どうも、私です。最近は色んな物が高くなっちゃって困りますね、特に食費がバカにならない。私は実況動画撮りながらお菓子食べるのが好きなんですが、少し量を減らさなきゃかも?
ま、そんなことはどーでも良くて前回の続きからやっていきましょう。
さ〜て、今回はチームトレーニングの場面からお届けします。バスタード・ミュンヘンとかいうチーム、内輪揉めがやばすぎて触れられてないけど一応チーム全体でのトレーニングもありますからね? まともに連携とかは練習しないんですけど。ドイツ組とブルロ組で分かれちゃうし。
「ほら、にじまる! もっとペースアップ!」
「は……はいだべ……!」
容赦ねぇな依桜くん……。七星くんの怪我は大したことなかったんでそれはいいんだが。まぁでも七星くんが生き残るためには多少スパルタくらいがちょうどいいのかも。依桜くんからの愛のムチってことで…………そのムチ私に向けてくれない?
「なんや、気合い入っとるな姫宮」
「まぁね。次の試合こそバカイザーをボコボコにしてやんの!」
あの、その人味方……。まぁ今更か……な〜んで一番警戒しなきゃいけないのが味方なんすかねぇ……イングランドとか行けた方が楽だったのに……
「てゆーかもう練習時間終わってるでしょ? なんで皆残ってんの?」
「アホか、年棒一位サマが居残り自主練しとったら俺ら下々もやらざるを得んやろ。特に試合出れてへん組は焦っとるんやろな」
烏くんが見る先には清羅くん、日不見くん、灰地くん、そしてついでに鰐間くん。彼らは一度も試合に出れてないですからね、練習にも熱を感じます。まぁ正直清羅くん、日不見くんはしっかりとした武器もあるしそろそろ出れてもおかしくないです。原作では清羅くんは第三試合に途中出場できそうでしたから……どっかの誰かさんにキャンセルされてたけど。
鰐間くんは……弟いないとさすがに没個性か? 灰地くんは情報無さすぎて知らね。見た目は可愛くて好きなんすけど。
「くわっ!!」
「うわ!? びっくりした! ワニちゃん急に出てこないでよ、顔面強烈なんだから」
「くわっ!! くわァ!!」
「くわくわうるさいわ、アヒルかお前は! イチャモンでもつけに来たんか鰐間」
「違う! 忠告だ! カイザーが何やら企んでいるようだ、警戒しろ!」
な、なんだって──!!? ……まぁ知ってるけど、あれっすよね? カイザー・インパクト廻。そっすか、この時点で開発してるのか……まぁ現状の依桜くん明らか原作世一より強いからね。でも少なくとも次の試合までに完成はしないはず……多分。
「企んでるって……また姫宮さんを妨害するつもりってことですか?」
「いや……そういう雰囲気ではなかった。恐らく新たな武器を開発しているんだろう!」
「ハッ……! 本気で姫宮を潰すつもりかいな。モテモテやな女王サマ」
「しつこいな〜。でも、向こうもそのつもりならこっちも容赦なく叩き潰せるね!」
ま、妨害じゃなく新技で対抗してくる分マシってことですね。いや普通に妨害はしてくるんだろうけど。次の試合、イタリアにはロレ公がいますからねぇ……彼がカイザーを止めてくれるので、依桜くんは動きやすいでしょう。やっぱロレ公しか勝たん。
さてさて、練習も終わりまして自由時間です。といっても依桜くんは撮影やらなんやらで忙しいのでほぼ自由ではないんですが……まぁ日課ですのでササッと終わらせましょう。
「……」
「? ……姫宮選手? 大丈夫ですか?」
およ、なんか依桜くんボーッとしてますね。愛すべきアホキャラのはずなのに珍しいこともあるもんだ。
“ボクは確かに強くなってる……けど、バカイザーに勝つビジョンが見えないというか……これより上の自分があんまり想像出来ないんだよね”
あら? 依桜くんまさかのスランプ……! まぁ確かに今の依桜くんめちゃ強だからこれ以上って言っても私もあんまり想像出来ないですね。どうしよ……ステータス伸ばすのはトレーニングで出来てるけど、やっぱ覚醒待ちっすかね。つってもUー20戦程の刺激もないしなぁ…………そうだ、いいことを思いつきました!
