──ネオ・エゴイストリーグ第九戦イングランドVSスペイン、第十戦ドイツVSフランス当日。
『全世界の
『いやぁ凄いねぇ絵心くん、サブスク会員は遂に1億7千万人を突破!! 年棒ランキング1位の姫宮くんは今フットボールファンの中で一番熱い存在になってるよ!! この世代からスーパースターが生まれることを世界中が望んでいる!!』
「……そんなことは知っている。何の用だ会長」
最終戦を間近に控え、諸々の最終確認を行っている絵心のところへJFU会長の不乱蔦から連絡があった。忙しい時に電話が来たため、絵心は少々不機嫌そうに応対している。
『そうそう、姫宮くんの件なんだけどねぇ……くれぐれも内密に、だよ?』
「わかってるよゲス狸。そーゆー約束だからな」
不乱蔦の言葉に絵心は変わらずぶしつけな言葉で返した。不乱蔦の言う依桜の件、というのは昨日の出来事なのだが、絵心と不乱蔦は依桜を呼び出し話し合いの場を設けたのだ。
──1日前。
「よく来たねぇ姫宮くん! CM撮影の方は順調かな!?」
「銭ゲバ狸じゃん。わざわざ呼び出して何? そのCM撮影で忙しいんだけど?」
「ごめんねごめんね。今日は他でもない、君の身体のことで来てもらったんだよ」
「身体? ……うわキモ、死ねセクハラハゲ狸」
「違う違う!? そーゆーことじゃなくてね!」
前屈みになって両腕で身体を隠す依桜に不乱蔦は必死に弁明する。確かに自分の言葉選びが悪かったと猛省しながら。
「単刀直入に言う! 君に残された時間について世間に公表するか、それとも我々だけの秘密にするか、君の意志を問いたい!」
「……どういうこと?」
「お前のメディカルデータをオファーのあったレ・アールへ送った。プロ契約としては当然のやり取りだ」
不乱蔦の言葉に首を傾げる依桜。それに補足説明を加えるように横から絵心が口を挟んだ。
「クラブ側からの回答は『問題ない、むしろ是非ともウチに来てくれ。延命法を共に模索したい。君の価値はそれ程までに高いと我々は思っている』だそうだ」
「世界一のビッグクラブが君へ絶大な期待を寄せているんだよ! だがしかし……万が一君の事情が世間に知れれば、このオファーもどうなるかはわからない」
不乱蔦は残念そうに首を振った。しかし彼の言うことは最もであり、世間様は寿命を削って戦う選手を試合に出していることを知れば、クラブやブルーロック運営を袋叩きにするだろう。
「そこでだ! 我々は君の意志に任せることに決めた! 結局誰がなんと言おうと君の命の所有権は君にあるんだからね」
「要するに万が一公になった際にお前が自分の意思で公表しておらず、またお前の方から公表しないでくれと頼んでいたことにすればダメージは少なく済む。金儲けのことだけは悪知恵が働く守銭奴共の裏工作って訳だ」
「絵心くん、余計な口は慎むように」
依桜の自主性を尊重すると言えば聞こえはいいが、要するに責任を取りたくないから依桜に丸投げするという話だ。それを指摘した絵心に不乱蔦は余計なコトを言わないように忠告した。
「どうだね? 君としても、ここまでの活躍をしておいて水を差されるのは嫌だろう?」
「……まぁエロデブハゲ頭の言う通りにする訳じゃないけどさ、自分からボク命懸けで戦ってます! って言うのもダサいし、アンタの好きにしといてよ」
「さすが! 将来有望選手は話がわかるねぇ!」
──そして現在。
『それでこっちが本題なんだけど、さっきレイ・ダーク氏と直接お会いして話をしてねぇ』
「……
『君にも話した例の件のコトと、そして今日のドイツVSフランスの一戦についてね』
例の件とはネオ・エゴイストリーグを始めるに当たって不乱蔦が絵心に条件として出した約束だ。それがあるからこそ、ネオ・エゴイストリーグは実現した。だが本題はそちらではないらしい。
『姫宮依桜VS潔世一!!
