〖ブルーロックRPG〗実況プレイ   作:マルメロ

61 / 80
VSイタリア

 

 

「やっっば……!! あのミヒャエル・カイザーとドン・ロレンツォを出し抜いて、オーバーヘッド無回転!! 神でしょ神!!」

 

 

 モニタールームで依桜のゴールに盛り上がっているアンリ。その隣では絵心がいつものごとくカップ焼きそばを口にしていた。

 

 

「はしゃぐな。今のアイツの全力だ、これくらいできて当然」

 

「でもあのプレー、間違いなくワールドクラスです。近いうちに世界一のストライカーが誕生するかもしれませんね」

 

「……まぁ、このまま何事もなくいけば可能性はある。が、俺にはそう上手くいくとも思えない」

 

 

 依桜のプレーを認めつつも、絵心の表情は険しかった。それに疑念を覚えたアンリが単刀直入に質問する。

 

 

「どういうことですか?」

 

「姫宮依桜のあの様子じゃ……残された時間は長くない。世界一になるのが先か、命が尽き果てるのが先か……とても分のいい賭けとは思えないね」

 

「……!?」

 

 

 アンリが慌ててモニターに視線を戻す。一見平然を装ってはいるが、確かにさっきもゴール直後にうずくまっていた。依桜の状況は知っていたがそこまでとは思っていなかった、と無邪気にはしゃいだ自分を戒める。

 

 

「……なら止めた方が」

 

「こればっかりは姫宮依桜本人の問題だ。俺が止めたところでアイツ自身の考え方が変わらなければ、同じことを繰り返すだけになる」

 

 

 食べ終わったカップ焼きそばの空箱に手を合わせながら絵心は言う。依桜の命は依桜のもの、その場では無茶を止められてもその後また同じ無茶をしていては意味がない。

 

 

「気づけ……そこで満足するな姫宮依桜。死への崖っぷちを経験しているお前にこそ見える、先の景色があるはずだ。お前が世界一になるためのラストピースはそこにあるかもしれないぞ」

 

 

 モニターに映る依桜に視線を向ける。エゴイストだらけのブルーロック、その中でも稀有な才能を持つ姫宮依桜という生物は、絵心の興味を惹きつけるには十分すぎる逸材だった。

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 〖姫宮 依桜〗

 

 

 攻撃力SS 106

 シュートSS 105

 ドリブルS 93

 パスB 76

 守備力SS 102

 速さS 97

 

 総合評価SS 104

 

 

「……ホンマに大丈夫なんやろな?」

 

「だから大丈夫だって! 皆心配しすぎ!」

 

「でも信じられないっぺ。すっげぇ人だとは思ってたけど、まさか命懸けでサッカーをやってたなんて」

 

 

 依桜を囲み安否を確認するバスタード・ミュンヘンのブルーロック勢。当の本人は自分の消耗など全く意に返していないが、傍から見れば痩せ我慢とも受け取れる。

 

 

「俺はかっこいいと思うぞ、お前の覚悟。まぁ心配でもあるが」

 

「ありがと斬ちゃん。今のセリフもかっこい〜!」

 

「そ、そうか?」

 

 

 依桜の言葉に照れる斬鉄。そんな様子を遠巻きから、カイザーが睨みつけるように見ていた。隣のネスは焦りと驚きからか表情を乱しているが、カイザーはピクリとも顔を動かさない。

 

 

(アイツは完全に狂ってる……どこの世界に命を捨ててまでサッカーをやるバカがいるんだ……!! ニンゲンですらない、アタマのイカれたクソ怪物……!!)

 

「カ……カイザー。どうすれば……あんなの全くの想定外です!」

 

「黙れ……やるしかねぇんだよ。依桜が覚醒した以上、俺達に残された選択肢は一つしかない。未完成の新兵器を成功させ、依桜を殺す……そのために俺はここにいる」

 

 

 元々は拮抗していた二人の力関係は依桜の覚醒によって完全に破壊された。カイザーがここから盛り返すには、依桜と同じく……あるいはそれ以上に覚醒するしかない。可能性があるとすれば開発中の新兵器だけだ。

 

 

「ロレンツォ含め、ユーヴァースの意識は依桜に向く。その隙を狙えば……」

 

『おおーっと!! ここでユーヴァースはいきなりのメンバーチェンジだ!!』

 

「……!?」

 

 

 カイザーの言葉を遮るように選手交代を告げるアナウンスと実況がフィールドを包んだ。選手交代、依桜にかき乱された戦局を変えるにはいい手になり得るかもしれない。実際そのように使われるケースも多々ある。しかし今回は交代選手の格が違った。

