〖ブルーロックRPG〗実況プレイ   作:マルメロ

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悪魔

 

 透子がトラックにはねられ病院に搬送された。その知らせを聞いて、依桜はすぐに病院へと向かった。しかし十数分後、依桜が病院に到着する頃には彼女は既に息を引き取っていた。泣き崩れる透子の両親の呻き声、不快な音を出す心電図の音、そこから依桜の記憶は断片的だった。

 

 ただ透子がもうこの世にいないという事実を受け止められず、無気力のまま通夜、葬儀と終わっていき、時間だけが流れていった。全国大会にも出場することは出来ず、依桜のチームは一回戦で敗退した。二ヶ月は練習に出ることもままならず、廃人同然の生活を送っていた。

 

 しかしクラスメイトやチームメイトの励ましもあり、四ヶ月もする頃には徐々に元気を取り戻していった。透子がいない現実は辛かったが、彼女と約束したW杯優勝という夢、それを透子の分も叶える為に依桜は練習に励んだ。チームの士気も高く、空席となった透子の背番号2番もチームメイト達の計らいによってそのままになった。

 

 そして透子の死から十ヶ月以上が過ぎ、依桜は中学3年生となり中学最後の大会に挑もうとしていた。

 

「監督、どういうことですか?」

 

「どういうことも何も、しょうがないじゃないか」

 

 大会のレギュラー発表がされ、各々にユニフォームが渡された。依桜は当然エース番号の10番、それ自体に不満などない。

 

「だって2番は⋯⋯透子の⋯⋯!!」

 

「確かに瀬名は大事なチームメイトだが⋯⋯もういないんだ。お前の気持ちもわかるが、受け入れろ」

 

「⋯⋯!!」

 

 透子の背番号だった2番は他の選手に渡された。依桜は監督に抗議したが、結局覆ることは無かった。依桜とてわかっている。透子が亡くなってから1年近くが経つのだ、いつまでも彼女の死を引きずってはいれないのだ。頭ではわかっているが、受け入れられない。

 

「依桜君、毎日透子の為にありがとうね」

 

「⋯⋯いえ」

 

 その日の帰り、依桜は透子の家に立ち寄った。練習が終われば、必ず仏壇の前で手を合わせ透子との約束を確認する。依桜の日課だった。それを透子の母も喜んでくれていたのだが、その日はどうやら様子がおかしかった。

 

「でもね、無理して毎日来なくてもいいのよ? 依桜君も大変でしょう?」

 

「⋯⋯? ⋯⋯ボクが透子に会いたいだけだから大変だなんて⋯⋯」

 

 お茶を持ってきてくれた透子の母が気まずそうに言ってきた。いつもとどこか様子が違うので依桜は頭に疑問符を浮かべた。数秒の沈黙の後、彼女はお腹を擦りながら小さな声で言った。

 

「実はね⋯⋯お腹に赤ちゃんがいるの。だからあの子のことは忘れて⋯⋯新しく家族3人で⋯⋯わかるでしょ?」

 

「⋯⋯⋯⋯え?」

 

 帰り道、依桜は先程の透子の母の言葉が頭から離れなかった。何故彼女があんなことを言ったのか、透子のことは本当はどうでもよかったのか? 

 

 しかし考えてみれば当然のことなのかもしれない。どんな有名人でも亡くなって一年も経てば誰も話題にしなくなる。命日には多少取り上げられるかもしれないが、その程度だ。どんなに名声を受けたサッカー選手でも、俳優でも、アイドルでもそうだ。死んだ人間は決して生き返らない。近しい人の死から立ち直るというのは、その人のことを忘れて生きるということなのだ。

 

(⋯⋯ボクがいつか世界一のサッカー選手になっても、その頃には透子のことを覚えてる人なんていない。二人でW杯優勝っていう夢も⋯⋯永遠に叶わないのかな?)

 

 二人でW杯優勝するという約束、それを果たすために透子の死後、依桜は練習に励んできた。しかし例え依桜がW杯で優勝できたとしても、それは依桜の功績にしかならない。瀬名透子というサッカー選手がいたことなど、誰も知らないまま終わってしまう。

 

(そんなの⋯⋯絶対に嫌だ⋯⋯!!)

 

 例え透子がもうこの世にいないとしても、彼女の存在が忘れられるのは許容できない。瀬名透子という選手の存在は、ボクが絶対に消させない。依桜は固く拳を握り、決意を固めた。

 

(透子のプレーは⋯⋯ボクが受け継ぐ。絶対に忘れさせない⋯⋯!!)

