〖ブルーロックRPG〗実況プレイ   作:マルメロ

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約束

 

 突然だが視聴者諸君はルンルン気分で見に行ったサッカーの試合が一方的なワンサイドゲームになったらどうする? 私は今日の晩御飯を考えるでしょう。いやだってもう見る意味ないじゃんそんなの。

 

 てのは冗談で今日も今日とて実況やっていきますよ。今回はチームX戦からなんですが⋯⋯相手はただのモブチームなのでカットします! だってボール奪ってゴール決めるだけだもん! 

 

 一応柊君に経験値入れるために適度にパスを出してゴールを決めてもらって、後は依桜君が無双するゲームです。

 

 てことで試合結果は6ー0でチームVの勝利、柊君が2点決めて残りは依桜君が4点ぶち込みました! 攻守に渡って活躍した依桜君には大量の経験値が入ります。既にカンストしてるので振り分け出来るのは二次選考になってからですが。

 

 さてさてこれで残りはチームZ戦のみ。依桜君達チームVは既に3勝しているので勝ち抜け確定なんですが、試合に負けるとストレス値は貯まるわ経験値貰えないわでいいことないので普通に勝ちに行きます。当たり前だよなぁ! 

 

 んでここまでで思ったんですが依桜君の弱点はスタミナですかね。これはシュートやパスなんかのステータスとは別に設定されているんですが、その名の通り選手のスタミナを指します。

 

 スタミナは経験値を振り分けて強化することが出来ず、専用のトレーニングでのみ強化することができます。依桜君、別にスタミナが低い訳じゃないんですが如何せん動き回ることが多いのでどうしてもスタミナの消費が激しいんですよね。

 

 なのでチームZ戦まではスタミナを強化することに専念します。最初からやっとけって? それはそうなんだけど元から低い訳じゃなかったししょうがないしょうがない。

 

 スタミナ強化のトレーニングは単純明快、ただ走りまくるだけ! グラウンドの周りをとにかく走りましょう! ついでに柊君のスタミナも上げときたいので彼も巻き込みます。好感度高いので文句も言わずに付き合ってくれます、さすがは執事。

 

 さて、ただ走っている動画を垂れ流してもしょうもないので士道君対策を考えていきます。まず初めに言わなければいけないのですが、彼の得点能力は群を抜いています。具体的に言うとこの段階でも攻撃力Sの96とかいう馬鹿みたいなステータスをしています。その上〖超空間感覚〗とかいうペナルティエリア内でのシュート成功率が大幅上昇するというバグスキルがくっついているので得点力だけで言えばぶっちぎり1位です。

 

 なので依桜君といえど彼を完全に封じ込めるのは不可能です。というかそんなことしたらある程度止められてもスタミナの消費が半端ないので途中で息切れします。なので依桜君には守備は程々に積極的に攻撃に参加してもらいます。幸いにも士道君は攻撃にステータスを振り切っている弊害で守備力はそこまで高くありません。5点取られたら6点取り返す、勝つためにはこの作戦しかありません。

 

 ただ懸念点が一つありまして⋯⋯依桜君、点を取られそうになるとストレス値が異常に上がるんですよね。通常点を取られたり、シュートを止められたりするとストレス値が少し上がるんですが、依桜君の場合点を取られそうになっても上がってしまいます。前に乙夜君に点を取られそうになった時はたった1回で結構上がりました。

 

 つまり士道君相手に大量得点を許せば、ストレス値が溜まりすぎて不調になる可能性があるんですよね。だけど無失点ってのも相手が相手なのでほぼ不可能⋯⋯なので少しでもマシな結果になるのを祈るしかないですね。(´Д`)ハァ……

 

 “晩ご飯までの時間を体力強化に費やした。少しは強くなれたかな? ”

 

▽固有スキル〖スタミナ+〗を獲得しました

 

 という訳でスタミナ強化のスキルを獲得しました。上昇幅は1.1倍と低いですがトレーニングを重ねていく毎に上がっていきます。なのでこれからも定期的に体力強化のトレーニングはやっていきましょう。

 

 さてさて、夕飯後はモニタールームに行きましょうか。ここでは過去の試合を振り返ることが出来ますが、目的はそれではありません。ここで映像を見ているとたまにネームドキャラがやってきて会話することが出来ます。依桜君だと柊君か乙夜君が来ますね。好感度稼ぎのチャンスなのでちょっと待ってみましょうか。

