例えばこんなゲマトリアの日常 作:スカイブルーホワイトヘアー
『貴方に話したい事があるの』
そう連絡を貰い待ち合わせの喫茶店で紅茶を嗜んで
いる最中彼女、ゲヘナの魔の手に堕ちた悲しき生徒
リオが現れた。制服もゲヘナのものを着用しており
何故かエプロンを着けている。壊滅的に料理が下手
で機械を使わないとインスタントすら作れない程の
不器用な彼女が何故エプロンを着けているのか?
「……これは部活用のエプロンよ。今の私は給食部
に所属しているの」
「リオが給食部だと……?」
「……卵の殻が混ざらないように割る事が出来る
ようになったのよ?」
「焼く事は?」
「言葉にするのは控えさせてもらうわ」
割るだけか……しかし成長は成長だ。
「楽しんでいるなら何よりだ。所で私を呼び出した
理由を聞いてもいいだろうか」
「ええ。単刀直入に言わせてもらうわ。私……
好きな人が出来たの。その事について相談に乗って
もらいたいのよ」
「……内容によっては考えよう」
まさか私の生徒があのゲヘナセイトタラシこと
赤ババアに恋してしまったのか? そんな悪夢
が現実になってしまうとはな……
「……そもそも恋に当て嵌まるのかすら分からない
状態なの。その人と一緒に過ごす時間は……なんて
いうか……胸が暖かくなるというか……」
「そうか。だがあいつは既に結婚してるぞ」
「……ちょっと待ってちょうだい。本当なの?
部長が結婚してるって……」
「ああ。ヒナと結婚している」
「……そう、風紀委員長と……確かに部長は彼女と
よく話しているしあり得なくはないわね……」
「部長? マダムの事ではないのか?」
「違うわ。彼女にはお世話になってはいるけど恋心
を抱くような関係ではないもの。私が言ってるのは
給食部の部長、フウカさんの事よ」
「……そうか。そうだったか。良かった……」
あのゲヘナセイトタラシの事じゃなかった。
それだけで純粋に応援出来る。何が悲しくて
ヒナ狂いに恋した自分の生徒を応援しなくては
ならないのかと葛藤している中の光明。それなら
話は別だ。リオの話を聞くとしよう。
「すまないな。話を続けてくれ」
「ええ。その部長に告白したいの。でも……
何をどう伝えればいいのか分からないの。
だから先生に相談したくて……」
「成程。リオの悩みはよく理解した。だが私が
伝えられるのは心に秘めた想いをそのまま伝える
だけでいい。下手に着飾る必要はない」
「……部長は受け入れてくれるのかしら……」
「それはフウカ次第だろうな。だが想いは
伝えられる時に伝えておけ。後悔しないようにな」
「……そうね。ありがとう先生」
「気にするな。私はただ自分の考えを伝えただけ
に過ぎないのだからな。……武運を祈る」
「……ええ」
ーーー次の日
「……部長、話があるの」
「リオさん、どうしたんですか?」
「……えっと……その……」
昨日寝る前に何度も想いを伝える練習をした。
その度に上手くいかなかった時の想像をして
凹んで体育座りで落ち込んだりもした。なのに
彼女を目の前にすると言葉が出てこない。
「もしかして体調が悪いのですか? なんだか顔が
赤いですよ? 熱は……」
彼女はかかとを伸ばしおでこをくっ付けてくる。
その刹那自分の中で何かが切れたように彼女の唇と
自らの唇を重ね合わせてしまった。驚愕したように
目を見開く彼女を見た時、終わりを悟った。彼女の
好意を仇で返すような仕打ちをしたのだから。
……ならばせめてこの瞬間を味わいたい。最低な
考えだが全てを失うくらいなら今だけは……
「………」
数秒にも満たない時間の接吻が終わる。その後
まともに彼女の顔すら見れず逃げ出すように食堂を
後にしようとしたが背後から「リオさん」と声を
かけられて動けなくなってしまった。
「今の……どういうつもりなんですか?」
「……ごめんなさい」
「どうして……キスをした時に舌を入れて
くれなかったんですか?」
「……えっ」
「もう一度やり直しです。その後にお互いしっかり
想いを伝え合いましょう」
「……ちょっと待ってちょうだい。その言い方だと
部長も……」
「……いいから早くやり直しますよ」
ーーー
「ヒナ委員長!! 大変です!! マザーが食堂前
で変な爆発をしました!!」
「そう。またカップルが生まれたのね」
「遺言は『フウリオテエテエ』だそうです!!」
「ありがとう。それなら床に放置しておけば数分で
元気になるわね」
ゲヘナは今日も平和でした。
実はお互いに想い合っていたという雑なオチ