〖ブルーロックRPG〗実況プレイ   作:マルメロ

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ぼくのおもちゃばこ

 

 

 ──生まれた時からずっと、皆とは違う世界で生きてるみたいだった。生まれた場所は同じはずなのに、ボクだけが皆とは違う世界から来たみたいな……そんな感覚だった。

 

 

 ずっと……ずっとひとりぼっちだった。ボクは皆とは違う……普通じゃない、異端、気持ち悪い。ボクはボクでいたいだけなのに、耳の奥底で笑い声がこだましていた。そんなだからいつの間にかボクは殻の中に閉じこもったんだ。もう傷つきたくなかったから。

 

 

 だけど透子が……ボクの手を引っ張ってくれた。ボクが世界に絶望しそうな時に、いつも隣にいてくれたんだ。

 

 

 だからボクは……透子がいない世界で生きていける自信がないんだ。またひとりぼっちになるのが怖くて、また誰かに後ろ指を刺されるのが怖くて……透子がいないことを受け入れられなくて、透子の存在を何かで感じていたかった。

 

 

 ……ボクが透子のプレーをするのは透子の為なんかじゃない。透子のプレーを忘れさせないだとか、意志を受け継ぐだとか……綺麗事ばかり並べて。結局……ひとりぼっちになりたくない……自分のためなんだ。

 

 

 なのに 青い監獄(ブルーロック)に来てからずっと鎖に繋がれたように身体が重かった。

 透子のプレーを受け継ぐと決めた日から、ずっと自分のプレーを押し殺してディフェンスとしての力を上げるために努力してきた。それで何か思うことはなかったし、透子を忘れない為なら自分のプレーを押し殺しても構わなかった。

 

 

 だけどここに来てからは変だ。何か、心の中をモヤが漂っているかのような違和感。試合を重ねていく事にその感覚は強くなっていった。士道、潔、凪、馬狼。自分の殻を破って覚醒していく彼らを見ているとモヤは一層深くなり、全身を鎖で拘束されているような不自由感に襲われた。

 

 

(ボクはあの時誓った……透子のプレーを忘れさせないって。その誓いに嘘はない……けど)

 

 

 視界が多少晴れてきた。ゴール前、敵味方が密集している。依桜は今ほとんど無意識でプレーしていた。まだ頭がグラグラするし、思考もまとまらない。派手に頭を打ったのでまだ意識が朦朧としているのだ。

 

 

 潔世一が糸師凛の読みを超え、バックヒールショットで同点ゴールを決めた。この試合のラスボス的存在、糸師凛を喰ったのだ。

 

 

(……もう認めるしかないじゃん……ボクは……羨ましかったんだ。あんな風にサッカーできるのが……)

 

 

 透子の死後、依桜のサッカー人生は彼女に捧げてきた。その選択に後悔などあるわけないし、透子のプレーが忘れられるなど耐えられるはずもない。しかし青い監獄(ブルーロック)に来て、自分の欲望のままにプレーする士道龍聖、敗北を受け入れ自分の殻を破った馬狼照英、そしてエゴを貫きどんどん覚醒していく潔世一。彼らと出会い抑えられていた感情が目覚め始めていた。

 

 

(……自分でも何考えてるかわかんないよ……何がボクの望み……? ボクはどうしたいの……?)

 

 

 頭が痛い、吐き気がする、自分で自分がわからなくなってくる。考えが纏まらず、グルグルと言葉だけが頭にガンガン響いてくる感じだ。

 

 

 戦場(フィールド)はクライマックスを迎えていた。蜂楽廻の覚醒、かいぶつを探すサッカーという呪いを解くための強行突破。蟻生が並走しているが蜂楽は彼に目をくれず、無我夢中でゴールを目指した。

 

 

「そいつ独走する気だ! 挟むぞクサオ!」

 

「OK王様(キング)

 

 

 そして凛が蜂楽からのパスで一気にゴールを狙らえる位置にポジショニングし、潔はそれを警戒する動きを見せた。それぞれが己の最高のパフォーマンスを見せる最終局面だ。

 

 

(ボクがサッカーに出会えたのは透子のおかげ……本当の自分に向き合えたのも、透子が隣にいてくれたから)

 

 

「まだ1人で突き進む気か……」

 

「無茶だよ蜂楽君!!」

 

 

 蜂楽は舞い続ける。馬狼をかわし、凪に肩を掴まれる強引な守備をされても進み続けた。自分自身の信じる物を貫くために。

 

 

(だけど……今この感情から目を逸らしたら、ボクはもうきっとダメだから)

 

 

「ダメだ……マジ止まんね」

 

 

 ゴール前、凪を抜いた蜂楽がシュートを放つ。誰にも止められない、彼自身のエゴの結晶だ。

 

 

(だからごめんね……透子の見つけてくれたこの才能(エゴ)だけは……やっぱり捨てられないから)

 

 

