〖ブルーロックRPG〗実況プレイ   作:マルメロ

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切りどころ見失っていつもの3倍くらいの長さになっちまった……まぁ一時間スペシャル的なやつということで。


CHAIN・OF・FLOW

 

 

 ブルーロックの先制という思わぬ展開を迎えた一戦。観客の盛り上がりも高まってきた中、試合が再開されようとしていた。

 

 

「いいかお前ら、余計な感情は捨てろ。ゴールのためだけに動け。そうすりゃ俺が魔法をかけてやる」

 

「あら、俺達シンデレラ待遇?」

 

「いいじゃん、ボクにピッタリ♪」

 

 

 先取点を取られ、逆に燃えるのは士道と依桜だ。日本代表という大舞台で自分の存在を証明するため、彼らは暴れる。

 

 

『さぁ試合再開! 果たして日本代表、追いつくことが出来るのか!』

 

 

「待てよクソ兄貴、久々の再会で挨拶もなしかよ」

 

「……」

 

「これはアンタの試合じゃない……俺がお前を超える試合だ」

 

 

 糸師冴に立ち塞がるのは弟、凛。因縁の兄弟対決が始まった。巧みなフェイントや美しいターンで抜きにかかる冴に凛は何とかくらいつく。

 

 

「凛! そのまま止めとけ! 2人で挟むぞ!」

 

「冴くん! こっちパス出せるよ!」

 

「邪魔すんな潔! 消えろ外野共! 兄弟喧嘩の途中だ!」

 

 

 冴と凛をフォローしようと集まる選手達。しかし凛がそれを一喝した、これはあくまで兄弟の問題だと。

 

 

「ありゃ、こんな大舞台で兄弟喧嘩?」

 

「代表戦私物化かよ」

 

 

 一進一退の攻防、しかし有利なのはやはり冴。ギリギリでついていけていた凛だが、ついにエラシコからの股抜きで抜かれてしまった。

 

 

「そうやって俺の弟でいるうちは、お前は俺を超えられない」

 

「……!?」

 

「チッ……! 勝てやボケナス下まつげ」

 

 

 試合の結果よりも兄弟喧嘩を優先した結果敗北したコトに文句を言う烏。しかし次の瞬間、糸師冴にスライディングを仕掛ける者が彼の目に入った。

 

 

「読めてんだよ天才!」

 

「潔!?」

 

「……いい眼持ってんじゃねぇか」

 

(マジか、この不意打ちかわすかよ!?)

 

 

 冴が凛に勝つことを読んで仕掛けたスライディング。しかし冴はそれすら見切り、ボールと共にジャンプした。そして空中でボールをキープしたまま前線のストライカー二人を視界に入れる。

 

 

(来る……どっちだ、士道くんか姫宮くんか……!)

 

「チャンスきたきた♡」

 

(……! 狙いは姫宮くん……! だったら僕は……!)

 

 

 冴からフォワードへのパスを警戒する二子。冴の狙いが依桜だと読み、シュートを封じるため動く。

 

 

「ファウルスレスレ……でもギリ届きます……!」

 

「ニコニー……!?」

 

 

 依桜に出されたパスをカットする。身体がぶつかり、ファウルかどうか危ういところであるが依桜を止めることに成功した。

 

 

「もらい♪ 決めるぜデッドヒート!」

 

(士道くん……!? ダメだ、片方止めてももう片方がフリーになる……!)

 

 

 こぼれ球を士道がかっさらっていく。二子のメタ・ビジョンで士道か依桜を止めても相手は二人だ、いくら二子の眼と脳が優れていてもこれではどうしようもない。

 

 

「まだだ、が止める……!」

 

「……! リーチ長いって便利じゃのう」

 

 

 ゴール前に抜け出た士道だが、もう一人のCB蟻生十兵衛がシュートコースに入った。ギリギリだが、彼の長い足のおかげでシュートブロックが間に合うだろう。

 

 

「ぶっ飛べドラゴンフライ!」

 

「……!? の足を避けて落ちるドライブシュート……!」

 

 

 しかし咄嗟に士道が放ったシュートは蟻生のブロックを抜け、なおかつゴールの枠を捕えるドライブシュート。蟻生の身体でシュートへの反応が遅れた我牙丸は、飛ぶ方向はあっているものの間に合わない。

 

 

「いや、ナイス足止めだオシャ!」

 

「千切!?」

 

 

 蟻生のブロックは無駄ではなかった。それによって生まれた僅かな時間で千切が間に合ったのだ。千切の足で弾かれたボールは左サイドへと転がっていく。

 

 

こぼれ球(ルーズボール)! 糸師冴行ったぞ!」

 

 

 我牙丸がこぼれ球を拾った冴を警戒するように指示を出す。千切、蟻生、二子はまだペナルティエリア中央にいる。冴に当たれるのは黒名だけだ。

 

 

「くッ……!」

 

「まだ……ぬるい」

 

 

 こぼれ球を確保した冴にプレスする黒名。しかしさすがに世界で活躍する選手、当然体幹も強く黒名は中々ボールを奪えない。そうしている間にペナルティエリア内でも次の動きがあった。

 

 

「センタリング警戒!」

 

が封じる……!」

 

 

 冴からのセンタリングに対応するブルーロック。それぞれが敵のマークにつき、蟻生は身長の高さを生かしてパスを封じるべく冴が出したセンタリング目掛けて飛んだ。

 

 

「……!?」

 

(蟻生くんの頭上をギリギリ越える一点集中(ピンポイント)クロス……!? いや……それでもまだ、読みの範囲内……!)

