〖ブルーロックRPG〗実況プレイ   作:マルメロ

70 / 80
その放物線の美しさに

 

 

 は〜い♡私だ、前回は依桜くん達ドイツ組がお休みだったのでそこで行われた試合を流した訳ですが……遂に脱落確定者も出てきてしまったわけで……メシ岡さん、君のことは3日位は忘れないよ……

 

 

 冗談は置いといて、七星くん脱落は悲しいですね。優しい世界線の一人が脱落。やはりブルーロックではアタオカしか生き残れないのか……。

 

 

 まぁフランス戦までは特にイベントもなく、トレーニングを続ける毎日になる訳ですが……依桜くんを救う方法は未だに思いつかず、というか今の依桜くん強すぎなんだよ! 命の代償無しでこれと同等とか今すぐ達成すんの不可能じゃね? 

 

 

 でも……それでも……私は依桜くんに生きて欲しい! 考えるんだ私! なんでもいい、依桜くんを生かす手立てを……! 

 

 

 ……ん? なんですかねこれ……適当に称号欄を漁っていたんですが気になる称号が……まだ未獲得ですが獲得条件と名称が見れますね……〖命の代償の果てに〗? 

 

 

 初めて聞きますね……ググってみても…………ヒットしません! もしかして私が初!? このゲーム性質上前代未聞の出来事が起こることはありますが、まだ誰もたどり着いていない称号への道が開けるとは! 

 

 

 獲得条件は……ふむふむ。

 

 

 〖主人公の総合評価100以上で以下の条件を満たすと獲得可能。・潔世一、糸師凛、士道龍聖、ミヒャエル・カイザーが同じ試合に出場(敵味方問わず) ・主人公がスタミナ低下効果のあるアクティブスキルを保有 ・主人公のネオ・エゴイストリーグにおける年棒価格が3億円以上、または年棒価格問わず年棒ランキング1位である〗

 

 

 ……依桜くん条件満たしてね? フランス戦で潔くん、凛ちゃん、士道くんは間違いなく出てくるだろうし、これいけるのでは!? 唯一の懸念点はカイザーくんがスタメン外されたことですが……さすがに途中で交代するでしょう! ……するよね? 

 

 

 てかこれあれか、原作ルートでもフランスorドイツを選択すれば達成出来る……と思ったけど原作のドイツかフランスで年俸3億以上または年棒1位になるのムズすぎでね? こりゃ前例がないのも納得っすわ。

 

 

 ……これに賭けるっきゃないか? この称号を獲得することによって何が起こるかわからないし、そもそも称号名的に更にやべーことになる可能性も否めませんが……現状これ以外に打つ手がありませんからね。

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……!」

 

「……うぉーい!? いつまで走り込みすんのよ姫ちゃん!」

 

「は!? 死ぬまでに決まってんでしょ!」

 

「付き合わされるこっちの身にもなれっての……!」

 

「俺はやるぞ、全力逃走!」

 

 

 てことで現在行っている日不見くん、清羅くん、斬鉄くんを巻き込んでの体力強化トレーニングですが……今後はこれを更に増やしますか。ぶっちゃけ称号を手にする前にぶっ倒れたら話にならないんで、今できるのはとにかく持久力を上げること。素の実力は既に十分ですからね。

 

 

 “前の試合、ボクは途中からバテかけてた。おネスのパスがあったから早く終わらせられたけど、45分ハーフの試合だと多分体力がもたない。だから今はもっと体力をつけないと! ”

 

 

 ん〜、まぁそうね。ネオエゴの性質上とっとと点を決めちまえば体力いらないけど、90分間ある普通の試合だとそうはいかないっすからね。ちゃんと頭使って偉いね! 

 

 

「……姫宮」

 

「うわびっくりした!? もう静ちゃん! 後ろからいきなりつつかないでよね!」

 

「ごめん、でも待ってるよ」

 

「誰が?」

 

「サッカー雑誌の記者だって」

 

「……あ!? やば、この後取材じゃん! じゃあ皆、ボクがいなくてもサボっちゃダメだよ!」

 

「無理やり付き合わせてたクセによく言うねー」

 

 

 忙しいねー依桜くんは。まぁ取材で世間からの好感度を上げることも重要ですからね。ちなみに記者への態度が悪すぎて一部で嫌われている選手がいるらしいです。……ん? 私は存じ上げないんですが、皆様口を揃えて兄ちゃとおっしゃいますね。

 

 

