〖ブルーロックRPG〗実況プレイ   作:マルメロ

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今回話の終わりにオマケついてます。思いつきなんでまたやるかはわからないけど、好評だったらやるかも?って感じです。




 

 

「……バスタード・ミュンヘンは選手を変えてきたか。ならこっちも対抗して……和真、出れるかい?」

 

「……! うっす! 行けます!」

 

 

 ノアが閃堂を投入してきたのを見て、クリスも同じく元Uー20代表の仁王を入れてきた。それはノアへの対抗心か、それとも別の思惑があるのか。

 

 

「いいかい和真。向こうはカイザーと姫宮、対立する二人のエースが喰い合う混沌(カオス)チームだ。その二人を抑えれば勝てる。君の肉体で時間を稼ぐんだ」

 

「了解っす! ……てかクリス……痛いんすけど?」

 

 

 仁王の肩に手を置き、戦術を説明するクリス。それはわかるが、何故か肩を掴む手には異常に力が入っており、仁王の筋肉を持ってしてもめり込んでくる程だ。

 

 

「おっとsorry。つい力が……いや別に、全然気にしてないんだけどね……俺の決定機を阻止したばかりか目の前でシュートを……フフフフフフ……覚えたよ姫宮依桜、ミヒャエル・カイザー」

 

(めっちゃ気にしてらっしゃる……!?)

 

 

 どうやら依桜にシュートを止められたのと、カイザーに目の前で点を決められたのに相当ムカついているらしい。本人は否定しているが、態度からそれは明らかだった。

 

 

「次の一点決めた方の勝ちや。まだバテとらんよなお前ら?」

 

「当然……死ぬまで走る」

 

「ああ、勝つぞ」

 

 

 バスタード・ミュンヘン側も烏、斬鉄、玲王がそれぞれ気合いを入れ直していた。その中でも特に気合が入っているのが交代で入った閃堂。二試合目にしてやってきたチャンス、不意にする訳にはいかない。

 

 

『敵が強ければ強いほどエースは奮い立ち……世界の逆を突け』

 

(やってやる。今、このチームの逆は……!)

 

 

 以前聞いた愛空の言葉を思い出し、閃堂は自らを鼓舞する。あんな思いはもう二度とごめんだ、先のブルーロックとの試合からずっとそう考えてがむしゃらに特訓を重ねてきたのだ。

 

 

「うっし……! 行くぞ!」

 

 

 両手で自らの頬を叩き、自分に喝を入れた。依桜に、ブルーロックにこのチームの主役の座は渡さない。ブルーロックに招集されていなかった彼のストライカーとしてのエゴは、皮肉にもブルーロックによって開花させられたのだ。

 

 

『さぁさぁさぁ! 一時も目が離せぬ超試合(スーパーゲーム)!! お互いに選手を変え、残すはあと1点!! 先にゴールを決めるのはドイツか!!? それともイングランドか!!?』

 

 

バスタード・ミュンヘン LASTフォーメーション

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

マンシャイン・シティ LASTフォーメーション

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 イングランドボールで試合再開。先に点を決めた方の勝ち、故にマンシャイン・シティはキックオフと同時に前のめりに攻めてきた。

 

 

「このマイボで終わらせよう。行くぞマンシャイン・シティ」

 

「終わらせねーよクソ結末。もっと気の利いた台本用意して来いクソノッポ」

 

 

 しかし当然バスタード・ミュンヘンもタダでは突破させない。敵の中心選手、アギをカイザーが封殺した。しかしそれだけでは止まらないラッシュ攻撃。アギから國神パスが出された。

 

 

「安直パス甘々やボケ」

 

「……烏!?」

 

「いい加減見飽きて覚えたわ、この眼の使い方」

 

 

 カイザーや玲王、そして潔の使う眼の使用法であるメタ・ビジョン。習得がかなり難しい高等技術ではあるが、烏もそれを使用できるようになっていた。スペインとイングランド、二つの競合相手との戦いが彼を高みへと連れて行ってくれている。

