──ドイツVSイタリア、及びフランスVSイングランド当日。
「……ッッ……!! ハァ……ハァ……!!」
「カ、カイザー!! もうその辺にしないと! 試合まで残り二時間もないですよ!」
試合まで残り時間僅かだというのに、カイザーは汗を流しシュート練習を続けていた。静止するネスを振り払い、カイザーは尚もボールを蹴り続ける。
(依桜……俺とお前が同類だとすれば、次の試合……勝った方の総取りだ……! 負ければ惨めに這いつくばり、あのクソみたいな日々に戻ることになる……!)
「カイザー……」
「……いいかネス、依桜をクソ殺す……それが俺達の最大目標だ。だが……ユーヴァースにはヤツがいる」
「ヤツ……? あ……! ロレ公ですか?」
「そうだ。依桜を出し抜き、クソ金歯のマークを掻い潜り、未完成の新兵器をぶち込む。クソハードなミッションだが、やるしかない」
カイザーと同じく新世代世界11傑に名を連ねるDF、ドン・ロレンツォ。あのカイザーですら警戒する名選手に、ネスは息を飲んだ。
「わかってますカイザー。ロレ公と……依桜は、必ず僕が……!」
「それでいい。お前は俺だけを信じ、練習通りのパスを出せ。俺が不可能を可能に変えてやる」
打倒ロレンツォ、そして依桜を殺すこと。ただそれだけの目標……しかしかなりの難易度を誇るミッションにカイザーとネスは挑もうとしていた。
──そして試合開始直前。
『来るぞ! レギュラー発表!』
『姫宮とカイザーは確定だろうな。100%またボール奪い合うけど』
『頼む! 姫宮ハットトリック決めてくれ!』
『御影玲王好きだから選ばれろ!』
『バカ斬鉄の瞬足は絶対いるでしょ!』
世界中が注目する中、ドイツ棟ミーティングルームにてユーヴァースに挑む精鋭11人が発表されようとしていた。
「ではこれより次戦、イタリア『ユーヴァース』戦に挑むスタメン11名を発表する」
選手達、特に今まで試合に出られていない面々に緊張が走る中、ノアはゴールを守る守護神の中から口にしていく。
「まずはGK、バッハマン」
「次にDF二枚、左にビルケンシュトック。そして右に……日不見愛基」
「……!!」
左
右
「この試合重要な1VS1の
「あいあい。やーっときたね俺の出番♪ 先行ってるぜ清羅ん」
「……あいよ」
〖日不見 愛基〗
攻撃力A 81
シュートB 76
ドリブルA 83
パスB 78
守備力S 90
速さA 80
総合評価A 84
「そして両SB……右に七星虹郎、左に剣城斬鉄」
「DMFは烏旅人。そして中央トップ下はネス」
「左のMFに閃堂秋人、右に御影玲王」
「な……!?」
「うっし!」
前回の試合で途中出場し、ゴールを決めた閃堂。そんな彼がグリムからポジションを奪ったのだ。絶句しているグリム、そしてガッツポーズで喜びを表現している閃堂を見てネスは内心焦っていた。
(これでもう、前線にカイザーの味方は僕しか……)
「……」
〖閃堂 秋人〗
攻撃力A 88
シュートA 86
ドリブルA 80
パスB 78
守備力B 75
速さA 85
総合評価A 85
「最後に2トップ……左にカイザー、右に姫宮依桜。レギュラーは以上だ」
左
右
「ユーヴァースは伝統的に守備力の高いチームで、特にスナッフィーは戦術オタクで有名だ。つまりこちらの二枚看板、カイザーと姫宮は徹底的に対策されているはず……それを乗り越えた方がこのチームの王だ」
「……」
「ねぇレオオ。バカイザー、なんか今日は無口だね?」
「お遊びは終わりってことだろ。ユーヴァースもそうだけど、アイツも本気でお前を潰しに来るぞ。気をつけろよ、姫宮」
