海馬瀬人のデュエルを神楽坂が分析していたころの話です。
私は…お母さんと同じ色の肌。お父さんと同じ色の髪と瞳。
なのに、見知らぬ人からは「ハーフ」と呼ばれた。
その意味が「半分」という事を知って、私は半分の力しか無いと思って悲しくなった。
私は部屋に閉じこもるようになり、前髪を伸ばして顔を隠すようにした。
お母さんはそんな私を心配していた。
同年代の子供を集めて、ジュニアチャンプを決めるためのデュエルモンスターズの大会、その予選が開かれる事になった。
私はその時…初めて従兄と出会った。
―――――
「お久しぶりです、義姉さん」
「ありがとう、尊敬の念を込めてそう呼んでくれるのは貴女だけよ、フローラ。血がつながっているのに敬意なんて全然払ってくれなかったわ、実の弟なのに。」
「お元気そうでなによりです。」
「そっちこそ。どんな化粧水を使っているの?三児の母でぴちぴちの肌。シワもシミも一つもない。歯だってとても綺麗。」
「以前、勤めていた職場の技術なので…」
「どこ?!どこのメーカー?!」
「もう倒産してしまいました。」
「勿体ないわ!その技術は何としてでも残すべきよ!それこそ、世に広めるべきよ!」
お母さんは倒産した会社の不良在庫を買いたたいて、売りさばく仕事をやっている。
企業は不良在庫を捌ける、顧客は良い商品を安く買えるからとても良い仕事だってお父さんが言っていた。
「…企業秘密なので話せません。」
「ああ、そんなことを言わないで。私たちは義理とはいえ姉妹でしょう?」
「宗教も絡んでいます。それでも?」
「うっ、宗教か…」
どうして、どうしてお母さんは…前の職場についての事を秘密にするんだろう?
「母さん!ここに居たの?」
「悟?もうすぐ試合でしょう?準備はいいの?」
「もちろん!えっと…。お姉さんは誰?」
またこれだ。お母さんを見ると、たいていの人がお姉さんと呼ぶ。
「あら、口が上手なのね。私は桜咲・フローラ。こっちは娘の美夜よ。」
「えー!姉妹ではないの?!」
クスクス笑うお母さん。だけどそっと肩を小突かれる。
前髪を少しかき分けて、私はご挨拶をする。
「…は、初めまして。私のお父さんのお姉さんの子供だから…従兄?」
「そうなるな。」
「貴方も、参加するの?」
「まずはジュニアチャンプになりたいからな。」
怖かったけれど、何時までも怖がっているわけにはいかない。心の底では、こんな怖がりな自分自身を変えたい。
そんな思いがあって、予選に私は参加した。
―――――
「4回戦を開始します。猿魔 妖治(さるま ようじ)君と桜咲 美夜選手は前に。」
司会の人がそう言ったから、私は前に出る。
相手の男の子はすでに待っていた。
「お前が対戦相手か。さっさとしやがれ!俺を待たせるな!」
「…ごめんなさい。」
「チッ。まぁいい、すぐに終わるからな」
多くの人が注目しているプレッシャーの中。
私はデュエルディスクを構える。
「「デュエルッ!!」」
美夜 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
猿魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「先攻は私、ドロー。手札から俊足のギラザウルスを特殊召喚。」
「だがこの時、俺は墓地のモンスターを特殊召喚できるぜ!」
「えっ?」
今は私の1ターン目だ、墓地にカードがあるわけがない。
「ま、俺の墓地にモンスターはいないが。」
「…私は切り込み隊長を召喚して効果発動。手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚。レアメタル・ドラゴンを攻撃表示…。カードを2枚伏せてターン、エンド。」
美夜 ライフ4000
手1 フィールド 俊足のギラザウルス 切り込み隊長 レアメタル・ドラゴン
魔法・罠 伏せ2
猿魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「俺のターン、ドロー!俺はレベル8のモンスターを召喚する!現れろ、超レアカード、神獣王バルバロス!攻撃力3000だ!」
「えっ?でも…」
ソリッド・ビジョンでは攻撃力が1900と表示される。
「攻撃力1900よ?」
「こいつを生贄無しで召喚すると、攻撃力が1900になってしまうが問題ない。」
「どうして?」
「魔法カード、突然変異を発動!対象は、神獣王バルバロス!」
発動した魔法カードの渦に巻き込まれ、バルバロスが変貌していく。
「何が起きているの?!」
「ふっ、突然変異の効果だ。生け贄に捧げたモンスターのレベルと同じレベルの融合モンスターを融合デッキから特殊召喚出来る…。俺が生贄に捧げたバルバロスのレベルは8!つまり、融合デッキからレベル8の融合モンスターを特殊召喚する…現れろ、サイバー・ツイン・ドラゴンっ!!」
「攻撃力、2800?!」
「サイバー・ツイン・ドラゴンは一度のバトルフェイズ中に、二回攻撃ができる!さらに、800ポイントのライフを払い、早すぎた埋葬を発動!戻ってこい、神獣王バルバロス!」ライフ4000から3200
あっという間に2体の強力なモンスターが並ぶ。
「あら、あのプレイング…サイバー流の『マスター』と同じね。ほら、サイバー流を立ち上げた…」
「光竜 亜由美(こうりゅう あゆみ)の【変異カオス】。そのコピーデッキでしょう。」
「よくもまぁ、あれだけのレアカードを揃えたわね。」
「サイバー流の切り札にして一子相伝のサイバー・エンド・ドラゴンは無いでしょうが。」
ギャラリーのお母さんと伯母さんが話している。
現役プロのコピーデッキ?!
