〖ブルーロックRPG〗実況プレイ   作:マルメロ

74 / 80
フタリ・ヒトリ

 

 

 ──時は遡り、二次選考奪敵決戦(ライバルリー・バトル)

 

 

 玲王&黒名VS士道&五十嵐。

 

 

 現在のスコア、2ー4。

 

 

(クソッッ……! まだこんな化け物が残ってたのかよ青い監獄(ブルーロック)!!? 個人の得点能力じゃ凪や姫宮と同レベル! いや、それ以上か……!?)

 

 

 もう一点取られれば負けの絶体絶命の窮地。玲王はファウル覚悟で士道を止めようとするが、悪魔はその程度では止められなかった。

 

 

「優秀なだけの優等生クンじゃ俺の爆発は止めらんねぇぜッ!!」

 

「な……!?」

 

 

 士道のアクロバティックボレーが炸裂し、試合は決着を見た。玲王と黒名の敗北、それは即ちどちらかの脱落を意味する。

 

 

(負けた……!!? 今まで戦ってきたどのストライカーとも違う悪魔の天才に、俺達は叩き潰された……!)

 

「よっしゃらぁぁ!!」

 

(俺のせいだ……! 迷ったまま、中途半端な気持ちで戦ったからこんなことに……!)

 

 

 喜ぶ五十嵐とは対照的に、勝って当たり前だと言わんばかりに士道は顔色を変えない。対する玲王と黒名は士道という悪魔の実力にただ圧倒されることしか出来なかった。

 

 

「どっち奪るよ士道!? 俺的にはやっぱ御影玲王だな! 全能力優秀、あいつがいれば俺も点取れそうだし!」

 

「……あ」

 

 

 五十嵐の口から玲王の名前が出た。玲王はハッとして黒名の方を見るが、その顔は絶望で満ちていた。玲王が選ばれる、自分は堕ちる、きっとそのような未来が彼の頭の中で蠢いているのだろう。

 

 

(違う……黒名は俺を励まして、一緒に戦ってくれたんだ……! 悪いのは俺だ……! 俺のせいで、黒名が……)

 

「待て、そいつらの運命変えられんなら俺が決める。生き残んのはお前だピンク三つ編み」

 

「……え?」

 

 

 指名された黒名は思わず声を漏らした。玲王を見ながら何かを言いたげにしていたが、言葉が出てこないのか口をパクパクと動かすのみだ。

 

 

「おいちょんまげ優等生くん、元カノが忘れられねぇか? 童貞拗らせて部屋でシコってるだけじゃエゴは出てこねぇぜ? そーゆー意味じゃそっちの三つ編みの方がまだマシだ、行こうぜイガグリちゃん」

 

「おう!」

 

「自分を壊せない人間に爆発は起こせないぜ」

 

 

 士道と五十嵐は指名した黒名を置いて先に進んでしまった。立ち尽くしている黒名に玲王は必死に言葉を振り絞った。

 

 

「行ってくれ黒名……お前が選ばれるのは当然だ」

 

「……玲王」

 

「アイツの言う通りだ。俺は……中途半端な覚悟のまま戦って、お前まで危険に晒した……こんな最低のゴミクズ野郎、誰も欲しくない」

 

 

 黒名は返す言葉がなかった。ただただ自らの弱さを恨み、強者へと従うしかない。申し訳なさそうにその場を去る黒名の後ろ姿を、玲王はただ眺めるしかできなかった。

 

 

 そして玲王は暗い廊下を進んでいく。彼の中にあるのは後悔と絶望、世界一になるという夢も叶わず、凪との約束も守れなかった。無力で惨めな自分をただ攻めた。

 

 

(終わったのか……結局俺は、凪がいなきゃ何も出来ない無能。器用貧乏の……凡人だったんだ)

 

 

 EXITという文字が頭上を過ぎていく。“出口”……夢の出口、約束の出口、そして御影玲王という秀才の出口だ。玲王のサッカー人生は、今ここで終わった。

 

 

(……なんだアレ? 出口ともう一つ扉……? ……敗者復活(ワイルド・カード)!?)

 

 

 敗者復活戦へと続く扉。ブルーロックには敗れた者に一発逆転の最後のチャンスが残されていたのだ。ここで終わりだと思った敗者にとってはまさに最後の希望。しかし玲王はすぐにそこには入らなかった。

 

 

(戻ったとして……どうなる? 俺は……また中途半端に戦って、負けるだけじゃないのか?)