 

 

 冴のセンタリングは飛んだ蟻生のちょうど届かない絶妙なもの。しかしコースは完璧でも出し手を読めればカットできる。二子は依桜に出されたパスだと判断し、彼を自由にさせないようにマークにつく。

 

 

「やらせませんよお姫様」

 

「邪魔……!」

 

 

 パスが来る、飛んだ依桜に合わせて二子もジャンプした。依桜に身体能力では敵わないが、少しでも妨害出来れば我牙丸が止めれる可能性が高くなる。が、ボールは依桜ではなく更に奥まで飛んでいく。

 

 

(……! 姫宮くんへのパスじゃない!? ギリ届かない様に計算された軌道……!? 異次元のパス精度……! ハメられた……!)

 

 

 パスは士道の元へ。千切が何とか止めようとするが、それを振り切り士道は頭からボールに突っ込んだ。

 

 

「クソッッ……!」

 

龍聖頭弾(ドラゴンヘッド)!!」

 

「いや無理……」

 

 

 士道のダイビングヘディングシュート。何とか喰らいつこうとする我牙丸だが間に合わず、ボールはゴール右下へと収まってしまった。

 

 

『うあっとぉ!? U-20、13番の士道龍聖! 衝撃の同点ゴール!!』

 

『いやぁ無名の選手だから不安だったけど、どうやら杞憂だったみたいだねぇ!』

 

 

「あ〜♡コレコレ、最高♪」

 

「いちいちキメェ……まだ同点だっつーの」

 

 

 同点ゴールが決まったことで盛り上がる観客と実況席。点を決めた士道も少し不健全な喜び方をしている。

 

 

「大丈夫か? 惜しかったな、二子」

 

「千切くん……いえ、彼には全て視えてたんです。蟻生くんの高さ、姫宮くんの動き、そして僕の思考も士道くんの超反応も……あれが天才、糸師冴……」

 

「……すげーなお前、潔みたいじゃん」

 

 

 膝をついていた二子に手を貸す千切。彼の考えていたことを聞くが、自分には理解できないレベルの頭脳戦を繰り広げていたらしい、ということしか千切にはわからなかった。

 

 

「あーもう! またゴール先越されちゃったし……!」

 

 

 そして自分を囮にされ、士道に先に点を取られてしまった依桜も当然悔しがる。ストライカーとしてこの場にいる以上、点を取らなければ意味が無い。

 

 

(今のままじゃダメだ……どうにかしないと……!)

 

 

 現時点での得点力は士道の方が上だと認めざるを得ないのかもしれない。敗北を受け入れなければ上に行くことなどできない、それを依桜はブルーロックで学んでいる。

 

 

「一個だけある……ボクがこの試合、ヒーローになる方法……」

 

 

 依桜の中で思い描いている、更に上のステージに進むための方法。しかしそれはどうやら依桜にとっては躊躇う何からしい。少なくとも今は覚悟ができていないようだ。

 

 

「そうだ……決めなきゃ、ボクはもう逃げたくない……!」

 

 

 決めたはずだ、この試合で全ての決着をつけると。覚悟を改めて決め、依桜は自身のポジションへと歩みを進めた。

 

 

「せっかく先制したのに……すぐに追いつかれちゃいましたね。どうしますか、絵心さん?」

 

「うん、まぁこうなるでしょ。元よりこっちはストライカーしかいない急造チームなんだから、多少守備の練習したからって無失点とはいかないよ」

 

「でも……それじゃ点を取られ放題なんじゃ……!」

 

「まぁ見てな、ウチに点を取られて黙ってられるエゴイストなんていないよ」

 

 

 ブルーロック側のベンチでは監督の絵心、そして職員のアンリがこの状況を話している。同点に追いつかれ焦るアンリとは真逆で、絵心は対して気にしていないようだ。元々何点取られようがそれを上回るくらい点を取るチームを作るつもりだった。1失点くらいどうというとこはないのだろう。

 

 

(さっきのゴール、士道もすごいけどやっぱその前のパスだよな。あんな超細い位置を通すパス、今まで見たこともねぇ……!)

 

「おい潔、何ビビってんだ。ぬりぃぞ」

 

「……! ……バーカ、あと2点どうやって取るか考えてただけだっつーの」

 

 

 リスタート直前、さっきのゴールの内訳を思考していた潔の背中を凛が叩いた。不器用ではあるが、彼なりに発破をかけたつもりだろうがどうやらその必要はなかったようだ。

 

 

「行くぞ潔……」

 

「おう……!」

 

 

 ブルーロックのキックオフで試合が再開された、凛から潔、そして凪へ。先取点を取った時のような中央でトライアングルを作る攻撃だ。

 

 

「……点取られたら逆に燃えるってか?」

 

「……!? 天才さんいらっしゃい」

 

 

 凪の前に立ちはだかる冴。凪も確実に人類の枠を超えた天才ではあるが、さすがに冴相手にドリブル突破するのはリスクが高い。故にパスコースを探すが冴は確実にコースを潰してくる。

 

 

「やっば……守りも一流なのね……」

 

(……! やっぱり……一瞬でフィールドの状況を把握してパスコースを潰してる……! 糸師冴、あいつも超越視界(メタ・ビジョン)を使えるのか……つか超越視界(メタ・ビジョン)使い多すぎだろ、バーゲンセールかよ!)

