例えばこんなゲマトリアの日常 作:スカイブルーホワイトヘアー
半ば強制的に交代させられた黒服サイド。
胃に重い女ことセリカが居ないゲヘナ、そして
少食で尚且つまだ眠りについているヒナの朝食を
用意するところから彼のゲヘナ教師としての一日
が始まる。口うるさい赤おばさんからヒナの好み
は聞いているものの『ヒナは私が好み』としか
言っていないので全く参考にならない。仕方なく
普段ホシノに用意している味付けのまま下準備を
進める事にした。
「……この部屋の至る所にヒナとマダムが写った
写真が貼ってあるのは何故なのでしょうか……
ご丁寧にコスプレさせている写真まで……」
『#1初めてのメイド服♡』
『#2まさかのスク水!?』
『#3魔法少女ヒナたん☆』
のように番号と共に飾ってある写真。それが視界に
入る度に何故飾ってあるのかと困惑してしまう。
ストーカーの部屋みたいに見えなくもない光景に
若干の寒気すら覚えてしまうほどだ。……そんな
ものに気を取られていたらヒナが起きてきた。
いつものように角は光っておらず羽も心なしか
力が入っていない。完全にオフモードのようだ。
「……おはよう」
「おはようございます。まだ朝の7時ですよ?」
「いいの。昨日寝たのは12時だし毎日7時間
睡眠までって約束してるから」
「そう言いつつも眠そうですよ」
「……本当は布団から出たくない」
「まだ眠っていても構いませんよ」
「その選択は魅力的だけど……パパが用意して
くれたご飯を食べる事にする」
「ええそうしてくださ……パパ? その呼び方は
何なのです?」
「マザーの代わりなんでしょ? ならパパだよ」
「その理屈は分かりませんが好きに呼んで頂いて
構いませんよ」
「そうする」
「私としてはこれ以上娘が増えるのは困りますが」
「大丈夫。一日だけだから」
「それもそうですね。さ、冷めぬ前にどうぞ」
「うん。頂きます」
「……どうでしょうか?」
「いつもの味とは違うけど……これはこれで好き」
「それは良かったです」
「たまには作りに来てほしい……かも」
「その時はホシノも一緒に、ですかね」
「……良いね」
ーーー
「では仕事部屋に行くとしま……」
「うふふ……黒服先生♡」
突然の寒気が身体を伝う。妙に聞き慣れた甘い声の
正体は当然……ハルナだろう。
「本日は一日ゲヘナの先生……なのですよね?
是非私にご指導して頂きたい内容が……♡」
「お待ちなさい。そんな獲物を見つけたような目で
こちらに近寄ってこないでください」
「照れているのですか? 大丈夫です、私は事前に
知識を得てきましたので♡」
この美食モンスターをどうすればいいのか……
そう悩んでいた時に左腕にしがみついてきたヒナ。
「パパに近づかないで」
その発した言葉はハルナを絶句させるには充分
すぎる程に破壊力があった。
「……パパ、ですの? 風紀委員長の? まさか
そんな事が……嘘ですわよね……?」
「今はそうですね(一日だけですが)」
「……いえ、私は知っていますわ。所謂『パパ活』
というものですわね。年頃の少女と過ごす代わりに
金銭を要求するという割に合わない行為の……」
「それは違います」
「それは違う」
「……そうですの? では何故黒服先生をパパと
呼んでいるのです?」
「それは……一日ゲヘナの先生だから……」
「なるほど。マザーの代わりなのでパパと……
では私も同じように呼ばせて頂きますわ。
黒服お父様♡」
「ですから何故距離を詰めてくるのです」
「近づかないとお父様という美食を味わえません。
観念して抱かれてください」
「パパの貞操は私が守る」
「……なんですかこの状況。まさかこんなのが
ゲヘナの日常などとは言いませんよね?」
「ゲヘナでは普通だよ」
「普通ですわね」
……なんて恐ろしい学園なのだと認識した。
それともあの赤おばさんが狂っているだけなのか。
少なくとも二度とこのような事はしないとそう心に
決めるのであった。生徒にパパ呼びされるなんて
事案以外の何者でもないので。あと万が一ホシノに
誤解されたらたまったもんじゃないので。
「ホシノにパパ呼びされるのは悪くないですがね」
くだらないゲマゲヘナの知識
美食研に連れ去られたフウカを取り戻すのは
大体リオが担当している