今日はいつものダル絡みがないので、不思議に思った依桜は隣の玲王に問いかけた。彼の言うことは当たっているだろう。もはやカイザーには依桜相手に余裕ぶっている暇はないのだ。
「さっきも言ったがこの試合重要になるのは1VS1の局面。統率された組織力を破壊する個の力が勝負の行方を左右するだろう」
決戦の時が迫る。死闘に挑む選手達にノアは最後の言葉を投げかけた。
「さぁ
フィールドへの通路をスタメンに選ばれた選手達が進んでいく。先頭を歩く依桜にカイザーが視線は向けずに言った。
「忘れるな、ゴールの数で勝負だ。逃げんなよ依桜」
「勝手に言ってなよ。もうアンタとか眼中に無いから」
「……あ?」
言い返してくると思いきや、興味もなさそうにそっぽを向いた依桜。それに対し僅かに顔を歪ませたカイザーだが、すぐに思考を切りかえた。どのみちこの試合、勝った方の天下になるのだから。
「お久しぶりです姫宮くん。あの時のリベンジに来ましたよ」
「逆襲逆襲」
「ニコニーお久! くろなんはこの前ぶり! 元気してた?」
「ん、元気満タンだ」
依桜がフィールドに入ると真っ先に二子と黒名が声をかけてきた。二子は前髪の奥に瞳に闘志を宿らせ、黒名も依桜に勝つべく特訓を重ねてきたようだ。
「活躍してるね姫宮クン♪ で、君がお姫様大好きカイザーくんだね!」
「……消えろ、クソポニテ」
「まぁまぁそう言わずに、挨拶代わりのタロット占い! ……お、塔のカード! 姫宮くんとお揃いだね! 真っ黒な空から振り下ろされる雷の一撃……高い塔はガラガラと崩れ、権力を象徴する王冠は投げ出される。もしかして皇帝を潰すなら今なのかな?」
そしてカイザーを煽り倒す柊。当のカイザーは無視を決め込んでいるが、柊はお構い無しだ。何故か持っているスマホでタロット占いをし、その結果をカイザーに見せつけている。
「……玲王」
「俺に構うな……お前と話すことはないって言ったろ、凪」
各所で互いのチームが交流をしている中、凪は一直線に玲王の元へと向かっていく。話しかけられても背を向けている玲王だが、凪はそれでも言葉を紡いだ。
「わかってる。だから言葉じゃなくて、俺のサッカーを見てくれ。新しい俺を」
「…………」
それだけ言うと、凪は自身のポジションへと歩いていく。話し合いはもはやできない、今の玲王と向き合うためには勝つしかない。そうしなければ話す資格すらないと凪は覚悟を決めていたのだ。
『さぁ!
バスタード・ミュンヘン formation
ユーヴァース formation
両チームがポジションにつき、後は試合開始のホイッスルを待つばかり。依桜はその場で軽いジャンプをし、最後のウォーミングアップをする。
(覚悟は決めた……トレーニングも積んできた。後は……実践で証明するだけ!)
KICK OFF!!
ホイッスルが鳴り響くと同時に試合が開始された。ネスがカイザーにボールを預け、そのまま二人で攻め上がる。
「やろうぜエンペラー」
「引っ込んでろクソ白髪」
速いプレスでカイザーに当たる凪。彼の体格に若干体勢を崩されながらも、カイザーはネスへとボールを預け自身は前線に駆け上がる。
「二人でしかパス回せないのバレバレ♪」
(クソポニテ……! プレスが速い!)
ボールを受け取ったネスに今度は柊がついた。柊はネスのドリブル突破を警戒しつつも、カイザーへのパスコースを完全遮断するポジショニング。抜かれるのは最悪OK、カイザーに出されるのが一番まずい。
(いや……コースはまだある……!)