 

 

 糸師冴の動きを見れば分かる、彼も潔や二子と同じメタ・ビジョンを使えるのだろう。特別な能力だと思っていたが、案外使用者は多いのかもしれない。

 

 

「俺使えや白髪……!」

 

「……! ナイス殺し屋」

 

 

 凪がボールを奪われかけたその時、横から烏が走ってきた。二対一、ワンツーなら糸師冴をかわせる。

 

 

「シャッハァ! 悪魔参上!」

 

「士道!?」

 

 

 凪から烏へのパスは飛び込んできた士道にカットされた。思いがけぬ伏兵にフィールドは一瞬硬直を見せるが、それに一人対応する者がいた。

 

 

「鈍いんだよD級悪魔!」

 

「……!? クソお嬢……!」

 

 

 直後、駆け抜けてきた千切が士道のボールを弾いた。転がったボールは蟻生の元へ、そして前線へのロングパスとなった。

 

 

「ナイス千切、マジ神……!」

 

「行け潔!」

 

 

 敵陣に攻め込んでいるのは潔、凛、乙夜、蜂楽、黒名の5人。凪はまだセンターサークル付近だ。今いる面子でゴールまでこぎつけたい。

 

 

「行かせっかよ頭でっかちが!」

 

「クッ……! 寄せ早ぇ……!」

 

 

 しかしU-20DF陣も黙ってはいない。潔が頭脳派であり、フィジカル面で秀でている訳では無いコトは全員が織り込み済みだ。仁王の強烈タックルに潔はバランスを崩される。

 

 

「潔、こっちこっち!」

 

「……! ナイス惑星!」

 

 

 体勢を崩されながらも黒名へパスを託した。右サイドから仕掛ける黒名、蛇来がボールを奪いに来るが、マッチアップを避け中央、凛にパスを出す。

 

 

「撃ってみろよ天才弟」

 

「……!」

 

 

 どフリーでボールを受けた凛。そのままシュートと思われたがそこに愛空が立ち塞がった。シュートコースを警戒し、凛の利き足である右からのシュートは特に厳重な警備だ。

 

 

(俺は……お前達を侮っていた。ストライカー集団とは言っても、どうせ指導者に従うだけの典型的なクソ日本人だと……! でも違った、お前らは自らの力で運命を勝ち取ることを望む飢えた獣だ……!)

 

「チッ……!」

 

 

 愛空はブルーロックが世界に羽ばたくための最後の砦だ。世界一のストライカーを目指すならば踏み潰さなければならない壁。そうなることを愛空自身が望んでいる。

 

 

(逆足のシュートはくれてやるよ! だが利き足じゃ撃たせねぇ!)

 

「ぬりぃんだよ髭オッサン……」

 

(コイツ、無理やり右足で……外撃回転(アウトサイド・スピン)!? この体勢で狙ってくるかよ……!)

 

 

 左足でしか撃てないと思われた、しかし凛は右足で無理やり外回転をかけゴールを狙ってきた。美しい曲線を描くシュートはキーパーの反応を許さず、ゴール左隅へと収まった。

 

 

『ぜ、前半30分……! 糸師凛のゴールで青い監獄(ブルーロック)、再び突き放しました……!』

 

『いやぁさすが糸師冴の弟なだけあるねぇ……! 痺れるねぇ……!』

 

「凛! お前天才かよ!」

 

「……フン」

 

「うべ!?」

 

 

 凛のスーパーゴールを賞賛し、飛びついた潔。しかし凛はそれを無情にもかわし、潔は顎から地面に叩きつけられた。

 

 

「凛……お前なぁ……!」

 

「これで五分(イーブン)だ潔。お前にこの試合の主役の座は譲らねぇよ」

 

 

 凛が自らの敵となり得ると認めている者はそういない。冴以外で言えば士道と依桜、あとは潔だけだろう。No.1からの宣言に潔も更に身体の熱を上げていく。

 

 

「クソ……マジでやっべぇ……」

 

「こんな強いの? 青い監獄(ブルーロック)……」

 

 

 点を取られたU-20側、特に愛空以外ブルーロックに対応出来ていないDF陣は悔しさと焦りで気が気でないようだ。

 

 

「ハハ……! 最高じゃねぇか、ヒリつくぜ……!」

 

「愛空……?」

 

 

 状況は決していいとは言えない、しかし愛空は一人笑っていた。その真意を理解出来ずに他のDF陣は怪訝な表情を浮かべるだけだ。

 

 

「あ〜あ、やられちゃった。これで1番2番4番はゴール決めたわけだけど、どうすんの3番手ちゃん?」

 

「……うっさいな。肩書きの上下にこだわってる時点でセンスないんじゃなかったの?」

 

 

 依桜を煽る士道と、それに鬱陶しそうに答える依桜。しかし点を決めている以上この試合では士道の方が上なのは間違いない。さすがの依桜にも焦りが見えてきた。

 

 

「見てなよヤリチン悪魔、次のゴールはボクが決める!」

 

 

 U-20側のキックオフで試合再開。ボールを持った依桜がブルーロック陣内に切り込んでいく。

 

 

「待てやピンク頭。こっから先は通行止めや」

 

「また邪魔しに来たの害鳥ちゃん……!」

 

「お前一人で俺ら全員ぶち抜く技量ないやろ? 大人しく天才に頼っときなや」

 

 

 しかし烏が依桜の前に立ち塞がった。彼が言うように依桜、そして士道にもブルーロックDF陣を単独で突破する技量はない。これは単にプレイスタイルの問題なのだが、この場でそれは不利に働く。

 

 

「姫宮くん! こっち、出せるよ!」

 

「くッ……! ああもう!」

 

 

 右サイド、狐里がフォローに入っている。本当は一人でこの害鳥を倒したいところだが単純な一対一なら不利は明確。ここはパスを出すしか選択肢がない。

 

 

「オーライ!」

 

「出させねぇぞおいなり坊主……!」

 

「うわ、本当に速いね君」

 

 

 センタリングを狙う狐里。そこに千切が走り込むが紙一重、パスが先だった。ペナルティエリア内、士道がパスに合わせて飛び込んでくる。

 

 

「キタキタ2点めぇ♪」

 

「いや、がいる!」

 

「二度目はやらせませんよ悪魔さん」

 

 

 だが士道の動きを警戒し、二子と蟻生が詰めていた。伸びてくる蟻生の足をかわした士道だが、続く二子のファウルスレスレのタックルは避けきれずボールを失ってしまった。転がっていくボールの軌道の先には依桜が走り込んでいる。

 

 

「もらいチャンスボール!」

 

「甘ぇよ鈍感(プリンセス)……!」

 

 

 こぼれ球をシュートしようとする依桜。しかしそこに潔が突っ込んできた。恐らく全て読み切ってここにたどり着いたのだろう。見事な読みだが、伸びてくる潔の足を見て依桜はその場でボールと共に飛び上がった。

 

 

「な……!?」

 

「ボクのコト、読み切れるとか思わないでよね……!」

 

 

 空中でそのままボレーシュート。不安定な体勢だがシュートはしっかりとゴール右隅を捉えている。

 

 

(来た……間に合え俺の左手……! このシュートは途中で加速する……!)

