一般TS転生者はちんちんを取り戻したい   作:ひさなぽぴー

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16.一般TS転生者とハンター試験 7

 最終試験、負け上がりのトーナメントバトル。おおむね原作通りに進んだが、そうじゃないところもあった。これはやはり、俺がいることの影響なんだろう。

 

 原作通りのところは省略するとして……原作と違ったのは、クラピカ相手に負け上がったヒソカの相手が、レオリオだったことだろう。

 そしてこの戦いで、レオリオは気圧されながらもヒソカに立ち向かったのだが……なんとヒソカは、クラピカ相手にしたようにある程度戦ったところで降参したのである。これにはちょっと驚いた。

 

 驚いたあとに、次にヒソカと戦うのが俺ってことに気づいて血の気が引いたよね。主人公組よりヒソカのほうがよっぽどやりやすいとは言ったけど、まさか本当になるとは思わないじゃん。やめてよ。

 ていうかだな。自意識過剰じゃなきゃあのピエロ、俺と戦いたくてわざと負けただろ? 嫌すぎるんですけど。

 

 その後は俺の試合が来るまで原作通りに進み、俺とヒソカの戦い。案の定ピエロは俺と戦いたかったからと抜かしやがった。

 

 ただ……俺はここで、降参を選ばなかった。できれば戦いたくはなかったが、それでもここはきちんと戦っておこうと思ったのだ。

 

 どういう心境の変化だと聞かれれば……やっぱり、レルート先輩との約束の影響だろうな。

 

 俺は凡人だ。どうしようもなく。

 けれど、それでもやっぱり、好きな人を守れるくらいには強くなりたい。そのためには、相手が気まぐれな死神だろうと暗殺一家の長男であろうと、逃げることはあっても負けない気概は持っていなくちゃいけないんだって思ったからな。

 

 だから俺は、本当に自分でも驚くくらいまっとうに、正面からヒソカと戦った。非能力者が大勢いるということもあって、お互いに暗黙の了解で発は使わなかったが。

 

 それでもやはり、ヒソカは達人だった。少なくとも俺に合わせて最大の手加減していたネテロ会長に匹敵する流を、ヒソカ特有とも言うべき粘着質かつおどろおどろしいオーラの堅から繰り出してくるんだから、とんでもない使い手である。

 おまけに頭もキレる。単純な武術の腕だけで見れば恐らく負けてないんだが、咄嗟の判断力やいざって時の大胆さで何歩も劣る感じだ。何回逃げてればよかったと思ったことか。

 

 だが逃げたら一つ、進めば二つだ。少なくとも、ここは逃げていい場面ではない。そう思った。

 

 何より、先輩の顔と声を思い起こしながら、俺は戦い続けた。そうすれば、勇気が湧いてくる。

 だから押されてはいたが、一方的と言えるような戦いではなかったと胸を張れる戦いだったと思う。少なくともポイント制の天空闘技場なら、俺が普通に勝っていた可能性は結構あったんじゃないだろうか。

 

 そしてその戦いは、ヒソカをしてそれなりに満足する戦いだったらしい。

 ただし、ヒソカにとって発なしでおまけに殺しも禁止な「試合」は、それなりが限界だったらしい。

 

「うーん、もったいない♦︎ あ、ごめんごめん、君が悪いわけじゃないから気にしないでよ♥ 攻めっ気が弱いのはボク的にちょっとマイナスだけど、カウンター主体って考えればそこまでじゃないし♣

 でもボク、最近極上の果実と出会ったばかりだからさ? 今は『ナシ』じゃ満足できない身体になっちゃってるみたい♠︎」

 

 とのことで。そこからは怒涛の攻めをかけられ、あえなく俺の降参となった。

 いいところまでは行ったと思うんだけどな……やっぱり日常を殺し合いに置いてるやつは強い。躊躇がないのももちろんだけど、戦うということに対して思考が早い上に柔軟だ。まだまだ俺に足りないものだ。

 

「次こそは()()でヤろうね♥ 君と過ごす時間はなかなか楽しめそうだ♠」

「嫌です……」

 