 

 

「そんなに終わらせたいならこっちから終わりにしたる」

 

「ダメだよ烏くん、フィニッシュは俺達が決める」

 

「……チッ! めんどいなぁ非凡元ネガ筋肉マン」

 

 

 ボールのキープ力が武器の烏とはいえ、時光の筋肉でゴリ押されたら苦戦を強いられる。得意のハンドリングも筋肉で押し返されてしまう。

 

 

「だってまだ俺がゴールを決めてない。…………あれ? ってことはまだ俺はこの試合で何も成し遂げてない? じゃあ俺はどこのチームからも大した年棒を貰えずにこのまま沈んでく……?」

 

「……!? まずい! 時光がネガモードに戻りかけてる!」

 

「プリンスウォーターの効力切れか!!」

 

 

 しかし時光に異変が起こった。みるみる顔が青くなっていき、以前のようなネガティブな彼に戻ってしまったのだ。錯覚を利用した一種の思い込みは、やはり長時間は続かないようだ。

 

 

「……欲しい。自信が……ゴールが……自信が欲しいィィ!!」

 

(……ッ! コイツ力が……!?)

 

 

 時光の力が増した。ファウルスレスレの強引なタックルで烏を無理やり突破する。

 

 

「結局戻ってんじゃんみっつー! やっぱ変なクスリやってた?」

 

「あぁ!?」

 

「ナイスカバー姫宮!」

 

 

 しかしそこを狙って依桜がスライディングでボールを弾いた。そのこぼれ球を今度は乙夜が拾った。

 

 

「ちゅーっす。お零れニンニン」

 

「お前から目は離さねぇよ忍者野郎!」

 

「……! ストーカーメレオン!」

 

 

 だが簡単には抜け出せない。オブ・ザ・ボールならいざ知らず、ボールを保持した状態に1on1なら玲王の方が有利だ。

 

 

「お得意の隠密シュートは撃たせねぇからな」

 

「……ウッザ」

 

 玲王のシュートコースを塞ぐ守り方で中々撃てない乙夜。だがそれならそれで、取れる選択肢は他にもある。玲王に邪魔されない位置、自分のやや斜め後方にパスを出した。

 

 

「ナイスパス乙夜」

 

「突っ込め筋肉ヒーロー」

 

 

 乙夜からのパスを受け取った國神。ゴールまで40m程、狙えなくはないが厳しい位置だ。相手は本職のワールドクラスキーパー、雑なシュートは止められてしまう。

 

 

「行かせんぞオレンジきんに君!」

 

「斬鉄……!?」

 

 

 しかも斬鉄がその加速力で迫ってきている。追いつかれれば選択肢が極端に減ってしまうだろう。手間取っていれば依桜も戻ってくる。

 

 

『ビビんな國神!! 勝負しろ!! お前はスーパーヒーローになるんだろ!!』

 

(……!! ああ、やってやるよ潔……! あの時は正面狙うのが精一杯だったが……今の俺なら……!!)

 

 

 潔の言葉を思い出し、覚悟を決めた國神は迷いなく左足を振り抜いた。チームV戦の時はボールにミートさせるのに精一杯でキーパーの真正面だったが今は違う。この距離からの無回転シュートでもしっかりゴールの隅、キーパーの取りずらい位置を狙っていた。

 

 

「クソ……!」

 

「うぉらぁぁ!」

 

「……!?」

 

 

 ミュンヘンのキーパー、バッハマンがシュート目掛けて飛ぶが間に合わない。決まったかと思われたがそこに閃堂が飛び込んできた。國神のシュートを顔面で受け止めた彼は顔を真っ赤にしながら咆哮する。

 

 

「……ッ!! どうだ!? 止めたぞコノヤロウ!!」

 

「マジか……!?」

 

「ナイス閃堂! こぼれ球拾え!」

 

