織斑一夏はテロリスト ―『お父さん』と呼ぶんじゃねぇ―   作:久木タカムラ

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029. Dark Hero Show ― 共演 ―

 ――この程度か。

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒは落胆を隠せずにいた。

 切り取られた視界、まるで画面越しに傍観しているかのような――自分が自分でなくなっていく幻痛に苛まれながら、彼女は諦めにも似た感情に浸る。

 あれほどまでに憧れた強さ。

 美しく、気高く、凛とした刃の如き極東の女傑。

 あの人の栄光に泥を塗った織斑一夏が許せず、だからこそドイツに連れ戻すべく、遠路はるばる平和ボケした日本まで足を運んだと言うのに。

 

 ――私が思い描いた『力』とは、この程度の物だったのか。

 

 この学園に来て、その決意が鈍ってばかりいる。

 考えずにいた――頑なに考えまいとしていた織斑一夏の過去の傷跡。

 かの少年も自分と同じく、力を持たない弱者であるが故の苦しみに悩まされていたのだと変人に教えられ、それからは元々抱いていた嫌悪感以上に、奇妙な共感が心を占めるようになった。

 その思いの正体が分からぬまま譲れぬ戦いに臨み、挙句に押し負け――そしてこの醜い有様だ。

 

「うおおおおああああっ!!」

 

 白と黒――二振りの《雪片弐型》が切り結び、火花が散る。

 パートナーのデュノアからエネルギーを譲渡されて再生を果たした白式。しかし完全と呼ぶにはあまりにも弱々しく、一極限定モードで右腕と武器の形成が精一杯のようだった。

 それでも一夏は立ち向かう。

 ラウラが歪んだ姿で呼び起してしまった紛い物に、死をも恐れず血気盛んに。

 

 ――何故そこまで戦える? お前のその強さは何処から……。

 

 己を蝕み続ける繭の中、無意識の内にラウラは問う。

 この危機的な状況、こちらの声など届く訳もない――返答など求めてはいない、独白と懺悔にも似た単なる自己満足に過ぎないはずだった。

 

「ラウラぁっ!!」

 

 だが一夏は叫び、答えを返した。

 身体中に幾筋も傷を刻みながら。

 姉の誇りを踏み躙る偽の剣を、猛然と捌きながら。

 

「お前が千冬姉に憧れようが俺を馬鹿にしようが、そんなのお前の勝手だけどなぁ!」

 

 振り下ろされた一撃を、愛刀を頭上に掲げて受け止める。

 歯を食いしばり、血を滴らせ、踏み締めた両足が衝撃で地面に埋まりつつも、その両の瞳だけは爛々と輝き続けて光を失う事はない。

 少年は尚も叫ぶ。

 

「『自分の握る剣に怯えぬ者に剣を握る資格はない』――俺はそう教わった!」

 

 強引に押し上げるのではなく相手の力を利用する形で、刀身の上を滑らせるようにして黒雪片を受け流し、僅かに生じた隙を狙い撃つべく斬撃を放つ。

 けれどその一撃も、世界最強を模倣した『黒』に容易く弾かれてしまう。

 一夏は諦めない。

 

「最初は意味が分からなかったけど今なら分かる! 先生は俺に『千冬姉の剣を守れるのか?』と聞いていたんだ!!」

 

 ――教官の、剣……?

 

「俺もお前も千冬姉を尊敬している! 俺達が振るうこの剣には、戦い方を教えてくれた千冬姉の厳しさと優しさが込められてる!! だから絶対、俺達の身勝手な真似事で千冬姉の教えと誇りを汚して台無しにするなんて――そんなのあっちゃならないんだ!!」

 

 剣そのものに怯え、恐れ、躊躇う。

 無駄な争いを避け、生命を重んじよと諭す意味合いも当然含まれているのだろうが、それよりも何よりも、無様な技をひけらかして師の名を傷付けてはならないと言う訓戒が心に響いた。

 ラウラが千冬を慕い、一夏を許せずにいる気持ちも。

 命の危険を顧みず、一夏が果敢に立ち向かうのも。

 平行線を走る二つの道――けれど根幹にある想いは全く同じなのだ。

 

「俺は皆を、千冬姉を守りたい! 千冬姉を大切に思ってくれているお前を守りたい!」

 

 ――だから、斬るのか?