「では改めまして、姫宮選手。あの世界一と名高いレ・アールから4億8000万円でのビッグオファー、守備に定評のあるユーヴァースからハットトリックを奪い、今世界中で最も注目される選手となったわけですが……率直に今の気持ちはどうですか?」

 

「え〜? ボクの実力なら当然だし、正直今の年俸も安すぎかな〜? あ、写真撮るならこの角度ね! 一番自信あるから! まぁどこから撮っても可愛いんだけど!」

 

「な、なるほどありがとう(凄い自信……糸師冴よりはマシだけどやりずらいなぁ)」

 

 

 草。言われとるで兄ちゃ。ちなみに取材適正度で言えば、世一>>>>依桜くん>士道くん>>兄ちゃ>>凛ちゃんって感じっすかね。世一は言わずもがな、依桜くんも承認欲求モンスターなだけで質問には答えてくれるし、士道くんも下ネタカットすれば掲載できるレベル(暴力は知らん)、兄ちゃは言わずもがな、凛ちゃんはそもそも取材の場に現れません。

 

 

「ではそのレ・アールのスカウトからのコメントですが、『攻守共に素晴らしい水準だ』、『ストライカーでありながらリベロという今までのフットボールでは考えられない概念を生み出した革命児であり、新時代を担うスーパースターになると我々は確信している』とありますが、これについてはどう思われますか?」

 

「……りべろって何?」

 

「え……?」

 

 

 おいおい記者固まっとるぞ! 依桜くんはブルーロックじゃ斬鉄くんの次くらいに来るおバカさんだからね、しょうがないね。

 

 

「で……ではもう少し踏み込んだ質問を。前回の試合中、姫宮選手は確かに素晴らしい活躍をされていましたが、どこか体調が優れないのではないか……? という心配の声が各SNSで上がっています。『無理をしないで欲しい』、『青い監獄(ブルーロック)は姫宮選手を酷使しすぎではないか?』などです。まず、体調が優れないというのは事実でしょうか?」

 

「……半分は正解だけど、もう半分はブー。むしろ絶好調だよ、ちょっと無理しちゃってるところはあるけどね」

 

「それは青い監獄(ブルーロック)側の指示ですか? それとも姫宮選手の意思で?」

 

「ボクが自分で決めたコト。誰かに指図されるの嫌いだもん」

 

 

 すげーな依桜くん、終始ペースを握ってます。いや兄ちゃもそんな感じだったし、もしかしてサッカー選手って協調性皆無? 

 

 

「それでは姫宮選手はこれから先も自分の考えを貫くつもりですか?」

 

「まぁね、例えば明日死ぬって言われても曲げないよ。なんたってボクはエゴイストだからね!」

 

「……なるほど、ありがとうございます」

 

 

 お、これでインタビューは終了っすか。なんか最後引かれてた気がするけど気のせい? まぁ兄ちゃよりはマシだろうからいっか。

 

 

(姫宮依桜……確かに今まで取材してきたどの選手とも違う、異質な少年だ。だが……その無邪気さと自信の中に危うさを持っているのは私の気のせいだろうか?)

 

 

 んにゃ、なんかイベント始まるっぽいんで今回はこれを見て終わりにしましょうかね。それじゃ、今回もご視聴感謝です! 

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 記者からの取材を終え、依桜は次のCM撮影現場に向かっていた。チームとしてのトレーニングに加え、依桜は自主的にかなりの量の体力作りやシュート練習を行っている。更にメディア出演の仕事も山積みであり、本人の態度には出ていないが実はかなり多忙な毎日を過ごしているのだ。

 

 

(お! 今日のボクいつもより可愛いかも! 自撮りしてインスタに上げちゃお♪ 『次の仕事現場にいどーちゅー、忙しすぎー!』投稿っと!)

 

 

 鏡越しの自分の姿を見て依桜はすかさずスマホを取り出すと最も自信のある角度で自撮りを行い、手早くSNSに投稿した。あっという間にいいねとコメントが増えていく光景を見れば、自己肯定感が高まるというものだ。

 

 

「いやー人気者は困っちゃうね〜! …………ん?」

 

 

 ウキウキ気分でスキップしながらとある部屋の前を通り過ぎた時、隙間から見えるとある光景に依桜は足を止めた。一応音を立てないようにこっそりと中を覗き込む。

 

 

「……なんだバカイザーか。あ、でももう一人いる……あれは」

 

 