 

 

『な……なんと!? ここでユーヴァースの指導者(マスター)、スナッフィーが早くも登場です!!』

 

 

 交代枠はなんとスナッフィー。一試合で3分間しか行えないスターチェンジシステ厶をここで切ってきたのだ。大胆な戦略に敵味方問わず選手達は驚いている。

 

 

「そっちは出なくていいのか、ノア?」

 

「……必要ない」

 

 

 準備をしながらフィールドに出る途中、スナッフィーはバスタード・ミュンヘン側のベンチに座るノアに問いかける。しかしノアは彼の方を一瞥することも無く、フィールドに向けた視線を変えることもせずに一言だけ答えた。

 

 

「甘くみてくれるねぇ。それとも選手への信頼ってヤツかな?」

 

「そんなんじゃねぇよ……状況から合理的に判断しただけだ」

 

 

 ヘアバンドを頭につけながらスナッフィーはノアにニヤリと笑い、皮肉混じりの言葉を投げかける。信頼などノアのような無表情人間には無関係に思える。事実ノアは依桜がスーパーゴールを決めた後に喜ぶことも驚くこともなかった。

 

 

 ノアとの会話を終え、スナッフィーはDFと交代してフィールドに入った。そしてすぐに凪や二子、柊達のところへと歩いていく。

 

「アンタがこんなに早く出てくるなんて、聞いてないけど?」

 

「俺だって想定外さ。だが……彼を止めないと仕事もクソもないだろ?」

 

「確かに……今の姫宮くんはデータと違いすぎます。練習した設計(デザイン)ではとても……」

 

「うん、それは俺のミスだ。この事態を想定できなかった……社長である俺の責任だよ」

 

 

 チームの面々に対してスナッフィーは自分のミスを素直に認めた。そしてその上で、今後どうするかの改善策を提案する。

 

 

「だから俺が彼を止める。そして俺のいる3分の間に対姫宮依桜の設計(デザイン)を完成させるんだ。できなきゃ俺達に勝ち目はない……いくよユーヴァース、新しい設計(デザイン)を作り出せ」

 

「OK、指導者(マスター)

 

 

 スナッフィーが依桜を止める、その3分間に対策を万全にする。先程の依桜を見ていればかなりの無理難題であることは確かだ。だがやれなければどの道負ける、やるしかないのだ。

 

 

(あのスナッフィーが警戒するくらい、今の姫宮はヤバい……俺が欲しいもの、手を飛ばしても届かない力をアイツは持ってる……! 俺がこんなところで燻ってる内にも……アイツは新英雄大戦(ネオ・エゴイストリーグ)英雄(ヒーロー)に……)

 

 

 ユーヴァースが状況の立て直しを皆で模索している中、雪宮は一人焦燥感を募らせていた。今雪宮は年棒ランキングで代表圏内に入ってはいるものの順位はギリギリ、安心などできるはずないボーダーラインに立たされている。

 

 

(凪を主軸とした今のユーヴァースじゃ、俺はせいぜいサポート役。もっと高い評価を貰うには……規律を無視してでも俺のゴールで……!)

 

 

 故に雪宮は狙っていた。ユーヴァースを乗っ取り、試合をひっくり返すビッグチャンスを。確かに今の状況は不利だ、しかし考えようによっては一発逆転を狙えるチャンスでもある。

 

 

 ──神様はぼくらに乗り越えられる試練しか与えないさ。

 

 

 いつか聞いた歌のフレーズが脳裏によぎる。そうだ、神様はきっと見ていてくれる。俺の努力を認めてくれる。そう信じて、雪宮は戦いへと身を投じるのだった。

 

 

(俺に与えられた試練……姫宮(ラスボス)を倒して、俺のゴールを掴む!!)

 

 

『さぁいきなり予想外の展開で始まったこの一戦!! スナッフィーの投入がゲームにどのような影響をもたらすのか、片時も目が離せません!!』

 

 

ユーヴァース New formation

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「二子をDFに下げてボランチにスナッフィー。明らかに守備に寄せてきたな」

 

「まぁ……アレ見たらそうなるやろ。つまり指導者(マスター)のいる間に対策考えろってことや」

 

 

 ユーヴァースのフォーメーションチェンジを玲王と烏が分析する。依桜のこれ以上の躍進を阻止するためのディフェンス重視スタイル。わかりやすい守備寄りのフォーメーションだ。

 

 

「姫宮へのマークはだいぶキツくなるな……頭に入れとけや女王」

 

「余裕余裕♪ 今のボクを止められるヤツとかいないし!」

 

 

 カメラ目線で何やらポーズを取っている依桜に向けて烏が警戒するように伝える。それを聞いた依桜は随分と余裕そうだ。今の彼の実力を考えればそれも頷ける。

 

 

 ユーヴァースのメンバー、ポジションチェンジが完了し準備が整った。凪から柊へのパスで試合が再開される。

 

 

RESTART!! 