 今度はバスタード・ミュンヘンの反撃だ。閃堂の顔面からこぼれたボールをメンサーが前線へと蹴り上げた。ボールはセンターサークル付近にいるネスの元へ。

 

 

「これで終わらせます!」

 

「……!? ゴール前へのエグい縦パス!?」

 

 

 そしてネスから一気にPA付近に走るカイザーへの鬼軌道パス。オフサイドスレスレを狙ったカイザーの動きにリンクする完璧なボールだ。

 

 

「クソ終了(フィニッシュ)

 

「やらせっかよ青薔薇皇帝!!」

 

「撃たせない!」

 

 

 しかしカイザーには仁王、そしてもう一人のDFデーモンがついてきている。フィジカル自慢の仁王にタックルされカイザーは体勢を崩した。だがその状態でもカイザーは怯まない。無理な体勢からのオーバヘッドキックでカイザーインパクトを放った。

 

 

!! 最高に輝く(サンシャイン)!!」

 

「……チッ!!」

 

 

 だがそのシュートは蟻生にその長い足で防がれてしまった。仁王のタックルで体勢を崩されていたがために軌道と威力が若干甘かったのだ。

 

 

「感謝するオシャ仁王像。お前の時間稼ぎで!! のオシャ解像度がオシャ上がりする」

 

「意味わかんねぇよ! もう一発来るぞ!」

 

 

 仁王の言う通りこぼれ球はPAの外まで飛んでいき、玲王の足元へと落ちた。彼はゴール前に走る二人のストライカーに目を向けると、舌を出しいたずらっ子のように笑った。

 

 

「ったく……しゃあねぇな自己中(エゴイスト)共! これで決めろ!」

 

「……!!」

 

 

 カイザー、そしてゴール目掛けて走る依桜を狙ったパス。それを見た依桜は気づいた。これは自分やカイザーどちらかではなく、両方を狙ったボールだ。Uー20戦で糸師冴が使った、依桜と士道両方の理想にバッチリハマる超難度パス、これはそのコピーだと。

 

 

「……消えてろ依桜。被ってんだよクソ道化(ピエロ)

 

「だったらアンタが譲りなよクソマヌケ大バカイザー!!」

 

 

 だがあの時と決定的に違うことがある。まだ1ミクロンの程の協調性を保っていた依桜と士道のコンビに対し、カイザーとはそれすらないということ。二人目掛けて落ちてくるボールを奪い合い、彼らは身体をぶつけ合った。

 

 

「クソが……!」

 

「……ああもう!!」

 

 

 先に崩されたのは依桜。しかしその身のこなしですぐにオーバーヘッドに切り替え、ボールを捉えようと足を振り抜いた。カイザーも若干体勢を乱しながらもカイザーインパクトを放とうとする。二人の足はボールにしっかりミートせず、お互いの邪魔をする形でぶつかった。地面に倒れる依桜とカイザー、そして弾かれて明後日の方向に飛んでいくボール。誰もがその行方を追う中、一足早くそこに辿り着く者がいた。

 

 

「ここだ……世界の逆!」

 

「……閃堂」

 

「だらぁぁ!!」

 

 

 閃堂だ。飛び込んできた閃堂がダイビングヘッドでボールを自分ごとゴールへと押し込んだ。不意を突かれたキーパーが横っ飛びで弾こうと間に合わず、閃堂の身体ごとボールはゴールへと押し込まれた。

 

 

GOAL!!! 

 

 

『ご……ゴール! ゴール! ゴ──ールッッ!!! まさかの第三の矢(ジョーカー)!! 閃堂秋人のダイビングヘッドでバスタード・ミュンヘン3点目!! 決着だぁぁ!!』

 

 

「っっ……!! しゃあああああああ!!!!」

 

「閃堂……!!? お前!!」

 

ナイスゴールだエース!! 

