〖ブルーロックRPG〗実況プレイ   作:マルメロ

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バタフライ

 

 

 ──10日前。

 

 

「すご……本物のラヴィーニョ!」

 

 

 スペインを選んだ面々、主にブルーロックからは馬狼や我牙丸、雷市。元Uー20代表からは音留や蛇来はFCバルチャのUー20メンバー、そしてマスターストライカーであるラヴィーニョと顔を合わせていた。

 

 

「……あ? なんだこれ、イヤホンじゃねぇか」

 

「YOYOYO! 楽に行こうぜ青い監獄(ブルーロック)ボーイズ♪」

 

「……! すっげ、日本語で聞こえるぞ」

 

 

 御影コーポレーション製のイヤホンに驚くブルーロックス。いきなり海外選手と共に戦うことになった彼らにとってはありがたい代物だろう。

 

 

「てことはアンタが俺らにサッカー教えてくれるってことかよ?」

 

「あーあー、確かに俺はお前らの指導者だが……サッカーなんて教えてやんねぇ!」

 

 

 雷市の質問にラヴィーニョは変顔で答えた。思わぬ返答に面食らう者、怒る者と反応が別れるがラヴィーニョは気にしない。

 

 

「ここは世界一のストライカーを作る場所なんだろ? だが世界一は俺だ、わざわざヒントなんかやるか!」

 

「じゃあアンタ何しに来たんだよ!」

 

 

 雷市の鋭いツッコミが刺さる。彼だけでなく、全員が同じことを思っただろう。実際ラヴィーニョの言動は責任放棄に他ならない。

 

 

「……くだらねぇ。俺は元から教えを乞うつもりなんざねぇよ」

 

「おー、さすが王様(キング)。かっちょいー」

 

 

 一言を残して出ていってしまった馬狼。我牙丸がそれに茶化しているのか純粋にかっこいいと思っているのか微妙な棒読みで反応する。

 

 

 そして一時間後、馬狼はトレーニングルームでシュート練習に励んでいた。あんな適当な男に構っている暇はない、姫宮や潔に勝つために一分一秒も無駄にできないのだ。

 

 

「中々いいシュート撃つじゃねぇかベジータ頭」

 

「ベジ……てめぇ喧嘩でも売りに来たのか?」

 

 

 不意に声をかけられた馬狼、振り向くと部屋の入口にラヴィーニョが腕を組みもたれかけていた。

 

 

「HAHA!! まぁ半分は当たってるかもな!」

 

 

 高笑いしそう言うと、ラヴィーニョは一瞬で馬狼からボールを奪ってしまった。指で来いよと挑発し、馬狼とのタイマン勝負を望む。

 

 

「上等だゴラ!」

 

「来いよ餓鬼王様(ガキング)!」

 

 

 馬狼の突進をいとも簡単にかわすラヴィーニョ。FWではあるものの馬狼のサッカー能力は全国トップクラス、しかしラヴィーニョはそれをまるで赤子のように捻ってしまった。

 

 

「オラオラ、どうした! 威勢がいいのは口だけか!?」

 

「クソが……!」

 

 

 伸びてくる馬狼の足をまるでダンスを踊っているかのように軽々とかわす。軽くあしらわれている馬狼は徐々に苛立ちを募らせていき、プレーが攻撃的になってきた。

 

 

「足元がお留守だぜ王様よ!」

 

「……!?」

 

 

 ラヴィーニョの美しすぎるステップにボールを奪いに行った馬狼の方が逆にバランスを崩され転倒してしまった。その後も何度も挑戦するが、ボールに触れることすらできない。

 

 

「マジかよ……馬狼が赤ん坊扱いだぞ」

 

「ヤベーなラヴィーニョ」

 

 

 その様子をこっそりと部屋の外から他の面々が覗いていた。遊ばれている馬狼を見てさすがの雷市や我牙丸も息を飲んだ。

 

 