 

 その日から依桜は透子のプレー映像を研究し続け、彼女のプレーを再現することに尽力した。自分が世界一のストライカー、透子が世界一のディフェンダーになってW杯優勝。その約束を果たす為、自分が透子の分までプレーすると決めたのだ。

 

「ディフェンスに転向する!? 大会まで時間がないんだぞ!?」

 

 依桜が目指すのは守備も攻撃も一流の正真正銘の世界一のサッカー選手。そのためには一分一秒も惜しかった。大会にはディフェンダーとして参加し、有名なストライカー達の攻撃を防ぎ続けた。高校に入ってからも変わらず、ポジションはディフェンスで攻撃にも参加する。だが未だ透子のレベルに至っているとは思えない。彼女のプレーはもっと凄かった。

 

 そして高校2年生になった依桜の元に一通の手紙が届いた。

 

「⋯⋯日本フットボール連合?」

 

 それは世界一のストライカーを作る実験場、青い監獄(ブルーロック)への招待状だった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

いやおっも!!! 

 

 突然始まった依桜君の過去編で脳が破壊されました。てかナチュラルに人死ぬ過去編はもはやイナズ〇イレブンなのよ! 

 

 でもそうか、依桜君がディフェンスに固執してたのはそういうことだったんですね。⋯⋯もしかして守備力にあんまり経験値振ってないのミスった? いや、別に世界一のストライカーも目指して無いわけじゃないからいいのか? ⋯⋯でも最初にストライカーになれないって言ってたっけ。

 

 “夜が明けて今日はチームZ戦の日。寝坊してしまった、早く準備しなきゃ”

 

 さぁ時が経ちいよいよ士道君との決戦の日がやって来ました。前までは士道君にどれだけ点を取られてもそれ以上に取り返せばいいと思っていましたがやっぱりやめます。

 

 いいよ依桜君、君の目標は私が叶えてあげる! 士道君相手に無失点で勝利する、私の実況者人生最大の戦です! 

 

 てかあの感じだと大量失点なんてしようものならストレス値限界突破して次の選考で再起不能になりそうなんで。なので失点は避けつつ点を取り勝ちます。言うだけなら簡単だけど無理ゲーだなおい! 

 

 “やや遅れてフィールドに入った。だけどなんだか騒がしいようだ”

 

 う〜ん? なんか相手チームが揉めてますねぇ。ヒント、対戦相手は士道君。あ⋯⋯(察し)

 

 “柊に聞いたら相手チームはウォーミングアップ中に何故か口論が始まり、その末喧嘩になったらしい。どうでもいいけど早く試合始めてくれないかな”

 

 おう⋯⋯依桜君マイペースやな。何人か鼻血出してうずくまってるんですがお構い無しですね。いや構う必要ないんですけど、面倒事に巻き込まれるのも嫌だし。

 

「お前らさぁ、何回も言ってるよな? 俺の邪魔するなって」

 

「それはわかってるけど⋯⋯たまには俺らにもパスしろよ!」

 

「そりゃあねぇ⋯⋯お前ら前の試合何回外したよ。点を決められないストライカーに存在価値はねぇぞ?」

 

「そもそも⋯⋯最初の試合もお前がレッドカードで退場になってなきゃ勝てたんだ。お前はいいかもしんねぇけど、負ければ俺達は終わりなんだよ!」

 

 チームZのモブと士道君が揉めてますね。多分士道君はチーム内得点王で二次選考に行けるけど他の選手はそうじゃないのかな? 馬狼君のところと同じタイプですね。

 

「俺は信じてやったんだぞ? だけどお前らと来たら、爆発のばの字も起こせやしねぇ。つまんねぇんだよ、お前らも相手の雑魚共もさ!」

 

 おおっと! 士道君いきなりの回し蹴り、それを柊君がかっこよく防いだぁ! 昨夜のウザ男ムーヴをひっくり返すかっこよさだ! 

 

 “相手の黒ギャルみたいな人がチームメイトを蹴ろうとして、それを柊が阻止した。そのまま潰されてくれれば良かったのに”

 

 辛辣!? いやまぁあんなん言われたらそうなるか……てか全然挽回できてねぇな。

 

「あ? なんだお前」

 

「はぁい士道龍聖くん。仲間割れしてくれるのは勝手だけど試合出来ないのはつまんないから程々にしときなよー」

 

 かっこよく柊君が止めてくれたおかげで何とか試合の準備に入りました。あのままだとこっちの不戦勝になりそうだったし⋯⋯いやそっちの方がいいのか? 

