とんでもない大金を手に入れた俺だが、そこでふと気づいた。俺、金の使い方がよくわからねぇな、って。
いや普通に使うのはわかるよ。何年人間やってると思ってんだ。俺がわからないってのはあれだ、金持ち特有の使い方ってやつだ。
正直今の俺には、この大金の使い道が豪邸を建てるとかとりあえずヨットを買ってみるとかくらいしか思い浮かばない。けどそんなの、あんまし意義のある使い方じゃないよなぁ。
第一家にしろ船にしろ、維持費がめちゃくちゃかかる。二十億弱なんてあっという間だろう。それに船とか、使うにはそれこそ海なり湖なりに行く必要があるが、そこで何をするんだって話になるし……。
なんだ? 投資か? 投資でもすればいいのか?
なんだっけ、にーさ? とか? そういうやつか? さっぱりわかんないぜ。
こういうときはわかる人に聞くに限る。俺の知り合いで一番の金持ちかつ上流階級と言えば、やっぱレルート先輩だ。先輩に聞いてみよう。
「あたしは動物が好きだから、このお金はそっちに使うつもりよ。そのためにはもっともっとお金が必要だし、安定した不労所得も欲しいところだけどね」
なるほど、動物。確かにそれはめちゃくちゃな大金が長期的にかかるやつだ。
おまけにこの世界、前世に比べて色んな動物がいるからなぁ。危険を度外視するなら、それこそ前世の比じゃない多様性があるだろう。ぶっちゃけ金とか、いくらあっても足らないだろうな。
うーん、さすが先輩。つまりあれだな、自分が好きなことに全力でぶち込むのが金持ちの金の使い方ってことだな。勉強になる。
じゃあ俺は何使えばいいのか、って話だが……ここでふとティンと来た。
俺がひとまず好きと言えるのは、やっぱりサブカルチャーだ。この世界では、それを大学の研究対象にしてるまである。たぶん卒論もそれになるだろう。
となれば、そこにつぎ込めばいいんじゃないだろうか。たとえばアレだ、あんまり人気が出なくて打ち切り喰らったアニメの続きを作らせるとか。
何気ない思い付きだったが、これかなり名案じゃないか? 前世でも、青春時代を彩ってくれたアニメが一向に続きが作られず、少しずつ世間から忘れられていくのに涙した覚えがある。それを防げるっていうなら、十億、二十億なんて安いもんじゃないか?
……よし。そうしよう。
俺はサブカルハンターになろう! 俺が好きだと思った作品のために金を使いまくる、究極のパトロンになるのだ!
いやあ、今回の旅行はいいことづくめだな! 自分の腕試しはできているし、金も稼げてるし、人生の目標が見つかったし、先輩はかわいいし!
そうと決まれば、もっとがんばって修行しよう。今のままでも行けるとは思うが、ハンター試験で絶対に落ちないようにしないとな。
好きなアニメの続きが見れないまま殺されたりなんかしたらその場で死者の念まき散らすくらい後悔するだろうから、そういう意味でももっともっと精進しないと!
まずは287期の一次試験、サトツさんの超長距離マラソンのために体力づくりだな! 前世だったら何時間も走り続けるとか普通に無理だし死ねるけど、今なら念もあるしなんとかなるだろ!