 

 

 すぐさま反応し横っ飛びで対応する我牙丸。しかし依桜のシュートは途中で加速する超変化球、だが我牙丸の超反応はそれにすら対応できていた。

 

 

「だろ? お姫様(プリンセス)

 

「うぇ!?」

 

 

 加速してゴールに迫るシュートに間一髪触れることに成功した。軌道が微妙に変わった球はゴールバーに直撃してサイドへと流れていく。

 

「我牙丸! ナイス野生児!」

 

「まだだ! セカンド拾え!」

 

 

 我牙丸の指示で反応したのは千切。俊足でこぼれ球を拾うと右サイド、黒名にパスを出した。

 

 

「反撃反撃……!」

 

待った、行かせないよ三つ編みくん。11番との連携は使えないでしょ? 

 

「くッ……!」

 

 

 黒名の行く手を阻む颯。潔が自陣ゴール前にいるので惑星ラインを使えないのが痛い。

 

 

「潔ばっかいい顔はさせへんで。こっち使えや黒名」

 

「……烏!」

 

……!? しまった、その連携は想定外……! 

 

「行くで三つ編みチビ助」

 

 

 ストライカーだらけの人選だからこそ可能な芸当。空いた潔の枠に烏が代役として入り、擬似的に惑星ムーヴを再現した。蜂楽を加えた三人でトライアングルを形成しカウンターアタックを仕掛ける。

 

 

「にゃっは♪ やるじゃん烏ちゃん!」

 

「当たり前や、舐めんなボケが……!」

 

「烏! 今だ、こっちこっち!」

 

「言われんでもわかっとるわ……!」

 

 

 右サイド、トライアングルで切り崩していく。閃堂と颯を置き去りにし、ペナルティエリア内まで侵入する。

 

 

「やらせんぞ、殺し屋よ」

 

「馬鹿か、こっちは囮や」

 

「くっ……! やはり人数差は覆せん……!」

 

 

 蛇来を数の力でかわし、いよいよペナルティエリア内だ。蜂楽を囮に黒名にボールを預け、烏は内側でパスを待つ。しかしそこに日本代表キャプテンが割り込んでくる。

 

 

「ナイス時間稼ぎ、蛇来……!」

 

「な……!? 髭面ボケキャプテン……!?」

 

 

 どこから来たのか、メタ・ビジョンで烏の動きを読み妨害する愛空。それを見た黒名は烏へのパスを諦め、それより奥にいる凛に標準を切りかえた。

 

 

「使えるじゃねぇか潔の従僕B……」

 

「従僕じゃない、惑星だ」

 

 

 凛へのクロスが綺麗に通った。仁王がパスを防ごうとするが絶妙なハンドリングで凛は彼の体幹を受け付けない。

 

 

「クソ……!」

 

「……ぬりぃなオッサン」

 

「ならお前は氷以下の温度だぞ愚図弟が……」

 

「……!?」

 

 

 凛へのパス、それは冴によって紙一重で弾かれてしまった。冴は一連の動き、トライアングルを愛空が防ぎ中央の凛までパスが来ることを見越してポジショニングしていた、恐ろしいメタ・ビジョンの精度だ。

 

 

「まだ、俺がいるの忘れんなよ」

 

「……! ナイス凪、無理すんな、一回こっち使え!」

 

 

 こぼれ球にいち早く反応した凪。ゴールまでの距離は30mと少しだ。狙えない距離ではないが、しかし安全策を取るなら裏に走る潔に預けるのが安牌だろう。それをわかっている潔からの声が凪の耳に届くが、彼はそれをあえて無視した。

 

 

(パス? いや、ここは狙うだろ……! ストライカーなら……!)

 

「撃たせない……!」

 

 

 凪のシュートを防ぐためコースに飛び込んできた音留。だがそこまでは凪の想像の範囲内、浮かせるシュートフェイク、神トラップで音留を置き去りにしようとする。

 

 

「フェイク……! そのトラップは全員警戒済み……!」

 

「まだ、もういっちょ……!」

 

「二連……!?」

 

 

 凪のフェイクを読み、突っ込みながらも踏ん張り身体を残していた音留。しかし凪は更にもう一度のフェイクを挟むことでそれすら回避した。だが時間を稼がれたのが災いして今度は愛空がギリギリで突っ込んでくる。

 

 

「まだ俺の読みの範疇(テリトリー)だぜ天才ちゃん?」

 

(……自分で創るサッカーを始めてはっきりわかったコト……俺はサッカーに関してあまりに無知だった……だけどそれは俺の弱点(アナ)にはなり得ない……!)

 

「は!? もう一回……! 三連かよ……!」

 

(お前らサッカーオタクが生み出したフィールドの状況、俺のトラップはそれを全部ぶち壊せる……! そっから創るのはサッカーを知っているからこそ予測できない、無知(おれ)だけのゴールだ!)