「これのターンで終わりだ!」
「えっ?攻撃が通っても私が受けるダメージは3600…削り切れないはず…」
自信満々にこのターンで終わらせるという相手。もしかして私が間違っているのかな?
「バトル!サイバー・ツイン・ドラゴンで切り込み隊長を攻撃!」
「罠発動、炸裂装甲。さらにチェーンして邪神の大災害、これにより、互いの魔法・罠カードはすべて破壊。」
「なにぃ?!」
「ちぇ、チェーン処理、まず邪神の大災害で装備魔法の早すぎた埋葬が破壊されて、バルバロスも破壊…。そして炸裂装甲により、サイバー・ツイン・ドラゴンも、破壊。」
「お、俺の超レアカード軍団が!」
崩れ落ちていくサイバー・ツイン・ドラゴンと神獣王バルバロス。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」
美夜 ライフ4000
手1 フィールド 俊足のギラザウルス 切り込み隊長 レアメタル・ドラゴン
魔法・罠
猿魔 ライフ3200
手1 フィールド
魔法・罠 伏せ2
「私のターン、ドロー。」
このまま、攻撃しても勝てるけれど…。
「私は、切り込み隊長を守備表」
「ああ?!」
「えっ?」
「お前、計算もできないのか!それとも、わざとライフを残すつもりか!」
えっ?あれ?
相手の残りライフは3200、レアメタルとギラザウルスの攻撃でライフを削り切れるはず。
…さっきといい、緊張して計算を間違えているのかも。
「バ、バトル。レアメタル・ドラゴンで直接攻撃」
「かかったな!聖なるバリア-ミラーフォース-!お前の攻撃表示のモンスターをすべて破壊する!」
「?!」
モンスターが全滅しちゃった、でも…まだ手はある。
「し、死者蘇生を発動。墓地から貴方の神獣王バルバロスを私の場に、特殊召喚」
「俺のバルバロスは奪わせない!永続罠、リビングデッドの呼び声!蘇れ、バルバロス!」
「…ターン、エンド」
美夜 ライフ4000
手1 フィールド
魔法・罠
猿魔 ライフ3200
手1 フィールド 神獣王バルバロス
魔法・罠 リビングデッドの呼び声
「もはや勝負は決まったな、俺のターン、ドロー!異次元の女戦士を召喚!バトル、行け、異次元の女戦士、バルバロス!」
「き、きゃああああああっ!」ライフ4000から2500、2500から0
襲い掛かる二体のモンスター。
「勝者、猿魔選手!」
「そんな安物のデッキでこの俺に勝てると思ったのか!身の程をわきまえろ!そんな雑魚カードの寄せ集めでは、100回やっても俺には勝てない!」
そういい捨てて、猿魔は立ち去った。
―――――
皆が見ている前で負けた。やっぱり、私は変わろうとするべきじゃあ無かった。
逃げだし、隠れた私のところに…従兄がやってきた。
「…残念だったな。」
「…。」
「プレッシャーに飲まれたか。だけど、よく頑張った。」
「…私、もう帰る。」
「待ってくれ。」
真剣な目で、従兄は私にそう言った。
「見ていろ、俺があいつを倒すところを」
「む、無理よ!だってあいつはあんな強力なカードを持っている。」
「ふぅん、強力なカードに頼っただけの愚かなデュエルだ。それを俺が証明してやる。」
どこからそんな自信が湧いてくるのだろうか?