 

「だから、斬るんだ! お前をそこから助け出すために!」

 

 その意思を汲み取り、雪片に変化が起こる。

 柄だけを残して実体の全てを排し、零落白夜のエネルギーを一点に収束した日本刀。

 闇を裂く一筋の光とそれを振るう男の貌にラウラは目を奪われ――

 

 ――綺麗……。

 

 そして、斬られた。

 剣の猛襲を先ほどの意趣返しとばかりに打ち弾かれ、頭から割断される黒き紛い物。その内よりラウラがズルリと零れ落ち、地面に倒れる前に抱き止められる。

 ひんやりと冷たく、決して放すまいと全身を包み込むような感覚。

 

 ――え……?

 

 そう――不気味なほどに冷たい。

 体温や血の巡りなどおよそ感じられない、無機質かつ機械的に淡々と、ただ零れたパーツ(・・・)を拾い集めて修復するかのような蠢き。

 

「何っ!? コイツまだっ……!!」

 

 抱き止めたのは、一夏ではなかった(・・・・・・・・)

 装甲の一部が変化した触手でラウラを絡め取り、シュヴァルツェア・レーゲンだった『何か』はさらなる変貌を遂げようと、輪郭が崩れて形を成していない機体を流動させる。

 それは孵化する直前の卵か、あるいは心臓のようであった。

 

「レー、ゲン……?」

 

 ラウラは初めて恐怖した。

 何だこれは。何なのだこれは。

 こんなのは知らない――こんなのは望んでいない!

 

 ――嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

 

 再び取り込もうとする黒いISに逆らい、ラウラは必死に手を伸ばす。

 白式が消えて膝をつき、呼吸を荒げながらも真っ直ぐに自分を見てくれる彼に向けて。

 

「助けて……」

 

 直後に。

 ラウラ・ボーデヴィッヒの意識は現実から奪い去られた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「助けて……」

 

 銀の少女が流動体に飲み込まれるのを、一夏は這い蹲って見ているしかなかった。

 立ち上がろうとしても身体は言う事を聞かず震えるばかり。筋肉が鉈でぶつ切りにされたような耐え難い激痛を発し、ギシミシと悲鳴を上げる骨は今にも砕けてしまいそうだ。

 正真正銘、あの零落白夜が最大最後の一撃。

 勝利を確信して全力を出し尽くし、そして裏切られた一夏にこれ以上打つ手がないのは、戦いを注視する誰の目から見ても明らかだった。

 

「ラウラぁっ!!」

 

 少女の名を呼ぶ。

 ボコリボコリとマグマのように表面を膨張させる異形を前にして、一歩も退かずに。

 耳には聞こえずとも心にきっと届いてくれるはずだと――そう思い信じて、徐々に人間の形態に固まりつつある化け物の、その腹の中で眠らされているラウラに声を投げる。

 恐怖、羞恥、後悔、自責――泥のように重苦しく積もる感情を必死に押し殺しながら、どうにか彼女を助け出そうと動かない四肢に力を込める一夏。

 そんな諦めの悪い少年を、ボディの再形成が終了した『それ』が捨て置く訳もなかった。

 

「一夏っ!?」

「一夏ああああっ!!」

 

 幼馴染とパートナーの声が何処か遠くに聞こえる。

 時間が巻き戻ったかのように、同じ軌跡を描いて振り上げられる黒刀。

 ただし先ほどとは異なり、剣を失った一夏にはもう攻撃を防ぐ手立てがない。

 

「くそっ……」

 

 一秒一秒がやけに長く感じられる。

 一夏の首が斬り落とされて死を迎えるまでの数瞬を、断頭の刃どころか周囲の風景さえも緩慢になった世界が――さながら処刑台へと続く十三階段のようにじっくりと指折り数えていく。

 止まらない無音のカウントダウン。

 せめて逃げ傷だけは残すまいと、正面切って敵を睨み付ける一夏の精神に、

 

 

 

 

 

「――動くなよ少年。当たるぞ?」

 

 

 

 

 

 その声だけは、はっきりと届いた。

 直後に沈黙をつんざき破る発砲音が鳴り響き、衝撃によって一夏の首筋を食い千切る寸前だった凶刃が大きく弾き逸らされる。

 それを機に正常な速度に戻る時の流れ。

 二発、三発と続け様に銃撃を受けた黒いISはたたらを踏んで後方へ下がり、その隙に声の主が一夏の首根っこを掴んで壁際へ投げ飛ばす。

 

「一夏、大丈夫か!?」

「あ、ああ何とか。俺の事よりも……」

 