 

「んだよお前ら、敵チームだろ!?」

 

「関係あるかそんなもん!! マジでよく決めたぜコイツ!!」

 

 

 叫ぶ閃堂に真っ先に駆け寄り抱き上げたのは仁王、そしてマンシャイン・シティのベンチにいた颯だった。今は敵チームではあるが、元Uー20の仲間として誰よりも彼のゴールを喜び、賞賛した。

 

 

「ハァ……ハァ……マジか。あ〜あ、やられちゃった。それは想定外だったな〜」

 

 

 カイザーばかりに気を取られ、ハイエナゴールを狙う閃堂には気づけなかった。それを素直に認め、依桜はその場に座り込んだ。ただでさえ体力の消耗が激しい眼の使い方に加え、カイザーを相手にしていたのだ。かなり疲れている。

 

 

「……クソキモハイエナゴール。何を勝った気になってるんですかクソ雑魚秋人の分際で……!! カイザーが依桜に邪魔されてるのをいいことにかっさらってくとか……クソ!! クソ!! 大クソです!!」

 

「ああ!? なんだてめぇイチャモンか!?」

 

「確かに……ハイエナゴールだったのは認める。だけど──」

 

「ハッ……! あれはただのハイエナゴールじゃないやろ、おネス凡巾着」

 

「はぇ?」

 

 感情のままに閃堂に文句をつけるネスにキレた仁王、そしてそれを止めてハイエナであったことを認めた閃堂。そして彼が次に口を開こうとした瞬間、横から烏が割って入ってきた。

 

 

「あの場面……一見すればただのハイエナゴールかもしれへんけど、あそこでボールがこぼれたのは姫宮とカイザーのストライカーとしての能力がほぼ互角だったからや。どっちかが少しでも上回ってればそっちが決めてた……やろ?」

 

「ああ……だけどずっと姫宮だけを見続けてきた俺だからわかったんだ。あそこでカイザーと姫宮がぶつかり合えば、決着はつかないって。だからこぼれ球を一番狙いやすいと思った所に走ったんだ。ボールが俺の方に飛んできたのは……正直運だけどな」

 

「なるほどな……Uー20戦(あの試合)から姫宮に勝つことだけを考えてきた閃堂の執念が誰よりも速くその現実に辿り着かせて……そして運を呼び込んだ結果のゴールって訳か」

 

 

 烏の解説に閃堂が補足を入れ、そして玲王が総括した。言うなればUー20戦の潔のラストゴールと似たようなものだろうか。確かに閃堂の方にボールが飛んでいくかは運任せだが、依桜とカイザーの力関係を見極め、それに賭けようと全力で走らなければ運を呼び込むチャンスすら与えられなかった。全部を引っ括めて、閃堂が見事だったと言う他ない。

 

 

「てかボクがバカイザーに邪魔されてたんだけど? そこ間違えないでよね、お子様ランチのオマケ玩具ちゃん」

 

「……」

 

「あ……! か、カイザー……!?」

 

 何か言ってくると思われたカイザーだが、彼は黙って背中を向けているだけだった。そして何も言わずにその場を後にした。依桜に一言だけを残して。

 

 

「……次の試合で決着だ依桜。今度こそゴールの数で勝負しよう……逃げんなよクソ道化(ピエロ)

 

「そっちこそ、負けた後で言い訳とかしないでよね」

 

 

 依桜とカイザーの決着は次戦、VSイタリアへと持ち越された。現状の実力は殆ど互角と言って差し支えないが、残り10日間ある。どちらがこのチームの王に躍り出るかは、この時点では誰にも予想出来なかった。

 

 

新英雄大戦(ネオ・エゴイストリーグ)第三戦

 

バスタード・ミュンヘンVSマンシャイン・シティ

 

 

3ー2

 

 

『GOAL』

 

 バスタード・ミュンヘン

 

 ・HIMEMIYA

 

 ・KAIZER

 

 ・SENDOU

 

 マンシャイン・シティ

 

 ・OTOYA

 

 ・KUNIGAMI

 

 

 

試合終了!!! 