「で、本題ってのはなんすか?」
『それはねぇ──』
「……!!?」
不乱蔦が口にした本題は驚愕の内容だった。驚き、何かを考えている絵心に不乱蔦は釘を刺す様に忠告する。
『これはレイ・ダーク氏も望んでいることだからね。拒めばどうなるか……わかるよね絵心ちゃん?』
「チッ……! 金儲けにしか興味のない銭ゲバ共が」
最後に悪態をつき、絵心は電話を切った。不乱蔦の言ったことは最終戦に多大な影響を及ぼすものだが、断ることはできない。己の立場の不便さに絵心は溜息を漏らすのだった。
♦♦♦♦♦
(……遂にこの時が来た)
バトルフィールドに向かう通路の中、潔の集中力は限界を突破していた。この日のために最大限の準備を重ねてきたのだ、決戦に向けての熱は十分だ。
(一試合目では人にはそれぞれエゴタイプがあるのを理解してシャルルに適応した。二試合では凛を喰ってアイツの覚醒を促した……そして三試合目ではチームを支配して俺のイメージするゴールを表現した……俺の評価を上げるために出来ることは全部やってきた)
これまでの戦いを振り返る。適応したり、喰ったり、アシストしたり、評価が上がるようにアピールを重ねてきた結果が今の2億2000万という年棒価格だ。確かに凄い金額だろう、しかしそこは潔の目指す景色とは違っている。
(でも……姫宮は俺より遥か上にいる。アイツに勝ちたい! 超えたい! ぶっ潰したい……!! そのために……もうアシストでの評価なんていらない……俺のゴールで姫宮に勝つ……!!)
「すげー集中力だな潔の奴。俺らの声なんて聞こえてねーか」
「ま、気持ちはわかるけどな。俺も姫宮ぶっ倒したいし」
「エゴイスト最終決戦! 楽しくなってきた♪」
後方で愛空、千切、蜂楽が潔を見て微笑する。彼らもまた最終戦に思いを馳せている。目的は様々だが、勝利という一点では同じ目標に向かっていると言えるだろう。
(漠然としてた世界一ってヤツを今なら思い描ける……俺の人生全てを賭けて挑戦する、俺だけの
薄暗い通路を抜けてフィールドの照明に一瞬目が眩む。薄目を開けるとバスタード・ミュンヘンの面々が既に待機していた。先頭にいる烏が潔たちを見て薄くニヤついた。
「凡ジュール、フランスの非凡共。相変わらずギラついた眼しとるやん」
「相手にとって役不足」
「……来たな潔世一」
烏の他にも斬鉄や玲王、バスタード・ミュンヘンの厳しい環境を生き抜いた猛者達が戦いの時を今か今かと待ちわびていた。だが潔の視線はその先、最後尾に君臨する女王へと向けられる。
「待ってたよ世一♪ ついでにりんりんと士道も! 潰してあげるからかかってきなさい。手加減はいらなくってよ♡」
「さすがです依桜!」
姫宮依桜は不敵な笑みで潔達を見た。それに隣のネスがパチパチと拍手をするが、フランス勢は呆れている。何故なら依桜はどこから持ってきたのかお城にありそうなデザインの椅子に座り、ジャージの上着をまるでマントのように羽織っているのだから。足を組み腕で顔を支えているポーズは本物の女王さながらだ。
「どうかな? 今のカメラに映ってた?」
「バッチリです! 今頃世界中の人々が依桜の虜になってますよ」
「……何やってんだアイツ」
「女王様ごっこかな? 面白そ!」
「緊張感ない女王様やな」