 箒に助け起こされた一夏が見たものは、ショットガンを敵に向ける男の背中だった。

 白衣の尾を風にたなびかせながら悠然と立ち、常人ならばISに乗らなければ持ち上げる事さえ困難な大口径の銃器を、身体の一部であるかのように右腕のみで軽々と支えている。

 

「ハハハッ! 見てたよ、ルーキー。随分こっ酷くやられてんじゃねーの」

「先生……」

 

 紛い物も警戒するように動きを止めている。

 黒い雪片モドキを正眼に据えたまま、相手の出方をじっと窺う――先の一夏との鍔迫り合いではその素振りすら見せなかった、怯えさえ感じ取れる受け身と防御の構え。

 言い換えればそれは、敵が彼の戦闘力を正当評価している事に他ならず――その実力差を改めて思い知らされた一夏は、安堵よりも先に悔しさを覚えた。

 

「先生、あの中にラウラが……」

「ああうん、知ってる。つかちょいと予想外でオッサンも驚いてるし」

 

 まさか二度も取り込まれるたぁなー、と一度目の暴走は予見していたような口振り。

 そもそもこの男は、一体何時から『見てた』のだろうか。

 

「先生……あれは何なの?」

「VTS――ヴァルキリー・トレース・システム。モンド・グロッソ各部門受賞者の動きや技術を真似して簡単お手軽にパァウァァァァァァァーを手に入れられちゃう夢のようなシステムなのだ」

「だから千冬姉みたいに……」

「ボーデヴィッヒのお嬢さんにとって織斑先生は特別中の特別みたいだからねぇ。ちなみに諸々の事情によりアラスカ条約で開発する事も使う事も禁止されちゃってます」

「じゃあ何故、ボーデヴィッヒのISにそれが組み込まれているんですか?」

「さてねぇ。でも――」

 

 そこで一度言葉を区切り、彼は来賓席に視線を送る。

 

「あっちでブルーマンみたいになってるドイツのお偉いさん方なら、その辺の事情をよーくご存知なんじゃない? 国ぐるみなのか軍の独断なのかまでは知らんけど、少なくともボーデヴィッヒのお嬢ちゃんには伝えてなかったみたいだし」

 

 一夏の視界が怒りで赤く染まる。

 そんなシステムで偽りの力を与えるなど、ラウラや姉に対する最大の侮辱だ。

 それでもかろうじて冷静さを取り戻し、連中の間抜け面をぶん殴りに行きたい衝動を抑える事ができたのは、傍らに寄り添う二人の少女が自分以上の激情を露にしていたからに他ならない。

 

「……外道共が」

「……女の子を何だと思ってるんだ」

 

 曲がった事や卑劣が心の底から大嫌いな箒は元より、シャルルも物のように扱われる事の辛さを知っているが故に――何より同性であるが故に、一人の少女を苦しませている大人達の自分勝手な行いが許せないのだろう。

 

「んーで少年、テメェは何時までそこで寝っ転がってるつもりなんだ?」

「…………」

「早く立たねぇと、お嬢ちゃんが待ちくたびれちまうぞ?」

 

 立ち上がれるならもうとっくに立ち上がっている。

 それができないから一夏は歯痒い思いをしていると言うのに、この男は――

 

「そ、そんなの無茶だよ先生! 一夏はさっきからずっと戦いっぱなしで傷だらけで、白式だってエネルギー切れでもう使えないのに!」

「あぁそうなの。で? それが何か問題?」

「先生っ!!」

 

 シャルルの悲痛な叫びさえも無視し、白衣の変人は言う。

 

「あのお嬢ちゃんは少年に『助けて』と言ったんだ。なら絶対に助けねーと。傷だらけ? 白式が使えない? そんなのは助けない理由にゃあならない」

 

 ショットガンが轟音と共に一粒弾を吐き出す。

 一瞬の隙を突いて斬り掛からんとしていた紛い物の刀身を弾き、姿勢が崩れたところへ容赦なく追加の弾丸を浴びせていく。ラウラが内包されていると思しき胴体部は狙わず、四肢や刃先だけを的確に撃って猛襲を凌ぎ続ける。

 世界最強を模した怪物に生身で挑む――彼もまた、怪物と呼ばれる者の一人。

 

「腕を切り落とされようが足を吹き飛ばされようが知った事か! 救える命が目の前にあるのならとにかく這ってでも救いやがれ! できるできないじゃない! やるかやらないかだ!!」

 

 黒鎧を敢えて呼び出さないのは、白式が沈黙した一夏に対する彼なりの叱咤激励なのか。

 

「さっさと立てよ織斑一夏! 意地があんだろ!? 男の子にはっ!!」

「…………ははっ」

 

 思わず笑みが零れる。

 その言い方はずるい。

 そんな風に言われたら、何が何でも男を見せるしかないじゃないか――!!