撮影が終わったらノエル・ノア様のところに行きましょう! なんせドイツの指導者ですから! 彼を頼れば間違いない……はずよね? 大丈夫だよね? ちゃんと教えてくれるよね? なんか不安になってきたぞ……。
「やっほ〜」
「姫宮依桜……入ってくる前にノックくらいしろ」
「いーじゃん別に。細かいな〜」
いやそこ大事なとこだよ依桜くん。あとお前やっぱスランプなんかじゃないだろ。ファッションスランプやめてもろて。
「それで……何の用だ?」
「……ん〜。……どうやったらボクはバカイザーに勝てると思う?」
ありゃ、ノアさん面食らったような表情してますね。まぁ依桜くんがこんなこと聞きに来るとは思ってなかったでしょうし、そりゃ驚きもするか。
「トレーニングに不満でもあるのか?」
「別にそういう訳じゃないけど……なんか、今のまま練習しててもバカイザーに勝ちきれる気がしないというか……今の自分より上をイメージ出来ないっていうか……」
「お前にしては珍しく弱腰だな」
確かに依桜くん基本的にポジティブ思考だしね。たまにこの子メンタル大丈夫か? ってなる瞬間がなくもないけど。
「……姫宮依桜、俺が何故このリーグに参加したかわかるか?」
「は? 何急に……? 知るわけないじゃん、給料良かったの?」
「違う。俺がここに来たのは……このバスタード・ミュンヘンやお前達
どーでもいいけど依桜くんのノアさんに対する態度すげぇな。いや敬語使ってペコペコするイメージもないけどさ、依桜くん人生で敬語使ったことあんのか? あるかさすがに。
「俺はカイザーのエゴを呼び起こすためにここに来た。今はまだ未熟だが、アイツは将来的に俺の存在を脅かす
「へ〜。思ってたよりエゴイストなんだね、アンタも」
まぁ俺が3点取れれば3ー4で負けてもいいとか言っちゃう人だし……にしてもカイザーくんはもうちょい躾といて欲しいけど。
「だが……俺はこの
「ふ〜ん、それって誰のこと? ……あ、ボクか」
「そうだ。カイザーを覚醒させるための素材としか思っていなかったが、お前はアイツと互角に渡り合った。正直……己の地位を維持することに固執している今のカイザーより、不確かな未来を見据えて戦うお前の方に俺の期待は傾いているのかもしれない」
ノアさんめちゃくちゃ依桜くんに期待してくれてんじゃないっすか……! こりゃ世界一さんの期待に応えねば……いや、むしろライバル認定されてぶっ潰しにこられたらまずい? でもいつかは超えなきゃいけない壁だからなぁ……。
「だからこれはバスタード・ミュンヘンの
「……?」
「姫宮依桜、お前は何故サッカーをしている? 何故命を賭けてまで世界一を目指す? お前の
「……なんでそんなこと聞くの?」
「簡単なコトだ。未来に明確なビジョンを持てないなら、過去を振り返ってみろ。お前が己の殻を破る時、何を考え感じていた? フットボールを始めた時でもいい、お前は何を感じてボールを蹴った?」
おお……なんかすごい絵心さんっぽいこと言ってますね。世一の時みたいな理詰めしてくると思ったんだけど、依桜くん相手だとあんまり意味ないってことなのかな? それともノエル・ノアとしての言葉だからってこと?
「過去をって……もうあんまり振り返らないようにしてたんだけど。てゆーか、なんでそんなことがわかるの?」
「……勘だ」
「はぁ!?」
出た、ノア様のぬーん顔! アンタギャグもいけるの万能ッスね。でも今は真面目な話してるから控えてくんろ。
「要は俺の目にはそう映っているというだけの話だ。だが少なくとも、これはタダの勘じゃない。今現在世界一のストライカーと呼ばれているノエル・ノアの勘だ」
「……まぁ確かに、あんまり自分のプレーとか振り返らない方ではあるけど」
「一度客観的に見てみろ。お前が
「……それも勘?」
「ああ。だが俺はお前に期待している、それは嘘でも勘でもない……紛れもない事実だ」
「どーも」
んじゃ……ありがたいお話も聞けたことだし、彼の言う通りモニタールームで過去の映像を振り返ってみますか。一応経験値とかも入るんですが、微々たるもんなんで今までやってませんでしたが。
“んと、モニタールームは……ここか”
「あ……!」
「おネスじゃん、何やってんの?」
「ッ……!!」
おっと、モニタールームに入ったら先客がいましたね。ネスくん、依桜くんが入るなり驚いて逃げちゃいましたね。小動物かな?
