一般TS転生者はちんちんを取り戻したい   作:ひさなぽぴー

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9.一般TS転生者、金稼ぎと別れと

 1998年の9月初頭。つまり原作開始のおよそ4か月前。

 俺は大学の友人たちと一緒にサヘルタ屈指の大都市、ヨークシンシティに来ていた。

 

 そう、あのヨークシンだ。一年後、幻影旅団によって地下オークション会場が襲われることに端を発する一連の群像劇の舞台となった、あのヨークシンである。

 

 なんでこんなところに来ているのかというと、単純に卒業旅行である。

 あと、俺個人としてはオークションに参加するためでもあるな。売る側としても買う側としても。

 

 いやね? 思わぬ発の発覚で、できる限り俺の情報を秘匿せざるを得なくなったこともあって、とにかく莫大な金が必要なのだ。

 何せこの世界、ごく一部の例外を除き世界中の全住人の情報が電脳ネット上に保存され、わりとすぐにアクセスできてしまうからな。ハンターになったあとのことを考えると、個人情報を守る手段は多いほうがいい。

 

 電脳ネットの情報を隠す手段も、一応ある。電脳ネットの極秘会員になればいい。ただしこれには大金が欠かせない。

 加えて権威も必要になるが……そこは追々行動でなんとかしていくしかない。金はとりあえず現時点でも稼ごうと思えば稼げるから、やれるところからだ。そうでなくとも、金があればそれなりの数の問題を力づくで解決できるしな。

 

 そんな事情ができてしまったから、俺は天空闘技場から抜け出せないでいる。天空闘技場の二百階クラスとか試合が公共の電波に乗るから正直言って辞めたいんだが、今のところこれが一番稼げるんだよ……。

 

 何せ天空闘技場の二百階クラスでは珍しい正統派の格闘家、しかも美女だからな。ちょくちょくロイヤリティのつく仕事が入って来るんだ。これがまあまあでかい。

 ポスターとかのグッズは正直恥ずかしいんだけど、こないだ帰省したら実家どころか地元が俺のグッズで溢れてたのを見てからは、開き直るしかないと自分に言い聞かせてる。

 

 ちなみに肝心の戦績だが、今のところ自分でも驚くことに不戦敗以外では負けていない。念ありで改めてカストロとも戦ったが、今度は勝っている。

 俺の除念ちんちんは期間限定だし、このときのカストロは発が未開発だったみたいで、互いに発なしの試合だった。結果として、単純に念能力者としてのキャリアの差でなんとか押し切れたって感じだ。過去一重傷を負ったが、リベンジ成功したし満足いく試合だった。

 

 ちなみに試合後、今後ともよろしくと言われてプレゼントまでもらったんだが、男とそういう関係になるつもりはないので今はもうヒソカ並みに避けてる。

 彼の末路を知っている身としては罪悪感もあるが、これについてはすまんな。貞操の危機なんだ。

 

 ともかくそんな感じの戦績なわけだが、非能力者とか目覚めたての相手ばかり選んでるわけでもないのにこれなので、なんだかんだで俺はこの世界の平均よりは強くなれてるんだろう。だいぶ嬉しい。

 まあ、ここで満足するわけにはいかないから、もっと頑張らなきゃではある。今はうまく避けているが、ヒソカといつ戦うことになるかもわからんしな。

 

 話を戻そう。そんなわけで金は増えているんだが、それでもまだまだほしい。

 そもそも俺にとって今最大の目的は、死にかけのコンテンツを個人資産で救えるだけの資産を持つことだからな。それもコンスタントにだ。こんなもので足りるはずがない。

 

 だからこそ、ヨークシンである。9月初頭のヨークシンシティと言えばずばりオークションで、世界最大とも評されるビッグイベント。これは表社会も裏社会も変わらない。この時期のヨークシンには、いい意味でも悪い意味でも世界中の掘り出し物が集まる。

 その中から値打品を見つけ出して、オークションに出品する側になろうってのが今回の計画だ。

 