 

 

 メンバーチェンジしたユーヴァースだが、まずは規律通りのビジネスサッカーを展開している。無理に攻め上がらず、ボールを奪われないスローな攻撃に徹している。

 

 

「うわっ、このサッカーつまんなそ……ボクここに行かなくてよかった」

 

 

 スナッフィーの決めた作戦を遂行するという仕事(サッカー)。それは依桜にとって非常につまらなく見え、自分がその立場に立つことを考えると苦い顔をしてしまう。

 

 

「まぁいいや……とりあえずボールもらい!!」

 

「くっっ……!」

 

 

 ユーヴァースのパス交換を依桜がカットした。常人ならパスを回されて終わりのところを、依桜の眼があればチャンスに変えられる。

 

 

「おっと危ねー……やっぱ君から目を離しちゃダメだね、姫宮依桜」

 

「……!?」

 

 

 しかし依桜がボールを確保した瞬間、スナッフィーがショルダーチャージを仕掛けてきた。最速でパスカット地点に走っていたため受け身を取ることができず、依桜はボールを弾かれてしまった。

 

 

「俺がいる限り君に自由はないよ、ワンマン女王」

 

「うっざ……!」

 

 

 この言葉はつまりスナッフィーからの宣戦布告だ。世界最高級選手からの必ずお前を止めるという宣告、それを依桜は受け取ったのだ。

 

 

「クソ助かる」

 

「……!?」

 

「そのまま依桜を止めておけクソ鷲鼻」

 

 

 スナッフィーがカットしたボールをカイザーがかっさらっていく。癪ではあるが、スナッフィーが依桜を徹底マークするとしたらやりやすくなるのはカイザーだ。この機を逃すまいとボールを奪うとすぐに攻め上がる。

 

 

「ネス!」

 

「はいカイザー!」

 

 

 ネスとの連携でユーヴァースDF陣をこじ開けていく。依桜へ警戒心が向いていたからか、こちらへの守備はやや甘いこのままシュートへと持っていけそうだ。

 

 

「だぁー。ミヒャを止めるのは俺の仕事OK?」

 

「チッ……!」

 

 

 しかしゴール目掛けて足を振り抜こうとしたその時、ロレンツォがシュートコースに身体を入れてくる。カイザーインパクトで狙えるコースはない、そう思われたがカイザーは迷いなく振り抜いた。

 

 

「あら?」

 

「行け……!」

 

 

 カイザーのシュートは枠を大きく外れ左へと逸れていく。一見ただのミスキックだが、カイザーの思惑通り。これは未完成の新兵器、カイザーインパクトを曲げるという実験なのだから。

 

 

 ──10日前

 

『まぐぬす……?』

 

『そうだ。俺のシュートは今まで回転をかけずストレート軌道で速さと威力だけにこだわってきた。だが……』

 

 

 練習中、カイザーはネスに自らの新兵器を披露していた。ボールの空気穴を中心とした際の左下、そこをカイザーインパクトの要領でぶち抜けば威力、精度を保ったまま凄まじい軌道のカーブシュートが完成する。

 

 

『しゅ、しゅげぇ! これさえあればコースを塞がれても関係ない!』

 

『ああ……だがあくまでこれは停止したボールでの話だ』

 

『あ……! そうか、これを試合中常に動き続けるボールで撃つなんてクソ難……』

 

 

 そう。例えばフリーキックやPKなら空気穴を自分の方に向けて置くことができるが、それ以外の試合中にボールが都合よく動くことなどまず有り得ない。つまりセットプレーならともかく、インプレー中にこれを決めるなど至難の業なのだ。

 

 

 ──そして10日後、未だ新兵器は完成していない。しかし依桜が覚醒したこの状況において、他に頼れる手段などない。

 

(だからこそ今! ここで完成させることに意味がある……!)