呆れる千切や氷織と、面白そうだとテンションを上げる蜂楽。真反対のリアクションが見られる中、愛空がとあることに気づいた。
「お、髪染めたのか姫宮。しかも今日は巻いてるし……気合い入ってんな」
「わかる? これ全部おネスがやってくれたんだ♪ ボクの専属美容師下僕は凄腕なんだよ!」
「お褒めの言葉、光栄の極みです」
愛空の指摘通り昨日のよる依桜は髪を染め、そして今日の朝には念入りにヘアセットもしてきた。髪の色は地毛の薄いピンクが毛先に行くにつれて濃いピンクになっていくグラデーションカラー。普段はストレートな毛並みも可愛く巻いたウェーブヘアーになっている。全てネスがプロデュースした渾身の出来栄えだ。ちなみに依桜が座っている豪華な椅子もネス作であり、意外となんでも器用にこなしてしまう。
「髪なんかどうでもいい……姫宮、お前は俺がぶち殺してやるよ」
「ちょっとりんりん、せめて褒めるくらいしてよね。そんなんじゃいつまで経っても彼女できないよ?」
「黙れゲロしゃぶピンク……覚悟しておけ、俺が欲しいのはお前と潔がぐちゃぐちゃになる瞬間だ」
だがそんなことはどうでもいいと凛が依桜の前に立った。彼の言い草に立ち上がり抗議する依桜だが、凛は更に距離を詰め顔を近づけて睨みつける。
「そこまでですよベロベロモンスターさん。
しかしネスが割って入り凛の腕を掴んで静止した。見た目からは考えられない力に凛は思わずその手を払い除け、今度は依桜ではなくネスを睨みつける。
「おぉーいお前らだけで盛り上がんなよ! 俺も交ぜろ女王と破壊獣コンビ♪」
「依桜の前に立たないでください変態悪魔さん。あなたを見ると依桜の綺麗な瞳が汚れてしまいます」
「いいよおネス。二人まとめて返り討ちにしてあげるから♡」
「きゃは! 楽ちみ♪」
「ほざいてろクソギャル共が」
士道も加わり、その場はカオスを極める。しかしその中に最後に入っていき、依桜と向き合う男がいた。
「やっと戦り合えるな姫宮。俺達の決着と……No.1の座は俺が勝ち取る」
「楽しみにしてたよ世一♪ 全力で叩き潰すから、ガッカリさせないでよエゴイスト!」
潔と依桜は短く言葉を交わして二人はそれぞれのポジションにつく。彼らの再開の挨拶と開戦の言葉はこれだけで十分だった。
「ハイハイ、とっとと始めるで」
「あい」
「生き残る……!」
バスタード・ミュンヘン formation
両チーム準備が完了し、観客の熱も最高潮に達している。No.1を狙う者、崖っぷちからの生還を成し遂げようとする者、どん底からの大逆転を狙う者、それぞれの思惑が重なる最終戦。その開戦を合図する笛が今鳴らされた。
KICK OFF!!!
キックオフはフランスチームから、凛が潔へとボールを渡し運命の一戦が開始された。潔は迷わずボールを左サイド、千切へと送った。
(初っ端から飛ばすぜ!)
「チッ……!」
清羅を置き去りにして千切は左サイドを駆け抜けていく。ブルーロック最速の脚はこのネオ・エゴイストリーグで更に速度を増している。
〖千切 豹馬〗
攻撃力S 94
シュートA 82
ドリブルS 94
パスA 88
守備力B 70
速さS 98
総合評価S 92
「ダメダメ、可愛いはボクの専売特許だからちぎりんは目立たないで!」
(……!? マジか姫宮、カバーリングが鬼速い!)