 

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 ──同時刻、新英雄大戦(ネオ・エゴイストリーグ)第四戦。ユーヴァースVSFC・バルチャ。

 

 

「……来るぞ、連動警戒!!」

 

「わかってらぁ!」

 

 

 試合は2ー2の最終盤。お互いマスターの時間も使い切り、次決めた方が勝ちのデッドヒートだ。守備を固めるバルチャに怯むことなく、ユーヴァースは攻勢に出ていた。

 

 

「行きます、最終反撃(ラストカウンター)!」

 

「OK、設計設計」

 

 

 二子から黒名、そして前線へのパス。完璧にデザインされたこのカウンターに隙はない。ボールはPAよりやや前、柊に渡った。

 

 

「やらせっかよ占いポニテ野郎!」

 

「雷市くん、君がここで突っ込んでくるのも想定内ですよ」

 

 

 黒名からのパスをノールックアウトサイドトラップで足元に納めた柊。雷市のスライディングをかわし、前を走るストライカーにパスを出す。

 

 

「ここまでは設計通り……後はどうする、天才さん?」

 

「ナイスパス占い師」

 

「ヤバ……シュートコース塞げ!」

 

 

 DFラインの裏に抜け出た凪をバルチャDF陣が止めようとするが一歩間に合わない。キーパー我牙丸が1on1に備えて感覚を研ぎ澄ます。

 

 

「通行止めだ、面倒クサオが……!!」

 

「うん、最後にアンタが来ると思ってた。王様(キング)馬狼」

 

 

 ただ一人、凪の裏抜けに反応し追いついてきていた馬狼。凪のトラップを警戒し、安易には突っ込まない。凪のアクションを見てから選択肢を選べる、そんなポジショニングだ。

 

 

(って感じで……全員が俺の神業(トラップ)警戒して視野が狭くなってるから……)

 

「……! スルー!?」

 

「持ってけ、ゾンビさん」

 

 

 馬狼が凪につき、敵チーム全員の警戒が凪のトラップに向いた瞬間、彼はあえてパスに触れずスルーした。予想外の選択肢に一瞬時間が止まるフィールド。スルーしたパスの先には新世代のエースが走っていた。

 

 

「だぁー。凪ちゃんの創造力(クリエイティブ)、面白OK?」

 

「ロレンツォ……!? いつの間に……」

 

 

 ユーヴァースの戦術の核、CBにして攻撃にも貢献できる世代最強クラスの11傑。ドン・ロレンツォにパスが渡った。ゴール前、シュートも狙える位置だ。

 

 

「お前は自由にさせねぇよゾンビ野郎!」

 

「1000万、しつこいねーおたくも」

 

 

 この試合を通してロレンツォのマンマークについていた雷市。この場面でも彼を自由にさせないために追いついてきた。この執念とスタミナにはさすがのロレンツォも少しは手こずっている。

 

 

「んじゃ、ラストゴールはお任せOK?」

 

「OK」

 

「クソが……!!」

 

 

 そこでロレンツォがすかさずパスを出す、ボールは再び凪へ。馬狼の裏を抜け、彼はゴールの隅を狙ってダイレクトシュートを放った。

 

 

GOAL!!! 

 

 

「マジか……凪の奴、トラップだけじゃなく全能力ぶち上がってやがる」

 

「面倒くさがりは完全に卒業かよ……ムカつくぜクサオ」

 

 

 我牙丸や馬狼から見ても、凪は以前とはまるで別人だ。元々天才ではあったが、その能力に更に磨きがかかっている。何が彼をそこまで変えたのか、完全に理解している者はここにはいないだろう。

 

 

「待ってろ玲王。ぶっ潰す……!」

 

 

 凪の眼中にバルチャの姿はなかった。あるのは次戦、バスタード・ミュンヘンとの対決。玲王との決着、その言葉以外今の凪にとって価値はない。

 

 

『GOAL』

 

 ユーヴァース

 

 ・NAGI

 

 ・NAGI

 

 ・NAGI

 

 FC・バルチャ

 

 ・BAROU

 

 ・BAROU

 

 

 3ー2でユーヴァースの勝利。

 

 

 ──次戦、バスタード・ミュンヘンVSユーヴァース、P・X・G VSマンシャイン・シティまで残り10日!! 