 いつの間にか依桜は、自陣ゴール前に目掛けて走っていた。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「信じてたぜ蜂楽……お前は1人でここに来ると」

 

「……潔」

 

 

 蜂楽が1人でゴール前に辿り着くとこの場でたった1人だけ信じていた潔。確かに糸師凛を超えたプレーで蜂楽のシュートを阻止したのだ。その時、蜂楽のシュートが潔の足をかすめる角度が僅か1cmでも違っていたら結末はまた変わっていただろう。

 

 

 ただボールはランダムに、無慈悲に、残酷に……糸師凛(勝者)の元へと舞い降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──はずだった。

 

 

「……!?」

 

 

 ボールが凛の足元に落ちる僅か数秒前、彼の前を1つの影が通り過ぎた。その影は凛に落ちるはずだったボールをカットし、ゴールへと駆け出す。

 

 

「姫宮!?」

 

「アイツ……!」

 

 

 依桜だ。どうやったかはわからないが、しかし依桜のプレーはこの瞬間間違いなく潔も凛も凌駕した。とにかく、千載一遇の反撃好機(カウンターチャンス)だ。

 

 

「ああ!? カウンターダメですぅぅぅ!!」

 

「こっちだ姫宮!」

 

 

 ゴールまで走る依桜の前に時光が立ち塞がった。そして依桜をフォローするために潔も並走している。ワンツーで楽にかわせる場面、だが依桜は潔には目もくれず時光に突っ込んでいく。

 

 

(……!? 姫宮(アイツ)……周りを見てない……!?)

 

 

 常に首を振って周りの情報を見ていた依桜だが、今は目の前の時光にしか視線を向けていない、明らかに様子が違うようだった。

 

 

 依桜と時光がマッチアップする。彼のフィジカルとクイックネスは生半可なドリブルではかわせない。依桜が僅かに左にボールを押すと、時光もそっちの方に身体の重心を向ける。その刹那、逆方向にカットインしトップスピードで彼を抜き去った。

 

 

「うぇ!? でもまだ届くぅ!!」

 

 

 しかし時光もタダでは終わらない。何とかボールに触れようと足を伸ばしてきた。それに対し依桜はボール端をつま先で踏みつけることでボールを浮き上がらせ、無理やり伸びてきた足を回避した。

 

 

「何それぇ!?」

 

「あっはは♪」

 

 

 狂気的な笑みを浮かべ、依桜は時光を抜き去った。そのドリブルは強力で蜂楽とはまた違った、まるで相手を挑発するかのようなものだ。

 

 

(明らかにプレースタイルが変わった……! 今戦場(フィールド)の台風の目は間違いなく姫宮(アイツ)……! 適応しろ、凛よりも早く……!)

 

 

 ドリブルで突っ込む依桜を分析し潔は自身のゴールのため思考を巡らせる。空間認識とサッカーIQをフルに活用した思考法だ。だがそれすら間に合わない速度で依桜はゴールへと突き進んでいく。

 

 

(ボクがサッカーを始めるきっかけをくれたのは透子……だけど、少なくともあの時までは……ボクがサッカーを続けてきたのは透子の為でも、誰の為でもなかった……!)

 

 

カウンター阻止」

 

「邪魔だよロンゲのアシナガザル」

 

「……!? ここで俺っすか」

 

 

 依桜を止めるべく蟻生が立ちはだかる。その姿を見た瞬間、依桜は右サイドを走る凪にパスを出した。

 

 

「いやつっよ……! 俺じゃなきゃ取れないだろ」

 

「出しなシロー」

 

「……OK、ドSお姫様(プリンセス)

 

 

 依桜の出したパスは凪ですら気を抜けば弾かれてしまう程の強烈パス。ほとんどシュートと言って差し支えないそのパスを、凪は足のバネを使い何とかトラップし、そして蟻生の裏を抜けた依桜に返す。

 

 

(……!? の裏の裏に抜け出す極オシャステップ……!?)

 

 

 依桜の裏抜けを警戒した蟻生の動き出し、それの逆をついた依桜の動きを更に囮にした裏抜けステップだ。しかし蟻生はそれにもギリギリで喰らいつき、凪からのパスに長い足で触れようとしてくる。

 だがその動きもまた依桜には見えていた。

 

 

「……!?」

 

 

 なんと依桜はまるでオーバーヘッドキックのような体勢で空中でボールをトラップすると、そのまま着地したのだ。ボールに届かず行き場を失った蟻生はそのまま地面を転がることになった。

 

 

「ぐっ……!?」

 

「あっはは♪ 回ったぁ♡」

 

 

 着地した依桜はまたしても笑みを浮かべ、ゴールへと駆ける。もはや誰も彼のプレーについていけていない。さっきまで蜂楽のプレーがフィールドの起爆剤となっていたように、今度は依桜のプレーがカオスを産んでいた。

 

 

(この感覚……ボクのプレーで周りが全部ひっくり返るこの快感……! そうだ、これなんだ……ボクがサッカーをやってた理由は……! 完全に思い出したよ……!)