しかし千切の進路に依桜が立ち塞がる。千切のスピードを持ってしても彼を突破するのは至難の業だ。
(いや焦るな……姫宮相手に1VS1は仕掛けない、それがロキの指示)
「ええで千切くん。まだ始まったばかりや、落ち着いて崩してこ」
千切は即座に氷織へのバックパスを選択した。依桜相手に焦って勝負を急ぐことは無い、まずは堅実にボールを運ぶことだ。
「意外と凡集団やな、ビビって勝負できへんか?」
「言うときやカーカー烏。無謀と勇敢は意味が違うで」
烏とのデュエルを防ぐために氷織はすぐに右サイドへとパスを出した。しかし適当ではない、一瞬で発想したとは思えない高精度パスだ。
〖氷織 羊〗
攻撃力A 86
シュートB 78
ドリブルA 89
パスS 97
守備力B 79
速さA 81
総合評価A 86
「OKひおりん、俺の出番だね♪」
ボールは蜂楽へ。その独創的なドリブルで閃堂を置き去りにして右サイドを抜けていく。
〖蜂楽 廻〗
攻撃力S 93
シュートA 87
ドリブルS 98
パスS 90
守備力B 73
速さA 85
総合評価S 93
「待て、痛恨止めだドリブラー」
「ありゃ速メガネ。お上手な通行止めだこと」
しかし蜂楽の行く手を斬鉄が塞いだ。どうするか思考していると、横に天邪鬼が現れた。
「こっち使ってよブンブン蜂さん!」
「……! OK、天邪鬼!」
蜂楽からシャルルへのパスが通った。天邪鬼な彼に常識は通用しない、それはバスタード・ミュンヘン全員が承知している。故にどこにどんなパスが飛んできても対処できるようトレーニングを積んである。
「ありゃ〜パスコースねぇや」
「詰んどるやろボケクソガキ」
「なんちゃって(・∀・)」
「な……!?」
しかしシャルルはお構い無しにパスを出した。しかもPA内ど真ん中、凛と士道のどちらもが狙える一番警戒されるであろう場所だ。
「ホラ、取ってみなよ♪」
「上等だ天邪鬼」
「ブチ込むぜ!」
「くッッ……!」
「くわっ!」
そのパスを巡って凛と士道が抜け出す。日不見と鰐間が止めに入るがシャルルのパスは凛と士道の二人がギリギリ届かない、当然日不見達にも触れない位置へと落ちていく。
「どこ狙って……!?」
「上出来だ天邪鬼」
「……潔!?」
なんと凛と士道の間から潔が抜けてきた。初めから全て計算されていたのだ。凛と士道にマークが集まり、PA内は混戦になる。だからこそ彼らを囮に自らがゴールを決められる位置に最短で反射し走った。
(マジか……シャルルの思考を読み切って、凛と士道を囮に自分のゴールだけを狙う。チーム内だろうが喰い合うデスゲーム……これがフランス……これが今の潔世一……!?)
玲王が一連の流れを分析し、思考する。チーム内凛、士道、そして潔というストライカーが共存している。そのように思っていたが違った。彼らは喰い合っているのだ、最後の一人が生き残るまでひたすらにゴールという餌を求め争う、まるで蠱毒。
「0点赤点、世一は失格♪」
「……!?」
潔のダイレクトシュートで得点、誰もがそう思ったその時だ。飛び込んできた依桜はボールをかっさらってしまった。完全に抜け出したはずなのにボールを奪われた、その事に潔が驚く。
「こんなもん? だったら期待外れだよ頭デッカチちゃん♪」
(姫宮……完全に抜け出したはずなのに……!? これにも反応して迷わず飛び込んできやがった……!?)
「じゃあとりあえず、女王様の実力見せちゃおっかな♡」
依桜はすぐに前線、ネスにパスを出した。今度は彼を軸にバスタード・ミュンヘンのカウンターが始まる。
「OK依桜、磔で公開処刑だね」
ネスは左サイド、閃堂を使った。しかし彼の出したパスはかなり強く、かつトラップの難しい回転のかかったパスだ。あれでは今までの閃堂では取れないだろう。
「舐めんな……おらぁ!」
「おーすげぇ執念」
だが閃堂はそれを無理やりトラップ、蜂楽が距離を詰めてくる前に玲王へとボールを繋いだ。執念と意地があるからこそなせる技だ。
(ネスのパスは受け手を一つ先のレベルへ誘導する、言わば強制強化魔法。ミスれば堕ちてくけど、適応できればチーム全体が一段階進化する!)
玲王からボールはネスへ戻り、そして今度は右サイドの清羅へ。変わらず強く、全力疾走でギリギリ追いつけるかという難易度だ。加えて今度は浮き玉、確保するだけでかなりの難易度だ。
「行かせっかよ不良チビ!」
「タイマンはろうぜスピード赤毛」
持ち前の速さで追いついてきた千切が清羅に肉弾戦を仕掛ける。倒されかける清羅だが、ブレイクダンスのように身体を舞わせるとネスのパスをアクロバティックに返した。
「くッ……!!」
「あい、俺の勝ち」
「ナイス刃、依桜の下僕になる権利をあげます」
「……どーも」
ボールは三度ネスに。スピーディにボールを繋ぎ、ゴール前までたどり着いた。後はフィニッシュをどうするか。撃つか、それとも……
「やらせねぇぞ魔法使いちゃん!」
「……髭面オヤジ」
「やっぱお前を自由にさせられねぇな」
だが愛空がやや強引に形でネスを止めた。撃ちたきゃ撃て、その代わりパスはさせないという意志を感じるディフェンスだ。一瞬硬直したネスだが、すぐに笑みを取り戻して足を振るう。
「な……どこ蹴って!?」
「いますよね、僕の魔法」
「やっぱおネス最高!」
(姫宮……!? もうここまで!?)
