星野アイを都合良く助けたかっただけ   作:サザンドラ

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タイトル
Lyn「星と僕らと」より

作業用BGM
同上
amazarashi「千年幸福論」

二回行動してます。前話からお読みください



星と僕らと

「ああうん、そう。ほぼ泥酔状態だ。あん? 変なこと? するわけねえだろ、マセガキ……とりあえず送ってくから。そう、住所な。頼むわ」

 

 店を出てすぐアクアとの電話を終え、自分に「メシアライザー」をかける。それだけで体内のアルコールが分解され、薄れかけていた理性が戻って来た。

 こういう時に癒しの力は便利だ。

 酩酊状態を状態異常として捉えてくれているから、泥酔した翌日を迎えても二日酔いに苦しむことはないしな。加減ミスると老化も異常と捉えるからあんまり良くないんだけど。

 なんてことを考えながら、ふらふらとして隣に立つ星野に声をかける。

 

「おーい、星野。歩けるかー?」

「うぇ? そとぉ?」

 

 呂律が回っていない口調で喋りながら、彼女はひょこひょことふらふらの中間ぐらいな足取りで近づいて来る。完全に千鳥足の酔っ払いだ。

 調子に乗って飲むからそうなる。流石にこんなことで回復はしてやらんぞ。

 ったく、打ち合わせに車で来て駐車場に置かせて貰ってたからよかったものをそうじゃなかったら、どう帰るつもりだったんだ。

 

「かえるの〜?」

「ああ、車で送ってやるから少し歩け。アレだったら水も買ってやるから」

「あはは、いんしゅ運転じゃん。いけないんだー」

 

 こいつ……

 

「俺はもうアルコール抜けてんだよ。いいから行くぞ」

「えー、歩けなーい。歩きたくなーい」

 

 おい主張は統一しろ酔っ払い。したくないと出来ないの間には、大きな差があることを知れ。

 

「ほら、おぶってやるから……」

「あはは、来栖くんやっさしー」

「ッと、おい急に来るな。あと、サングラスとマスクちゃんとしとけよ」

「わかってまーす」

 

 おぶさって来た星野をどうにか背中で受け止めて、持ち上げる。

 普通に重いが、まあ駐車場まで歩くぐらいなら問題ない。

 

「ったく、自分の限界ぐらい覚えとけよ」

「いつも気にしてるし、べつにいーじゃん。ともだちと飲むときぐらい」

「お前な、一応俺も異性だぞ。警戒心無さすぎだろ」

「えー、なにかするつもりなんだー? 来栖くんやらしー」

「お前な……」

 

 一応往来だぞ、ここ。誤解されんだろうが。

 そう思うも、まあ信頼されているのだろうと思うことにして、ため息を吐く。

 そのまま星野を背負って、駐車場までの道を行く。

 

「んー、くるすくんのせなかは広いなあ。ねえ、るびいにもおんぶしたことあるんでしょ?」

「ん? ああ。まあ、ルビーにせがまれてな」

 

 あれは小学生の時だったか。

 二人を連れて外に飯を食いに行った時、帰りに通りかかった公園で父親におんぶされている子供を見て、ルビーが騒いだんだったっけ。

 

「パパー! 私もおんぶ〜! ってな。おかげでご近所さんにあんなデカい娘がいると誤解されるわ、誤解が解けてもアイツらと歩いてると微笑ましい目で見られるわで、散々だ」

 

 俺の歳であんなでけえ娘がいてたまるかよ。

 

「あはは、その日るびいがきげん良さそうに帰ってきたからおぼえてる。よっぽどうれしかったんだろうな〜って」

 

 星野は、嬉しそうで、それなのにどこか寂しげな声で囁くようにそう語る。

 

「それをきいて、わたしね、いいなあって思ったんだ。おかしいよね、わたしもう大人なのに。おかあさんなのに」

「……まあ、おんぶを羨ましがる大人ってのも珍しいかもな」

 

 けどまあ、彼女の場合はまた違うんだろうな、とそう思う。

 

「だからさ、いまちょっとるびいのきもちわかったかも。おんぶしてもらうと、あったかいしあんしんするんだなあって……」

「……眠いなら寝ていいぞ」

「え〜? ねむくないよ?」

 