“え……? うわっ……何アイツ、ボクの試合映像見てたの? 画面いっぱいに映してるとかさすがにキモイんだけど”
十中八九、依桜くん対策の研究でしょうね。億が一くらいの確率で依桜くんにガチ恋した説も……ないか。ま、そんなことはどうでも良くて、早速過去の試合映像を見ていきましょう。やっぱ覚醒って点だとUー20戦がいいのかな? どーせ全部見るから関係ないけど、一旦そこから見てみましょうか。
“改めて見ると……やっぱり凄い試合だなぁ。皆全力で戦ってて……ボクも、本当に久しぶりに心からサッカーを楽しんでた気がする”
あの試合は今思い出しても激アツでしたね、特に依桜くんの活躍が本当に素晴らしい。操作してたの私なんですけど、げへへ。
「…………」
ん? なんか依桜くん見入ってるのか、喋らなくなりましたね。画面に釘付けになってる感じ……なにか掴んだのかな?
「……可愛い」
“そっか……何となくわかった気がする。ボクがなんでここまで強くなれたのか……この先どうすれば強くなれるのか”
んにゃ……やっぱ何かを掴んだのかな。にしても、可愛いって……いやアンタは可愛いけどさ、試合見てて出てくる感想がそれかい。でも依桜くんの境遇を考えたら泣けてくることではあるか。
お、ここでどうやらイベントが挟まるようですね。ワンチャンもう覚醒したりして! という訳で、早速見ていきましょう!
♦♦♦♦♦
これはある男の子のお話です。彼の名前は姫宮依桜くん。かっこいいお父さんと美人なお母さんの元に産まれた、とても可愛らしい赤ん坊でした。
でも、お父さんは依桜くんが産まれてすぐに家を出ていってしまいました。依桜くんがお父さんの子供ではなく、お母さんの浮気相手の子供だということがわかったからです。
お母さんは依桜くんのことが嫌いでした。お金持ちだったお父さんとの仲を繋ぎ止めるために子供を産んだのに、その子供が原因で離婚することになってしまったのですから。彼女は依桜くんを古いアパートの一室に放置して夜遊びを繰り替えてしていました。食べる物がない依桜くんは常にやせ細っていて、暗い部屋の隅っこでお母さんの帰りをずーっと待っていました。
そんな中でも、依桜くんには楽しみがありました。依桜くんが産まれる前にお父さんが買ってくれた、たくさんのおもちゃです。空腹を紛らわすためか、それとも純粋に楽しかったからか、依桜くんはおもちゃで遊ぶのが好きでした。
数年後、依桜くんは警察に保護されることになりました。心優しい隣の部屋のおばさんが、心配して通報してくれたのです。依桜くんは暗く狭い部屋から解き放たれ、優しい職員さんがいる施設へと引き取られることになりました。温かいご飯、お風呂、フカフカのベッド。みんなが当たり前に持っている幸せを、依桜くんはようやく手にしたのでした。
施設での生活の中、依桜くんは運命の出会いをすることになります。五歳の時、ショッピングセンターに飾られていた可愛いお洋服に目を奪われてしまったのです。将来、こんな服が似合う可愛い人になりたい。可愛くなりたい。それが依桜くんの夢になりました。
でもそれは叶わない願いでした。だって依桜くんは男の子のですから、可愛い服もピンクのランドセルも、髪を伸ばすことでさえ白い目で見られてしまいます。初めて小学校に行った日、依桜くんは恐怖を覚えました。男の子は髪が短くて、黒か紺のランドセル、スカートを履く子なんていなかったのです。
依桜くんのやりたいこと、理想の自分は世の中の普通とはかけ離れた異端。それを小学校で一年間かけて嫌という程理解した依桜くんは、自分の殻に閉じこもるようになりました。誰とも関わらず、何もやる気がしない。まだ二年生だというのに、依桜くんは人生を諦めてしまいました。