 

 “モニタールームでチームWとの試合を振り返っていると柊が入ってきた。何か言いたいことがありそうだ”

 

 はい、柊君が入ってきましたね。彼の場合少なくとも向こうからの好感度は高いので乙夜君の方がありがたいですが、まぁいいでしょう。

 

「スポドリ飲む? おいしーよ」

 

「……いらない」

 

 “コイツ……いつもニコニコしててなんかイラつくんだよね。こっちは真剣だってのにさ”

 

 いや依桜君も割とニコニコ……というか笑顔は多い方だと思うけど……。ホンマ柊君と絡む時だけはテンション低いなこの子。

 

「姫宮くんさー、ボクに対してだけ冷たいよねー。もっと皆にするみたいに可愛く接してくれてもいいんだよ。それとも……案外そっちが素だったりするのかな?」

 

「うっさいな……ムカつく奴に振りまく愛想なんてないの」

 

「ふーん。……ねぇ姫宮くん、キミって天才でしょ?」

 

「は? 何急に?」

 

「いるんだよねー、サッカーをろくに知らないのに才能だけで上り詰めてくる人間。そういう天才さんを理屈で叩き潰すのが好きなんだよね、ボク」

 

 “マジで何コイツ……ムカつく通り越して殺意わきそうなんだけど”

 

 あれ? もしかして依桜君キレたら怖いタイプ? ちょっと見てみたい気もするけど……ストレス溜まりそうだからやめておくれ柊君! 

 

「例えばキミは……才能の使い方がズレてる。ストライカーとして才能は群を抜いてるのになーんでDFにこだわるのかな? そういうの、宝の持ち腐れって言うんだよ?」

 

「そろそろ黙らないとマジで殺すよ?」

 

「あはは♪ ホラホラ、そうやってすぐにムキになるところとか! DFの才能がないとは言わないけどさ、ここは青い監獄(ブルーロック)だよ? 使い方を間違えた才能は枯れるのみ……塔が崩れ去る日は近いかもね」

 

 “……ボクだって薄々わかってるよ。だけど簡単に諦められない……ボクには約束があるから”

 

 ん? なんだ、画面が暗転しました。これはもしかして……過去回想とか入る感じ? このゲーム、オリキャラにもしっかりバックボーンが用意されてますからね。それじゃ、ちょっと見てみましょうか。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 姫宮依桜は孤児だった。両親は依桜が物心つく前に離婚し、彼を引き取った母親は当時付き合っていた男と共に蒸発した。その後依桜は児童養護施設に預けられ、以降そこで暮らすこととなった。依桜にとって別にそれはどうでも良かった。記憶に無い親のことなんて興味が無いし、彼にとって養護施設での暮らしが当たり前の日常だから。

 

 だけど依桜が小学生になる頃、彼は周りとの違いを自覚した。施設育ちだということではなく、それとは別のことで。

 

「依桜君、ピンクは女の子の色よ?」

 

「でもボク⋯⋯これがいい」

 

 ランドセルの色はピンクがいい、依桜はそう言ったが職員は黒のランドセルを勧めてきた。彼女曰く、ピンクは女の子の色で男の子の依桜がそれを背負っていると変なのだとか。

 

 依桜にはそれがわからなかった。黒よりピンクの方が可愛い、ただそう思っただけなのになんで変だと言われなければならないのか。

 

 だけど春になり、小学校に通うようになると依桜は自分が周りと違うということを理解した。男の子は皆髪が短くて黒や紺のランドセルを背負っているし、スカートなんて履かない。渋々黒のランドセルを背負い、学校に行く毎日。その中で依桜は嫌という程自分は周りと違うのだと痛感させられた。幼いながら、それは彼の心に大きな枷をはめることになる。

 

「髪、伸びてきたわね。そろそろ切ってあげるわ」

 

「⋯⋯うん」

 

 本当は髪を伸ばしたかったし、可愛い服を着たかった、クラスの女の子達が背伸びしてメイクの話をしているのに混ざりたかった。別に女の子になりたい訳じゃなくて、戦隊ヒーローが好きで毎週欠かさず見ていて、好きな漫画のジャンルはバトル漫画。男らしいとか女らしいとかはどうでもいい。ただ自分の好きという気持ちに従っているだけなのに、自分が酷く歪で醜く思えた。