「先輩もせっかくだしハンター目指しません? 世界大富豪ランキングのベスト100には、ハンターが六十人もいるらしいですよ?」
「そりゃあ魅力的だとは思うけど、試験だけでも毎年それなりの数死んでるでしょ? あたしそういうのはちょっと……離れたところから眺めてる分にはいい娯楽だと思うけどね」
「……それもそうですね」
俺もつい直前までそう思ってたから、気持ちはわかる。
いやギャンブルでわりと勢いよく命とか全財産賭ける人の言うセリフかとも思うし、後半の発言に至ってはわかんないけど。眺めてる分にはいい娯楽って言い切る辺り、やっぱ先輩もこの世界の住人だよね。
まあ無理強いはすまい。そもそも先輩はもう手に職があるわけだし、それを疎かにするわけにもいかないだろうしな。この話はひとまずおしまいにしておこう。
「一応応援しといてあげるわ。ま、アンタに賭けるかどうかはそのとき次第だけど」
「そこは自信持って私に賭けてほしいとこなんですけどねぇ」
というわけで、俺もようやく二百階クラス出場だ。相手のことはできるだけ研究したが、さてどうなることやら。
……念を使った戦いは、ほとんど経験がない。心源流の念修行で師匠や他の弟子たち、あるいは他流の念能力者と拳を交えたことはあるが、あれは流や堅による修行の一環で、発ありのいわゆる「命のやり取り」ではなかったからな。
だから実質、これが初陣のようなものだ。どこまでできるかわからないが、やれるだけのことはやる。何より、勝つつもりでやらないとな。
***
ということで予定をオーバーして約一か月半粘って、二回戦った。どちらも新人狙いの雑魚ではなく、一定以上強さがあると見える人だったがそれでも勝利できたので、ホッとしている。長期休暇をギリギリまで使う決断をしただけの価値はあったと思う。
まあ、その二回目に勝った次の申請のときに、どこぞの戦闘狂ピエロのねっとりとした視線がずっと向いていて生きた心地がしなかったけどさ。ヒソカには付き合わないぜ。君子危うきに近寄らずだ。
そもそもいい加減帰らないとだし、大学もある以上はここにちょくちょく来るのは難しいからな。一応、二百階クラスの維持だけは細々と続けようかなとは思ってるけどさ。それもヒソカだけはなんとしてでも避け続ける所存だ。
話を戻して……試合の内容としては、初回、二回目としてはどちらも悪くなかったんじゃないかと思う。
ただしやはりと言うかなんと言うか、課題はそれなりの数見つかったので、そこも含めてもっかい本腰入れて修行し直そうかなと思う。ハンター試験もあるし。
いやさ、なんていうか、やっぱ前世で普通の日本人だった上に、今世もわりと平穏無事に一般人として生きてきた身としては、命のやり取りはだいぶ来るものがあったのよ。ここまででもなくはなかったけど、二百階クラスのやつらと来たら真面目そうな人でもわりと殺意込みで向かってくるのどうかと思う。さすが治安の悪い世界。
あと、初の念ありガチンコバトルってこともあって俺の動きは全体的に硬かったし、思ってた以上に堅も維持できなさそうだったしさ。ルールの中の天空闘技場ですらこれなら、野生の殺し屋とかにエンカウントしたらまず勝てないだろ。幻影旅団とかキメラアントなんて言わずもがなだ。
ただ念そのものもそうだが、それよりも何よりも一番の課題は、
そもそもそんな発は俺作っていないはずなのに。なんでかそんなことが起きてるんだから、これはしっかり検証しないといけないだろう。知らないでは済まされない。
というかもしこれが本当に発だったら、もしかして俺、除念師ってことになるのでは?
世界規模で見ても希少な能力者で、ハンター協会ですら抱え込んでる人材は一人しかいないって有様の、あの?
だとしたら俺、世界中から狙われることになるのでは? たとえば、他人の発を盗んでコレクションする趣味のあるどこぞの旅団の団長とかに!
……い、嫌だ……! そんなのは嫌すぎる……! こんなことですべてを失いたくねぇ……!
もちろん、まだそうだと決まったわけじゃない。一人目との対戦でしか起こらなかったし、その試合でも全部を無効化してたわけじゃないからな。頼むから違っていてほしいが、もしもそうだったときのためにも修行はやっぱり今以上にしたほうがいいかもしれない。
むむむ、どうしたもんかなぁ。修行をするならやっぱ師匠と連絡を取るべきだろうが、大学進学で地元を離れてるんだよな。
師匠の伝手で、今下宿してるところまで来てくれそうな師範か師範代を紹介してもらうか……?