 

 

 まさかの三連。今まで一度も披露したことの無い超絶神業で愛空をも振り切り、凪はシュートモーションに入る。

 

 

「やるじゃねぇか、ダウナー白髪。いいエゴだ」

 

(糸師冴……!? 凪の超絶トラップまで読み切った……!?)

 

「バーカ、今の俺を止めれるなんて思うなよ」

 

「……!?」

 

(……四連!?)

 

 

 凪の全身全霊、愛空すら翻弄したプレーすら糸師冴は読んでいた。それにさすがの潔も驚きを隠せないが、それでも凪の夢中は更に加速する。ベンチの絵心もそれを感じ取ったようだ。

 

 

「それがお前のFLOWか……天才」

 

(レオ……待つなんてしないよ。お前はいつか戻ってくるって信じてるから。だからその時まで、俺は青い監獄(ここ)で俺の中の熱を信じて戦う……! もう一度二人で夢を追うために……!)

 

「神かよ……!」

 

「創造の前に破壊あーり」

 

 

五連式回天空砲蹴撃(リボルバー・ボレー)!!! 

 

 

 ラスト一撃、五発目の弾丸が糸師冴をも貫きキーパーを一歩も動かさずゴールネットを揺らした。神業という言葉すら生ぬるいハイパープレーに会場は静寂に包まれた。

 

 

『…………はっ!? な、なんだ今のはァァ……!? 凪誠志郎のスーパーファンタスティックゴールで、青い監獄(ブルーロック)!! 日本代表を突き放しました!!』

 

『ハハ……エグすぎでしょ。ヤッバ、夢でも見てんのかな?』

 

「凪! お前……! 天才かよ!」

 

「やべぇってお前!」

 

「にょ……!」

 

 

 凪に飛びつく勢いで抱きつく千切と潔。勢い余って地面に凪が押しつぶされてしまった。しかしそれだけ興奮する、素晴らしいゴールだったことは間違いない。

 

 

「ハッ……! やってくれるやないか天才が……」

 

「うっし」

 

「極オシャ! なゴールだ」

 

 

 2点差、確かな点差は自分のゴールでなくともブルーロックイレブンに熱を与える。そして逆に決められた側は理不尽とも言える神業にただただ圧倒されていた。

 

 

「ヤバ……ヤバ……」

 

「糸師冴でも止められねぇのかよ」

 

「へッ……! いい爆発じゃねぇか白髪ちゃん♪」

 

 

 そんな中、士道だけは顔を不気味な程の笑顔に変えていた。凪のプレーで何か掴んだようにも見える。少なくともブルーロックはまだ油断できる状況では無さそうだ。

 

 

「おい糸師冴、お前とやるサッカーはすこぶる楽しいよ。なんか脳ミソが電波ビンビン丸な気分♪」

 

「あ? 意味わかんねぇこと言ってねぇでゴールに集中しろ悪魔。見入ってる場合じゃねぇだろ」

 

「わかってらァ……! 起こしてやるぜ、今世紀最大の大爆発(ビッグバン)!」

 

 

 U-20代表ボールで試合再開。それと同時に士道が冴にボールを預けゴール前に突っ込んでいく。いきなりの暴走にブルーロック側の対応は一瞬遅れてしまった。

 

 

「……! いきなり暴走!?」

 

「二子、オシャ! ゴール前警戒だ!」

 

「わかってます……!」

 

 

 士道は圧倒的にゴール前にたどり着く。それに続いてU-20攻撃陣も一気にブルーロック陣営に流れ込んできた。

 

 

「二子、が姫宮につく! お前は士道を……!」

 

「ええ、害虫駆除です」

 

 

 U-20代表TOP2にはそれぞれ蟻生と二子がマークにつく。他にも閃堂や狐里がサイドから攻めているが、やはり危険なのはこの二人だ。

 

 

「オシャ邪魔……!」

 

(よし……! 姫宮は蟻生くんが止めてる。あとは僕が……この悪魔を退治するだけ……!)

 

「出せ天才」

 

 

 冴から前線へのロングパスが出された。ゴール前に観客の視線が集中する。

 

 

(見てろよ、まだ俺を知らない世界中のクズ共……! 俺にとってサッカーは生命活動! ゴールは受精! シュートは種で、ゴールネットは卵だ……!)

 

(……! 狙いは姫宮くん……? いや違う、そんな単純なはずがない。考えろ僕が糸師冴なら……!)

 

「ドンピシャ……!」

 

「ここ……ですよね!」

 

「……!?」

 

 

 士道の論理ゼロの大暴走と糸師冴のパス。その2つが重なる最高地点に二子は士道と同時にたどり着いた。身体をぶつけ士道を妨害し、シュート妨害に全力を注ぐ。

 

 

「やらせません……!」

 

「邪魔すんな目隠れチビ! これは俺だけの(ボール)だ!」

 

「……!? 後ろに蹴った!? 何を……!?」

 

 

 士道の動きを封じたと思われた。しかし士道は身体を捻りパスを後ろに蹴り出した。想定外の行動に二子も一瞬思考を止めたがすぐに次の対応を考えた。

 

 

(ボールに向かって走った……! まさかペナルティエリア外から狙うつもり……いや、彼の能力でもそれはさすがに無謀……!)

 

 

「ヤベェ……! 今の俺ビンビン! 俺の細胞が炸裂(スパーク)しろと肉踊るゥ!」

 

「ペナルティエリア外から……オーバーヘッドキック……!?」

 

(さぁ、この試合を見てる全ての人間(クズ)共に告ぐ。俺のゴールを、士道()の細胞を……!)

 

 

孕め!!! 