 

 

 絶望の淵にいる玲王はもう一度戦う意思すら失われていた。それは悪魔の仕業か、それとも別の何かか。玲王本人にするもう分からなくなっている。

 

 

『余計なお世話かもしれないけどさ、思ってることは全部伝えた方がいいと思うよ。本当にいなくなってからじゃ遅いから』

 

 

(……!?)

 

 

 ふと、依桜と別れる際に聞いた言葉を思い出した。彼の事情は全て把握している訳じゃないが、口ぶりから何となくわかる。依桜にもきっと、玲王にとっての凪のような存在がいたのだろう。そして、その人物はもうこの世にはいない。

 

 

『なぁ玲王。選ばれる方じゃなくて、選ぶ方になれよ。なんのためにサッカーやってんだお前』

 

 

「ッッ……!!」

 

 

 敗北と同時に潔世一に突きつけられた言葉。それが玲王の奥底に突き刺さる。次の瞬間、玲王はWILDCARDと記載された扉へと歩を進めていた。

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 ──そして現在、バスタード・ミュンヘン VS P・X・G

 

 

 現在のスコア、2ー2。

 

 

「行っくでストライカーズ」

 

 

 氷織羊の覚醒によって、P・X・Gは更に攻撃力を増した。優秀なパサーと怪物級のストライカー達、破壊力は正しくワールドクラスだ。

 

 

「いいぜひおりん! 呼応しろ、俺の鼓動に!」

 

「お前にはやらせねぇ!」

 

「……!? またお前か」

 

 

 氷織からの士道へのパスを玲王がカットした。これはオリヴァ・愛空のコピー、彼の器用さは攻撃だけでなくディフェンスでも活かされる。

 

 

「あ〜、思い出したわ。いつかの童貞クンじゃん」

 

 

 玲王の事をすっかり忘れていた士道だが、二回のマッチアップの末ようやく思い出したようだ。士道を倒す、それが玲王の目標の一つでもある。

 

 

(思えばあの時……俺達はチームZに、潔世一に……負けて良かったのかもしれない)

 

 

 玲王は試合の最中、自分の過去を振り返っていた。チームZに敗北し、凪が潔に光を見出してから玲王と凪の歯車は狂い始めた。今もその歯車は完全に噛み合ったとは言えない。

 

 

(凪は初めて自分から変わりたいと願って……俺は潔にも士道にも負けて地獄の底まで叩き落とされた)

 

 

 玲王がカットしたボールはシャルルが確保した。今度は士道ではなく、凛を狙ってパスを送る。

 

 

「嘘つきは泥棒の始まり!」

 

「あ……!? また盗ったスプタンキモニキ!?」

 

「ま、この場合俺が泥棒だけどねぃ♪」

 

 

 しかし日不見がシャルルのパスをカットした。何度もパスコースを読まれ、シャルルはかなりご機嫌ナナメな様子だ。

 

 

「上がれ灰地ちゃん!」

 

「うん、やる」

 

 

 灰地の武器は右足から繰り出されるインサイドキックの精度。蹴ると言うより、余計な力を抜いて押し出すイメージで細い所を速いゴロのボールで抜くことが出来る。

 

 

「マジか……そんなとこ通す!?」

 

 

 右サイドを上がっていく灰地は、千切が突っ込んでくる前に中央の玲王にパスを送った。敵の間を精密に抜けていくボールは、玲王の元へと渡った。

 

 

(でもそのおかげで凪・玲王(おれたち)はもう、一人でも戦える……! 世界一を夢見れる……! この試合に勝って、それを証明しろ……! 俺の全能力を勝利のために捧げろ……!)

 

「うそやん……糸師冴の股抜き……!?」

 

 

 糸師冴のドリブルのコピーで玲王が氷織を抜き去った。クオリティは本物には劣るが、それでも素晴らしい技術であることに変わりはない。

 

 

「コイツ……!? 一人で突破する気か!?」

 

「行かせないよおぼっちゃん!」

 

 

 蜂楽のスライディングも躱し、玲王はPA内に侵入する。前方には愛空、右には依桜が走っている。パスを出せば確実に一点を取れる状況だ。

 

 

「レオオこっち!」

 

「出さねぇだろワイルドおぼっちゃん! それが青い監獄(ブルーロック)だもんな!」

 

 

 愛空はパスの選択肢を捨て、真っ直ぐに玲王に向かってくる。対して玲王はボールをキープしつつシュートコースを探している。

 

 

(シュートフェイク……!? いや、こんなもんで俺を倒せると思うな!?)

 

(一瞬でいい、コースが開けば狙い撃つ!)