「わかったか? 世の中上には上がいるってもんだ。お前みたいなのをこの国じゃ井の中の蛙って言うんだろ?」

 

「……ああ!? 結局マウント取って気持ちよくなりたいだけかよテメェ!」

 

「当然! そうやってマウント取り続けて人は世界一へと上り詰めていくもんだ!」

 

 

 這いつくばる馬狼、そしてこっそり覗いていた雷市達に順番に視線を向けラヴィーニョは話す。それはまるで子供のように無邪気で、しかしどこか引き込まれる不思議な口調だった。

 

 

「……! 俺達が見てたの気づいてやがったのかよ」

 

「まぁな。お前らも経験してきたろ、世界一を目指すなら何度も壁にぶち当たる」

 

「……」

 

「いいか、どんなに高い壁にぶち当たったとしてもこれだけは忘れるな。お前だけの世界一のイメージを創り続けろ。すげぇ奴のモノマネでもいい、そこからミックスしてお前だけの自己独創性(オリジナリティ)生み出すんだ」

 

「チッ……! 俺はその演説をするために利用されたって訳かよ」

 

「へ、悪ぃな。だが俺から言えるのはこれだけだ、あとはお前達がどうしたいか……どうなりたいか、それを思い描け。最新トレーニングがサポートしてくれる」

 

 

 ラヴィーニョはあくまでサッカーの技術を教える気は無い。だが彼の言葉はエゴイスト達にも深く刺さったはずだ。これから10日間、バスタード・ミュンヘンとの初戦まで彼らは過酷なトレーニングに自らの身を置くこととなる。

 

 

 ──そして10日後。

 

 

「……HAHA! なんだよ! 思ってたより100倍楽しいゲームじゃねぇか、本当は出るつもり無かったんだけどな、気が変わった!」

 

「……!?」

 

「マジか……! ここでラヴィーニョ投入かよ!」

 

 

 依桜とカイザーによって2点を取られたこの状況、3点先取のネオ・エゴイストリーグでは最早あとがないスペインに救世主が現れた。世界でもトップクラスのストライカー、ラヴィーニョの投入だ。

 

 

「……大人気ねぇなラヴィ……バランス崩れたら指導になんねぇだろ阿呆が」

 

「うぉ……! こっちもノア参戦!」

 

 

 そしてラヴィーニョに対抗するべくバスタード・ミュンヘンもノエル・ノアを投入してきた。スターチェンジシステムの時間はたった3分、しかしこの二人にかかれば戦況をひっくり返すには十分な時間だ。

 

 

「姫宮依桜……俺はお前の理論が聞きたい」

 

「……?」

 

 

 CBのメンサーと交代で入ったノアはフィールドに入るなり依桜に話しかけてきた。その口調はいつもと変わらず、どこか機械的でかつ合理的だ。

 

 

「話は絵心から聞いている。だが俺はメンバー選出に選手の事情は考慮しない、勝てる数値を持つ奴を選ぶだけだ。だからお前自身が拒否しなければ試合に使い続ける」

 

「……」

 

「聞かせろ。命を賭けてでも、お前は世界一を目指すのか?」

 

 

 ノアからの問いかけに依桜は溜息を吐いた。絵心からも似たようなことを聞かれていたから、そしてそれに対する答えなど決まっている。一々言わなくてもそれくらいわかって欲しいものだ。

 

 

「そんなの決まってんじゃん。てか世界一になれないなら生きてる意味ないし、ボクの心配するくらいなら自分の身を案じてた方がいいよ」

 

「……そうか」

 

 

 答えを聞くとノアは満足したのかどうなのか、自身のポジションへと歩いていく。そしてCBの位置からバスタード・ミュンヘンの選手へと声をかける。

 

 

「いいかお前ら、俺はDFとしてあのバカを止める。わかってると思うが今このチームはカイザーと姫宮依桜という全く別の哲学がぶつかり合っている状態だ。どちらか一方に付くのか、それとも第三勢力としてチームを乗っ取るか。自分で選び、結果を残してみろ」