そして依桜くんは気づきました。依桜くんの人生はずっと、見えない鎖で拘束されていたのです。お母さんの呪縛だったり、周囲の人間の冷ややかな視線だったり、そんな鎖で依桜くんは身動きすらできないようにされていました。でも依桜くんにはもう鎖を解く程の気力がありません。もがくこともなければ、抵抗もできなかったのです。だって依桜くんはどう頑張っても……可愛くはなれないのですから。
そんな時、依桜くんは透子ちゃんという女の子に出会いました。透子ちゃんは依桜くんにサッカーを教えてくれました。彼女とやるサッカーは楽しくて、依桜くんはあっという間にハマってしまいます。
依桜くんがなりよりサッカーに夢中になれたのは、フィールドの上では普通じゃない自分でいられたからでした。今まで、他の人と違うことをしようものならバカにされ、虐げられてきた依桜くんでも、サッカーをしている時は誰よりも輝けたのです。
そして透子ちゃんは、本当の依桜くんを受け入れてくれました。依桜くんは透子ちゃんのおかげで、髪を伸ばして可愛い服を着ることができるようになったのです。楽しいサッカーをして、ありのままの自分でいられる。透子ちゃんと出会ってからの依桜くんは人生を楽しいと心から思うことができたのです。
でも依桜くんの身体には依然鎖が巻きついています。透子ちゃんは鎖の存在を忘れさせてはくれても、鎖を外すことはできないのです。それは依桜くん自身の問題だから、依桜くんが己の手で抜け出そうとしなければ、永遠に囚われたままなのです。
そして依桜くんが中学二年生の年、透子ちゃんは事故で死んでしまいました。依桜くんは悲しみに明け暮れて、毎日虚ろな日々を過ごしています。
透子ちゃんがいなくなってから、依桜くんの周りは昔に逆戻りしてしまいました。人気者の透子ちゃんの親友というポジションを失った依桜くんは酷い嫌がらせにあってしまいます。鎖は昔よりも強く強く巻き付き、依桜くんを苦しめてきます。
依桜くんは苦しくて苦しくて……もうどこにもいない透子ちゃんに縋ろうとしました。「透子の意志をボクが継ぐんだー」とか「透子を忘れさせないー」とか言って、透子ちゃんに成り代わろうとしてしまったのです。
でもそれはタダの現実逃避。鎖の存在を思い出したくない依桜くんが自分のためにしているだけの逃げに他なりません。現実に立ち向かう勇気のない依桜くんは高校に入ってからも嫌がらせを受け、当然そんな中やるサッカーも楽しくはありませんでした。
依桜くんが高校二年生になったある日、一通の招待状が届きました。世界一のストライカーを生み出す場所、ブルーロックへと足を踏み入れた依桜くんはそこで潔世一という少年に出会いました。
世一くんは依桜くんと同じく、鎖に繋がれた少年でした。サッカー部で植え付けられたワンフォーオール・オールフォーワンという名の呪縛に縛り付けられていたのです。でも世一くんは、依桜くんみたいに逃げたりはしていません。
必死にもがいて、足掻いて、どんなに苦しくても、それでも鎖から解き放たれるために世一くんは前に進もうとしています。そんな彼の姿を見て、依桜くんも願ってしまったのです……前に進みたいと。透子ちゃんと出会ってから消えてしまっていたエゴの炎に、火がついてしまいました。
それでも依桜くんは迷います。鎖の存在を自覚して解放されたいと願っても、もがくことの苦しさを知っているから。でも迷っている依桜くんはブルーロックは待ってくれません。日本中が見守る一戦に出場した依桜くんは、必死にもがく選手達の姿を見ました。
そしてついに覚悟を決めたのです。鎖から解き放たれるために、苦しくても、悲しくても、どれだけ傷ついても足掻くことを。鎖を忘れさせてくれていた透子ちゃんという存在を、今度は鎖をぶち破るために利用して……依桜くんはとうとう鎖から解き放たれました。それからの依桜くんは大活躍、4点を決めてMOMにも選ばれました。
こうして依桜くんは真の自由を手に入れて、新たなる人生を歩み始めたのです。もう誰も依桜くんを笑ったりしません。好きな自分を表現して、サッカーで世界一になる。そんな目標を掲げ、依桜くんは進むのです。