 

 そんな風に周りに合わせて過ごし、気づけば小学2年生になっていた。相変わらず自分の気持ちに蓋をして、自分を押し殺して生きている。依桜の人生に転機が訪れたのは、5月になって体育の授業が始まった時だった。

 

「じゃあチーム分けて紅白戦な!」

 

「⋯⋯」

 

 その日の種目はサッカー、男子を2チームに分けての試合形式の授業だった。サッカーになんて興味は無いし、学校自体もつまらなかったので適当に流そう。そう思ったが依桜の運動神経はクラスでも随一だったので、飛んでくるボールに反応するだけでそこそこの活躍が出来る。そうしてるとだんだん楽しくなってきて、ゴール前に走ったところにボールが飛んできた。依桜の頭の僅かに上、届かないかもしれないけど一か八かで宙を舞い、オーバーヘッドでゴールに叩き込んだ。

 

 気づけば自然と笑みが零れていた。ゴールに突き刺さるボール、悔しがる相手チーム、喜ぶ味方、全てが依桜にとって初めての感覚だった。授業が終わってもそれは残っていて、久しぶりに学校が楽しいと思えた。

 

「ねぇねぇ姫宮君! サッカーやってるの?」

 

「え?」

 

 自分の机で次の授業の準備をしている時、不意に横から話しかけられた。クラスに友達もいない依桜は話しかけられることは殆どないので、びっくりして声のした方に振り返る。

 

「サッカー! やってる?」

 

 黒髪の女の子が一人、目を輝かせて依桜を見ていた。えっと、なんて名前の子だったっけ? と考えているとそれを察したのか向こうから名乗ってくれた。

 

瀬名透子(せなとうこ)! で、サッカーやってるの?」

 

「えっと⋯⋯今日初めてやったけど」

 

「初めて!? それであれだけ⋯⋯」

 

 ポカンとしている依桜を放置しブツブツと呟きながら何やら考えている透子。30秒程経っただろうか、結論が出たのか透子は依桜に顔を近づけてニコッと笑った。

 

「ねぇ、今日学校終わった後時間ある?」

 

「⋯⋯あるけど」

 

「やった! じゃあ今日は私に付き合ってね!」

 

 それだけ言うとスキップしながら透子はどこかへ行ってしまった。依桜は彼女がいなくなってもキョトンとしていた、まるで嵐が過ぎ去ったかのようだ。

 

 そして放課後、約束通り透子は依桜を迎えに来た。断っても良かったが予定がないのは本当なのでとりあえずついて行ってみた。どうせ施設に帰っても居心地は良くない。

 

「ここだよ!」

 

「サッカーのグラウンド?」

 

 学校から20分程歩いて着いたのはサッカーグラウンド。中では子供達がユニフォームに着替えて、走ったりストレッチしたりと準備運動をしていた。透子は依桜の手を引いて中に入った。

 

「お待たせ、お父さん!」

 

「来たか透子⋯⋯その子は?」

 

「クラスメイト!」

 

 透子はサングラスをかけた強面の男性に話しかける。どうやら彼女の父親のようで、サングラスを外して笑みを浮かべたが、隣の依桜を見ると不思議そうな顔に変わった。

 

「一緒にやらせてあげたいんだけど、いいでしょ?」

 

「⋯⋯え?」

 

 思わぬ透子の言葉に依桜は目を丸くした。サッカーグラウンドに来た時点である程察せたものの、いきなりプレーさせようとするとは思わなかった。精々見学程度かと。

 

「⋯⋯他ならぬ娘の頼みだ、いいぞ」

 

 少し考えた透子の父だが、快く頷いて認めてくれた。それを聞くと透子は嬉しそうに笑い依桜の手を引いて練習している子供達のところに駆け出した。流されっぱなしの依桜だが、授業でやったサッカーがそこそこ楽しかったのは事実なので黙ってついて行った。

 

 そして軽く自己紹介をして練習に参加した。運動神経はいいのでそこそこついていけるが、サッカー自体は初心者。トラップは難しいし、ボールを奪うのも簡単じゃない、パスも思い通りに出せない。四苦八苦しているとゲーム形式の練習になり、依桜は透子と同じチームになった。ミニコートの中で5対5のゲームだ。