「……!? どこを狙って……!」
柊とのマッチアップを避けたネスは前方にスルーパスを出した。しかしそこには誰もいない、敵にカットされて終わりだ。だがそうはならない、何故ならネスのパスはワンバウンドした後軌道が変わり、右に逸れたのだから。
「いい子だネス」
「はい! やっちゃってくださいカイザー!」
そこにカイザーが走り込んでいる。ゴール前、やや距離はあるが十分カイザーインパクトで狙える距離だ。ワントラップでゴールまでぶち込む、そのビジョンがカイザーには見えていた。
「だぁー。相変わらずの仲良しコンビさんねぇ、ミヒャ」
「……!!?」
「お前年俸3億っしょ? エースでOK?」
だがネスのパスがカイザーに届く前にロレンツォがカットした。Uー20カテゴリで最強クラスのDF、その実力は伊達じゃない。
「笑うなクソ金歯、不快なんだよフルキン野郎が」
「いいだろ全金歯、この世は金が全てで真理確定OK?」
パスカットされてもカイザーは驚かなかった。警戒していても、ロレンツォを完全に出し抜くのは不可能だと最初から理解していたからだ。両者の実力はほぼ互角、何回もやり合えば有利なのは攻撃側であるカイザーだ。
「だぁー。1750万……1100万……2550万……3900万……で、7500万と1億5500万。アイツらいいねぇ♪ んじゃ、ガブッと行っちゃおユーヴァース」
ドイツブルーロック勢を指差しで数えると、ロレンツォは自らドリブルを開始した。自陣ゴール前から一気にボールを敵陣へと運んでいく。
「行かせねぇよお喋り金歯!」
「7500万……バイビー」
「くっっ……!」
止めに入った玲王をあっさりと抜き去るロレンツォのドリブル。CBにも関わらず、ものすごいテクニックだ。
「俺が撃ち殺したる非凡ゾンビが……!」
「やるねぇ3900万」
「ナイス足止めだ烏!」
「……! おっと、二人合わせて1億1400万」
烏の足止めからのすぐに追いついてきた玲王のプレス。バスタード・ミュンヘンの中盤を担う二人を同時に相手するのは流石のロレンツォでも多少手こずる。
「ならこっちの
「OK……!」
ロレンツォは左サイド、元Uー20代表の超健人へとパスを出す。そしてすぐさま超から雪宮へと流れるようにボールが動いていく。かなりの連携、少なくとも一朝一夕では到底不可能だ。
(なるほどな……ロレンツォがボールを奪ったら二子とポジションを入れ替えてカウンター! これが世界級のCBを中心とした組織力ってヤツか!)
自陣に戻りながら玲王は思考する。ユーヴァースの中心にロレンツォがいるのは間違いない。今、最も警戒されているのは間違いなく彼だ。だが玲王だから見える穴がある。1トップを任されているあの男がまだ動いていないのを玲王は感知していた。
「止めるべ雪宮さん!」
(……まだだ。今はまだ、スナッフィーの
左サイドをドリブルで抜ける雪宮は七星とのマッチアップを避け、規律通りに中央の柊にパスを送る。そして更に柊から黒名へ。左サイドの突破から一転、右サイドへとシフトチェンジした。
「お上品な攻撃だこと♪」
「想定内想定内」
黒名に日不見が当たる。それを確認した黒名は冷静にゴール前、中央へとクロスを送った。その先にはここまで上がってきていたロレンツォが走り込んでいる。
「撃ってみろやゾンビマン」
「だぁー。俺ァ捨て駒でOK?」
(……! コイツが狙いじゃない……!?)
黒名のパスは烏のマークが激しいロレンツォを通り越し、その先を走る凪へと向かっていく。全員の意識がロレンツォに向いていた分、彼へのマークは手薄になっていた。
「ナイスパス三つ編み」
「天才警戒レベルMAX!」
「斬鉄……!」
「モロバレなんだよこの位置は!」
「玲王まで……ここ同窓会?」
しかしロレンツォを囮にした凪の抜け出しに対応出来ている二人。玲王と斬鉄が凪にプレスをかけに行く。ユーヴァースの戦術を冷静に分析し、先読みした玲王とただただ凪を一番危険と元チームメイトの勘で察知し、爆速で追いついてきた斬鉄。二人の論理は全く異なるものの、たどり着いた結論は同じなのだ。
「突っ込むなよ斬鉄」
「イエスウィーキャン」
雑なディフェンスは凪に通用しない。超絶トラップで簡単に置き去りにされてしまうだろう。ゆえに玲王は斬鉄にも忠告し、凪のトラップに対応できるポジショニングをとっていた。
「だろうね、玲王」
(……ダイレクトでヒールリフト!?)
「やっぱお前は優秀だ……だけど」
黒名からのパスをダイレクトで踵に挟む打ち上げた凪。ボールは凪から左へ流れ、スルーパスとしてPA内へと転がっていく。
「俺だって進化してる」
「最高です凪くん」
(二子……!? CBにいたはずじゃ……!? つか俺と斬鉄がここに来ることまで予測して対策してたのか……!?)