比較対象がないからアレだが、原作での指導力を知っているから個人的な理想はビスケだ。しかし彼女ほどの人間を呼ぼうとしたら、即金で億単位は平気で飛びそうだ……。
……いや待てよ? 億単位の金あるな? 二百階クラスに上がってからファイトマネーないけど、俺が戦うときに先輩に預ける形で多めに賭けてもらってさらに増やしてるし。
うん、いけなくはないな?
ふむ。
よし、やれることはやろう。ビスケに指導をお願いしよう。そうしよう。
もしも俺の能力に除念効果がついてるとしたら……そこらへんも相談だな。
けど、そうじゃないことを祈るぜ……。そんなレアすぎる能力、お呼びじゃないんだわ……。
***
その後すぐに帰国してすぐに心源流に連絡を取ったところ、ちょっと多めに払えば指導が受けられる程度にはビスケのスケジュールが空いているとのことだったので、即金で十億払って稽古をつけてもらいつつ、俺に起きた不可思議な現象についても一緒に検証してもらうことにした。師範代の資格がなければもっとかかってただろうから、頑張った過去の俺を褒めてやりたい。
ただし、ビスケはダブルハンターだ。金で動いてくれたとはいえ、俺ごときのために使える時間は一週間だけだったので、かなりの強行軍となった。
そう、原作キメラアント編でもゴンとキルアがやった、ブートキャンプである。まさかあれを俺がやることになるとは思わなかった。死ぬかと思った。冗談抜きで。
あの二人、この生活を一か月もやったってマジ? やっぱ主人公勢とんでもねーわ。バケモンよ。俺なんか初日で普通にくたばりかけたんだぞ。
一週間の内、四日をこの生活に充てたけど……それも連続じゃなくて一日置きに休み(これも念関係の修行が休みってだけで、心源流としての修行は普通にずっとあった)を挟んでも死にそうだからな? もう一度言うがあいつらバケモンだよ。
「才能がないっていうなら、そんだけ努力すればいいだけだわさ」
「それができたら苦労はしねェ!」
「言い訳無用!」
「うわらばッ!」
なんて感じでなし崩し的に修行一色の四日間を送ったのだが、とはいえ四日間とはいえあのビスケにみっちり修行をつけてもらったことで、俺の念能力は飛躍的に向上……しなかった。
マジでしなかった。本当に念の才能がなさすぎて泣けてくる。
いやまったくしなかったわけじゃないんだが……。ついこないだビスケが来る直前に、復帰したカストロがもう既に俺並みの顕在オーラ身につけてるのテレビで見ちゃってるからさ……。
「驚いたわね。あたしもこの業界にいて長いけど、ここまで才能のない子は初めて見るわさ」
「そんなに!?」
「ここまで才能ないのに、それでもここまでくらいついてる子も初めて見るわよ」
「……それは……褒められてるってことでいいんですよね……?」
「素直に受け取んなさいよ。まあ武道家としての才能はあるみたいだから、そこで少しは相殺してる感じかしらね。し切れてないけど」
「ぐおおおお……!」
恐らくだが、俺はビスケから宝石にたとえられることはないんだろうな……。
でもさ、せめて道端に転がってるイイ感じの石くらいには思われたいよね。多少の愛着がわく程度の興味は持ってくれてるといいなぁ。
基本死にたくないやつなので、とことんヒソカは避ける方針(避けられるとは言ってない
次回、いよいよこのバカの発がお披露目です。
ところでらき☆すたのアニメ二期はまだですか?
キルミーベイベーのアニメ二期はまだですか?
ゆゆ式のアニメ二期はまだですか?
くっ・・・! ボクに・・・ボクに石油王並みの資産さえあればどれもこれも二期を作らせるのに・・・!
ということで、オタクが転生してハンターやる理由としては、これが一番現実的なラインじゃないでしょうか。