 

 

 ノアの声はそれほど大きくない。しかし身が震えるほどの衝撃を選手達に与える重みがあった。一方、ラヴィーニョもポジションで準備運動をしていた。

 

 

「行くぞお前ら、最後に勝つのは俺らFC・バルチャだ。反撃祭り(カウンターフェス)と洒落込もうじゃねぇか」

 

「うっす!」

 

「……」

 

 

 どうやらバルチャはラヴィーニョの投入以外にも選手の入れ替えがあるようだ。まずGK我牙丸を右サイドハーフへと上げ、バルチャ本来のGKを投入。そしてボランチに雷市が交代で入った。ラヴィーニョ自身は馬狼と共に2TOP、明らかに攻撃に寄った布陣だ。

 

 

「わかってんなギザっ歯、お前が入る意味を考えろよ」

 

「チッ……俺はまたこんな役回りかよ」

 

 

 GKを前線に上げるなど、大胆な戦術だがこれがブルーロックだからこそ成し得る戦術なのだろう。両チームが配置につき、試合再開のホイッスルが鳴り響いた。

 

 

「マスターの実力、拝見いたす♪」

 

「……! いきなり来るかピンク頭!」

 

 

 ボールを持ったラヴィーニョに依桜が突っ込んでいく。一見無謀だが、今の依桜ならばそう簡単にはやられない。

 

 

「ヒュウ! やるなNo.1」

 

(上手……! スローで見えてるのについて行くので精一杯……!)

 

 

 先の見えないラヴィーニョの技の連続に依桜は直感と反射神経で何とか食らいついていく。ギリギリ紙一重だが、世界トップクラスのストライカー相手に依桜は戦えている。

 

 

「周りが見えてねーなクソ(バタフライ)

 

「……!? バカイザー!?」

 

 

 誰も入って来れなかったラヴィーニョと依桜の1on1。そこにカイザーが割り込んできた。彼もまたノイズにならぬようタイミングを見計らっていたが、ラヴィーニョの足からボールが離れた一瞬を狙ったのだ。

 

 

「甘ぇよ皇帝」

 

「……!?」

 

 

 しかしラヴィーニョはこの不意打ちでさえかわして見せた。依桜とカイザー、Uー20カテゴリにおいて恐らくトップクラスの二人が同時にかかってもラヴィーニョは止められないのだ。

 

 

「いや、よくやったエゴイスト共」

 

「……てめ!」

 

 

 だが三度、今度はノアが強引にラヴィーニョからボールを引き剥がそうとする。依桜とカイザーを相手にしていたラヴィーニョはさすがにノアの体幹を受けきることができず、弾かれたボールは明後日の方向へと転がって行った。

 

 

「こぼれ球!」

 

「俺が取る……その運命」

 

「うらぁぁぁ!!」

 

「……!?」

 

 

 こぼれ球を一番近くにいたグリムが確保しようとするが、それを雷市が阻止した。体勢を崩しながらもボールに食らいつき、前を走るラヴィーニョの元へとパスを送る。

 

 

「ハッ……! いい仕事するじゃねぇのギザっ歯!」

 

「うるせぇ! 絶対決めろよクソマスター!」

 

 

 雷市の支援もあり、ラヴィーニョは依桜、カイザー、ノアの難関ディフェンスを突破した。彼らが抜かれた今、バスタード・ミュンヘンにラヴィーニョを止める手段はない。

 

 

「チッ……! まとめて抜かれんなやボケが!」

 

 

 ラヴィーニョにこれ以上暴れられないために今度は烏が彼に向かっていく。Uー20戦の時に糸師冴をマークしていたように、時間稼ぎを試みる。しかしラヴィーニョのドリブルは冴よりも更に上をいっていた。

 

 

「く……!」

 

 

 烏でも数秒足止めするのが精一杯、だがその数秒が功を奏した。依桜が戻ってきたのだ。カイザーら新世代世界11傑に数えられる程の選手になると、ある能力一点において世界一とも言える力を持っている。カイザーの場合はシュート時の足の振りの速さ、そして彼に匹敵する実力を持つ依桜もまた世界一の武器を持っていた。