 その部屋はブルーロックマンシステムフィールドだ。部屋と呼ぶには些か広すぎる芝生に覆われた場所で、ブルーロックマン相手に練習をすることが出来る。どうやらカイザーはシュート練習をしていたようだ。しかし依桜はカイザーではなく、彼と共にいるもう一人の人物に注目した。そして目を丸くする、その人物は今ここでカイザーと会っているのが想像できない、意外な男だったからだ。

 

 

 ──依桜が来る1時間程前。

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 

 カイザーはブルーロックマンが守るフィールドに渾身のカイザーインパクトを放った。ブルーロックマンに触られることなくゴールにシュートが叩き込まれたが、カイザーの表情は険しい。珍しく息を乱し、大粒の汗が流れている。

 

 

(俺は依桜がクソ嫌いだ。アイツのニヤケ顔を見ているだけで虫唾が走る……! もうノアも他クラブへの移籍も……世界一の証明もどうでもいい……!! アイツを殺すことが、俺の目的の全て……!!)

 

 

 再びカイザーがシュートを放つ。イタリア戦で依桜に完敗した後、カイザーは食事と入浴、用を足す時と最低限の睡眠以外の全ての時間を依桜を殺すための特訓に捧げてきた。常人ならとっくに倒れているだろうが、カイザーの執念は体力の限界に達してもなお彼の身体を動かし続けた。

 

 

(胸が苦しい……! 依桜のコトを思うと心臓を握り潰されたみたいに痛くなる……! 俺とアイツは、同じような境遇で産まれたはずだ。なのに俺が持っていない才能(モノ)を依桜は持っている……! どこまで不平等だクソ(ゴッド)……!!)

 

 

 カイザーのシュートは撃つ度に威力を増していく。まるでカイザーの感情が乗っているかのように。『嫉妬という悪魔を飼い慣らしてこと本物のプロフェッショナル』何かの本で読んだ覚えがある。しかしカイザーは他人に嫉妬などしなかった。何故ならいつでも自分は他人を潰す立場、自分より弱い雑魚に嫉妬などという感情を抱くことなどない。

 

 

(依桜に負けたあの時の……あの感情には覚えがある。クソ親父に突きつけられていた、不条理で不自由な閉塞感……!)

 

 

 カイザーは父親に虐待を受けた過去を持っている。それはとっくの昔に乗り越えたはずなのに、依桜のせいでカイザーという存在が揺らいでしまったのだ。結果あの日々を思い出し、戻ることを恐れている。

 

 

(だが……クソ親父の時とは決定的に違うモノがある……それが何か……最初は依桜への嫉妬心だと思っていた。それもあるかもしれない……が、それ以上に俺はあの時……閉塞感と嫉妬心の中に……ほんの少しだけ、胸を高鳴らせていた)

 

 

 ネスがカイザーではなく、依桜へのパスを選んだあの瞬間。妨害もできず、カイザーはただ見ていることしか出来なかった。ネスからのパスを受けて依桜がシュートを決める姿を。

 

 

(俺はあの時、依桜に完全に敗北した……!! ……なのに……そんな現実とは裏腹に……何故か俺の目は……心は……完全に奪われていた)

 

 

──姫宮依桜(アイツ)の蹴り描くその放物線の美しさに……!!! 

 

 

 そう、カイザーは目が離せなかったのだ。依桜が放ったマグヌスの美しい軌道が頭にこべりついて消えない。嫌いなはずなのに、殺したいくらい憎んでいるはずなのに、何故かあの光景がカイザーの脳裏には焼き付いてしまったのだ。

 

 

「クソが……俺は……!! 俺は……!!」

 

「よぉ、探したぜ皇帝」

 

「……!!」

 

 

 その時だ、ふと誰かに話しかけられた。集中力を乱していて気づかなかったのか、その人物はいつの間にかフィールドへと入ってきていたのだ。カイザーは睨みつけるように自分に話しかけてきた男を見る。

 

 

「お前は……確かフランスの」

 

「ああ、潔世一だ」

 

 

 カイザーはネオエゴイストリーグに参加している他国同士の試合もチェックしていた。故にその男には見覚えがあった。年棒ランキングは依桜に続いて2位、ドイツと並び全勝を誇るフランスの核とも言える中心選手、潔世一だ。

 

 

「……フランスの魔王様が一体何の用だ?」

 

「お前、姫宮に勝ちたいか?」

 

「……あ?」

 

 

 カイザーは警戒しつつ潔の出方を伺っていた。敵チーム、それも最終戦の相手だ。何を言ってくるかわからない。しかし潔の切り出し方はカイザーの警戒の斜めから突いてくるものだった。

 

 