私は、少なくとも従兄のデュエルを最後まで見届けることにした。
予選の決勝。そこで、神楽坂と猿魔は向かい合う。
「デュエルの前に、少し話をさせてもらう。」
「ああ?」
「お前のデッキ…サイバー流「マスター」のコピーデッキか?」
「だったらなんだ?サイバー流師範は洗練された素晴らしい戦術、突然変異を用いた画期的なコンボ。それを参考にしただけだ!そもそも、トッププレイヤーの真似をして何が悪い!」
「悪くはない、俺もコピーデッキだからな。」
「ほぅ、お前もそうなのか!」
途端に機嫌がよくなる猿魔。
「だが、俺はお前を認めない。」
「なんだと!」
「サイバー流の「マスター」は、『ルールに則った上で相手を尊敬し、全力でデュエルをする』ことを大事にしていたが、お前は違う。相手を貶して悦に入るだけの紛い物だ。」
トップレベルのデュエルを神楽坂は研究している。その中には当然、サイバー流を立ち上げた「マスター」たる女傑のデュエルも含まれる。
少なくとも彼女は、相手のプレイングミスを誘って罠にはめるような姑息な手は使っていない。
「…結局、お前も周りの愚か者と同じか。だったら思い知らせてやる!」
―――――
「「デュエルッ!!」」
神楽坂 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
猿魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「俺の先攻、ドロー!俺はモンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンドだ」
神楽坂 ライフ4000
手4 フィールド セットモンスター
魔法・罠 伏せ1
猿魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「フン、それで終わりか。俺のターン、ドロー!魔法カード、天使の施しを発動!三枚ドローして、手札の聖なる魔術師と月読命を墓地に送る。」
「ふぅん、いきなり手札交換か?」
「俺は神獣王バルバロスを召喚!魔法カード、突然変異を発動!現れろ、サイバー・ツイン・ドラゴン!」
「出てきたか。いかに「マスター」のコピーデッキだろうと、一子相伝のサイバー・エンド・ドラゴンはあるまい。」
今までのデュエルを見てきたため、神楽坂は動揺しない。
猿魔がサイバー・ツイン・ドラゴンを出しただけで決闘中に泣き出したり、中には決闘盤を放り出した子供もいる。
こうして対峙すると、その威圧感は確かに脅威。だが、神楽坂がデッキをコピーしたデュエリストは凡庸ではない。
「彼」ならばこの程度のモンスターを前にしたぐらいで、諦めたりはしない。
「さらに、墓地の光属性の聖なる魔術師と、闇属性の月読命を除外して、カオス・ソルジャー -開闢の使者-を特殊召喚!」
「ほぅ、開闢の使者とは…随分良いカードを持っているな。」
「決勝戦だからな!一気に決めてやる!魔法カード、死者蘇生を発動!蘇れ、神獣王バルバロス!どうだ!どうだ!この圧倒的な戦力は!」
場に並ぶ超レアカード。
神楽坂がサイバー流「マスター」のデッキをコピーしなかったのは、単純に「一から構築するには小遣いが足りない」という点に尽きる。
「ふぅん。だが強力なモンスターを並べたところで、勝てなければ意味はないな」
「舐めた態度を!開闢の使者は攻撃しない代わりに、1ターンに1度、フィールドのモンスターを除外できる強力な効果がある!というわけで、消えろ!セットモンスター!」
「罠発動!死のデッキ破壊ウイルス!セットしていたジャイアント・ウィルスを生贄に、貴様の場と手札で攻撃力1500以上のモンスターをすべて破壊する!」
神楽坂がコピーしたのは海馬デッキ。青眼の白龍こそ入っていないが、各種罠カードは投入している。
三体の超レアモンスターはウイルスの餌食となり、一掃される!