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 オマケ

 

 ブルーロックRPG あでぃしょなるたいむ! 

 

 〖本職メイド参戦♡〗

 

 

 ──Uー20日本代表に挑むイレブンを決定するためのトライアウト、その全ての試合が終了し後はスタメン発表を待つのみ。そんな緊張感漂う時間に、異質な空気を纏う部屋があった。

 

 

「いいかてめぇら……次変な妄想しやがったらマジでぶち殺すからな」

 

『すみませんでした、王様(キング)馬狼』

 

 

 潔世一と凪誠志郎、ブルーロックでも上位の実力者達を正座させ、謝罪を強要しているのは馬狼照英。メイド馬狼という渾名をつけられてしまった彼は、メイド喫茶馬狼について妄想を繰り広げる潔と凪にただならぬ怒りをぶつけていた。

 

 

「もうその辺にしといた方がいいんちゃう?」

 

「黙ってろ水色頭! これは俺とこいつらの問題だ……!」

 

 

 見かけた氷織が仲裁に入るが、二次選考の時からいじられ続けてきた馬狼の鬱憤はこの程度では収まらない。

 

 

「なになに、何の話してるの?」

 

「あ、お姫さん。メイド喫茶馬狼のシミュレーション」

 

「今罵り系メイドカフェかバロandピース癒し系の二択で悩んでるんだけど……姫宮はどっちがいいと思う?」

 

「てめぇら……」

 

 

 そこに依桜が入ってきた。正座させられている潔と凪に疑問を投げると、二人からまるで反省していない答えが返ってきた。それを聞いて馬狼はイラつきを加速させる。

 

 

「ふ〜ん……全然ダメダメだね。二人ともメイドの基本をわかってないんだから」

 

「そういえば姫宮、メイド喫茶でバイトしてるんだっけ?」

 

「え、そうなん? てか男子でも働けるん?」

 

「余裕だよ、ボク可愛いし。お店で一番人気なんだから」

 

 

 依桜がメイド喫茶で働いているというのを潔は以前聞いていた。確かに氷織の言うように男子でも働けるのだろうか? その質問に依桜は微妙に答えになってない答えで返した。

 

 

「お姫さん、俺らの二択が全然ダメってどういうこと?」

 

「いい? メイドの基本は飴と鞭の使い分け。優しくしすぎてもカm……お客様に舐められるし、逆に厳しくしすぎたら来なくなっちゃうし」

 

「……今カモって言いかけたよな?」

 

 

 ドヤ顔でメイドのイロハを熱弁する依桜。それはいいとして、お客様をカモと言いかけたことが潔には引っかかった。確かに見た目はいいが、こんなわがままプリンセスエゴイストがメイドなんてやれるのかと疑問に思う。

 

 

「へ〜。飴と鞭の使い分けって、例えばどんな風に?」

 

「そうだな〜。例えば、こんな感じ♪」

 

 

 凪の質問に依桜は具体例を答え始めた。潔達がやっていたようなシミュレーション、メイド喫茶馬狼にハマってしまった時光が雪宮剣優を連れて再び訪れるという設定だ。

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「ご、ごめんね雪宮くん。俺なんかに付き合ってもらっちゃって」

 

「別にいいよ、メイド喫茶って一度は行ってみたいと思ってたんだよね」

 

(一緒に来てくれる人がいて良かった〜。凛くんは絶対来ないだろうし、蟻生くんと二人きりで外出するのは絶対嫌だし)