 俺にそんな目利きができるのかと聞かれれば、もちろんできるわけがない。人生を二度経験しているが、どっちも平々凡々な生まれ育ちで、俺自身もそういうことに興味なく生きてきたからな。

 

 だがこの世界には、念能力がある。もちろんこれは誰もが簡単に覚えられるものではないが……特定分野で活躍する人物は、本人も知らないうちに念能力を一部発動させていることがある。

 念、そしてオーラとは、その人の意思の発露でもある。だからこそ才能ある人物が手掛けた逸品は、そのオーラが残留していることがあるのだ。つまり何かしらのオーラをまとっている品は、いいものである可能性が高い。

 

 そしてオーラは、念に目覚めているものなら視認できる。凝をすれば精度はより上がる。これで掘り出し物を根こそぎゲットって寸法よ。

 原作でも、ゴンたちはこのやり方で結構な儲けを得ていた。念でぼろもうけ作戦である(ゴン命名)。俺もゴンさんたちにあやかり、念でぼろもうけしてやるのだ!

 

 ちなみに大学は既に卒業している。この世界では年明け早々にハンター試験が半月程度の時間を取って開催されるからか、それとも単にクカンユがフランスモデルだからかは知らないが、ともかく俺の地元や通っていた大学周辺の地域は9月が年度初めなのだ。なので卒業旅行とはそういう意味だ。

 

 つまりみんな純粋に観光目的なわけだが、これは仕方ない。今回の念でぼろもうけ作戦を思いついたのも、友人から卒業旅行でヨークシン行かねーかって誘われたときだし。

 

 だから、俺みたいにガッツリとオークションに関わるつもりでいるやつはいない。話のタネに規模の小さいオークションに数回参加したくらいだ。

 随分控えめだなと思われるかもだが、せっかくの卒業旅行で単独行動しまくるなんて野暮ってもんだからな。

 そもそも今回は、端から派手に動くつもりがない。初回ってことで、目的はヨークシンやオークションの空気に慣れるのが一番の目的って割り切っているのだ。

 

 ちなみに同じ学部の同期生たち五人ほどで来ているが、内訳は俺含め、全員が卒業と同時に就職しない連中である。年度始まってるからね、そりゃね。来れないやつはイコール就職したやつってことだな。

 

「お、これも当たりっぽいな」

 

 とまあそんなわけで、同期たちとヨークシンの街をあちこち歩き回って観光をする傍ら、たまにオークションハウスや骨董市に飛び入り参加して目ぼしいものを買って回る日々である。

 

 幸いというかなんというか、今の俺にはそれなり以上の軍資金がある。ビスケの依頼料でかなり吹き飛んでいるが、逆に言うと大きな出費はそれくらいなので、表社会での元手としてはひとまずは十分だろう。

 

 ……こうやって色々買い漁っていて思うが、世の中やっぱ金なんやなって。

 金がないと次に繋がる買い物が……投資ができないのに、その投資の金額が成功率を左右するんだからな。あるところに来るもんだよな、金って。不公平な世の中だぜ。

 

 そういえば金と言えば、こういうことにノリノリで便乗してきそうなレルート先輩は来ていない。当たり前と言えば当たり前だ。今回はあくまで大学の友人同士のものだからな。

 個人的には、オークションなり目利きなりに詳しそうな先輩にはいてほしかったのだが、まあこんなこともある。

 

 ……というか、実を言うと今年に入ってからあんま連絡が取れてないんだよな。正直心配だが、俺も俺で今年は卒論の執筆でものすごく忙しかったし、それと並行して卒業旅行の計画とかしてたから、あんまり先輩とやり取りする時間がなかったのも事実ではある。

 とりあえず、卒業旅行が終わって実家に戻ったら一旦きちんと連絡を取ろうとは思っているよ。

 

「それでは確かに、お預かりいたします」

「よろしくお願いします」

 