「お、俺のモンスターが全滅?!」
「手札を見せてもらうぞ。ちなみに、お前がドローするカードを確認し、それが攻撃力1500以上のモンスターなら破壊する!」
「くそっ、聖なるバリア-ミラーフォース-と魔法石の採掘だ…。カードを1枚伏せてターンエンド!」
「ふぅん…ウイルス効果は、あと二ターンだ。」
神楽坂 ライフ4000
手4 フィールド
魔法・罠
猿魔 ライフ4000
手1 フィールド
魔法・罠 伏せ1
「俺のターン、ドロー!X-ヘッド・キャノンを通常召喚。カードを1枚伏せてターンエンドだ。」
神楽坂 ライフ4000
手3 フィールド X-ヘッド・キャノン
魔法・罠 伏せ1
猿魔 ライフ4000
手1 フィールド
魔法・罠 伏せ1
「俺のターン、ドロー!くっ、魔導戦士ブレイカーだ…破壊される。ターンエンドだ。これでウイルス効果はあと1ターン!」
神楽坂 ライフ4000
手3 フィールド X-ヘッド・キャノン
魔法・罠 伏せ1
猿魔 ライフ4000
手1 フィールド
魔法・罠 伏せ1
「俺のターン、ドロー!Y-ドラゴン・ヘッドを召喚。ターンエンドだ。」
神楽坂 ライフ4000
手3 フィールド X-ヘッド・キャノン Y-ドラゴン・ヘッド
魔法・罠 伏せ1
猿魔 ライフ4000
手1 フィールド
魔法・罠 伏せ1
「俺のターン、ドロー!引いたのは…強欲な壺だ。」
「ふぅん、ここで引くか。」
「ターンエンド!」
「何?」
「馬鹿が。この状況で発動するわけないだろう、ウイルス効果はこのターンで終了するからな。次のターンに発動すればいい!」
神楽坂 ライフ4000
手3 フィールド X-ヘッド・キャノン Y-ドラゴン・ヘッド
魔法・罠 伏せ1
猿魔 ライフ4000
手2 フィールド
魔法・罠 伏せ1
「ふぅん。せっかく猶予を与えてやったのにこの程度か」
「なんだと!攻撃すればミラーフォースの餌食だから攻撃できないくせに!」
「…俺のターン、ドロー!Z-メタル・キャタピラーを召喚!この三体を除外して、XYZ-ドラゴン・キャノンを特殊召喚!」
「攻撃力2800か」
「XYZ-ドラゴン・キャノンの効果発動!手札を1枚墓地に送り、相手フィールドのカード1枚を破壊する!伏せカードを破壊しろ!」
「くそっ!ミラーフォースが!だが、俺のライフは残る!」
「魔法カード、死者蘇生を発動!」
「?!俺の超レアカードを奪うつもりだな!」
「貴様のカードなぞ要らんわ!俺は俺のデッキで戦う!蘇れ、モザイク・マンティコア!」
「馬鹿な!そんなカードを、いつ墓地に…」
「バトル!やれ、XYZ-ドラゴン・キャノン!モザイク・マンティコア!」
「うわあああああああ!」ライフ4000から1200、1200から0
デュエルに勝った神楽坂は、高笑いした後に告げる。
「猿魔、お前は真似るならば、デッキだけでなくその精神も真似るべきだったな!」
「こ、こんな、こんな馬鹿な…これじゃあ、俺は…」
一方、負けた猿魔の所に男が近づいていく。
「この役立たず!俺が金にものを言わせて集めたレアカードを使っておきながら負けるとは!お前をジュニアチャンプにして、カードゲーム界を制する計画の第一段階が台無しだ!」
「ま、待って!もう一度、もう一度チャンスを!」
「うるさい!こうなったら分家から優秀な子供を選抜する!お前はもう用済み!デッキは没収する!お前の部屋は母屋から離れに変更するからな!」
醜い争いを始めたが、審判は大会の終了を宣告。
現地解散となる。
―――――
神楽坂の地区予選優勝を記念して、ちょっとしたパーティをファミリーレストランで開催された。
親同士が色々と情報交換している中。
「隣、いいかな?」
「か、神楽坂…?」
私の隣に来たのは、今回地区予選を勝ち上がったデュエル・エリートの従兄だった。
「…ねぇ、どうして諦めなかったの?」
「俺は海馬瀬人のデッキをコピーしていた。あの伝説の決闘者なら、あきらめないからな。」
「…どうして、海馬瀬人のコピーデッキを使うの?」
「俺は記憶力に自信がある。だからデッキを組もうにも、これは、といったカードが見つからない…。そこで俺は、コピーすることにしたんだ。デッキだけではなくて、そのプレイングと精神までも!」
「神楽坂は、すごいね。私なんて」
「君だって諦めなかった。最後の最後まで。ほかの対戦した子は戦意喪失したり、プレイングミスを連発したのに。」
「それは…あきらめたくなかったから。」
神楽坂は、カードのパックを山のように積み上げる。
「ねぇ、俺とデュエルしないか?」
「あ、相手にもならないよ…」
