一般TS転生者はちんちんを取り戻したい   作:ひさなぽぴー

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1.ハロー・ザ・ハンターワールド

 ある日目が覚めたら、いきなり性別が変わっていた。夢だと疑っても一向に覚める気配はなく、戻る気配もない。そのままどんどん時間だけが過ぎて……。

 

 そんな状況を、人間は果たして受け入れられるだろうか?

 

 大半の人はすぐには受け入れられないだろう。しかし現実となってしまったからには、時間経過に伴って少しずつ受け入れていくしかなくなっていき、いずれは少しずつ順応していく……というのが一般的ではないだろうか。

 

 もちろん、絶対に嫌だという人もいるだろう。元の性別であることにプライドだったりアイデンティティなりを見出していた人にとっては、それを失うことは耐えられないだろうから。

 

 逆に、積極的に新しい性別に順応する人だっているはずだ。元々肉体と心の性別に乖離があった人はきっとそうだろうし、違う性別に対してある種の憧れを持っている人などもそうなるかもしれないな。

 

 あなたはどのタイプの人だい?

 

 俺は、まあ、普通に一般的なタイプだと思うよ。男じゃないと嫌だと言いきれたらよかったんだろうが、あいにくとそこまで男という性別に執着はない。男に戻れるなら戻りたいとは思うけどね。

 

 けれどそもそもの話、どこに出しても大して見向きもされなかったごくごく普通の人間が俺だ。大多数のモブの一人という認識で生きてきたし、その過程で積み上げたものもまた平々凡々な俺である。

 性に対する認識についても凡人の域は出ず、女に転生して四年経った現在でもいまだ新たな身体を受け入れられないものの、少しずつ順応してきていることも間違いない。

 

 とはいえ、どのタイプの人であろうと結局は現実になってしまったものをその人なりに飲み下して、生きていくしかないことには変わりない。それが人生というものだ。ましてや、現実でいきなり性別が変わるなんてことがあったら、もうどうにもならないんだし。

 

 いやまあ、現実でいきなり性別が変わるなんてことあるはずないだろって言われたら、せやなとしか言えないんだけどさ。

 

 ……ただ、そんな非現実的なことが起こっている身としては、やっぱりこう思うわけだ。

 

 生まれ変わった先が現実の地球じゃないなら、ワンチャンあるんじゃね? と。

 

 だってその生まれ変わった先に、魔法だの妖術だのといった超常の力があったんだとしたら、性別を変える技の一つや二つあっても何もおかしくなくね? って思うじゃん? むしろ普通の人間なら思うだろ?

 

 そして俺が生まれ変わった先も、何の因果か現実の地球ではない。いわゆる超常の力が存在する異世界だった。

 しかもその世界のことを、俺はそれなりに知っている。ここにある超常の力についても同様だ。

 

 であれば、と思うのは当然の帰結だろう。

 

 そう……!

 

「念能力でそういう発を作れば、男にだって戻れるはず……!」

 

 元日本人の男、改め現クカンユ王国人の女であるところの俺はそう思うわけです。

 

 ああそうだよ。転生先はハンターハンターの世界だ。よりにもよって。

 

 いや好きだよ、ハンターハンター。ちょうどストライク世代だったし、夢も浪漫もいっぱいある。好きだよ。

 

 傍から見てる分にはな!!

 生きていく難易度がクソ高い……割と気軽に尊厳も命も吹き飛ぶ危険だらけの超ヤベェ世界に、誰が好き好んで行くというのか!!

 

 都心部でまっとうに生きてればそうでもないだろと思われるかもしれないが、この世界は日本に比べるとどこも治安が悪い。おまけに、どこに超能力者や危険生物が潜んでるかもわからないと来たもんだ。

 

 そうでなくとも、人間なんて呑気に霊長類を名乗っていられない程度の弱小生物でしかない世界だぞ。暗黒大陸なんて行かずとも、ちょっと街から外れたところで魔獣に襲われてデッドエンドとか普通にあり得るだろ!? 怖すぎるわ!