 

 

 メイド喫茶馬狼に向かう道すがら、彼らはそんな話をしていた。以前行ったメイド喫茶がすごく良かったので、もう一度行きたいと思っていた時光だが、二回目ではまだ一人で入る勇気がなかった。雪宮が着いてきてくれて一安心だ。

 

 

「あ、ここだよ」

 

「へぇ、随分派手な外見なんだね」

 

 

 到着したメイド喫茶はかなり奇抜な外見をしていた。特にデカデカと掲げられた『きんぐばろう♡』という看板は入るのを躊躇させるには十分なインパクトだ。

 

 

「お帰りなさいませ〜ご主人様♡あ、またいらしてくれたんですね! 馬狼感激です〜♡」

 

「あはは……また元気を貰いたくって」

 

 

 入店すると迎え入れてくれたのは、190cm近いムキムキのリーゼント。メイドの対義語とも言えるだろう大男がフリフリのメイド服を身にまとっている。控えめに言って地獄絵図だ。

 

 

 〖店長・メイド馬狼(バロandピース癒し系Ver)〗

 

 

 接客 95 S

 容姿 15 I

 対応力 88 A

 真心 92 S

 お悩み相談力 94 S

 バロバロキュン 100 SS

 

 

 総合メイド評価 95 S

 

 

「今日はお友達さんも連れてきてくださったんですね〜? ありがとうございます♡お二人共、こちら別々のお席にどうぞ!」

 

「あれ? 時光くんと一緒の席じゃないんだ」

 

「当店では、ご主人様一人一人に寄り添えるようにご主人様一人につき、必ずメイド一人が対応させてもらっているんですよ!」

 

「へ、へぇ〜。(うわ、覚悟はしてたけど間近で見るとキッッツイな〜馬狼くんのメイド姿)」

 

 

 時光とは別々の席に座りながら、雪宮は冷や汗を流した。ある程度想像はしていたが、実物は想像の遥か上を行く破壊力だ。生きて帰れる気がしない。

 

 

「そ、それで俺……また自分に自信が持てなくなってきて……」

 

「もう! しょうがないですねご主人様は♡ほら、今回もご一緒に……バロバロキュン♡」

 

「あはははは……(帰りたくなってきた)」

 

 

 時光とメイド馬狼のやり取りに苦笑いしつつ、自分の担当メイドを待つ雪宮。するといきなり、頭の上に水をぶっかけられた。

 

 

「え!? 冷たっ! ……な、なんだ!?」

 

「ごめんなさい、メガネがムカついたからつい」

 

 

 横を見ると傾けたコップを片手にこちらを睨むメイドの姿。見た目はかなり可愛らしいが、雪宮を睨むその目は無愛想なんてものじゃない。

 

 

 〖メイド長・姫宮依桜〗

 

 

 接客 96 S

 容姿 115 SSS

 対応力 86 A

 真心 52 D

 お悩み相談力 78 B

 バロバロキュン 95 S

 

 

 総合メイド評価 102 SS

 

 

「ちょ……! いいから謝ってよ!」

 

「絶対イヤ。そのDV男みたいな見た目どうにかしてから言ってください」

 

「……どっちかと言うとDVされてるの俺なんだけど?」

 

 

 雪宮の文句を聞き流し、依桜はバックヤードへと下がってしまった。これにはさすがの雪宮も困惑するしかなかった。日本一接客態度の悪い店でもこれよりかはまだマシだろう。

 

 

「ご主人様♡オムライスに何をお描きしましょうか?」

 

「えっと……それじゃサッカーボールを!」

 

 

 時光がメイド馬狼に自分のオムライスにケチャップでサッカーボールを描いてもらっている横で、雪宮は再び散々な目にあっていた。

 

 

「えっと……これは何?」

 

「アンタへのメッセージですけど? 味わって食べてくださいね」

 

 