 そう言いながら、彼女はくわっと可愛らしいあくびをする。

 

「酔いが少し醒めてくるぐらいが一番眠いからな。あんま無理すんなよ」

「でも、ねむったひとっておもいらしいじゃん。だいじょぶ?」

「駐車場、そこの信号渡ったら着くから気にすんな」

「ん〜……うん、じゃあそうする。ごめんね」

 

 それだけ口にして、星野はすうっと寝息を立て始める。

 彼女の言った通り、意識を失った成人ってのは男女の別なく存外重いのだが、この重さが彼女が今を生きていることの証明だと思えば、それほど嫌ではなかった。

 

 そのまま信号を渡って、警備員さんに星野の名前は出さずに事情を話して、車へと向かう。

 後部座席に星野を寝かせて、運転席に乗り込むとエンジンをかけシフトレバーをドライブに入れ、ブレーキペダルを踏んでからスマホを開く。

 すると、アクアから住所が送られて来ていたのでそれをカーナビにセットし、ブレーキを離して発進する。

 

 警備員さんにお礼を言って、駐車場を抜けると軽くアクセルを踏んでスピードを上げた。

 

 そのまましばらく走っている間も、後ろの席の星野は起きる気配がない。

 

 いつもなら流している音楽も、本人がいるうえに寝ているためかけることもできず、鼻歌を歌って誤魔化すことにした。

 ゲームソングやらJPOPしか聞いてなかった俺のプレイリストに、いつの間にか入り込んだアイドルソングを見るたびに、我ながら影響されすぎだろと思って苦笑する。

 

 俺が星野アイ強火オタクだというのは、あながち嘘でもない。友人だから多分、誰よりも彼女を理解している気になって、割と真剣にエゴサしては本人でもないのに勝手に傷ついたりもしていた。

 

 星野アイ子供バレ事件の時とか、双子のこともあって心ない言葉に割と真剣にキレていたような気もする。事実はともかく変な憶測で星野を攻撃したり、何より子供を叩くのは違うだろって。

 まあ倫理的にやばいことしてるから、そこがバレてたら擁護はし難かったんすけどね。そうなったら横で別の炎上ネタになってやろうとは思ってたが、幸いその必要はなかった。

 

 そんなこと、わざわざ本人に言ったりはしないけれども。画面の外でキレていただけで、俺は何もしなかったわけだし。

 結局、その後テレビのドキュメンタリーだかなんだかで、星野の頑張りが脚色はあれどもある程度可視化されて、世間は一転して称賛ムード。叩いてた奴らが今度は叩かれ始めて、今では二児のシングルマザーで女優。

 

 子供を守るために世間に認知させるという彼女の目論見は、結果的にいい方向へと収束した。

 まあ、今でも好意的な見方をしないやつはいるが、そんなもんは気にするだけ無駄だ。ゴキブリみたいなもんだし。

 

 ともかく、斉藤さんやミヤコさんたちの協力を得つつも彼女はこれまで走り続けて来たわけだ。

 そんな彼女の止まり木になっていたのは、きっと子供たちなのだろうな。そりゃ溺愛もするわけである。

 

「……よかったよ。お前が幸せそうで」

 

 そんなことを呟いて赤信号で止まると、寝苦しそうな声が聞こえて思わず後ろを振り返る。

 

「んう……」

 

 どうやら本当に声を出しただけで、起きてはいないらしい。

 大人しいもんで、すやすやと安らかな顔は見ているこっちまで眠くなってくるほどだ。本当に酔ってんのかこいつ。

 

「しかし綺麗になったよな、本当に」

 

 泥酔して寝てる姿すら絵になるとか意味わからん。今生の俺の母ちゃんとか泥酔したらモンスターだぞ。イビキ的な意味で。

 そんなくだらんことを考えながら、カーナビの案内に沿って運転を続けていると、おかしなことに気がつく。

 あれ? ここから俺の家、近くね?