 

「も〜らい!」

 

 相手のパスをカットした透子はちらっと依桜の方を見ると、前線にボールを上げた。敵味方入り乱れボールを確保しようとする中、一人がその隙間を縫ってゴール前に抜け出した。

 

「⋯⋯! 速いな⋯⋯」

 

 依桜だった。正確に選手間をすり抜け、尚且つ速い。その動きに透子の父は意外そうに表情を動かした。そしてゴール前に飛んできたボールを空中でバイシクルシュート。キーパーもいないのでボールはゴールに突き刺さった。

 

「やるじゃん姫宮君! さすが私が見込んだだけはあるね!」

 

「⋯⋯えへへ」

 

 透子が駆け寄って褒めてくれた。思わず顔がにやけて笑い声が漏れてしまう。息苦しい現実を生きている依桜にとって、初めて見つけた自分を認めてくれる人。それが透子だった。

 

 そこからはトントン拍子、依桜の才能を認めた透子の父親に是非チームに入って欲しいと誘われた。しかし施設育ちの依桜に月謝を払うお金はない、それを言うとお金はこっちで何とかすると言ってくれた。君の才能にはそれだけの価値があると。

 

 そうして透子の父が経営するチーム、名古屋ユナイテッドの一員となった依桜はサッカーの練習に精を出し、持ち前の才能もありどんどん上達していった。学校でも透子と一緒にいることが増え、生まれて初めての友達ができた。

 

 だけど自分の内に秘めた思いだけは言えずにいた。サッカーは楽しいし、透子と一緒にいると安心する。だけどどうしても引っかかってしまう、なによりそれを透子に打ち明けられない自分に腹が立った。

 

 そして二人は3年生になり、学校が終われば真っ先に練習場に向かい、サッカーに熱中する日々を過ごしていた。この頃には地域では透子と共に天才コンビとしてちょっとした噂になっていた程だ。そんなある日、学校から練習場に向かう途中で透子が問いかけてきた。

 

「ねぇ依桜、最近元気なくない?」

 

「⋯⋯え?」

 

 突然そんなふうに言われ、依桜は表情を強ばらせる。透子はこっちの考えていることを見透かしているくることが多々あった。それをサッカーに活かして相手のパスコース、ドリブルの進路を潰すディフェンダー。それが透子のプレースタイルだった。

 

「なんか悩んでるなら言ってよ、あたしは依桜のパートナーでしょ?」

 

「⋯⋯」

 

 心配そうに見つめてくる透子の目を見ると、隠し事をしている罪悪感みたいなものが込み上げてくる。

 

 ──全て話して、透子に知ってもらった方がいいのかな? でももしそれで透子に嫌われたら? 

 

 そんな考えが頭を駆け巡る。体温が冷たくなり、目の前がぐにゃっとなる感覚。多分息も上手く吸えてない。ここで話さなかったら透子を信用してないことになる。でも話したら嫌われて、二度とサッカーできなく──

 

「大丈夫、あたしは依桜の味方だよ! だってパートナーだもん!」

 

「透子⋯⋯」

 

 優しく依桜を見つめる透子の瞳を見て、依桜は全て話した。本当は髪を伸ばして、可愛い服を着て、ピンク色のランドセルを背負って学校に行きたいことを。ずっと押し殺していた気持ちだけど、もうこのまま生きるのが苦しいとありのままの気持ちを伝えた。透子は依桜が話してるのを黙って聞いていた。黙って依桜の話を聞いていた透子、そして話終わると安心したようにため息を吐いた。

 

「なぁんだそんなことか」

 

「そんなことって⋯⋯ボクは真剣に⋯⋯!」

 

「じゃあさ、あたしのランドセルと交換する? あたしピンクより黒の方が好きなんだよね」

 

 そう言うとランドセルの中身を地面に置き、「はい」と自分のランドセルを差し出してきた。至って普通に言ってのける透子に依桜はあっけにとられていた。

 

「で、でも⋯⋯ボクは男だからピンクのランドセルはおかしいって」

 

「関係なくない? ピンクが好きならピンクにすればいいじゃん。サッカーだってシュートが上手いからってフォワードやらなきゃいけないことはないでしょ? キーパーが好きならキーパーやればいいし、ディフェンダーをやったっていい。自分がどうしたいかが一番大事でしょ」