 そしてオークションが一通り終わる9月10日。俺は友人たちに断りを入れて、買い漁った諸々を一人でオークションハウスに持ち込んだ。来年のオークションの目録に加えてもらう契約を交わすためだ。

 

 オークションのカタログに掲載されるには、預けたものが本物であったり何らかの逸品であることが鑑定で認定されなければならない。そのために一年近い年月をかけて、徹底的にやるらしいのだ。だから持ち込んだ品が実際に競売に出されるのは翌年である。

 翌年、というと幻影旅団が頭をよぎるが、彼らの目的は地下オークションだ。俺はあくまで表でのオークションにしかものを出していないから、まあなんとかなるだろう。最悪、全部終わってから売り上げだけ引き取りに来てもいいし。

 

 なおさっきも言ったが、俺に目利きの知識は一切ない。オーラ頼りのやり方が絶対に成功するはずもないので、渡したものの中には贋作なんかも混じってるだろう。あるいはオーラはこもっていても、世間には売れてない無名の作家の作品ってこともあると思う。

 だから預けた品の何割かは、普通にはずれとして処理されるだろう。でもそこは必要経費だ。残った当たりが、投資金額を上回ってくれればそれでいいのだ。

 

 いずれにせよ、ここからはプロの仕事だ。俺もやるべきことは終わったので、あとはもう少しヨークシン観光をしてから帰省する予定である。

 

 帰省してからハンター試験までは、対策のために特訓と勉強の予定だ。特に今度の試験の四次試験であるゼビル島の狩り合いサバイバルゲームは、マジでガチの無人島に一週間身一つで放り込まれるからな。サバイバルの知識はしっかり身に着けた上で、必要な道具も最低限吟味して持ち込めるようにしないとだ。

 それを考えると、四か月ってのも長いようで短いよなぁ。

 

 なお両親には、向こう三年間は就職せずにハンターに挑戦すると素直に説明してある。そう、原作で言及された三回分だ。ここで合格できなかったら、色んな意味ですっぱり諦める。

 両親としてもハンターはこの世界共通の憧れの職であることや、俺を若くして心源流拳法を極めたフィジカルエリートという認識でいる(念能力者は世間的には超人とか仙人なので)ため、応援すると言ってくれている。

 まあその実態はこんなんなので、本当に申し訳ないとも思うが。

 

 ……お、ジャポンの民族料理屋みっけ。

 そういや、この世界の和食ってまだ食べたことがなかったな。どうせなら本場で本家本元を食べたいところだが、見た感じ前世日本のガチな和食処のイメージそのものな佇まいだし、大丈夫だろ。

 ワンチャン寿司もあるかもだし。この世界の寿司は試験前に一度食べておきたいんだよな。

 

「せっかくだし最後にお高いもの食べていかない?」

「いいねぇ!」

「賛成!」

 

 ということで、前世振りの和食を堪能した俺であった。

 

 ただ……どれも普通に前世の記憶通りのものばっかりだったが、頑なに寿司だけがラインナップになかったのは世界の修正力を感じる。そういえばハンター世界だと、寿司は知る人ぞ知るマイナーな民俗料理って扱いでしたね。

 なんか不思議だ。味噌汁とかめちゃんこ凝ってるのが出てきたし、茶碗蒸しだってかなりおいしかった。頼まなかったがメニューの中には懐石料理とかもあったんだけどな。なんで寿司だけそんなことに……?