 

 

 玲王はシュートフェイクを挟み一瞬愛空の隙を作り出した。狙える程のコースはないが、彼は迷いなく足を振り抜いた。

 

 

「まだ甘ぇよクソ童貞!」

 

「……!?」

 

「ナイス士道!」

 

 

 しかしその瞬間、士道が割って入り玲王のシュートを防いだ。弾かれたボールは宙を舞い、千切の元へと降り注いだ。

 

 

「行くぞ速攻!」

 

「チッ……! 立て直せやお前ら!」

 

 

 千切の瞬足から P・X・Gの反撃が始まる。自陣に戻りながらも玲王は思考していた。今の攻撃ではゴールは奪えない、何が足りないのかと。

 

 

(クソッッ……! まだダメなのかよ! 身体能力を底上げして、コピーを身につけて、俺は一人でも戦えるように強くなったのに……!)

 

「ねぇレオオ、なんで前みたいに周りを使ったりしないの?」

 

「……! 姫宮……」

 

「それがレオオのいいとこでしょ?」

 

 

 玲王に並走しながら依桜が声をかけてきた。彼の言うことは、玲王にとって心当たりのあること。しかしそれではダメなのだと、彼の言葉を糾弾する。

 

 

「それじゃダメなんだよ! 俺は一人でも戦えるようにならなきゃならない……! だから余計なモンは全部捨てたんだ……! お前みたいに……!」

 

「……!」

 

 

 そうして玲王は回想する。ワイルドカードを勝ち抜き、ブルーロックに復活する事が決まった時のこと。能力を上げ、器用さを活かしたコピーを確立して復活した玲王だが、まだ心の中には不安の気持ちがあった。

 

 

 そんな時だ、Uー20戦の試合映像を見たのは。そこには玲王がいなくても戦いゴールを奪う凪と、先に進むために大事なモノを捨てた依桜の姿だった。

 

 

『姫宮……お前は捨てられたんだな、大事な宝物を……先に進むために』

 

 

 ──なら、俺も捨てなきゃ。宝物(なぎ)を……御影玲王(おれじしん)

 

 

 全てを捨て、玲王は戦うことを決めた。そうしなければ世界一のストライカーになどなれない、そうしなければ一人で戦うことなどできないのだから。

 

 

「……確かにボクは大事なモノを捨てて強くなった。けど、ボクはボク。それだけは捨ててないよ」

 

「……え?」

 

「レオオは超優秀でしょ? ほら、アイツらぶっ潰すよストライカー!」

 

 

 困惑する玲王を置いて依桜が加速した。その間にもP・X・Gのカウンターが勢いを増し、千切ら左サイドの奥底まで侵入していた。

 

 

「くわっ! やらせんぞ千切!」

 

「必死だなお兄!」

 

 

 鰐間の強引なタックルで千切の体勢が崩された。しかしボールロストだけは防ぎ、凛へとボールが渡る。

 

 

「決めろよベロ凜!」

 

「上出来だ赤いの」

 

 

 PAよりはやや外だが、凛は迷わずシュートを撃った。得意のカーブシュート、キーパーも反応が間に合わず、ボールはゴールへと吸い込まれていく。

 

 

「だからベロベロしなよベロ凛ちゃん♪」

 

「クソどピンクが……!!」

 

 

 だがそのシュートは依桜が強引な飛び込みで防いだ。弾かれたボールはPA内を転がっていく。そこに最初にたどり着いたのは蜂楽だった。

 

 

「いただき♪」

 

「ヤバ……!」

 

 

 今度は蜂楽のシュートがゴールに襲いかかる。キーパーは間に合わない、ゴールマウスはがら空きの状態だ。飛び込みの反動で倒れていた依桜は咄嗟に地面を蹴ると、蜂楽のシュートを強引に背中で止めてしまった。

 

 

「いった……!」

 

「マジッスか……」

 

 

 依桜のスーパークリアでバスタード・ミュンヘンは危機を脱した。依桜の背中に弾かれたボールはPAを超え、玲王の元へと渡った。

 

 

「レオオ、女王様命令! バスタード・ミュンヘン(ボクのチーム)使っていいからやりたいようにやっちゃいなさい!」

 

「……姫宮」

 

「クソ悪魔に復讐(リベンジ)するんでしょ!? 世一に勝つんでしょ……!!」

 

 

 トラップした玲王は一瞬目を瞑り考えると、次の瞬間目を開きニヤリと口元を緩ませた。

 

 

「わーったよ……やってやるめんどくさ女王!」

 

 

 玲王は左サイド、斬鉄にパスを出す。そして自分は前線に駆け上がりながら彼に指示を出した。

 