 

 

「ボクを振り切れるとか思わないでよね!」

 

「……!」

 

 

 視界をスロモーションで認識する眼と驚異的な反射神経、そして身体能力と瞬発力。それらが織り成す“抜かれないディフェンス”は依桜の世界一の武器と言っても差し支えない能力と言える。少なくとも1on1の場面で依桜を完全に抜き去るのはラヴィーニョでも至難の業だ。

 

 

「止まった……今なら挟み込める!」

 

 

 これをチャンスと見るやビルケンシュトックがボールを奪いに来る。彼だけではラヴィーニョにとても適わないが、依桜が彼を止めている現状なら結果はわからない。

 

 

「俺から自由を奪えんのか? ピヨピヨ共」

 

「……! ここでパス!?」

 

 

 ドリブルと見せかけたラヴィーニョのパス。ふわっとした浮き玉は右を走る我牙丸へと飛んでいく。

 

 

「むず……俺じゃなきゃ届かないぞ」

 

 

 我牙丸の走るやや後方へと放たれたパス。ミスかと思われたが我牙丸はその身体能力から繰り出されるスコーピオンパスでラヴィーニョへとボールを返した。

 

 

「いいぞちょんまげ」

 

「ぐへっ……! うっすマスター」

 

 

 我牙丸とのワンツーでビルケンシュトックは抜きされた。しかしまだ依桜は着いてきている。完全に1on1の流れだ。

 

 

「ワンツーしなきゃボクに勝てない?」

 

 

 足裏でパスをトラップし、そのままラヴィーニョは依桜を抜き去りにかかる。だが依桜も負けない、ラヴィーニョのシュートフェイントからのヒールリフトに反応しシュートコースとドリブルの進路を同時に潰すポジショニングで完全に抜かれるのを防いでいた。

 

 

「俺は死を呼ぶ……自由な(バタフライ)♪」

 

「あ……!」

 

 

 だが次の瞬間、一瞬の隙を突かれて突破されてしまった。依桜が身体の重点を動かすほんの僅かなタイミングをラヴィーニョは見逃さなかったのだ。健闘虚しく依桜は抜き去られ、そのままキーパーまでもがかわされてしまった。

 

 

「死ぬまで踊れや不自由共が」

 

 

 華麗なる得点、ラヴィーニョの蹴り出した優しい球が無人のゴールへと吸い込まれていき、そのままゆっくりとラインを超えて行った。今の依桜をもってしてでも、ラヴィーニョは止められなかった。

 

 

「すげー! スーパーゴール!」

 

「ハッハァ!! 見たか俺のバタフライステップ!」

 

 

 我牙丸を始めにバルチャの選手達が駆け寄る。その中でラヴィーニョは豪快に笑い自らのゴールをアピールした。そんな彼らを見て、依桜は歯噛みし拳を握りしめた。

 

 

「惜しかったなぁ。ラヴィーニョ相手にあんだけやれりゃ上出来やろ」

 

「それじゃ意味無いでしょ……! 誰が相手でもぶっ潰さないと……これから先は生き残れない……!」

 

「……ま、一理あるかもな。俺もろくに時間稼ぎ出来へんかったし」

 

 

 珍しく烏が依桜を励ますような事を言うが、それは彼にとって励ましにもならなかった。世界トップクラスのストライカーとの真っ向勝負でそこそこついていけた、そう言えば聞こえはいいかもしれないがそんなところで満足しているようなら世界一は程遠い。いずれは倒さなければならない相手、ならば負けて惜しいなどという言葉で終わらせていいわけないのだ。

 

 

「次は止める! それで最後のゴールを決めて勝つのは……ボクだ……!」

 

 

 格上と言えるであろう新たなる敵の出現、それに対し依桜は自らの闘争心を高めるのだった。

 

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