 オムライスにはケチャップで書かれた『死ね』の二文字。ケチャップの赤色と合わさって殺意が半端ない。というか暴言にしてもシンプルすぎる。

 

 

「それじゃあご主人様♡美味しくなる魔法をご一緒に!」

 

『バロバロキュンキュン♡美味しくな〜れ♡』

 

 

 メイド馬狼がオムライスに美味しくなる魔法をかけている間にも、雪宮の災難は止まらない。

 

 

「あの……俺のオムライスに魔法とかは……かけてくれないの?」

 

「は? ……ハァ…………バロ死ねバロ死ねキュンキュン死ね死ね美味死ねなーれ死ね」

 

「もはや死の呪文じゃん……!?」

 

 

 魔法というか呪文。呪われてしまいそうな死ねの連呼に雪宮はショックというより驚きを隠せなかった。あまりに露骨な態度に怒りすら湧いてこない。

 

 

「ご主人様♡ご一緒にチェキの撮影はいかがですか?」

 

「あ、お……お願いします!」

 

 

 メイド馬狼との記念撮影。現像した写真に可愛いデコレーションも描いてもらえる一生の思い出だ。そんな記念になる時間も、雪宮にとっては死の時間となる。

 

 

「それ以上近寄らないでください。警察呼びますよ?」

 

「いやこれ以上離れたら写真に入らないでしょ」

 

 

 写真に写らないレベルで雪宮に近づこうとしない依桜。何とか撮影を終えたが、依桜は現像した写真を黒いマジックペンで真っ黒に塗り潰してしまった。これでは誰の写真か全くわからない。

 

 

「アンタとツーショットとか、ボクにとって一生の汚点だから」

 

「…………」

 

 

 そして地獄のような時間が終わり、店を出る時のお見送りも依桜の愛想は最悪だった。

 

 

「行ってらっしゃいませ、またいらしてくださいねご主人様♡」

 

「は、は〜い。また来ます!」

 

 

 最後まで真心込めてお見送りしてくれるメイド馬狼に対して、依桜は雪宮に向けて中指を立てていた。最後の最後まで酷い接客態度だ。

 

 

「楽しかった〜、ま、また来たいかも。あ、ゆ……雪宮くんはコリゴリだよね……ごめん一人だけ楽しんで……!」

 

「……」

 

 

 余韻に浸りながらも雪宮を心配する時光を他所に、雪宮は先程の出来事を回想していた。チェキを撮った後、雪宮はとある質問を依桜にしていた。

 

 

『ねぇ姫宮くん……接客が嫌なら、無理してここで働かなくてもバイト先はいくらでもあるんじゃない?』

 

『別に……ボク、ユッキーの接客するの嫌いじゃないから』

 

 

 無愛想なのは変わらないが、今までとは違い澄んだ目で言う依桜の言葉と表情が雪宮の頭から離れなかった。心臓が少しドキドキしている、初めての感覚だ。

 

 

「明日もまた来ようかな」

 

「え!? なんで……!?」

 

 

 あれだけの目にあっておいて、また来ようかなという雪宮の発言の意味は当人にしかわからない。しかし雪宮剣優は確実に依桜の虜になっていたのだった。

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「ユッキー相手ならこんな感じかな! 鞭9飴1のツンツンツンデレメイド!」

 

「なるほど、相手によって飴と鞭の割合を調整するのか……さすが本職!」

 

「メイド長姫宮!」

 

「いや姫宮くんの中で雪宮くんはどういうイメージなん?」

 

 

 ────

 

 

「ハックション!!」

 

「なんや雪宮、風邪でもひいたか?」

 

「いや……急に寒気が、誰か俺の噂でもしてるのかな?」

 

 

 急な寒気に襲われくしゃみをする雪宮。まさかメイド喫茶のシミュレーションに使われているとは、隣にいる烏や乙夜、そして雪宮本人も夢にも思っていなかった。

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