 

「サイドぶち抜け斬鉄!」

 

「御意……YES WII CAN!」

 

 

 ボールを受け取った斬鉄は左サイドを突き抜けていく。それを視界に入れつつ、玲王はフィールド全体を見渡した。

 

 

「手伝ってもらうぞネス!」

 

「僕は依桜以外の命令を聞く気は……」

 

「俺は今姫宮のビジネスパートナーだぜ? 俺の言葉は女王の言葉だ!」

 

「……!?」

 

 

 本当にビジネスパートナーとなったのかは疑問だが、ネスはこう言われれば協力せざるを得なくなる。それを見越しての説得だ。

 

 

「ここだな、後はよろしく美術師!」

 

「魔術師ですよ、おバカ眼鏡さん」

 

 

 左サイドの中盤までボールを持ち込んだ斬鉄から中央のネスへパスが出された。しかしこれは敵も読めていること、即座にシャルルがカバーに入る。

 

 

「わっかりやすい連携♪」

 

「ですね、僕もそう思います」

 

(……!? スルーした!?)

 

 

 斬鉄からのパス、それをネスはあえて空振りスルーした。これに一瞬フィールドは停滞し、敵チームは対応が遅れてしまう。

 

 

(今のP・X・Gはネスを最大限警戒してる。てことはアイツを囮に使えば、隙ができる……!)

 

 

「ホラ、これでええんやろ優等生」

 

「サンキュー烏」

 

 

 ネスのスルーしたパスは烏、そして玲王へと流れていく。そのまま勢いを止めることなく、玲王は右サイドの清羅へと美しいパスを出した。

 

 

「あい」

 

(またバスタード・ミュンヘンの動きが変わった……!? 玲王くんって司令塔がチームに血を通わせてる……!?)

 

 

 右サイドを抜けた清羅はクロスを上げられる位置までボールを持ち込んだ。中には玲王とネスが走り込んでいる。

 

 

「下げろ清羅!」

 

「……あいよ」

 

「……!? クロスじゃなくバックパス!?」

 

 

 しかし清羅はヒールにボールを当て背後へとバックパスを送った。そこには灰地が走っている。彼はPA内を見るとネスに向けてインサイドキックで強いパスを出す。

 

 

「……そこ」

 

「やらせねぇよ魔術師!」

 

「ネス!」

 

「……!」

 

 

 ネスの背後には愛空がいる。トラップしては彼の強力なフィジカルで止められてしまうだろう。ネスは愛空以外のディフェンスの位置、玲王の動き、そこから導き出されるオフサイドライン、全てを瞬時に頭に入れ最適のプレーをする。

 

 

(……は!? ボールに正面向いたまま俺の頭上を越える浮き玉!? なんだそのテク……!?)

 

「最高だネス」

 

 

 愛空を背中に背負ったままボールを浮かせるように触れることで彼の頭上を越えさせる。そのスーパーパスによって玲王は完全フリーな状態で抜け出した。彼についていたDFも一連の流れで置き去りにされている。

 

 

(完全に抜け出した……後はダイレクトでぶち込むだけ!)

 

「だろーな玲王、ここが一番ゴールの匂いがする」

 

(は……!? 潔……なんでここがわかった!?)

 

「同じとこ視えてんだよ器用貧乏……!」

 

 

 完全に抜け出したはずの玲王。しかし潔も同じところを読んでおりこれに対応してきた。これは完全に想定外、先にボールに触れられては即アウト。故に玲王は潔を抜き去るように動き出した。

 

 

「俺のオフ・ザ・ボールの動きか? 舐めんな、コピーに負けるかよ」

 

「クッ……!」

 

 

 潔がDFの裏に走る際に使用するオフ・ザ・ボールの動きのコピー。それを用いて潔を躱そうとするが彼はこれにも喰らいついてきた。身体をぶつけられ、体勢を崩されてしまった。

 

 

「軸をぶらされたら狙えないだろ?」

 

(くそッッ……! 考えろ……! 潔に勝つ……! そのために、この状況を打破する方法は……!)

 

 

 玲王は今までの経験と積み重ねてきたサッカーIQをフル稼働させ潔に勝つ方法を模索する。なんでもいい、この状況を打ち破る方法を。

 

 

「……これだ!」

 

(……!? こっから蠍足(スコーピオン)トラップ……!)