 でもそれはそれとして、やっぱヒソカとは戦いたくねーわ。今回のくらいのだったら俺も歓迎するんだけど、なんでもありの殺し合いはちょっと……。

 あと股間おっ起ててんじゃねーぞ。こちとら適齢期の乙女かつ彼女持ちやぞ? 自重しろやこの変態。

 

 いやまあ、俺の発である日はまた昇る(サンズオブリバティ)はある意味では対念能力者専用の初見殺しみたいなもんだから、使える時期でさえあればヒソカに対しても結構な確率でチャンスはあるとは思うが……。

 でもなぁ。原作だとあいつ、ワンチャン狙いだったとはいえ殺されたあと、自分の死者の念で生き返ってるしな……。どう転んでも厄介なのはホントどうかと思うよ。

 

 しかしそれにしても……負けてしまったか。

 ということは、次の俺の相手はキルアということになる。これは確定事項だ。今のキルアに、兄イルミに勝つことは絶対に不可能だからな。

 

 実際その後のキルアとイルミの戦いは、原作通りに推移。散々に脅されたキルアは降参を宣言した。

 

 嫌だなぁ、この状況でキルアと戦いたくないなぁ。こんな精神状態のキルアに戦ったって、勝ち負けどっちに転んでも嬉しくもなんともないってのに。

 

「第八試合、キルアVSメルメリア!」

 

 審判が開始を宣言するが、その前からもうキルアの精神状態が明らかに悪くて気の毒になってくる。視線が定まってないし、顔色もずっと悪い。何より動く気配がないんだもんなぁ。

 こちとらヒソカ戦で負った怪我がたくさんあって、わりと満身創痍一歩手前くらいだってのに。

 

 おまけにイルミのやつ、例の何を考えてるかわからない顔のまま俺に「下手なことしたら許さないよ」ってオーラを殺気込めてぶちかまし続けてるんだ。勘弁してくれよなホント……。

 

 ただ、それでも俺はハンターになりたいので……ここは仕方あるまい。

 

「ふっ!」

「……!!」

 

 俺は今のボロボロな状態で出来得る、最大の練をした。会場にいる使()()()面々から、どこか感心する気配を感じる。

 それを無視しつつ、噴出するオーラをキルアに向けた。できる限りの敵意と害意を込めてだ。

 

 もちろん、接触させるつもりはない。凝の応用で、オーラの中心点を前方にずらした感じだ。

 まあやりすぎるとオーラを放出する形になっちゃうから、これ以上は動かせない。だからここからプレッシャーをかけるためには、さらにキルアに近づく必要がある。

 

 一歩、前に出る。するとキルアが、二歩下がった。

 イルミほどじゃないが、やはり相応の敵意が込められたオーラは非能力者には毒になるんだろう。ただでさえ弱ってるところでこれをされれば、キルアと言っても耐えられるものではないようだ。原作後半のキルアなら大丈夫なんだろうけど、今は、なぁ。

 

 俺はもう一歩、前へ出た。キルアはさらに、三歩下がる。

 もう一歩、二歩と前に出たところで、キルアは遂に背中を壁にぶつけるに至った。

 

 ここで俺は、蓄えていたオーラを右手に集める。ダメ押しの硬だ。心源流、というよりはネテロ会長のある種の原点ともいえる正拳突きの構えを取って、キルアに相対する。

 

 そしていよいよ、俺が拳を前へ放とうとしたその瞬間であった。

 

「……ま、いった……」

 

 キルアが降参を宣言。と同時に、覚束ない足取りのまま会場から走り去っていった。

 

 俺にはそれを追いかける余裕なんてなかった。生まれて初めて、本気で悪意を相手にぶつけようとして、直前まで行った。それが思っていた以上に、俺の心にプレッシャーをかけていたみたいだ。

 我ながら情けない話だが、ここはもう本当に、少しずつ慣れていくしかないんだろうな……。

 

 ともあれそんな形で、俺のハンター試験は終わりを告げた。

 

 結果だけを見れば初挑戦で合格という輝かしい成果だし、俺としても人生の目標をしっかり固めることができたいい機会だったように思う。だから来てよかったなぁと、今になっては思うところだ。