 

 

 

──戦場(ここ)はボクの姫専用玩具箱(おもちゃばこ)で、敵味方(こいつら全員)ボクを楽しませるためのおもちゃ!!! 

 

 

 

 

「ちょ……誰か止めてぇぇ!?」

 

「普通にやってちゃ止まらないぞそいつ!」

 

 

 依桜はあっという間にゴール前まで辿り着いた。後はシュートを撃つだけ、そんな時に間一髪で蜂楽が間に合った。

 

 

「まだ……終わらせない!」

 

「来たねミツバチちゃん!」

 

 

 シュートコースに身体を入れ、例え顔面ブロックしてでも点を決めさせない覚悟だ。せっかく1人でも戦えるようになったのに、こんなところで終わりたくないと心を奮い立たせた。

 

 

「……ッッ!? 切り返しはやっ……!?」

 

 

 圧倒的初速から生み出される高速の切り返し。その速度で一瞬だけだが蜂楽を置き去りにする、そしてそれだけの隙が生まれればシュートを撃つには十分だ。

 

 

(ごめんね透子……これで最後にするから。今だけボクのワガママを……どうか許して)

 

 

 全力で足を振りかぶり、依桜の渾身のシュートがゴールの左側へと放たれた。ブルーロックマンは反応できていない、これで決着の2文字が全員の頭に浮かんだその時だ。

 

 

「あと1秒遅かったなピンク頭」

 

(……凛!? お前はどこまで……)

 

 

 シュートコースへと入ってきた凛。それにいち早く気づき、驚いたのは潔だった。潔ですら依桜のプレーを理解することは出来なかった。しかし凛だけは依桜の変化にギリギリのところで適応し、反応したのだ。

 

 

「残念下まつ毛君♪ あと1秒遅かったね♡」

 

「……!?」

 

(……は!? シュートが……空中で加速した!?)

 

 

 凛の足がシュートに触れようとしたその瞬間、シュートが空中で更に速度を増した。その普通ではありえない挙動にさすが凛も表情を変える。そして凛のブロックを抜けたシュートは、そのままブルーロックマンをもぶち抜きゴールネットを激しく揺らした。

 

 

『試合終了!! SCORE5ー4 TEAM・WHITEの勝利!!』

 

 

 笛の音と共に試合終了を告げるアナウンスが響いた。依桜達の勝利、潔と凪にとってはTOP3への雪辱を果たした瞬間だった。

 

 

「姫宮! やべぇよ、どうやったんだお前!」

 

「マジそれな! 途中で加速するシュートとか見たことないし!」

 

「チッ……!」

 

 

 潔と凪が依桜に駆け寄り勝利を喜び、馬狼は最後の点を取られたことに不満があるのか少し離れた場所で舌打ちをしていた。

 

 

「別に……ちょっと昔を思い出してやってみただけだよ」

 

 

 依桜はさっきまでの狂気的な笑みを引っ込め、少し哀しそうに天井を見つめていた。頭を抱え、思考を整理する。

 

 

「はぁ……世一達のせいだからね」

 

「え?」

 

 

 依桜が足を抱えて地面に座って、頭をかきながらため息をつくように言った。意味がわからずに立ち尽くす潔だが、意識の外から聞こえてきた言葉を聞きそちらに耳を傾けた。

 

 

「ど……どどどどどうしよぉ!! 負けちゃったよぉぉ!?」

 

……撃沈か」

 

「……」

 

 

 敗北し、ある程度予想通りの反応を見せる時光と蟻生。それに対して蜂楽と凛は俯いていて表情が見えない。

 

 

「潔、お前は誰を取りたい?」

 

「ハッ……んなもん一択だろ」

 

「……ああ」

 

 

 馬狼の言葉に頷き、潔は蜂楽の元へと歩いていった。地面に座り込んでいる蜂楽を見下ろし、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「お前のドリブルとそれを止めた俺のプレー。あの一瞬だけなら、間違いなく俺達は凛を超えてた。お前を信じた俺の……俺達の勝ちだ」

 

「……ありがとう潔。ひとりで戦ってた俺の世界に……お前は来てくれたんだな。お前無しで戦えるようになった俺は……お前がいるともっと楽しい。だから……()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ああ、先に行ってるぞ」

 

 

 私情は挟まない、蜂楽を取り戻すためにここまで来た。しかし今自分が1番欲しているのは彼ではないだろう。それはこの場の全員、満場一致の意見のはずだ。アイツが欲しいと。

 

 

「来いよ凛……俺達はお前の才能が欲しい」

 

 

 

 

 

青い監獄(ブルーロック)”二次選考「奪敵決戦(ライバルリーバトル)

 

 

姫宮依桜・潔世一・凪誠志郎・馬狼照英 AND糸師凛 以上5名突破!!! 

 

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