 

***

 

 楽しいことのあとにはつらいことが待っているものだ。人生ってのは、楽があれば苦もあるものだ。禍福はあざなえる縄のごとしってやつだな。

 

 俺もそれに見舞われていた。レルート先輩が逮捕され、既に実刑が確定して服役中という事実を知ってしまったのだ。

 

 実家に帰って、先輩に連絡を取ろうとしてもまったく繋がらないものだから、電脳ネットや個人的な伝手を使って先輩について調べたんだよ。

 そうしたら、去年の末には既に逮捕されていた事実に行きついてしまったのである。

 

「そんなバカな!? 今年の初めには普通に連絡取れたんだぞ!」

 

 と思ったが、どうやらかなりの金を払って保釈されていたらしい。そのあと刑が確定したことで、収監されてしまったようだが。

 

 それだけならまだいい。

 いやよくはないが、刑にはそれぞれ重い軽いがあって、軽い罪であれば実刑判決を受けても数年程度で出てこれるからだ。

 

 だが先輩の受けた実刑は、なんと懲役()()()()。いわゆる超長期刑囚というやつに、先輩はなってしまっていたのだ。

 この刑を受けた人間は、普通の刑務所には入らない。専用の刑務所に入り、一般人はろくに面会もできなくなる。それだけ重い罪を犯した人間が対象なのだ。

 

「希少生物売買、および違法賭博……」

 

 先輩の主な罪は、そう掲載されていた。

 そんなバカな、とずっと思っていたけれど、それを提示されると俺もすぐには反論できない。確かに先輩は動物が好きだし、ギャンブルも好きだからだ。

 

 それに、先輩は俺と一緒で楽に稼ぎたいタイプの人間だ。そして俺よりも、倫理観に緩いところがあったのも事実。

 だからこそ、列挙された先輩の罪状をざっと眺めて、少し納得してしまった自分がいた。信じたくないって思う自分もいたけれど、確かに二つの感情が俺の中で違和感なく同居していた。

 

 でも、まだ完全に納得できたわけでもなく……俺はしばらく呆然としていたが、なんとか先輩の無実を証明できないかとあがき始めた。

 

 しかし現実はどこまでも非情だった。調べれば調べるほど、先輩が黒だという証拠しか出てこなかったからだ。

 

 そもそもレルート先輩は、マフィアの娘だったのだ。俺が「地元の名士」と認識していた彼女の「親族経営」とは、マフィアのことだったのである。

 先輩はそこで、多くの功績を上げていた。先輩が仕事に関わるようになってからというもの、元からそれなりに名の知られていたマフィアはさらに勢力を拡大したとかなんとか……。

 

 ……まだ実感がわかない。あの先輩が、マフィアだったなんて。たくさんの罪を犯していたなんて。

 

 でも言われてみれば確かに、先輩は家業のことについては詳しく教えてくれなかったっけか。俺が何か聞くと、返ってくるのは決まって大きく解釈できるような、ふんわりとした回答ばっかりだった。

 あれ、ボッタクリの金貸しだったりショバ代の徴収だったり、違法カジノだったりのことを婉曲して言っていたんだな……。

 

 なんで教えてくれなかったんだ、と思ったけど……でも同時に、知り合った頃やまだそこまで親しくなかった時期にそれを教えられたら、絶対今みたいに親しい付き合いにまでは発展しなかっただろうとも思う。

 

 逆に親しくなってからだったら、どうだろう。俺は変わらず接し続けられただろうか。わからない。

 だからきっと、先輩も配慮してくれてたんだと思う。先輩は先輩なりに、俺のことを気遣ってくれていたんだ。

 

 ……そうだと思う。そうであってほしい。先輩と一緒に過ごした時間が、ただの上辺だけのものだったなんて信じたくない。俺だけが一方的に慕っていたんじゃないんだって、そう思いたい。

 頼むから……お願いだから、そうであってくれ。

 

 そして、ここまで考えて、ふと気づく。

 

「……じゃあ、そうか。もう先輩とは二度と会えないかもしれないのか……」

 

 それは。

 

 それは……なんか、すごく、めちゃくちゃ、嫌だなぁ……。

 

 こうして俺はその日から、実に丸一か月ほど引きこもったのだった。

 




ガールズラブのタグがようやくアップを始めたようです。
ちなみに今回辺りからメルメリアの髪の毛がそこそこ伸びてきちんとしたポニテになってます。結ってるリボンはもちろん先輩のプレゼントです。
そういうことです。
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