 そう思いながら、何度か通ったことのある住宅街に入ったところでナビが到着を告げた。

 

 いや、マジでご近所さんじゃねえか。何やってんだこいつら。

 

 そんなことを思いながらも、とりあえず、着いたとアクアにメッセージを送ると『すぐ行く』と返事が来たので、車を降りて後ろで寝ている母親のことを起こすことにした。

 

「星野、着いたぞ」

「んー」

「んーじゃなくて、一旦起きろ。アクア迎えに来るぞ」

 

 どうにか起こそうと体を軽く揺すって、アクアの名前を出すとむくりと起き上がって彼女は辺りを見渡し始める。

 

「あくあー?」

「おう、すぐ来るから寝るなよ」

「あー、くるすくんだー。あれ? でもどうしてくるすくん?」

 

 泥酔したうえに寝惚けているのか、ふわふわとした喋り方をする星野にため息を吐く。

 

「お前と飲んで、その後車に乗せたんだよ。んで、お前の家まで送って来たってわけだ」

「そうだっけ?」

「そうだっけ、ってお前なあ……」

 

 呆れて、一言言ってやろうとそう思った時だった。

 不意に体を引き寄せられる。一瞬、何が起きたのか分からなかった。

 強い力で体を締め付けられたのを感じて、そこでようやく自分が抱きしめられているのだと気がついた。

 誰に……?

 星野にである。

 

「おま……」

 

 芸能人の自宅前でこんなところ撮られたらタダじゃすまないと思い、慌てて振り解こうとするが、完全にロックされているため上手く抜け出すことが出来ない。

 そのことに俺が焦って冷や汗をかいていると、星野が口を開いて、

 

「よかったあ、もう会えないと思ってた……」

 

 そんなことを言った。

 

「あのな、寝惚けてんだろうがその話はさっき……」

「夢じゃない。あったかい。来栖くんちの匂いする。あとちょっとタバコ臭い」

「おい……聞けよ」

 

 悪かったな、タバコ臭くて。

 若干申し訳なく思っていると、星野はさらに腕の力を強めて言う。

 

「でも、来栖くんだ。わたしのともだち……」

 

 嗚咽混じりのその声は聞いたこともないもので、俺は今日、散々自覚させられたはずなのに、自分の間違いをまざまざと見せつけられた気になった。

 何が心は救ってやれないが、命は助けてやれるだ。

 命が助けられてもこれじゃあ、傷つけた側とそう変わらないだろうに。

 

「悪かったよ、会いに行かなくて」

「ううん、いいんだ。また会えたからそれだけで……」

 

 彼女の生い立ちを考えれば、きっとこんなこと簡単に想像出来たはずだった。本当はフラッシュバックだってしたんだろう。そんな様子、飲んでる時は少しも見せはしなかったが、これからまた離れるってなったら不安になったのかもしれない。

 会えなくなること、連絡をしないこと。つまり、目に見える繋がりがなくなることは、彼女にとって永久の「さようなら」とさして違いはない。そうして置き去りにされた過去があるのだから。

 人との関係は目に見えるものだけが全てじゃない、とはいえそれは、彼女にとってはそうじゃない部分もあるのだろう。

 人の思いってのは、砂つぶみたいなものでどれだけ理解したと、掬い上げたと思っても指の間から零れ落ちてしまう。

 二度と会えないかもしれない。そんなことを思わせてしまっていた俺は、どうしようもなく友達失格だった。

 

「俺はいなくならねえよ」

「うん……」

「そう簡単に死なないし、それに俺はさっき知ったんだが、案外うちと距離離れてねえんだぞここ」

「うん」

「だから、まあ色々気を遣ってもらわんと困るが子供たち連れて来てもいいしよ。たまになら今日みたいに飲みに行けんだろ」

「……宅飲みは?」

「……したいなら好きにしろ。けどあんま飲み過ぎんなよ」

 

 お前、酔ったらだいぶ面倒だと今分かったわ。子供に見せられねえよこれ。

 

「わかったか? わかったらそろそろ放してくれ」

「やだ」

「やだじゃねえよ、酔っ払いめ」

 

 そう言ってやるが、しかし一向に放してくれる気配がない。

 

「だって放したらまたいなくなっちゃう……」

「いなくならんって」

 

 帰るけど。

 あまりの駄々っ子ぶりに困り果てていると、後ろからちょんちょんと背中を触られる。

 それに顔だけで振り返ると、神妙な顔をしたアクアが立っていた。

 