 両親に早速報告したらめちゃくちゃ祝福されたので、やっぱ先輩関係でマフィアの報復が親族に行かないようしっかり対策を考えないとなって思う。

 

 ハンターライセンスは、最終試験の翌日に配布された。同時に講習会が開かれ、ハンターについての心構えであったりとかをレクチャーされた。

 

 気絶から回復したゴンが講習会に乱入してきてイルミと一悶着あったが、そこは原作通りだったので割愛してもいいだろう。

 講習が終わったあと、ゴンはやはりイルミに絡みに行き、キルアを連れ戻す宣言をしていた。クラピカとレオリオもそれに付き合うと宣言していて、次の章に移行するんだなあという感じである。

 

 とはいえ、その前に合格者同士での交流が少しあった。俺も含め、ハンゾーやポックルも交えてお互いのホームコードを交換。何かあれば連絡を取り合おうということで解散になる。

 

 が、俺はその前にクラピカとレオリオに呼び止められた。ゴンがカイトの落としたライセンスについて聞くために、一旦二人から離れたタイミングだった。

 

「確かトリックタワーで、キルアの実家について言及していたと記憶しているのだが、よければあなたの知っていることを教えてもらえないだろうか」

「ククルーマウンテンだよね? パドキア共和国にある火山だよ。この辺からだと……飛行船で三日くらいの距離じゃなかったかな」

「思ったより詳しい情報が出てきて俺ァ驚いてるぜ。調べたことあんのか?」

「伝説の暗殺一家なんて言われたら気になるでしょ……って言いたいけど、昔レルート先輩が『ゾルディック家に依頼したいけどお金が足りない』ってぼやいてたことがあってね」

「……あの女が言ったセリフだと思うと説得力しかねーな……」

 

 なおこの話はガチである。今思えば、先輩はこのとき本気だったんだろうなぁ。きっと敵対するマフィアか何かの要人を消したかったんだろう。そんなちょっと怖いところも素敵です。

 

「観光地扱い、とも言っていたと思うがそれはどういう……?」

「文字通りだよ。ククルーマウンテンとその一帯の樹海全部がゾルディック家の私有地なんだけど、入り口の門までは山景巡りも兼ねた観光バスが出てるらしいんだ。怖いもの見たさってやつ?」

「なるほど。では少なくとも、敷地手前まではわりと簡単に行けるということか」

「みたい。そこから先に行けるかどうかは別問題だろうけどね」

 

 とは言ってみたが、原作を知っている身からすれば茶番みたいなセリフだ。この三人なら一か月もかからず敷地の中に入ることができるし、その先……つまりキルアを連れ出すことだって可能だってことは、俺にしてみれば常識みたいなもんだからな。

 

「また借りを作っちまったな」

「気にしなくていいと思うけどね。これくらいめくれば誰でもわかる範囲だし」

「それでもだよ。礼には礼を。何かいい情報があったらすぐに知らせよう」

 

 と、話し終わったところでゴンが戻って来たので、そこで改めて俺は三人と別れることにした。

 

 正確には、ゴンと入れ替わる形でハンター協会の中に踏み込んだのだ。

 目当ての人物は、第三次および第四次の試験官をしていたリッポー。レルート先輩を、恐らくは収監・管理しているハンターである。

 

「リッポーさん」

「来ると思っていたよ」

 

 バレてたか。

 まあ、三次試験の様子はリッポーが直々にモニターしてたはずだし、それもそうか。

 

「ここではなんだから、個室に移ろうか」

 

 ということで案内された小さな面談室で、リッポーと向かい合う。

 

「用件はわかっているが、一応君の口から聞こうか」

「リッポーさんが管理している超長期刑囚を、貸していただくことは可能ですか?」

「ほう? 釈放しろ、とは言わないんだね?」

「罪は罪ですし……何より、今しがたハンターになったばかりの私にそこまで法を曲げる権力なんてありませんから」

「自覚があるようで大変結構」

 

 リッポーはそこでにまりと笑った。……この人わりと普段から笑い顔がデフォだから、そんな気がしたってだけだけどさ。

 