 

 

 士道のペナルティエリア外から放つ超絶ロングバックヘッドシュート。誰もが予想していなかった一撃は野生児我牙丸すら届かずゴールネットに突き刺さった。U-20代表が3-2まで盛り返した瞬間だ。

 

 

「士道くんすげぇ……!」

 

「空中殺法じゃん……! って!? どこ行くの!?」

 

「決めたぞ糸師冴! 俺はお前とずっとサッカーをする! お前といれば味わったことの無いビンビンが手に入る♪」

 

「……キメェ。まだ負けてんだ、調子に乗るのは早ぇぞ早漏悪魔。せめてハットトリック取ってからにしろ」

 

「へへ、じゃあもう一点取ったら連絡先教えろよん♪」

 

 

 スーパーゴールに興奮し、駆け寄るU-20の面々をスルーし冴に駆け寄る士道。過度なスキンシップを嫌がられ投げられたが、士道は気にせず冴と連絡先の交換を申し出た。

 

 

「ハンパ無さすぎだろ……あのゴール」

 

「止められない……ですね。ゴールがゴールを生み出すFLOWの連鎖……。凪くんのスーパーゴールは悪魔を目覚めさせてしまったみたいです」

 

「……二子。ああ、糸師冴は挑戦となる目標(パス)を士道に与え続けた……その結果がこれだ」

 

 

 まだ一点勝っているとはいえ、流れは確実に相手に向いている。前半残り5分、同点に追いつかれるのだけは防ぎたいところだ。

 

 

「どうする凛? 士道は確実にさっきまでとは別レベル……。あと5分、守りに徹するか?」

 

「……ひよってんじゃねぇぞ潔。もう一点取って二点差で前半終了……これ一択だろうが」

 

「……! ああ、俺もちょうど同じこと思ってたところだ!」

 

 

 本来の作戦であれば前半残り時間僅かの場合、ブルーロック側が勝っていたら凪を前線に残し守りきる手筈。しかし今、士道が覚醒したこの状況では守りに徹するのは逆にリスクとなる。それに何よりストライカーとしてのプライドが許さないのだ。

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

「おい、いい加減覚悟は決まったか?」

 

「え……何が?」

 

 

 自分はまだ何も出来ていない。疲労と焦りから余裕のなくなっている依桜に冴が声をかけた。言っている意味がわからず聞き返した依桜に冴は淡々と言った。

 

 

「アイツらは大バカだ。自分のゴール以外何もいらない、そのためなら全てを捨て去れる大バカ共だ」

 

「……捨てる?」

 

「何かを成し遂げるってコトはそれ以外の全てを捨てるって意味だ。その覚悟がない奴に何も成し遂げるコトはできない」

 

 

 冴の言葉を依桜は黙って聞いていた。自分のやりたいサッカーと透子のサッカー、二つの選択肢の間で揺れている今の依桜にはクリーンヒットする内容だ。

 

 

「目の前の選択肢から逃げ続けてたらその才能は腐って崩れ堕ちるぞ。いい加減腹をくくれ」

 

「……意味わかんないし」

 

 

 ポジションに戻る冴の後ろ姿を見て呟く。だが依桜はわかっていた。冴の言うことが間違っていないことを。試合が再開されても、依桜はそのことを考えていた。

 

 

(……多分、さえちの言ってることはあってる。世一もりんりんも、シローもバロりんも士道も。自分のゴールのためなら大事なものを捨てられるイカれたエゴイスト達……)

 

「ヤバ……もう一回士道に来る……!」

 

「ヒャッハァ! ハットトリック♪」

 

「同じ手は通用しねぇよクソ悪魔!」

 

「てめ……!?」

 

 

 冴から士道へのパス、それを潔がカットした。ブルーロックの反撃、U-20はカウンター警戒で自陣に戻っていく。依桜も夢中で走った。

 

 

(1秒前の自分、兄弟、相棒、王座、品性……みんな大事なものを捨てて……それでも上を目指すから強い……! とっくに気づいてたはずなのに、捨てるのが怖くてボクは逃げてたんだ……!)

 

 

 気づくと依桜は真っ白な空間にいた。多分依桜の精神世界のようなものだろう。目の前には何も無い場所にうずくまる透子の姿。あの日、最後に会った時と全く同じ彼女だ。

 

 

『透子……ボク、ボクね。頑張ったんだよ。だけど……無理だった。ボクじゃ透子の代わりにはなれないみたい』

 

『うん……ありがとう依桜。でももういい……私のせいで依桜にまで辛い想いはして欲しくない。もう……十分だから』

 

 

 透子の眼には涙が浮かんでいた。きっと目の前の透子は依桜の妄想、実際にはいないものだが、それでも依桜は透子を見つめ続けた。

 

 

 ──そう、透子を捨てれば……ボクは世界一のストライカーになれる。

 

 

 透子の身体が薄く、透けてきた。ありがとう、大切な人。君には全てをもらった。そんな想いを最後に告げて……依桜は透子との別れを決意した。

 

 

『なんて……言うと思った?』

 

『え……?』

 

 

 その刹那、依桜は透子の腕を掴み笑った。呆気に取られた透子は思わず固まったが、すぐに依桜の手を解こうとする。

 

 

『はなして! もうこれ以上、私のために依桜を不自由にしたくない!』

 

『バーカ! 誰が透子を捨てるかっての! 誰に何を言われようともこの手は離さないから!』

 

『でも……でも……!』

 

 

 それでもなお透子の腕を掴み続ける依桜。暴れる透子を強引に引っ張り、顔を近づける。

 

 

『ねぇ透子、ボクに喰われて! ボクの中で見ててよ、ボクが……世界一になるところ!』

 

 

 視界が開けた。U-20のゴール前、今まさにフリーで抜け出した潔が黒名からのラストパスを受け取るところだった。その場所に依桜は無我夢中で突っ込んでいく。

 

 

「そこ、ブッチ抜け潔」

 

「ドンピ黒名」

 

「やらせない……っての!」

 

「……姫宮!?」

 

 

 潔がダイレクトシュートしようとしたボールを依桜が飛び蹴りでクリアした。全くの想定外の事態、潔は目を見開いた。

 

 

(コイツ……! 愛空ですら読めてなかったのに、どっから来た!?)