最後尾にいたはずの二子がここまで上がってきていた。凪からのパスを二子はそのまま抜け出した凪にワンツーの形で送り返した。完全に凪は玲王と斬鉄の裏を取ってしまったのだ。
(いや……そんなわけない! だとしたらこのワンツーはアドリブ……! 完成されたスナッフィーの
凪はキーパーと1VS1の場面を作り出した。一か八か飛び込んでくるバッハマンを前に、凪は膝でパスをトラップした。そして宙に浮いたボールを地面に叩きつけバウンドさせ、バッハマンの頭上を越えさせると自らも横から抜けボールに追いついた。
「なんだその超絶トラップ……!?」
「やべぇ……俺今世界で一番熱いかも」
神業トラップでキーパーをもかわすと、凪は無人のゴールに向けて足を振り抜いた。もはやゴールを守るものはおらず、シュートはゴールネットを揺らす。
「ダメダメ、ボクより目立つのとか許さないから」
「……!?」
「姫宮くん!?」
決まった、と思われたその時だ。飛び込んできた依桜が凪のシュートを完全にブロックしてしまった。ラインスレスレで着地したボールを依桜が確保する。
(読んでた……!? いや、ありえない……! 即興で作った僕と凪くんのコンビネーションを完璧に予測するなんて不可能……! だとしたら、ただ反応して飛び込んだだけ!?)
「マジかお姫さん」
「さぁ、行っくよ♪」
「……!? パスコース警戒!!」
確実に一点入ったと思っていたところのシュート阻止。一瞬固まったフィールドだったが、二子の声でユーヴァースが動き出した。依桜からのパスをカットすべく、フリーの選手をケアする。
「……!? 突っ込んでくんのお姫さん?」
しかし依桜はPA内からドリブルを開始した。そのまま凪に向かって突っ込んでいく。一見、取られたら失点確実の危険なプレーに見えるが依桜の意図は誰にもわからない。
「俺が奪えばビッグチャンス」
「取れたらね♡」
(は……!? なんだその超反応!? 切り返しエグッッ……!?)
守備に入った凪を一瞬で置き去りにする依桜のドリブル。凪が足を伸ばすとほぼ同時にボールを動かし、逆方向へと切り込んで行った。凄まじい反射速度だ。
(ここでカウンターを貰うのはまずい……僕が少しでも足止めを……!)
「ホラ、トロトロしてたら置いてくよ!」
(クッッ……! 考える時間をくれない……!?)
二子をかわし依桜は自陣から中央突破していく。この時点で誰もが気づいていた、前の試合とは明らかに違うと。
「パターン通りじゃダメです! 数で攻めないと止められない!」
「御意御意!」
二子の指示を聞いて今度は黒名がプレスをかける。スライディングで依桜を止めようとするが、彼はボールを浮かして簡単にかわしてしまった。
「うぇ……!?」
「いや術中……!」
だが次の瞬間には柊がチャージに来た。黒名が体勢を崩し、そこを柊が刈り取る連携プレーだ。体格差で崩される依桜だが、手を地面に置き回転することで右サイドの七星へとパスを送ることに成功する。
(なんだ……今までの姫宮くんと明らかに違う……! 反応速度が段違いに上がってる……! この短期間で一体何が……!?)
「行くべ姫宮さん!」
パスを受け取った七星が依桜を視界に捉える。既に黒名と柊の裏に抜け出していた依桜目掛けて強めのパスを送った。
「クソ……!!」
「……速い!?」
七星とのコンビで中盤を抜けていく。今までの依桜と比べてもパスを返す速度、抜け出す速さが段違いだ。それに七星は必死について行こうとするが……
(と……トレーニングの時とは速さが桁違いだべ……!)