「前の試合でお前は姫宮に完全に敗北した……そうだろ? だからお前は今必死になって姫宮を倒すために特訓してる」

 

「……喧嘩売ってんのか?」

 

「俺も同じだ、今度こそ姫宮に勝ちたい。……でも、正直言って今のアイツに勝つ未来(ビジョン)がまるで見えない」

 

 

 潔の発言にカイザーは苛立ち、更に強く睨みつける。しかし潔は怯むことなく、カイザーにとある提案をした。

 

 

「なぁ、手を組まないか? 俺とお前で」

 

「……は?」

 

 

 それを聞いた瞬間、カイザーの思考は固まった。そもそも対立するチームの選手同士なのだ、手を組むなど聞いたことがない。

 

 

「まさか八百長の提案でもしに来たのか?」

 

「んなくだらねーことはしねぇよ。でも少なくとも、姫宮を倒したいってのは俺達の共通目標だろ? 別に試合中に姫宮を妨害しろだとか、そういうことを言ってるんじゃない。ただ俺とお前の視えたモノを共有したいだけだ」

 

 

 潔の発言にカイザーは面食らったのか返すことが出来ない。そんなことはお構い無しと言わんばかりに、潔は言葉を紡ぎ続ける。

 

 

「……俺を選んだ理由はなんだ?」

 

「試合映像を見ててわかった。俺とお前は試合中の眼と脳の使い方、そして考え方が限りなく近い。俺とお前なら、姫宮に勝つヒントを見つけられるかもしれない」

 

「それが俺とお前が組む理由か?」

 

「ああ、姫宮に勝つ。ただそのためだけのドライな契約だ」

 

 

 普段のカイザーなら絶対に断っていただろう。誰かと手を組んで依桜に勝つなど、一人では依桜に勝てないことを認めたと同じだ。しかし今はそんなプライドにこだわっている時ではないのも事実、カイザーはあくまで冷静に結論を出した。

 

 

「わかった……その契約とやらに乗ってやる。ただしお前の持つ情報が俺にとって有益だと判断してからだ」

 

「ああ、それでいい。なら俺に視えたモノから話すぞ。まず、姫宮のエゴタイプは間違いなく『不自由・自分型』だ」

 

「……エゴタイプ? なんだそれは?」

 

「簡単に言えば人間がトップパフォーマンスを発揮出来る環境のことだ。無数の選択肢の中から自分で決められる自由な環境の方が能力を発揮しやすい奴と、既に決められたルールや役割の中でそれをクリアしたり打破しようとする不自由な環境で能力を発揮しやすい奴。望む望まないに関わらず、人間は自由か不自由かでパフォーマンスが変わってくる生き物だ」

 

「……なるほど」

 

「そしてもう一つ、世界型か自分型か……自分を捨ててでも世界からの評価を取りに行く方が力を発揮しやすい世界型と、周りを省みず自分のこだわりや感情に没頭する方が力を発揮しやすい自分型。俺はこの四つを軸に人間の思考を逆算してる」

 

「自由か不自由か……世界か自分か……なるほど、面白い考え方だ」

 

 

 潔の分析したエゴタイプの理論にカイザーは思わず納得した。確かに面白い考え方だし、敵がトップパフォーマンスを出せる環境を分析すれば自ずと対処方法も見えてくるはずだ。

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「──こんなところか。お互いの持ってる情報は出し合ったな」

 

「ああ、相変わらず状況はクソ一択だが……一筋の希望は見えてきた」

 

 

 小一時間程の情報提供の場は両者にとってかなり有意義なものだった。依桜に勝てるかはまだわからないが、少なくとも全く勝つビジョンが見えなかった時よりは幾分かマシだ。

 

 

「言っておくが試合では依桜だけでなく、お前も叩き潰すぞ……潔世一」

 

「それはこっちも同じだ。あくまでこれは姫宮に勝つための一時的な契約……情報を出し合った今、俺とお前の取引はここで打ち止めだ」

 

 

 それだけ言って潔は去っていった。依桜に勝つための理屈は見えた気がするが、カイザーはそもそも試合に出なければ話にならない。そこはノアの匙加減で決まってしまうが、少なくともそれに拗ねて何もしないという選択肢はカイザーになかった。

 

 

「……ふ〜ん、ボクに勝つためにそこまでするんだ。面白くなりそうじゃん♪」

 

 

 話の内容は聞こえなかったが、自分を倒すために二人が組んだことは何となくわかった。潔とカイザーの密会を影で見ていた依桜は、予想外に楽しくなりそうな最終戦に思いを馳せるのだった。

 

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