「このパックを8つ開封して、出てきたカードだけでデッキを組んでデュエルするんだ。」
「確かに、デッキは組めるけれど…。」
出来上がったのは、互いに弱小カードばかりで構成されたデッキ。
リクルーターが戦闘破壊されても、出せるモンスターが居ない。
戦略もセオリーもない。デュエルは泥仕合になった。
最終的に、神楽坂が勝った。
「デュエルは楽しいだろう?」
「う、うん。」
「いい笑顔だ。笑ってよ、美夜」
そう言ってくれた従兄の顔を、私は生涯忘れないだろう。
次の日。私はお風呂場でお母さんに前髪を切ってもらった。
―――――
その後、地区予選を勝ち抜いた神楽坂。だが他の地区予選を勝ち上がった万丈目に敗れ、ジュニアチャンプへの道は閉ざされた。
その数日後。
「ということがあったわ。」
「あら、そうなの?」
【変異カオス】を操り、世界ランキングでも15位に食い込み…サイバー流を設立すると同時に『サイバー・ダーク』を封印した初代師範、光竜 亜由美は興味深げに呟く。
サイバー・ダークについては…手に取って心臓に痛みが走った事で、『不具合を起こしているからインダストリアル・イリュージョン社に引き渡そう』と考えた瞬間、心臓への痛みがさらに強まった。
どうにも所持しているだけで心臓にダメージが行く危険なカードだった為、封印を施し…この真相を明かせば『危険なサイバー・ダークを焼き捨てろ』という過激な意見が出ることを恐れ、『リスペクトに反するカードである』と彼女は門下生に告げた。
ここで真相を話さなかった事で、ある継承者が車椅子生活を送る羽目になるのだが…。彼女に未来予知の能力はなかった。
「コピーデッキ、ねぇ。」
「それ自体は否定しないわ。どんどん参考にするべきよ。デッキだけコピーすれば勝てる、と考えるのを止めるのは間違っているけれど。」
「私の甥っ子はそんな感じよ。モノマネの領域に入っているわ。」
「まだ子供でしょう?焦る必要は無いわ。」
「…貴女なら、どうしていたかしら?」
「何が?」
「海馬瀬人にウイルスコンボを決められた3ターン目で、強欲な壺を引いてしまったら。」
「使うにきまっているわ。そこで前に踏み出さずに何時踏み出すのよ。まぁ、海馬とデュエルするなら…罠カードの大半を抜いて王宮のお触れと成金ゴブリンを積むけれど。」
「…天使の施しを発動して、墓地に聖なる魔術師と月読命。手札が神獣王バルバロス、突然変異、カオス・ソルジャー -開闢の使者-、死者蘇生、聖なるバリア-ミラーフォース-、魔法石の採掘。相手の場にはセットモンスターと伏せが2枚。どうしていたかしら?」
「バルバロスに突然変異でサイバー・ツイン・ドラゴンを特殊召喚。開闢も場に出すわ。開闢で除外効果を使用して…」
「死のデッキ破壊ウイルスをチェーン発動されるわね。」
「そうなったら…死者蘇生で墓地からバルバロスを蘇生して攻撃ね。」
「開闢を蘇生させて次のターンに備えないの?」
「海馬が相手なら次のターンに青眼の白龍が出てくるだろうから、削れるときにライフを削る。後は…頃合いを見て魔法石の採掘で死者蘇生の回収を狙うわ。」、
その答えをほぼ予測していたフローラは笑い、光竜もグラスを傾ける。
「…それにしてもいいの?サイバー流は。」
「惜しまれる内に引退するわ。次の師範は…鮫島辺りが継ぐでしょうね。今後は登山関連の雑誌を出すわ。」
サイバー・エンド・ドラゴンも返したし。
そう言った後、光竜はデュエルディスクからデッキを外す。
「さて。久しぶりに手合わせ願えないかしら?パラディウス社の元幹部さん?」
「つい先日まで現役プロだった貴女と?」
「あら、逃げるの?」
「まぁ…リハビリ程度にはなるかしら。」
その言葉に笑みを凍り付かせた光竜。
直後、フローラはデッキを取り出して机に置き、二人は叫ぶ。
「「デュエルっ!!」」
というわけで、幼少期の神楽坂の話と、サイバー流初代師範『マスター』についてでした。
Q:【変異カオス】を使って負けるの?
A:モブキャラでも、これだけのカードパワーがあれば凡人相手なら無双できます。ラーイエローに入れるぐらいの才能がある相手には勝てません。
Q:鮫島がサイバー流の初代師範ではないの?
A:サイバー・ダークを封じたのが初代師範と作中で述べているので、鮫島≠初代師範です。
自分で封印したなら「私がサイバー流の設立と同時に封印した」とヘルカイザーにいうはずです。
Q:初代が【変異カオス】を使うの?
A:サイバー・ドラゴンの派生カードが無い時代なので。サイドラ3枚とエンドとツインだけではカードが足りません。