 

 

 なんと玲王は体勢を崩されながらもスコーピオントラップでボールを確保した。そして浮いていくボールに向けて身体を反転させる。

 

 

「……レオ」

 

 

 その様子をモニターで見ていた凪は思わず声を漏らした。これは凪と玲王の初陣、青森駄々田高校との試合の際に凪が初得点を上げた時の動き、そのコピーなのだから。

 

 

(からの反転蹴弾(ルーレットボレー)!?)

 

 

 身体を反転させ、玲王の放ったボレーシュートはゴール目掛けて伸びていく。潔世一を出し抜き、シュートを放つことに成功したのだ。しかし、玲王にはまだ倒すべき悪魔が残っている。

 

 

「いいじゃねぇかちょんまげ童貞! 好きだぜお前の爆発!」

 

「士道……!?」

 

 

 なんとシュートコースに士道が割って入ってきた。彼の伸ばした足はシュート間に合う、届く、防がれる。誰もがそう思っただろう。しかし、玲王はそれでもシュートの行方を見届けている。

 

 

「行け……!」

 

「……!?」

 

(は……? 加速した!? あのシュート、姫宮のコピーか!?)

 

 

 なんと玲王の放ったボレーシュートは士道の前で加速、彼を置き去りにしてしまった。依桜の代名詞である加速するシュート、そのコピーだ。

 

 

潔×凪×姫宮

 

 

三連続高精度複製(トリプル・ハイレベルコピー)!!! 

 

 

 士道を出し抜いたシュートはキーパーの反応を許さず、ゴールネットへと突き刺さる。御影玲王のゴールで、バスタード・ミュンヘンが再び勝ち越した。

 

 

凪・玲王(おれたち)はもう……一人でも戦える! だからこそ……!)

 

「うん、レオ……すれ違っても……競い合っても……最後は世界一の景色を一緒に見よう……二人で」

 

 

GOAL!!! 

 

 

 それは凪と玲王のエゴが通じ合った瞬間だ。共依存でも執着でもなく、一人で世界一を目指せるエゴイストが掲げる最終目標。各々が世界一を目指す夢の果てで、必ず会おうという約束なのだ。

 

 

『来たァァァ!! まさに器用大富豪!! 御影玲王のウルトラゴールでバスタード・ミュンヘン!! 三度突き放したァァ!!』

 

 

「ナイスゴール玲王!!」

 

「おう! お前もナイススプリントだ斬鉄!」

 

 

 斬鉄とハイタッチし喜びを分かち合う。完全に凪と和解したとは言えないのかもしれない、しかしこれからの新たな方向性は定まった気がする。それは斬鉄にも通じているようだ。

 

 

「おめでとレオオ。やるじゃん優等生」

 

「……姫宮、ありがとな」

 

 

 似た境遇にシンパシーを感じるからか、依桜は玲王の事を気にかけていた。それが今回、前進があったようで何よりだ。

 

 

「すげぇじゃん御影玲王。覚えたぜ、お前の名前。童貞卒業おめでと♪」

 

「……どーも」

 

 

 続けて話しかけてきた士道。その賞賛の言葉に対して、玲王は無愛想に答えた。シンプルに失礼なのもそうだが、まだ士道に勝てたとは言えないからだ。完全に勝利する時まで、士道は玲王の中で倒すべき敵なのだ。

 

 

「も〜! ねぇロキ〜! やめていい──!? パス全然通んないし、やる気出ない〜!!」

 

「……出たな悪癖、モチベーションのムラッけ」

 

 

 そんな中、日不見にパスをことごとく止められているシャルルは嫌気が指したのかロキに交代を要求していた。モチベーションが維持できない、シャルルの問題点の一つはこれだ。

 

 

(クソが……! 姫宮のせいで俺がまともに動けねぇ……! 気持ち悪ぃ……ゲロしゃぶピンクのちょこまかも……ちょんまげレオンの青春ごっこも……全部気持ち悪ぃんだよ……!)

 

 

 そして凛もまた、思い通りの活躍ができない現状に憤っていた。依桜に止められ、士道にゴールは先を越され、ゲームの支配という点でも潔に上を行かれている。この現状全てが、凛にとっては不快でしかない。

 

 

(ああ……全部ぶち壊したい……!! ぶっ殺したい……!! ぐちゃぐちゃにしたい……!! 待ってろ姫宮……!! 潔ィィ……!!)

 

「ハァ、しょうがないですね……出るつもりはなかったんだけど……お手並み拝見としましょうか、姫宮依桜」

 

 

 フィールドがまた状況を変化させる中、破壊獣は本能を剥き出しにする覚悟を決め、そして世界最速のスーパールーキーは密かに出場を決意するのだった。

 

 

 ──次回、『FASTEST』に続く。

 

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