──めでたしめでたし。
でも──物語は終わりではありませんでした。先に進んだ依桜くんに、今度はミヒャエル・カイザーという青年が立ち塞がりました。彼はとても強くて、今の依桜くんと互角に張り合う強敵です。
依桜くんはカイザーくんを倒すために、一生懸命練習に励みました。でも困ったことがあります……依桜くんにはこの先の自分の成長を思い通りに描けないのです。どう頑張っても、今より強くなれる気がしない。そう思った依桜くんはノエル・ノアに相談しました。
彼は依桜くんに過去を振り返ることをアドバイスしてくれました。あまり乗り気ではない依桜くんでしたが、試しに過去の試合映像を見てみることに……そして依桜くんは気づいたのです。
──可愛い
Uー20戦の依桜くんは誰よりも輝いていて、世界一可愛かったのです。そして依桜くんは思い出しました。生まれて初めて、感情が揺らいだあの時を……自身のアイデンティティを自覚した時を。
──ボクもあんな風に可愛くなりたいな
小さな時に見た可愛いお洋服、そしてそれを着こなす可愛い女の子。依桜くんもあんな風に可愛くなりたい、それが依桜くんのエゴの原点なのでした。
そして依桜くんが一番可愛かったのは間違いなくUー20戦、あの時何故自分はあんなにも輝いていて、可愛かったのか……答えはすぐに見つかりました。
あの時の依桜くんは鎖に繋がれていて……不自由でした。それでももがいて、苦しんで、足掻いて、鎖から抜け出すために苦しみながら進んでいました。つまり依桜くんが最も成長できる状況とは、不自由からの脱却。縛られている状態から足掻いてこそ、依桜くんの真の力が引き出されるのです。それこそが依桜くんが一番可愛く輝ける瞬間。
つまり、依桜くんが強くなるためには、あの時と同じくらいの不自由がいるのです。身体が動かなくなるくらいの強い拘束が……鎖がいるのです。
でも依桜くんは強くなってしまいました。もう馬鹿にされても、白い目を向けられても依桜くんはなんとも思いません。あのカイザーくんでさえ、依桜くんとは互角。依桜くんが動けなくなる程の鎖は、もうほとんどなくなってしまったのです。
──ある。今のボクを押し潰すくらいの不自由。一個だけ確かに。
その時依桜くんは思い出しました。ある時、お医者様に言われた言葉を。
『もし君がプロになって、こんな無茶を続けるなら……正直、あと10年も生きられない可能性が高い』
命を賭けてサッカーをする覚悟を依桜くんは決めていました。だけど、それですら温かったのかもしれません。賭けるなんて甘かった……命を自ら捨てるくらいのことではなければ、今の依桜くんを縛る鎖にはなれないのだと。依桜くんは気づいてしまったのです。
──簡単なことだった……命なんて、初めから捨てればよかったんだ。
お医者様は忠告していましたが、もう依桜くんの覚悟は決まっていました。今引き出せているのが40%だとすれば……まだ自分は上に行けるのだと。
依桜くんにだって恐怖はあります。それでも最高に可愛い自分を知ってしまったから。依桜くんがサッカーを好きなのは、点を決めている時の自分が一番可愛いから。フィールド全体をおもちゃ箱に見立てて、その中でおもちゃ達と遊び、返り討ちにしてゴールを決める。その瞬間が最高に可愛くなれる時だと、依桜くんは知ってしまいました。
だから依桜くんはもう止まりません。それが自らの心臓にナイフを突き刺す行為だとしても、三途の川に自分から飛び込むような愚行だとしても。
依桜くんは……止まれないのです。
──あ〜あ、ボクってば本当に……生きるのに向いてないんだね。でも、ボクはもっと可愛くなりたい。世界一可愛くって……世界一強い……そんなストライカーになりたい。
そのためなら
命なんか──いらない
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