 次いで彼は端末を取り出すと、何らかのデータにアクセスしているのだろう。しばらくポチポチと操作していた。それは一分ほど続いた。

 

「フム。刑期が百年未満の囚人(トリックタワーでゴンたち一行の五十時間以上を削っているので、レルートの刑期は既にその分短縮されている)であれば、金額に応じて貸すことはできなくはない。ただし制限はつくし、何より『貸し出す相手のハントに寄与すると断言できる人材である』ことが条件だよ」

「……ハントに寄与する、ですか」

「我々はハンターだ。講習でもハンター十か条は習っただろう? その一だよ」

「ハンターたるもの何かを狩らなければならない……なるほど」

 

 レルート先輩は、間違いなく優秀な人材だ。高校時代の成績で、俺は結局先輩に勝てたことは一度もないんだから間違いない。

 だから俺のハントに寄与するかどうかで言えば、間違いなく寄与すると言っていい……が、具体的に何にとなるとすぐにはちょっと言えないかもしれない。想定してなかったもんよ。

 

 とはいえ諦めたくはない。考えよう。

 先輩が得意なことと言えば、ギャンブルだ。あとは、出自がマフィアだから裏社会について詳しいだろう。そこも普通の人間にはない能力と言っていいと思う。

 

 ……マフィア? 待てよ。九月にヨークシンで大イベントがあるな。世界中からマフィアが集まるやつ。

 正直な話、今年のヨークシンはこの世の地獄になるから裏社会には近寄るつもりなんてまったくなかったんだが……先輩を一時的にでも出所させる口実になるなら、それもアリだな。

 

 やるか。やろう。

 

「……一つ、心当たりがあります。九月に行われるヨークシンのアンダーグラウンドオークションでやりたいことがあるんですよね」

「ふふふ、いいじゃないか。すぐにそう返ってくるとは思っていなかったよ」

 

 またリッポーが笑った。今度はさっきより明確に、笑ったとわかる態度だ。何が琴線に触れたのかはよくわからないけど。

 

 内心で首を傾げる俺をよそに、リッポーはもう一度端末を操作する。それからもう一度笑い――今度は悪だくみをしているような笑い方だ――俺を正面から見据えた。

 

「では……君が望む人材であるレルートを、一か月につき一億五千万ジェニー。即金で払ってくれるなら、一億にまけてもいい。どうかな?」

「……延長料金はいかほどに?」

「もしも君が何らかの功績を上げ、その功績に彼女の寄与するところありと認められれば彼女の刑期はさらに短縮されるだろう。それ次第、とだけ」

「わかりました……ではとりあえず即金で二十四億払いますので、向こう二年間よろしくお願いします」

 

 ということで、俺も端末を取り出す。

 

 一か月一億なんて安いもんだね。むしろ先輩ほどの人間が、たかが一か月一億とは見くびられたもんだぜ。いやま、これで俺の資産は一千万を割り込んだけど、後悔は一切ない。

 

 ところが、リッポーは意外そうな顔をしていた。なんでだろう? あれかな、新米が既にそれだけの資産を持ってるってことが予想外だったのかな。

 

「……こう見えて私、天空闘技場の二百階クラスの闘士なんですよ。なので、それなりに資産はあるんです」

「……なるほど。いいだろう、私の負けだよ」

 

 え、いや、勝負してるつもりはなかったんですが。

 

 え? もしかして、値引きを請け負う代わりに貸しをつけるつもりでした?

 え、怖。ハンター怖。

 

 違うよね? そうじゃないよね? 俺の考えすぎだよね?

 

 そうだよね!?

 




ここで口実として地下オークションを出すために、レルートの背景をマフィアにしたところある。もちろん他にも色々あるけどね。
あとレンタル期間を二年としたのは、やるかどうかわからないけどもしやりたいってなったときのために、グリードアイランド編やキメラアント編に介入する余地を作るためだったり。
今のところその予定はないですけど、やりたくなったときのために打てる布石は打つだけ打っておこうかなって。

次回、ひとまず最終回。
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