 

「そうだよ……先生の言う通りだ」

「一夏……」

「意地があんだよ……! 男の子にはなァッ!!」

 

 箒とシャルルの手は借りない。

 両足に力を込め、骨と筋肉の悲鳴を気力で捩じ伏せて、目を血走らせながらも一夏は立った。

 不可能だと思っていたのに手厳しい挑発一つで起き上がってしまえるのだから、我ながらなんて単純な心と身体なんだろうと呆れてしまう。

 だが、まだやれる。

 まだ救えるだけの力が残っていた。

 ラウラを助けたい――その二人(・・)の叫びが『奇跡』と言う名の必然を呼び起こす。

 

『――――』

「これって、先生の……」

 

 少年を待っていたかのように、威圧的な存在感を放ちながら宙に浮かぶ黒い万年筆。

 ペン先にあたる部分から自動的にケーブルが伸び、ガントレット形態の白式に接続される。

 有無を言わさず強引に流し込まれるエネルギーは、シャルルのラファールから渡されたそれとは比べ物にならないほど暴力的で、もしISに心や魂があったなら、気に食わないけど仕方ないから力を貸してやる――とランスローの溜め息が聞こえて来るような荒々しさがあった。

 見えない手に背中を押してもらい、一夏は力強く一歩踏み締める。

 

「起きろ白式ィッ!!」

 

 ひたすらに求め望むは、少女の元へ飛ぶための白き翼。

 恐れは消えた。

 刀も必要ない。

 何故なら――

 

「カァッコいいーッ!! 惚れちゃいそうだぜぇ少年!!」

 

 自分の前には、何者にも勝る『最強』がいるのだから。

 黒刀の一閃を容易く避けた白衣の男が、懐から取り出した何かを紛い物のボディに蹴り埋める。

 

 

 それはロケットに銃把(グリップ)を付けたような――オモチャにしか見えない光線銃だった。

 

 

 ラウラの記憶を読み取り、そして何をしようとしているのか勘付いたのか――機械であるはずの醜い贋作は目に見えて狼狽え、変人を剥がそうと滅茶苦茶に黒雪片を振り回す。

 けれど――もう遅い。

 既に狩人は狙いを定め、三日月の笑みを浮かべている。

 

Hasta la vista(さっさと失せろ), baby」

 

 放たれた弾丸が光線銃を撃ち貫く。

 余興の産物として『剥ぎ取りくんZ』などとふざけた名前を付けられた玩具だが、しかしISに対して凶悪極まりない性能を誇る悪魔の武器である事に変わりはない。

 破壊された衝撃でエネルギーが暴走を始め、紛い物のボディを蝕み本来の力を発揮する。

 すなわち――ISを強制解除する『剥離剤(リムーバー)』としての力を。

 

『ギ――ゴッ……!?』

「少年んんんっ!!」

「はいっ!!」

 

 ゴポッ、と黒い粘体より吐き出されるラウラ。

 手放してなるものかと殺到する触手を変人が撃ち千切り、気を失っている少女を翼を得た一夏がしっかりと抱き締めて離脱する。

 中核を奪われスライムと化した模造品――これでもう遠慮は無用だ。

 すれ違い様に投げ渡された万年筆が主の手に戻り、大気を歪めるほどの重力場を作り出す。

 

「――暴飲暴食(いただきます)ってなぁ!!」

 

 頭上で交差させた、鎧を着込む悪魔の両腕。

 そこから放たれる力任せの平手打ち――左右より同時に『×』の字を描いて抉るように、しかも超重力の加護まで受けた一撃ならぬ二撃。

 刀はおろか手足すらも形にできない軟体物質に、防ぐ術などあるはずもなく。

 巨大な鉤爪さえ幻視できてしまうほどの衝撃を受け、黒い血肉を盛大に撒き散らされた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 ……さて。

 この世の全ての獲物(しょくざい)に感謝を込めたまでは問題ないとして、胸騒ぎと言うべきか虫の知らせと言うべきか――そんな感じの電波を受信してゴチソウサマデシタができない私がいる訳で。