依桜が右サイドを駆け抜けてきた。その戻りの速さに驚くが、更に意味不明なのがネスのパスだ。PAの右横へ抜けていくパスは、依桜の速度でも届かすゴールラインの外に出るだろう。そうなればゴールキックになるだけだ。
「さぁ、種も仕掛けもないマジックショーですよ」
「ボクの見せ場! ショータイム♪」
(パスが減速した……!?)
なんとネスのパスにはバックスピンがかかっており、ゴールライン数メートル手前で減速。そして全力疾走でパスを追っていた依桜はゴールラインの真上にボールが来たところでパスに追いついた。
「センタリング警戒!!」
「慌てんな! 向こうもまだ準備できてない!」
「センタリング? 何それ? 知らな〜い!」
センタリングを上げてもまだ味方も追いついてない状況。しかし依桜は迷わずゴールラインの上のボールをダイレクトでゴール目掛けて蹴り込んだ。角度は0、狙えるはずがない。だがそんな常識は依桜に通用しなかった。
「は……!?」
GOAL!!!
依桜の放った0角度シュートは美しい弧を描き、ゴール左横のネットに突き刺さった。ディフェンダーはもちろん、キーパーも飛ぶが間に合わない。
『き……来たァァァァ!! やはり姫宮依桜!! やはり女王!! No.1の貫禄を見せつける、零角度スーパーゴールが決まったァァァ!! 王者への道はバスタード・ミュンヘンが先制です!!』
ありえない、しかし現実に起こっている。そんな矛盾がフランスの思考力を奪った。呆然とするしかない、立ち尽くすしかない。圧倒的女王の前に凡人はひれ伏すしかないのだ。
「お見事です依桜!」
「ハッ……まずは1点やな」
拍手で依桜を讃えるネス、しかし彼のパスもまた魔法だ。減速させ、ボールを依桜が届くようにすることはまだ想定できたとしても、そこから0角度でゴールを狙うなど凡人には発想すらできない。依桜とネスの魔法が共存しているからこそ生まれたゴールと言える。
「なんやねん今の……ゴールライン上から直接叩き込んだ……!?」
「想定以上にヤベェ……どうすんだよコレ」
「すっげー爆発じゃねぇか女王様! やべ、イカされそうになっちまった♪」
「クソが……!」
フランスもそれぞれの反応を見せる。しかし誰も彼も依桜のゴールに驚き、焦燥感を持っているのは違いない。士道でさえ自身以外のゴールで満足気になってしまっている。普段の彼ならありえない事だ。
「あは♪ ホラ、こんなんじゃ足りないよ! もっとボクを楽しませて♪」
その様子に依桜は満面の笑みで笑い、煽り、かかってこいと挑発する。これがNo.1の余裕だ。
(想定を遥かに超えてる……! 俺は今日まで姫宮のプレーを研究しまくって対策を練ってきたけど、アイツはそれを簡単に超えてきやがった……!)
そして潔は驚きながらも、頭の中でピースを動かし続けていた。シミュレーションしてきたプレーは通用しない。依桜を倒すにはこの場で新しい何かを捻りださねばならない。
「面白ぇ……それでこそ俺の
どれだけのプレーを見せつけられても、潔の心は全く折れていない。それどころか逆に火をつけてしまったようだ。依桜に勝つ、ただ一つの目的のために潔は思考を回し続ける。
「いいね! いいね! 楽しくなってきた♪」
そしてもう一人、蜂楽廻もまた依桜のゴールで心を躍らせていた。絶体絶命は諦める場面ではなく、楽しむべきもの。その信念に従い、蜂楽は闘志を燃やしていく。
ドイツVSフランス、世紀の一戦はまだ……始まったばかりだ。
──次回『ウルトラスーパースペシャル』に続く。