 

 

 潔の視線はクリアされたボールではなく依桜を追っていた。今の一瞬でもわかる、明らかにさっきまでの依桜とは何かが違う。

 

 

(ボクはずっと逃げてきた……! 他の奴らと違うコトを周りのせいにして、自分を認めないアイツらが悪いんだって……変える努力もしないで、ボクを受け入れてくれた透子に依存して……その透子がいなくなったらまた……今度は透子がいない現実から逃げた……!)

 

「セカンド……!」

 

「OK、もう一回行くよ」

 

「ナイス凪!」

 

 

 こぼれ球に反応した凪。しかしトラップする前に狐里と音留が詰めてきた。

 

 

「撃たせない……!」

 

(シュートフェイク……からの瞬間吸収)

 

「な……!?」

 

叩弾球上(タップリフト)──跳躍回転(ジャンピングターン)!!! 

 

 

 凪の超絶トラップが再び戦場で火を噴く。先程の五連式に勝るとも劣らない神業、これに反応できるのは敵味方含め誰もいなかった。

 

 

「2点目、いただきます」

 

「残念シロー、ご馳走横取り!」

 

「……!? マジか、お姫さん。これ防ぐ……!?」

 

 

 美しいトラップでシュートチャンスを創った凪。誰も反応出来ないと思われたが、唯一依桜だけは喰らいついてきた。シュートを撃つ直前にボールをクリアされ、再びルーズボールとなった。

 

 

「マジか、あれ通じねーの?」

 

「覚醒中かい非凡姫が……!」

 

 

 依桜の変化を乙夜や烏も感じ取っていた。しかしまだブルーロックの攻撃は終わらない。こぼれ球を蜂楽が拾った。

 

 

青い監獄(ブルーロック)でボクは……自分の中の熱を抑えられなくなった。だけど、透子を捨てることも怖くて……できなくて……結局また目の前の選択肢から逃げた……! 何が逃げてないだ……! 逃げまくりだよボクの人生……!)

 

「行っくよ覚醒(プリンセス)。お手合わせよろ♪」

 

 

 蜂楽の行く手を依桜が阻む。蜂楽の奇想天外ドリブル、フェイントを混じえたボール捌きに依桜は対応している。

 

 

「甘いってのハニーちゃん」

 

「ヤバ……クソ熱いじゃんお姫様……!」

 

 

 うかうかしていたらボールを奪われる。そう判断した蜂楽はシザース鬼フェイクからの浮かせるフェイントで抜き去りにかかる。

 

 

(でもボクはもう逃げない。ボクが捨てなきゃいけなかったのは透子じゃない……! 目の前の選択肢から逃げ続けてきた今までの姫宮依桜(ボク)だ……!)

 

「うっそ……これ止められる?」

 

 

 依桜の頭上を越えると思われた蜂楽のフェイクリフト。しかし依桜は身体を捻らせ、空中を鮮やかに舞いボールを奪取した。

 

 

(どうなってる? 今までの姫宮より一段……いや数段階動きのキレが上がってる……!?)

 

 

 潔の分析では依桜の能力はさっきまでより何段階もレベルアップしていた。しかし何がきっかけなのかがわからない。とにかく今は依桜にこれ以上好きにさせるわけはいかない。

 

 

(ボクは透子を喰ってでも前に進みたい! 透子がくれたこの才能と透子のサッカーを合体させて、ボクが世界最強のサッカー選手になれればそれでいい……!)

 

「チッ……! お前ら戻れや! カウンター来るぞ!」

 

 烏の号令で一斉に戻るブルーロックイレブン。だがU-20は待ってくれない。依桜を中心に一気にブルーロック陣営になだれ込む。

 

 

(ボクには透子の眼の使い方はできるけど、それを活かせる空間認識も脳ミソもない。だったらいっそのこと、頭なんて使うな……! 眼で見たもの全部……! フィールドで起こってること全部に反応できるように……! もっと視ろ……! もっと感じろ……!)

 

 

「行かせるかいボケ(プリンセス)!」

 

「来たぴよぴよオモチャ! お前いらな〜い♪」

 

「……!? 即パス!? 時間稼ぎに付き合う気はないっちゅうことかい!?」

 

 

 攻め上がる依桜を止めようと烏が駆けつけるが、勝負なんてしてやらないと言わんばかりに即座に左サイドに蹴り出した。その軌道の先には閃堂がいる。

 

 

「読めてんだよそのパスは……!」

 

 

 しかしそのパスは潔が読んでいた。ギリギリだが、足を伸ばせば届く位置まで詰めている。だが潔の足がボールに触れる直前、パスは空中で加速した。

 

 

「ボーン♡」

 

「……!? あの加速するシュートを……パスに使いやがった!?」

 

 

 潔を振り切ったパスは閃堂に向かっていく。しかしその威力は当然ながらシュート並に強烈、トラップするのはかなり高難易度だ。

 

 

「弾くぞ黒名! こぼれ球(ルーズボール)拾え!」

 

「御意御意」

 

「ふ……ざけんな! これ以上、舐められてたまるか!」

 

「……!?」

 

 

 予想通りパスをトラップしきれず弾いてしまった閃堂。しかし黒名に奪われる前に必死でボールに喰らいつき、何とか依桜にボールを戻しワンツーの形を作り出した。

 

 

「やるじゃんグラドルちゃん!」

 

「うっせ! グラドルじゃねーよ!」

 

 

 ボールに喰らいついた反動で転倒してしまった閃堂から目を離し、ゴールをみすえる。後40〜50mくらいか、さすがに狙うには遠い位置だ。

 

 

「油断してんじゃねぇよ!」

 

「視えてるよ片足の兵隊人形♪」

 

「くっ……! 見切られた!?」

 

 

 その時、死角から千切が全速力でスライディングタックルを仕掛けてきた。ブルーロック最速、かなりの速度だが依桜はそれでもボールを浮き上がらせ反応した。

 

 

(やっば何これ! なんか全部スローモーションで見えるんだけど!)