 少年少女らはまだ何も感じ取っていないらしく、ボーデヴィッヒのお嬢ちゃんを無事助け出せてえがったえがった一件落着と安心し切っている。

 私の単なる思い過ごしならそれはそれで全然構わないのだけども………………悪い予感ってのは往々にして当たっちまうもんなんだよなぁ。

 何気なく空を仰ぎ、そこに浮かぶ未来からのお客さんを見つけた時とか、特にそう思う。

 はっはっは、つまり今だよチクショウ。

 

「うーわ、何かいるし」

 

 ISを解除した私を不意打ちするでもなく、じっと無機質な視線を送る――おそらく無人機。

 遮断シールドなんぞやっぱり意味を成さず、拘束衣に鎖を巻き付けたようなスタイルの闖入者はゆっくりと高度を下げて私の前に降り立つ。

 アメジスト色のセンサーアイが誰を表しているのか……つまりはそういう事なんだろう。

 喜びから一転、絶望と驚愕の表情を浮かべる少年達。

 

「アイツって、この前先生が戦った奴と……」

「迂闊に動くなよ少年。篠ノ之の嬢ちゃん達もだ。何して来るか分からん」

 

 実際、あれが本当にデュノアの技術をトレースしているのだとしたら非常に厄介だ。挑む相手に合わせて自在に戦法を変える彼女の恐ろしさは、私が一番良く知っている。

 おまけに、その手に持っている代物がよろしくない。

 五角形を組み合わせた正多面体のISコア――そいつを一体どうするつもりなんですかねぇ?

 

『………………』

 

 握り締めたコアを、足元のレーゲンスライムの塊にぶち込む無人機。

 するとまあ、何という事でしょう。スライムがブルブル痙攣したかと思えば、アリーナステージ全体に散らばった破片が一気に集まって来るではありませんか。

 ぐじゅるどぷりと凄い音を立てて三度目の再誕を果たす元レーゲン。

 いやはや、魔人ブウ並みにしぶとくてらっしゃる。

 

「じょ……冗談でしょ?」

「だったら笑って済ませられるんだけどねー」

 

 シュヴァルツェア・レーゲンとは似ても似つかない、全身を波打たせる女性型の二機目。

 当然のように右目は赤、左目は金のオッドアイで――まさかのボディ現地調達作戦にオジサンは脱帽するしかありませんよ?

 何にしても、あの二人の狙いは私以外にない。

 予想はしてたが凰に続いて二対一とは、あちらのレディ達もいよいよ本気になったって事か。

 

「下手に援護しようなんて考えるなよ少年。今のキミらじゃ役に立たん」

「だけど先生っ!」

「とにかく邪魔をするんじゃない! そこで大人しく見てろ!!」

 

 少年達に意識を割くのも難しい。

 あの二機はそこまで優しい相手ではない。

 やーれやれ、今回も腹ぁ括らないといけないかもなぁ。

 

「……もう誰も近付くな。ここから先は、私のケンカだ!!」




熱血一夏くんと焼け野原ひろしの共演でした。
次はいよいよ大人組の戦いですよ。

今回のリクエストは、

 ARCHEさんより、

・「『自分の握る剣に怯えぬ者に剣を握る資格はない』――俺はそう教わった」(BLEACH:檜佐木)

 WRYさんより、

・「ハハハッ! 見てたよ、ルーキー」(ACV:主任)

 賽銭刃庫さんより、

・「パァウァァァァァァァァァァー」(ボディーソープの妖精)

 ヘタレな名無しさんより、

・「あぁそうなの、で?それが何か問題?」(ACV:主任)

 ネギ・グラハムさんより、

・「できるできないじゃない! やるかやらないかだ!!」(テイルズシリーズ)

 七日八月さんより、

・「意地があんだろ!? 男の子にはっ!!」
・「意地があんだよ……! 男の子にはなァッ!!」(スクライド)

 昆布さん、ROMEdgeさんより、

・「カァッコいいーッ!! 惚れちゃいそうだぜ○○!!」(とある~:木原数多)

 namcoさんより、

・「さっさと失せろ。ベイビー」(ターミネーター2)

 特亜消尽さんより、

・「ここから先は、俺のケンカだ!」(ストライク・ザ・ブラッド)

 でした。
 まだまだ二巻が終わりません(汗)




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