「……」

「……」

 

 お互いに目を合わせてしばし無言。

 俺は単純にこの場面を見られた気まずさから、アクアは恐らく母親の醜態の恥ずかしさから、互いに黙ってしまっていた。

 程なくして、先に口を開いたのはアクアだった。

 

「父さんって呼んだ方がいいか?」

「切実にやめてほしい」

 

 勘弁してくれ。

 

「冗談だ。それにしても、酔ってる母さんなんて初めて見たんだが、どんだけ飲んだんだ?」

 

 あ、本人いるからアイ呼びじゃないの新鮮でいいな。

 

「あー、ビールを三杯、温燗を三本と冷酒を一杯ぐらいか?」

「いや止めろよ」

「途中まで割と平気そうだったから強いのかと思ったんだが……」

「……すまん。母さん家ではほとんど飲まないし、付き合いで飲んでもちょっとテンション高いぐらいだったからな。俺も限界がどこにあるのか、正確にはわからないし、無茶言ったな」

「いや途中から凄い勢いで飲み始めたから、気分良くなってて止めなかった俺も悪いわ」

 

 言いながらどうにか体勢を立て直して、星野を持ち上げる。向こうが力を込めてるから案外持ちやすい。

 

「ほれ、立て」

「やだ……」

「アクア……」

 

 アクアに助けを求めると、彼は近づいて来て星野に話しかけた。

 

「母さん。家だから、来栖さん放してやってくれ。帰れないから」

 

 しかし返事はない。ただの酔っ払いのようだ。

 

「……すまん。家まで運んで貰えると助かる」

 

 頼りにならねえ……

 

「ったく……よっこいせ」

「わっ」

 

 そこに至っても放してくれそうにないので、そのまま俵を持つようにしてやると驚いたように星野は声を上げた。

 

「わー、来栖くん力持ちだー。あ、アクアー。ただいまー」

「母さん……」

 

 どうやら酔っ払いフィルターのせいで、都合の悪い言葉やらなんやらは、全部聞き流していたらしい。息子の言葉にぐらい耳傾けてやってくれ。

 ケラケラと楽しそうな星野を持ち、死にそうな顔のアクアを連れて、星野宅に入ると、ドタドタと凄い音を立てながらルビーが今度は現れる。

 

「ママー! おかえりー! って、あ、来栖?」

「はいはい、宅配の来栖です」

「ルビー、ただいまー」

「え、ママ!? 来栖、ママに何してるの!?」

「んなことより、そこの兄貴どうにかしてやれ。こいつは俺が運んどくから」

「え、あ、お兄ちゃんが死んだ顔してる!?」

 

 俵状態で帰宅した母親に困惑するルビーにアクアを押し付けて、靴を脱いで家にあがる。

 

「リビングどっち?」

「真っ直ぐいって右だよ。あ、落とさないでねー」

「……お前もう酔い醒めてんだろ」

「えー?」

 

 えー? ではないが。

 

「あはは、ごめんね。なんか楽しくなっちゃって、つい飲み過ぎちゃってたかも」

「まあ、それはいいんだが……いつ酔い醒めたんだ?」

「アクアが来た時」

 

 ああ、はい。

 流石にあの場面を息子に見られるのは、君も恥ずかしかったのね。いや、ならちゃんと反応してやれよ。あれかこいつ、俺の配信観てたこと言われたの根に持ってんのか? だとしたら言わなきゃよかった……

 そんなことを気にしながら、一先ず、リビングのソファまで星野を運んで下ろしてやると、彼女は満足そうに笑った。

 

「ようこそ星野家へ」

「ようこそじゃねえよ……つーか用済んだし、帰るぞ俺」

 

 長居したらルビーがうるさそうだし。

 

「コーヒーぐらい飲んでいったら? 淹れるよ、インスタントだけど」

「いらねえよ。俺はハンドドリップ派だ」

「じゃあ紅茶?」

「何か飲んでく前提で話進めないでくれません?」

 

 そういやこういうところあったわ、こいつ。

 忘れてたけど基本強引なんだよな。その割に変なところで遠慮するけど。

 