 

 

 今の依桜は普通じゃない。動きも段違いだし、それに何より反応速度が異次元だ。本人も自覚している、目に映る物全てがゆっくり動いているように見えていると。

 

 

! オシャまします!」

 

 

 しかしすぐさま今度は蟻生が来る。それに対し依桜はヒールリフトでボールを浮き上がらせた。そして自身は蟻生の横を抜け前に走る。

 

 

「……!?」

 

「ホラ、こっち出しな髭ヅラクマちゃん!」

 

「あいあい、仰せのままにお姫様」

 

 

 浮かせたボールはいつの間にかここまで来ていた愛空の元へ。頭でボールを落とし蟻生を抜くパスを出した彼はそのまま蟻生と接触し転倒した。依桜の一連のプレーを見て潔は思考を巡らせる。

 

 

(今までの姫宮のプレーとは違う……! 利用できる奴は利用するし、ついてこれない奴は容赦なく切り捨てる超女王的(クイーン二ズム)サッカー! これが姫宮(アイツ)のFLOW!?)

 

 

「ホラ、ボクに献上させてあげる! つまんないの出したら足もぐから♪」

 

「フン……なら好きに動いてみろ女王様(バカクイーン)

 

 

 愛空からのパスをすぐに右サイド、冴の元へと流した。そして自らはペナルティエリア内へと突進していく。

 

 

「ゴール前! 姫宮自由にさせんな!」

 

「もう遅い」

 

 

 依桜がゴール前にたどり着いた瞬間、冴がまるで予定調和のようにボールを蹴り出した。右サイド、距離にして35mはあるが低弾道のボールは確実に依桜を狙って

 

 ──はいなかった。

 

 

(……!? 姫宮へのパスじゃない!? これは……シュート!? エグい軌道……いやでも距離あるし、我牙丸も準備できてる!)

 

「いいねさえち♪ 合格♡」

 

(なんでシュートコースに……? まさか、糸師冴のシュートを直接狙うつもりか!?)

 

 

 冴の放ったロングシュート、依桜はそれが通るであろうコース目掛けてダッシュしている。誰も予想できるはずがない、シュートをさらにシュートするつもりなのだ。

 

 

「まだです……! 読んでますよその動き!」

 

「……二子!?」

 

 

 しかしただ一人、この連携を読んでいた二子が依桜につく。シュートコースに入った依桜にタックルを仕掛け無理やりにでも止めにかかる。

 

 

(まだギリギリペナルティエリア外! イエローをもらってもいい、防げればそれで……!)

 

「いいとこ来たねニコニー! このまま背中で遊ばせて♪」

 

(は!? 僕の背中に手を乗せて回転……!? ありえない……!?)

 

 

 二子のタックルで身体を崩された依桜。だが彼は身を翻して二子の背中に手を置き、そこを軸にして宙を舞った。おおよそ人間業ではないその動きは誰も想定できていない。そのまま冴の強烈シュートをオーバーヘッドで更にシュートした。

 

 

「かいぶつ……」

 

 

 二子は依桜の背中に幻覚を見た。片足のない兵隊の人形、胸に穴が空いた熊のぬいぐるみ、片目のくり抜かれた着せ替え人形に上下のパーツが歪に違うロボット。恐ろしいおもちゃ達を従える女王。二子の眼には今の依桜はそう見えている。血の気が引く感覚を二子は初めて味わった。

 

 

「調子乗んなクソ売女。てめぇは結局曲芸しか能がねぇだろ……!」

 

 

 依桜が放った超アクロバティックオーバーヘッドシュート。しかしそのコースには凛が割り込んでいる。依桜のスーパープレーは想定内。結局はゴールを狙ってくると予想してポジショニングしていたのだ。

 

 

「これ潰されりゃゴミ以下だろお前は」

 

「残念りんりん。また2秒遅かったね♪」

 

「……!?」

 

 

 シュートに届くと思われた凛の足、しかしそれは届かなかった。なんと依桜はあの体勢からプリンセス・ストライクを放っていたのだ。加速したシュートは凛を置き去りゴール左隅を突き刺そうとする。

 

 

(加速するのはわかってた、俺なら届く……!)

 

 

 最後の砦、我牙丸吟。このシュートにも超人的な反応で対応出来ていた。腕を伸ばせばギリギリ届くであろう横っ飛び。しかし依桜の放ったシュートはもう一回変化を残していた。

 

 

「最後のサプライズ! ビックリ箱開封(オープン)♪」

 

(は……!? また加速……二段階かよ!?)

 

「女王様って呼んで♡」

 

 

女王の全壊一撃・自我解放(クイーンストライク・オーバーロード)!!! 

 

 

 

 なんとシュートはもう一度加速したのだ。二段目の加速で我牙丸を振り切り、シュートはゴールネットに突き刺さった。

 

 

 ──世界がボクを認めないなら……ボクが世界を変えてやる! ホラ見たでしょ? その足りない脳ミソに焼き付けろ、全世界の玩具共! ボクが姫宮依桜、今にこの世界を依桜(ボク)一色に染め上げてあげる♪♪ 

 

 

 その日……改めてスタートしたのだ。いずれ世界一のサッカー選手として名を馳せる、姫宮依桜の物語が。

 

新英雄大戦 依桜君に選んで欲しい国は?

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