 

 何かエグいチートの一つや二つでもあれば話は変わってくるんだろうが……あいにくそれらしい特典は、今のところ俺には見当たらない。無理ゲーである。

 

 だが生まれ変わってしまった以上、生きている以上、生活はしていかなければならない。であれば、この世界を生き抜くためにも最低限の力は必要不可欠。

 

 そしてこの世界における強さ、力の象徴はやはり念能力だ。生命のオーラ、気とも言うべきものを用いた、超能力である。

 これさえあれば、できることはぐっと広がる。単純に自衛以外にも融通が利くからこそ、習得は必須と言える。この世界に来た原作知識持ちの転生者なら、たぶん誰だってそうするだろう。

 

 単にすごい能力を得て俺TSUEEEEEしたいとかの欲求だってあるだろうが、現実的にもメタ的にも、最低限念を持っていないとマジであっさり死ぬ世界だからな。そこは仕方ないんだと思う。

 いやまあ、持ってても普通に死ぬときは死ぬんだけどさ。戦わなければ生き残れない。冗談抜きで。

 

 そういうわけで念能力だが……他の異能力バトルマンガみたく、特定の能力と限られていないのがミソだ。

 

 たとえば同じジャンプ掲載の異能力バトルマンガで出てくる斬魄刀や個性、スタンドなんかは、その人一人に一つだけの能力というもので、かつほとんどが生まれつきのものだ。

 生まれつきでなくとも、得られる能力の詳細は自分じゃ決められないことがほとんどだろう。念能力も、一応そのカテゴリから外れることはない。

 

 それでも念が他と異なるのは、自分でその能力をある程度自由に作成することができる、という点に尽きる。

 

 念には複数の方向性があり、人には得意不得意があるので、なんでもかんでも好き放題に作れるわけではない。しかし可能性は誰にでもあるというのが念の特異な要素であり、恐らくは受けた要素なのだろうと思う。

 

 というわけで、話は戻る。念は、わりとなんでもできる力だ。それさえあれば、一般TS転生者が失ったちんちんを取り戻すことだって、可能なはずなのだ!

 

 はずというか、これは間違いなくできると断言できる。なぜなら原作で、性別を変えるアイテムが出てくるからな!

 それはゲームの中のアイテムという立ち位置だが、そのゲームは現実で行われている。そのゲームのプレイには念が必須であることを考えれば、あれは念能力によって作られたアイテムと見ていいだろう。

 

 つまり、俺が目指すものはそのアイテム!

 

 ……と言いたいのはやまやまだが、そのアイテムの有効時間はたった二十四時間だ。おまけに、ゲーム外に持ち出すのは至難の業である。クリアしないと持ち出せないのだが、発売から十年以上経っても一度もクリアされてないってんだからやってられねぇ。

 そのゲーム自体も、かなりの難易度を誇る上にわりとあっさり人が死ぬデスゲームだ。そんなのは御免こうむりたい。

 

 何より、先にも述べたが俺は凡人なのだ。いっちょまえに承認欲求はあるし、未知への好奇心も人並みにはあるが、それはそれとして自分の命のが大事だ。

 こちとらただでさえ一回若死にしてるんだぞ。老衰とか病気ならまだしも、他人に殺されて二度目の死だけは嫌だ。

 

 そんな俺が、クソ難易度のデスゲーム……グリードアイランドをクリアするなんて、絶対に不可能と言っていい。そもそも参加したくないし。

 

 だから俺に残された手段は、そういう念能力……発を自ら開発することだけだ。そういう能力を持ってる人間を探し出して依頼する、って手もなくはないが……そんな人果たしているかどうか。確実を期すなら、やっぱ自分で何とかするしかない。

 

「と来れば、まずはオーラを感じ取るところからか……!」

 

 両親には悪いが、孫の顔を見るのは諦めてもらおう。

 

 ということで、クカンユ王国のとある田舎町で、一人の一般TS転生者が決意を固めたわけだ。なるべく社会人になる前に能力を開発し切りたいところだ……!

 

***

 

 決意を固めて修行を始めて、あっという間に二年が経った。俺は前世で言うところの小学一年生になったわけだが……。

 

「俺、男に戻れんかもしれん……」

 

 ある日の放課後、修行の途中で頭を抱える俺がいた。

 なぜって、二年も修行に費やしたのに、一向に念に目覚める気配がないのだ。これじゃ能力を開発する以前の問題である。

 

 原作主人公のゴンを筆頭にした四人組は、全員が全員化け物レベルの天才ばっかりだった。

 中でもゴンと親友のキルアは、師匠となったウイングから「1000万人に一人の才能の持ち主」と評されていた。まっとうに修行をすれば「一週間、あるいはそれよりも早く」目覚められるだろう、とも。

 

 また、同じくウイングが「10万人に一人の才能」と評した弟子のズシは、一番初歩の初歩である纏に目覚めるまでに三か月。纏を固め切るのに半年かかったとも言っていた。これをかなり早い、とも。

 

 だから一応、身構えてはいたんだ。いわゆる天才のラインがこの辺りだとするなら、俺はもっとかかるだろう……ってな。

 だが二年かけて成果ゼロとなると、さすがに凹むものがある。この分野でも俺は凡人なんだなぁ、って思い知らされたような気がするぜ。

 

