例えばこんなゲマトリアの日常 作:スカイブルーホワイトヘアー
私の先輩は怪我をする事が多かった。戦闘の度に包帯を巻くような怪我をする。ろくに銃も使わずに盾で戦うような有様で思わず「先輩はどうしてそんなに弱いんですか?」と聞いた事がある。今思えばとても失礼な質問だったが先輩は嫌な顔をせずに「私の戦いはホシノちゃんを守る事だからさ。自分が怪我をしたところで痛くも痒くもないよ」と答えた。
「……守って欲しいなんて頼んでません。それにそんな事を繰り返していたら先輩の身体が壊れてしまいます」
その言葉に対しては頭を撫でてくるだけで何も言わなかった。……そんな優しさの塊のような先輩が今私に銃を撃っている。だから私は怒っている。先輩を道具にしたあの男に、先輩を守れなかった私自身に。
「……だから私の手で貴女を解放します」
覚悟を決めて先輩に銃口を向ける。あとは撃つだけ。なのに……手が震える。記憶に残る先輩の笑顔が脳裏に焼き付いて消えない。……私はこの人を撃てない。
「………」
しかしそんな私とは違い目の前にいる先輩は躊躇う事もなく銃弾を浴びせてくる。咄嗟に反応できたので命中は免れたがまともに食らっていたら大怪我を負っていただろう。
「あの黒い男を狙う……いや、ショットガンじゃ届かない。でも先輩を撃つなんて……」
葛藤は終わらない。だが迷っている時間もない。相手は私を殺しにきているのだ。
「……先輩、ごめんなさい。貴女を……殺します」
……だから私は罪を背負う事にした。大切な人をこの手で殺すと。最初で最後の先輩との殺し合いを始めようと。
ーーー
「くっ……随分と銃の扱いが上手いですね、先輩!」
覚悟を決めてものの容赦のない弾幕に防戦一方を強いられる。まるで避ける位置を予測されてるかのように正確に撃ち抜いてくるので気がついたら追い詰められていた。
「……左腕の感覚がない。よくない状況だ。けれど……貴女を殺さないと私は死ねないんだ!」
「……っ」
そう叫んだ一瞬の僅かな間、先輩は悲しそうな顔をする。それが何を意味しているのかは私には分からない。だけど気にする必要はない。どちらにせよ撃つことに変わりはないのだから。
「もう……終わらせよう」
ゆっくりと先輩に近づいていく。しかし彼女は銃も盾も構えず私が近づくのを待っている。一歩、また一歩と距離が短くなる度に思い出が頭を駆け巡る。振り返ってみると悪くはない日常だったな、と苦笑しながら。そして数十センチ程の距離まで来た時、私は先輩に向かってショットガンを撃ち込んだ。
「……ありがとう」
口から血を流しながらも笑顔で微笑む先輩。その表情は先程までの無表情とは違い私がよく見ていた、もう2度と見ることが出来ない笑顔。
「………」
ゆっくりを先輩が目を閉じる。やがて完全に瞼が閉じ切った時、彼女の頭の上にあるヘイローが欠け始めていく。
独り残された彼女はそれをただ虚な瞳で眺めていた。