「誘いはありがたいんだが、悪いが配信しなきゃならんし今日のところは帰るわ」

「むう……まあ、それなら仕方ないか。迷惑もかけちゃったみたいだし。ダメだね、歳取ったら簡単に寂しくなっちゃって」

 

 そう言って星野はおかしそうに笑ってから、柔らかい笑みを浮かべてこちらを見つめた。

 

「またね、来栖くん」

「ああまたな、星野」

 

 そう言って、思わず二人で見つめ合って、また笑った。

 

「これじゃあいつかみたいで、ちょっと不安か?」

「どうせすぐ会えるし、気にしてないよ」

「いやすぐって……」

 

 確かに家は近いけど、明日来るとか言い出さないよな?

 まあいいか。

 

「んじゃ」

 

 リビングの外に出てからそう言って片手をあげると、星野は微笑んで軽く手を振り返してくる。それを見て、俺は今度こそその場を後にした。

 

*

 

 星野家の玄関で靴を履き、扉を薄く開いて辺りを見る。

 人の気配はないし、今更気にしてもというところではあるが念のためだった。

 

「何してるんだ?」

「ん、周り見てる」

「ああ……ここに越して来たの最近だから、マスコミにはまだバレてないし気にしなくていいぞ」

「お前の提案じゃないだろうな……って、おい顔逸らすなおじさんの目を見なさい」

 

 このガキ……

 

「……まあ、お前ら双子はよくうち通ってるし、これぐらい近い方が都合はいいか」

「ばったり出くわせと思ってたけどな」

「おい、ふざけるのも大概にしろよマジでこのガキ」

 

 おじさんだって怒る時怒るからね?

 

「でも結果的に良かっただろ?」

「良い悪いじゃなくて、モラルの話してんだよなあ」

 

 つーか悪いわ。あの一番星が朝に散歩感覚でうちに来たらどうすんだよ、我が家には明けの明星を受け止めるだけの防御力もヒットポイントもないからな。

 まあそうは言っても、自分たちだけじゃなくて俺のことも考えてくれて、わざわざそうしてくれたのなら、ちょっと嬉しくはあるんだけれども。

 

「したら、心配事も消えたし帰るわ」

「また来いよ、ルビーも聞きたいことあるみたいだしな」

「飯連れてってやるから自分が来いって言っとけ」

 

 それだけ言って、玄関の扉を開けて外に出た。

 

*

 

 家に辿り着いて、シャワーを浴び終えてソファで休んでいると、何はなくとも今日の一連の出来事が頭を巡っていく。

 笑ったり、怒ったり、泣いたり、かと思えば我儘を言い出したり。

 なんだか星野に振り回されっぱなしだったような気がするし、冷静になるとだいぶ恥ずかしいことを言っている自分に気がついて、死にたくなる。

 

 俺もだいぶ酔ってたかもしれん。

 次、どんな顔して会おう。格好つけ過ぎてるから普通にいじられそうである。

 

「なーんてな、次に会うまで多少時間あるだろうし、そんなに気にしちゃいないんだけど」

 

 星野はすぐに会えるだなんだと言ってはいたが、お互いにそこそこ忙しいわけで。

 それに俺は、三日後にゲームの公式イベントがあって、来月の頭にはオンライン大会に出るし、割と余裕がないからなあ。いやあまいったまいった。これじゃあすぐはちょっと厳しいかもなあ。

 

 そんなことを思っていたからだろうか。

 俺はすっかり失念していた。

 

 三日後のイベント。その台本に書かれた燦然と輝く「スペシャルゲスト」の表記を。

 

 彼女が酔いに任せたテンションで「勝ち」と言った理由は、きっとそういうことだった。

 まあ、つまり、なんだ。

 俺の完敗だった。




嘘吐きな女の子の酔いと寝惚けで現実の境界が曖昧になっているところまで行かないと出ない本音のその奥底って概念がエモくね?(早口)

Q.こいつら恋愛に発展すんの無理じゃない?

A.人間の感情はどこまでいこうとどう転ぶかわからないから好きよ、アタシ

Q.酔う基準ガバくない?

A.僕が一時間半で飲んで平気なラインなので許して欲しい
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