 

 

 ネスはカイザーが放ったシュートの行く末を見つめていた。威力は申し分ない、後はゴール枠内へと曲がってくれれば……

 

 

「あ……」

 

 

 思わず口から声が漏れてしまった。カイザーのシュートは枠を大きく外れ、曲がることも無く壁へと激突してしまったのだ。

 

 

「失敗……」

 

 

 やはり実践でいきなり完成などという奇跡は起こらない。漫画やアニメではないのだ、現実は残酷で無常。顔を青くするネスとは対称的に、カイザーの顔には焦りと怒りが込み上げている。

 

 

「あだぁ、何狙ってんのミヒャ?」

 

「クソが……!!」

 

 

 ロレンツォの言葉などまるで聞こえていない。あるのは依桜への殺意と無力な自身への怒りのみ。その激情を糧にカイザーは戦うのだ。

 

 

「行くよユーヴァース。反撃開始だ」

 

「OK」

 

 

 ゴールキックからボールはスナッフィーへ。彼を起点にユーヴァースは連動を始める。依桜対策の守備の策はもちろんだが、点を決めなければ勝てないのを皆理解しているのだ。

 

 

「そっちがその気ならアンタはボクが封じてあげる♪」

 

「……!? へぇ……」

 

 

 だが目には目を、今度はスナッフィーを依桜が封じる番だ。ベタつきのマンマーク、スナッフィーといえど容易に抜け出せるものでは無い。

 

 

「でも姫宮くんを考えなくていいだけで難易度段違いです。これなら次の設計(デザイン)が使える」

 

 

 スナッフィーからボールは二子へ。依桜がいる以上スナッフィーは頼れない。しかし依桜がいないだけで攻撃のバリエーションは無限に増える。用意してきた策が使える。

 

 

「パス交換エグすぎだべ……!」

 

「止めないよこの流れ」

 

 

 二子から柊、そしてサイドへ。淀みなく動き続けるボールにバスタード・ミュンヘンは防戦一方だ。

 

 

(なるほど……スナッフィーがアンカーにいることで攻撃と守備のスイッチの切り替えが早い……このままだとこっちが立て直す前に崩されんなぁ)

 

 

 バスタード・ミュンヘン側のアンカー、烏はユーヴァースの攻撃を冷静に分析していた。このまま速攻で来られると失点は必至、時間稼ぎは彼の仕事だ。

 

 

「ここやろ、モデル社畜……!」

 

「烏……!」

 

 

 超から雪宮へのパスを烏がカットした。スナッフィーの考える策全てを分析し、理解することなど不可能だが今のフィールドの流れを見てどこが一番危険かは予測できる。

 

 

「……仕事を止めるな、ユーヴァース」

 

「了解」

 

「……! コイツら、一斉に!」

 

 

 だが次の瞬間、烏に対し三人がかりのハイプレスを仕掛けてきた。キープ力を武器とする烏だが、これはさすがに苦しい。周りも使えず、ボールを奪われてしまった。完璧な組織的な連動だ。

 

 

「白髪警戒しろ!」

 

「りょー♪」

 

 

 ビルケンシュトックと日不見は凪を徹底的にマークしている。ユーヴァースの攻撃の心臓、彼を封じれば攻撃の選択肢は激減する。

 

 

「出せ、ユッキー」

 

「……」

 

 

 烏から奪ったボールは再び雪宮に渡り左サイドを駆け抜けていた。中央でパスを待つ凪をちらりと見て雪宮は一瞬思考する。シュートコースはない、取れる選択肢は凪へのパスのみ。まだ仕掛ける機会じゃない、そう判断して凪へとクロスを送る。

 

 

「トラップはさせないよん♪」

 

「んじゃいらね、その概念」

 

 

 左から来たクロスに凪がダイレクトで合わせようとする。それに対し日不見がプレスするが、それを確認した凪は左足をジャグリングのようにボールの上に通し、右足でシュートを放った。

 

 

「……なんじゃそりゃ!?」

 

「いや甘ぇ……!」

 

「玲王……」

 

 

 凪のジャグリングショットを玲王が防いだ。ボールはゴールの上を越え、フィールド外へと飛んで行った。

 

 

「Uー20戦の時の姫宮のパクリだろ? 研究してんだよその試合は」

 

「いや……玲王にパクリとか言われたくないんだけど」

 

 

 依桜VSスナッフィー、カイザーVSロレンツォ、玲王VS凪。試合前にノアが言った通り、各選手達の間でデュエルが繰り広げられている。このデュエルを制した者、それがこの試合の勝者になるのは間違いない。命運を賭けたこの戦いはまだ始まったばかりだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。