 そしてこんだけ念の才能がないとなると、性別を変える能力を開発できるかどうかわからなくなってくる。

 というわけで、男に戻れないかもしれない、という懸念が出てきたのである。

 

 肉体そのものを作り替えるタイプの能力は、原作でもそれなりに出ていた。しかし原作でその手の能力者としてまず名前が上がる人物と言えば、ゾルディックの長男イルミやトップハンターとして名を馳せる超人ビスケのような上澄みばかりだ。あとはキメラアントの師団長とか。

 

 だがそんな連中であっても、「肉体の形を作り替える」どまりで性別自体を変えるところまでは行っていない。能力として無意味、もしくは自身の目的にかみ合わないから組み込んでないだけならいいが、性別を変える場合はより難易度が上がるんだとしたら俺としては最悪だ。ただでさえ才能なさげだってのに。

 

 いずれにしても、この手の能力は恐らくそれなり以上の才能と努力が必要になる。そんなものを凡人が作るとか、一体どれくらいの時間と労力が必要になることやら……。

 

 そしてそれだけ根気よく、同じことを、成果が上がらない中も継続し続けるだけの忍耐は、俺にはない。努力だって一種の才能だもんよ。凡人にそんなものは期待しないでほしい。

 

「……やっぱ完全自己流はダメだなぁ」

 

 ため息をつきながらごろりと仰向けに転がる。

 

 念能力はわりと体系化されているんだが、基本的に秘匿された力だ。その気になればなんでもできる能力であり、目覚めるだけでも常人を超える力を手にできるものだから無理もない。

 が、それはつまり、簡単には教えを請えないということでもある。

 

 もちろんそういう師匠に触れずに自己流で念に覚えたやつだっているが、そういうタイプで目を見張るような使い手は原作でもほぼいなかった。天空闘技場編で出てきた使い手なんか、全員そうだと言っていいだろう。ウイングとズシは別枠だ。

 

 それを思えば、やはり自己流は色々と厳しいんだろうな。原作知識があるからいけるやろと思った俺が甘かったわけだ。瞑想のつもりがお昼寝になってたとかザラだったし。

 

 じゃあその手の師匠を得るにはどうすればいいかだが……手っ取り早いのはやっぱり、心源流拳法に弟子入りかなぁ。

 

 心源流拳法とは、原作における最高峰の実力者でハンター会長ネテロが修めている……というか創始した流派であり、先述のビスケもこの使い手だ。もちろんビスケの弟子であるウイングも同様であり、つまり原作で描写された念の修行法はおおむね心源流のものと言っていい。

 世界は広いから、たぶん探せば心源流の他にも念について教える格闘技なりなんなりはあるだろう。けど基本的に念は秘匿された技術だから、一般人が調べられる範囲で見つかることはそうそうないと見ていい。

 

 だから現時点での無難にして最良の方法は、心源流のよさげな道場を探すことになるんだろうな。ま、ここは親の裁量も関わってくるから相談が先かね。

 

 これで俺の生まれが金持ちだったら――いい意味でか悪い意味でかはこの際関係ない――ダダコネまくってそういう人を雇ってマンツーマンの指導をしてもらうって手段もあるんだろうが、生憎と我が家は何の変哲もない田舎の中流階級である。やるならどっかの道場に通うのが無難だろう。念を教えてもらえる段階に行くまでにかなり時間がかかりそうだが、そこは仕方ない。

 

 他に手っ取り早く念に近づく手段としては、ハンターになる、天空闘技場で二百階クラスの闘士になるなどがあるが、どっちも死と隣り合わせどころか一緒に踊るレベルの危険度なのでキャンセルだ。

 

 そこらへんの野良の念能力者にオーラをぶち込んでもらう?

 論外! 却下! 閉廷!

 

「……よし。そうと決まれば善は急げだ」

 

 ともかく、ひとまずの方針は決まった。

 そして俺は勢いよく身体を起こすと、部屋を飛び出し今世の両親におねだりに走ったのだった。

 




念能力を極めれば、TS転生してもちんちんを取り戻せるのでは?
仕事中にふとこの可能性に気づいてからというもの、妄想が止まらなかったのでうっかり書いた。
うっかりその勢いのまま一週間で書き上げたので、あちこち不備とかもあるかもですが、書いてて楽しかったので今は満足してます(その目は澄み切っていた

そんなわけなので本作は短期集中連載ということで、毎日一話ずつ更新していきます。全部で十七話の予定。
果たして一般TS転生者はちんちんを取り戻せるのか!? 乞うご期待! タグはなるべく見ないでいただけると助かる!

もう一つの長期連載作、「銀河の片隅でジェダイを復興したい!」ともどもよろしくお願いします。
こちらは何事もなければ、あと一週間ほどで更新再開できる予定です。
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