 

「ね」と笑顔を向けてランドセルを差し出してくる透子。依桜にとっては初めて自分を理解してくれる人。透子は依桜にとって自分を認めてくれるし、理解してくれるパートナーになった。気づけば自然と涙が溢れていた。

 

 それから依桜は自分に正直に生きるようにした。髪を肩まで伸ばして、透子に貰った可愛い服を着るようになった。透子は透子で可愛い服よりもラフな格好を好んでいたので、服の交換なんかも良くしていた。サッカーの方も二人合わせて実力をつけ、地元で一番サッカーが強い中学から直々にスカウトが来る程に成長していた。名古屋ユナイテッドは小学6年生までのチームだったので、二人でその中学に入学。

 

「ねぇ透子、今日オフの日だよね? スタバの新作飲みに行かない?」

 

「ええ〜。あたし自主練したいんだけど、ていうか依桜もやるでしょ?」

 

「まぁね。その後でいいからさ、付き合ってよ」

 

 中学2年生になった二人はクラスでも目を引く美少年、少女コンビになっていた。依桜は入学の際に一応は男子の制服を買ったのだが、やっぱり可愛くないとの理由で透子にズボンを渡してスカートを貰っていた。ブレザータイプの制服なのでズボンとスカートを交換しても違和感は少ない。

 

「ナイスカット透子!」

 

「決めちゃえ依桜!」

 

 透子のディフェンスは中学レベルを超えていた。優れた洞察力と空間認識を用いて相手のパスコースを見極め、相手の視線や周囲の動きからドリブルを潰す。そうして彼女がボールを奪えば即座に前線の依桜に運ばれる。乱れた守備の隙間を縫う超速カットインで相手の裏に抜け出し、飛んできたボールは必ずゴールに叩き込む。最強コンビと呼ばれる二人のプレーで大会を勝ち進み、愛知県大会の決勝までやって来た。

 

「ちゅーす、ぶっ潰してやんよ最強コンビさん」

 

 決勝戦の相手は県内で有名な忍者ストライカー、乙夜影汰率いるチーム。接戦が繰り広げられたが、最後は透子が守り依桜が決めるという黄金ルートで決勝点を上げ、依桜達は全国大会への切符を手に入れたのだった。

 

「やったね透子! ボク達最強!」

 

「うん、そうだね」

 

 帰り道、二人で歩いていた依桜は隣の透子のテンションが低いことが気になった。県大会で優勝したというのに、なんだかあまり嬉しく無さそうだ。

 

「ねぇ依桜、高校に行ったらさ⋯⋯あたし達一緒にプレー出来ないんだよ」

 

「あー、確かに中学までは男女混合だけど、高校からはそうはいかないからね」

 

「なんかそれは⋯⋯嫌だな」

 

「透子⋯⋯」

 

 透子の元気がなかったのはそれが原因なようだ。性別なんて関係ない、やりたいことをやろうというスタンスで二人でやってきたが、それでもどうしても性別の問題は付きまとってくる。中学卒業まで後一年と少しだ。

 

「ああもう、やめやめ! 悩むなんてあたしらしくない! 要はあたしが女子サッカーで活躍しまくって男子と一緒にやれるように認めさせればいいんでしょ!」

 

「ええ⋯⋯ちょっと心配したのに自分で解決するの?」

 

「だってそうでしょ! ウジウジ悩んでたって意味無いし、くだらない制度なんてあたしがぶっ壊してやる!」

 

 落ち込んでいたはずなのにいつの間にか立ち直っている。依桜は透子らしいなと少し笑ってしまった。こういうところに自分は救われたのだと。

 

「あたしが守って依桜が決める! これからもあたし達二人の最強コンビで勝ちまくって、目指すはW杯優勝だよ!」

 

「⋯⋯!! うん!!」

 

 夕焼けの空の下、二人で誓いあって拳を合わせる。小学生の頃から一緒にいる相棒であり、親友。まずは全国大会優勝、その目標を胸に依桜は透子と別れて帰路についた。

 

 そしてその日の夜、依桜の元に一本の電話がかかってきた。その内容は⋯⋯

 

 ──透子が信号無視のトラックにはねられ、病院に運ばれたというものだった。

 

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