りなのだろう。それが馬狼には癪に触った。

 

 

「やられたね凛ちゃん、楽しくなってきた?」

 

「うるせぇな……俺だってムカつきゃ熱くなる」

 

 

 試合再開、蜂楽がドリブルで切り込んだ。

 

 

「んにゃ、お姫様。また俺とやる?」

 

「何回でも止めるよパッツン頭ちゃん」

 

 

 攻め上がる蜂楽に依桜がマークについた。フェイントで抜きにかかるが、やはり依桜は蜂楽のドリブルに喰らいついてくる。

 

 

(やっぱ速いね……狭い空間の中に限れば千切りんより上かも。それに潔や凛ちゃんみたいに常に首を振って周りの状況を補足してる?)

 

 

 フェイントで抜いても多少の遅れは簡単に追いついてくるし、パスを出そうにも反射的にパスコースを塞がれるのでそれもやりにくい。正直ドリブラーとしては相当厄介な相手だろう。

 

 

(でも頭で考えるタイプじゃないっしょお姫様は。一瞬でも置いてければ……)

 

「!!?」

 

「正直潔や凛ちゃん相手の方がやりにくいね♪」

 

 

 左に行くと見せかけて右……の更に逆をつく。依桜を一瞬置き去りにするが、そんな程度では追いついてくるだろう。故に抜いた瞬間凛にパスを出そうとする。多少コースは疎かになるが、依桜をかわせるならお釣りが来る。

 

 

「……!? 潔……!?」

 

 だがパスを出そうとした蜂楽の前に潔が現れた。さっきまでは凛のマークについていたはず。しかしいつの間に来たのかきっちり蜂楽の動きをケアしていたのだ。

 

 

(まさかお姫様の動きを囮にして……)

 

「今だ、喰え馬狼」

 

「ゴチ」

 

(マジか……お姫様も潔自身も、本命の勝ち筋(馬狼)を通すためのフェイク!?)

 

 

 潔に気を取られた蜂楽からボールを奪った馬狼。そのままゴールを狙い攻め上がる。

 

 

「行け馬狼! そいつ抜けばゴール!」

 

「どけネガ筋野郎」

 

「うぇ!? チョップフェイント!?」

 

 

 前回の試合で習得したチョップフェイントで時光をかわす。後は弾いたボールをシュートするだけだ。

 

 

「逃がすかよ」

 

(マジか(コイツ)! 馬狼のチョップフェイントを初見で読んで止めやがった!?)

 

 

 しかし馬狼が弾いたボールを凛が奪い去った。馬狼のチョップフェイントはこの試合で一度も使っていない。凛にとっては完全初見の筈だが、それでも彼は喰らいついてきた。

 

 

(クソ……! 生半可な初見殺しじゃダメだ……味方から奪うくらいのプレーじゃなきゃ凛の予見の範疇に終わる……!!)

 

 

「行かせないよ、No.1下まつ毛君」

 

「……ぬりぃ守備だな」

 

(……!? ボクの逆をつく動きからの……絶妙なハンドリング……!!)

 

「そんなチグハグなプレーじゃ俺の心は踊らねぇ」

 

「まだ……やらせっかよ」

 

 

 凛に抜かれた依桜。しかし背後から凪がスライディングを仕掛けていた。死角からの攻撃、いくら凛といえど一溜りもないと誰もが思った。

 

 

「……!? ボールがない!?」

 

「とろいぞダウナー白髪」

 

「マジか……いつの間に」

 

 

 しかし凛の足元に既にボールはなかった。前線に走っている蜂楽にいつの間にかパスを出していたのだ。

 

 

「なるほど全員操られてたね♪ 凛ちゃんに」

 

(これが凛の本気……!! 俺達はいつの間にか……(アイツ)傀儡人形(マリオネット)にされてた……!!)

 

 

「俺を出し抜けるわけないだろ。お前らごとき脇役人形(サブキャラ)が」

 

 

 蜂楽のシュートが決まり、3ー3。試合はまた振り出しに戻った。

 

 

(いや……勝ち方はわかった。後はどうやって凛の予想を超えるプレーを引き出すかだ)

 

 

 しかし前回の試合とは違い、凛の能力に潔は喰らいついている。後はどうやって彼を上回るか、それを考えなければならない。

 

 

「ハァ……ハァ……クソ…………!」

 

 

 息を乱しながら依桜は歯噛みする。自分の守備は蜂楽や凛に抜かれている。こんなんじゃダメだ。もっと潔を研究して自分も超越視界(メタ・ビジョン)を使えるようにならないと。そんな焦燥感が心を支配していた。

 

 

(でも……見れば見るほどできる気がしない……あれはボクにはない才能……どれだけ努力しても……意味が無い……ごめん透子……約束……果たせる気がしないんだ)

 

 

 完全に弱気になっている依桜。だがそこでふと気づいた。

 

 

(あれ? ……ボクっていつから……誰か(透子)を理由にサッカーしてたんだっけ?)

 

 

 今の自分は透子との約束を果たすため……言い換えば彼女を理由にサッカーをしていた。だけど昔は違ったはずだ。もっと自分の欲望の赴くまま、そんなサッカーをしていた気がする。

 

 

「姫宮行ったぞ!」

 

「……!!?」

 

 

 だが試合は再開しており、依桜に考える時間をくれない。相手は攻め方を変え、全員が消耗してきたこの状況で唯一動きを鈍らせていない時光を使った攻撃を組み立てている。

 

「あ……来たゴール前抜けるパス」

 

「行かせない!」

 

「あ、女の人! どいてぇ!」

 

「……うぐぅ!?」

 

 

 咄嗟に潔の声に反応し身体を入れて時光を止めようとする。しかし彼の驚異的なフィジカルで逆に弾き返され、派手に吹き飛び頭から強く地面に落ちてしまった。

 

 

「おい! 今のファウルじゃねぇのかよ!」

 

「いや、今のは時光も意図してやったわけじゃない」

 

「も……もらいますぅ!!」

 

 

 意図的なプレーでは無いと判断され、試合は続行される。しかし依桜が最後尾だったので時光を止める者はおらず、彼のシュートがゴールに突き刺さった。

 

 

「姫宮……! 頭から行ってたけど大丈夫か?」

 

「う……ん……だいじょうぶ……」

 

 

(やっば…………めっちゃフラフラする…………これダメなやつかも)

 

 

 心配する潔には何とか大丈夫と返事をするが、視界が定まらず目の前が暗くなってくるのを感じた。恐らく脳震盪か何かかもしれない。

 

 

(……でも……このままおわれ……ない)

 

 

 無理に身体を動かし、何とかプレーを続行する。足元がふらつくが、そんなこと言っていられない。

 

 

 しかしやはり当たりどころが悪かったのか、依桜の記憶はそこで一旦途絶えるのだった。

 

 

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