例えばこんなゲマトリアの日常 作:スカイブルーホワイトヘアー
2/19日。それはごくありふれた普通の一日
特別な事は何もないただの一日
いつものように朝起きて歯磨きをして
用意された朝食を食べて着替える
それだけの一日
今日は誰が何をしてどんな問題が起きるのか?
そんな事を考えながら眠気が取れない頭を回転させ
私は今日も委員会室に向かう
……ああ、今日は先生が会いにくるって言ってた
それなら特別な日になるのかもしれないね
……スマホの通知? 先生からだ
『ごめんヒナ。仕事が忙しくて今日会いにいくのが
夜になっちゃいそうなんだ。ごめんね』
気にしなくていいのに。夜に会いに来てくれると
言ってくれただけで私は頑張れるから。
「そう、夜まで時間があるのね。じゃあ空崎ヒナ、
貴女を拉致させてもらうわ」
……誰?
「ただの風紀委員長」
ただの風紀委員長? でもその姿は……
「そう。私は空崎ヒナ」
……どうやらまだ夢を見ているようね
それとも疲れている事による幻覚かしら?
「夜まで休んで貰うために貴女をこの穴に落とす」
もう一人の私が何かを言っている。まあでも
夢なら従ってあげてもいいかな。ほら、早く
私を落としなさい
「従ってくれて助かる。それじゃあ空崎ヒナ、
夜まで楽しんで」
穴に落ちた途端、私の意識は途絶えた。
夢の奥、更に奥へと落ちていくように
ーーー
「……変な夢だったな。もう一人の自分に出会う
なんて……ドッペルゲンガーかしら」
少しだけ冴えた頭を働かせてあれは夢だったと
再認識したところでまた朝食を食べ……
「……お腹空いてない」
のでそのまま着替えて風紀委員室へ向かった
……そこは廊下の時点で異質な空間だった
『ヒナ祭りへようこそ!』と謎の垂れ幕と共に
大量の装飾がされている。またアコが何か変な
事をやっているのかと呆れてしまいそうになるが
彼女も善意でやっているのだからと否定せずに
受け止めようと思った。
「もう時期ヒナが来るのですよ! 精一杯の
おもてなしをしなければ……」
委員会の部屋からは聞き慣れない声がする
それでも何か潜在的に落ち着くような、不思議な
想いに困惑しつつも扉を開けた
「グラスの数が足りていませんよ! 風紀委員会
全員でヒナの事を……あっ」
「………」
この大きい人は誰だろうか? こんな人は今まで
見た事がないけど……
「……空崎ヒナさん、まずはようこそお越し
くださいました。このような状況になり困惑
しているとは思いますが一度こちらの席に
ついてくださいませ」
「……うん」
思いっきり悪人面だけど私も似たようなものだし
夢の中だから従ってみる
「ここは貴女の夢の中。今宵だけの特別な時間を
過ごす事が出来る空間です。今だけは風紀委員会
という肩書きも仕事の事も何もかも忘れてただ
楽しんで頂けたらと思います。そして……ああ
やっぱ我慢出来ませんね吸わせて頂きます!」
「な、なにっ……!?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! お日様の香り
とはまさにこの事ですねぇ!! ようやく貴女の
頭皮を吸う機会が巡ってきましたよぉ!!
これだからヒナ吸いはやめられないんですよ!!」
いきなり豹変した……!?
「何しているんですか!? 『ヒナにはカッコいい
ところしか見せたくない』と言っていたのに自分で
台無しにしてどうするんです!?」
「お黙りなさい! こんなに愛くるしいヒナが
目の前にいたら誰だって吸いたくなるに決まってる
ではありませんか!! アコ、貴女だってヒナの頭
を見て『吸いたい』と思った事がありますよね!?
これは生きていく上で必要な行為なのです!!」
「思うに決まってるじゃないですか! そんなの
風紀委員会、いえゲヘナの人間なら誰だって委員長
の頭を吸いたいですよ!」
「………」
何だろうこの状況。夢だとしてももうちょっと
静かな夢が良かったな。先生と二人でお話しする
とかそういう夢が……
「このまま流れでヒナ祭りを始めますよ!!
ゲヘナのさいかわキューピットちゃんに乾杯!」
「……乾杯」
……でもこういう夢も悪くはないかもね
ゲヘナでパーティしたあの時みたいに賑やかで……
ピアノ……演奏したいな
「ピアノの用意をしてください! 至急です!」
「……声に出てた?」
「顔を見たらわかりました」
この人怖い……
「マザー、ピアノの用意が出来ました!」
「ありがとうございます。ではヒナ、どうぞ」
「うん」
どうせ夢ならば何時間でも弾いていたい
時間に追われる事なく自由に
そう想いを込めて鍵盤に触れていく
音が出るたびに心地よい感覚が身体に染みて
楽しくなっていき……
「(これ……夢じゃないのかな?)」
そんな疑問が湧いてきたが演奏に集中し始めると
夢か現実かなんて気にならなくなっていた
……その後二時間くらい弾いて満足した私は
観客達に一礼をして席に戻……
「ヒナァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
とても素晴らしい演奏でしたよ!! やはり貴女は
最高で最強の私の陽だまりですね!!」
「……ありがとう?」
「だからこそ貴女の恋路を邪魔したくない。
そうも考えてしまいました。なので本日のヒナ祭り
第一部はこれにて閉幕とさせていただきます。
貴女に会えて嬉しかったですよ、ヒナ」
「……貴女は一体誰なの?」
「私ですか? 私はただの……出禁人間です」
ーーー
「……あれ? もうこんな時間……」
2/19日の夕方に私は目覚めた
スマホには先生からの連絡が入っており、
『今ゲヘナに着いたよ!』と書いてあった
「……先生が来てる」
それだけで私の心は昂る。そしてまた着替えて
先生の元へ向かう私。こんな日常がいつまでも
続けばいいな
「ただいま」
「お帰りなさい。あちらのゲヘナはどうでした?」
「問題事が多すぎて面倒だった」
「ご苦労様でした。……ではヒナ、二人きりで
貴女のお祝いをしましょう。生まれてきてくれて
ありがとうございます、ヒナ」
「……うん。ありがとう」