タダでさえ依桜について行くのには苦労していたのに、更にペースアップするのはキツすぎる。一秒でも気を散らしたら置いていかれてしまう、それほどの速さだ。
(ヤッッバ!! 頭ハンマーでかち割られたってくらい痛いし、身体重くて死にそうだけど!! 感覚ビンビン身体軽すぎ!! 意味わっっかんないこの感覚!! 最高♡)
敵陣ゴール前まで来た依桜は再度七星にボールを預けると自分は最後のDFの間を抜けていく。
「いやちょ……! 速すぎるべ……!!」
「今だここ!!」
「グッッ……!!」
七星がトラップを乱したところをユーヴァースDFに刈り取られてしまった。ルーズボールを確保するために周囲の選手が動き出す中、いち早くたどり着いた者がいる。
「引き継ぎしたる下僕業務。後は任せとけや」
「烏さん……! お願ぇします!」
ルーズボールを確保した烏はボールをキープしつつ、前を走る依桜の位置を確認する。そして依桜がDFの間を抜けるタイミングで浮き玉のスルーパスを出した。
「いいね下僕達!」
「だぁー。ミヒャじゃなくてお前が本物エースでOK?」
「NOに決まってんだろクソ金歯。どけ、依桜は俺の獲物だ」
完全に抜け出した依桜にカイザーとロレンツォが喰らいついてきた。11傑によるWディフェンス。ロレンツォが依桜のシュートコースを削り、カイザーは直接依桜に身体をぶつけてきた。
「クソお邪魔しますpart3……
「いいとこ来たねミヒャちゃん!! お前ボクのおもちゃだから!!」
「は?」
カイザーに身体をぶつけられ体勢を崩す前に依桜はアクロバットのように翻した。そしてタックルのために姿勢を低くしているカイザーの頭に手を置くと、そのままパス目掛けてオーバーヘッドシュートを狙いに行く。
「ホラホラ!! シャッターチャ〜ンスイェイ♡」
(コイツ……!! イカれてんのか……!!?)
あまりのことに困惑するカイザーの上で依桜はあろうことか、フィールドに設置されているカメラに目線を向けると片手でピースサインを作り目元に持っていき、更に可愛くウィンクをした。そしてそのままの流れで足を振り抜く。
カイザーの頭上で、更にオーバーヘッドで放たれたシュート。ロレンツォも間に合わず、シュートはゴールへと伸びていく。
(なんだこのボール!? 無回転……? つーかブレかたエグすぎだろ……! 取れるかこんなモン……!!?)
GOAL!!!
左へ右へ上へ下へ、まるで落ちていく花びらのように激しくブレるシュートはキーパーの反応を許さずゴールネットへと突き刺さった。
『な、なんということだァァァ!! 試合開始から5分足らず!! 姫宮依桜が衝撃の先制ゴールを叩き込んだァァァ!!』
「クッソ……持ってかれた。進化早すぎでしょお姫さん」
「ヤバすぎますって……」
「チートチート……!」
「エグいねぇ♪ 1億5500万……倍以上の価値はあるOK?」
点を決められたユーヴァースは呆然としていた。当然依桜とカイザーのWエースの対策は徹底的に行ってきたが、それを更に上回る進化速度でゴールを奪われてしまった。これが姫宮依桜、これが世界一のストライカーになる器なのかと。
「あ……ありえない。カイザーの頭上で……それもオーバーヘッドであんなシュート……」
「クッッッソが…………!!」
唖然と立ち尽くすネスの隣で怒りと悔しさから彷徨するカイザー。自分の頭の上で、あんなに屈辱的な形で決められたのだから無理もないだろう。
「ハァ……ハァ……あは♪」
「姫宮……お前」
「どーしたのレオオ? もっと喜んでよ!」
カメラに向かってパフォーマンスをしていた依桜の元に駆け寄る玲王。楽しげな依桜と対称的に、玲王は顔を青くして冷や汗を流していた。
「いや……だって……」
「……ッ! ゲホッゲホッ……!!」
「……! そんな無茶してたら本当に死んじまうぞ!!」
大粒の汗と共に吐血した依桜を見て玲王は本気で忠告した。今の依桜の状態はどう見ても尋常ではない。いつ死んでもおかしくないような状態だ。そんなこと、医者ではない玲王にもわかる。にも関わらず、依桜は笑っていた。
「いいのこれで……ボクにはこの死んじゃうくらいの苦しさが必要だから。今、最高に楽しい気分なんだから!」
「お前……そこまで」
血を拭いながら語られた依桜の覚悟に玲王は息を飲んだ。自分にはそこまでの覚悟、決められるかわからない。
「噂通り……いや、それ以上の逸材だね姫宮依桜。これは……ちょっとヤバいかもね」
依桜のゴールには流石のスナッフィーも危機感を覚えざるをえなかった。まだ出るつもりはなかったが、やむを得ないと。
「このまま好きにはさせないよドイツの
試合開始直後にも関わらず、スナッフィーが出場を決めた。それほど依桜の実力を高く見ているのか……だが少なくとも、試合は始まったばかり。このまま依桜が爆発するのか、それとも他の才能が花開くのか。結末はまだ誰にも予想できない。
『姫宮依桜 スキルパラメータ&プロフィール一覧』