 

 “前の試合を見ると相手チームはあの士道って人が飛び抜けて強い。だからあいつをボクが抑えれば勝てるはずだ”

 

 士道君は感覚で動く天才ストライカー。依桜君的にも初めてやり合うタイプの相手のはず、まずは先に1点を取って安全圏に入りつつ後は徹底的に士道君を止める戦法で行きます。幸いにもキックオフはこっちからです。

 

 “こっちのキックオフで試合が始まった。作戦通りまずは速攻で1点を取りに行く”

 

 チームトレーニングで練習した通り柊君を中心にパスを回して攻めていきます。依桜君はボールに絡まずラストパスを貰いに前線に走ります。依桜君を止めてくるとすれば士道君くらいですが、彼はまだフィールドの真ん中辺にいるので間に合わないはず。

 

 “柊からパスが飛んできた。彼のパスはいつもボクが取れるギリギリ、ムカつくけどいいところに飛んでくる”

 

 さて、ゴール前にたどり着きましたがまだディフェンス2枚とキーパーがいますね。ここは⋯⋯習得したあれを使いますか。依桜君はドリブルの数値が突出しているわけではないので多対一では突破することは難しいです。それを補うために使用するのはこの前習得した⋯⋯そう〖無回転〗です。

 

 “無回転シュートでゴール右端を狙う。キーパーが弾こうとするが弾道がぶれた事で届かずそのままゴールに入った”

 

 てことで先制点いただきです! チームZは守備力はそこまで高くないので試合開始時点で速攻仕掛ければ点を決められると踏んでいました。まぁ猫騙しの一撃なので次も同じように点を取れるかは怪しいですが。

 

 ⋯⋯ん? なんか士道君がこっちに歩いてきますね。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 チームZ相手に先取点を奪った依桜。彼の周りに喜ぶチームメイトが集まってきた。しかしその中に一人、違う色のビブスを着た男がいた。士道は不気味な笑みを浮かべながら、喜ぶチームメイトをどけて依桜の前に来るとすれ違いざまに言った。

 

「チョロチョロするしか脳のない姫とトラップがちょいと上手い頭でっかちポニテ、それと姫をもてはやす雑魚民衆共ねぇ。そんなんじゃ俺は爆発しねーぞ?」

 

 士道がため息を吐き冷めた目で依桜を見る。彼を見上げて依桜も鋭い視線を向けて言い返す。

 

「それで点取られてたら世話ないよね。ボクが爆発四散させてあげようか? 時代遅れガングロ平成ギャル君」

 

「言うねぇお姫様♪ 俺が孕ませてやろうか?」

 

 自分より頭ひとつ分小柄な依桜の肩をポンと叩き、士道はポジションに戻っていく。士道が触った部分をはらいながら依桜も同じようにポジションに戻った。そしてホイッスルが鳴り、チームZボールで試合が再開した。

 

「いくぜ、バキュン!」

 

(どっちから来る⋯⋯? 右⋯⋯それとも左?)

 

 ペナルティエリア前まで前進してきた士道に依桜がマークにつく。どこからパスが飛んでこようとも、シュートだけは撃たせない姿勢だ。その間にチームZはどうやら攻めあぐねているようで、ハーフラインより少し前でボールを回していた。

 

「チンたらやってんじゃねぇ! とっとと出せモブ共!」

 

「ひぃ!? は、はい!」

 

 それに痺れを切らした士道が脅すように叫び、怯えたチームメイトからのパスが来ると依桜の裏に抜けようと加速した。

 

「速いけど追いつけない程じゃないね」

 

「お、ついて来る? やるじゃん姫様」

 

 振り切れないと判断したのかゴールに背を向けパスをトラップする。そして左に動きシュートコースを探そうとするが、依桜は的確にコースを潰してくる。

 

「んじゃ、こういうのはどうよ?」

 

(⋯⋯ゴールから背を向けた?)

 

 ドリブルで依桜を抜くことを諦めたのか、士道はゴールに背を向けて何やらタイミングを伺っている。一度味方に戻してワンツーで依桜を抜こうとしているのだろうか? それならば問題ない、速さは依桜の方が上なので追いつける。

 

「あのさぁ⋯⋯俺をお前の杓子定規に当てはめんじゃねぇぞ?」

 

 その刹那、士道がボールを浮かせたと思った次の瞬間には回し蹴りのような体勢からゴールに目も向けずシュートを放っていた。

 

「⋯⋯は?」

 

 不意をつかれて動けない依桜の横を通り過ぎ、シュートはゴールに突き刺さった。まさかあの体勢から撃ってくるとは思わなかったのかキーパーも反応できない。

 

「あ〜これよこれ! 俺の細胞スパークスパーク♪」

 

(ゴールを見てすらなかった⋯⋯それもあんな不安定な体勢から⋯⋯!?)

 

 何やら頬を赤らめながら愉悦そうな表情を浮かべている士道を、依桜はありえないものを見る目で見ていた。自分も不安定な体勢からのシュートを得意であるが、ゴールを全く見ずに撃つなんて芸当はできない。必ずどこかのタイミングでゴールと自分の位置関係を把握しなければならない。

 

(ゴールを決めることに特化した悪魔的攻撃力⋯⋯こいつをどうにかしないと⋯⋯ボク達に勝ち目はない)

 

 口元に流れてきた汗を拭い、依桜は決意を固める。この悪魔は⋯⋯必ずボクが止めてやると。

 

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