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「あぁ~美味かった。結構なお点前で。ごちそうさまでした。」
「茶の湯…いや、今は茶道と言ったか。これは好いものだな。」
「とはいっても…俺はお湯を沸かしただけなんだが。」
「…ふふ、確かにそうだ。お湯が無ければ始まらないな。」
「そういえば、どうだもう慣れたか?ここでの生活は、聚楽第とは勝手が違うだろ?」
「ははは、そっか…子供の頃を思い出すか。まぁ、色々あったよな。俺もあんときは流石に働いてたからよく覚えてる。今は?今はぁ…与四郎に丸投げだぁ。あぁ、そうよ、ぼんくらでござい。」
「与四郎の稼いできてくれた金で米を買い、与四郎が炊いた飯を食い、与四郎が沸かした風呂に入り、与四郎が敷いてくれたお布団にごろん、だ。そんで極めつけは…その与四郎を抱き枕にして、お陰で毎晩ぐっすりよ。」
「昼前に起きるせいで、随分と月日が経つのが早く感じる。くくく…それもこれも、与四郎が俺を甘やかすのが悪い。」
「なんだってなぁ、俺もまさかオマエがちんちくりんのまま七十年を迎えるとは…てっきり山の様な大男になるもんだと思っていたんだが…あてが外れたか?…いや、むしろ大当たりとみるべきか?」
「いや、なに、俺が思っていた以上に懐いてくれたのだな、と思ってな。ん?ふふ、悪かったちんちくりんは余計であった。」
「だが、こう、きゅっと締まった着物に身を包んでいると女子の様であるな。いや、いい意味で。わははは!顔が赤いぞ!安心しろ、俺はお前を男と知って抱いている。」
「さて、こうしていると長い間ここで暮らしたような気もするが、この屋敷ではそこまで長い訳でも無し。猿の肝を抜き、舌を出して遁走してかれこれ四年、かぁ…。」
「なぁ、与四郎、次はもうちょい東に行ってみないか?あぁ、東だ。東と言っても東北だが…。」
「オマエ、金子が好きだろう?金は多いに越したことは無い。死なぬ死なぬが故に、だ。俺やオマエなら尚更だ。俺はともかくオマエは何かと高いものを俺にも自分にも贈りたがる。悪い癖とは思わんが、相応の体力が必要だ。」
「太平の世が来てみろ、人が集まる京や大坂は専ら飯を食う側だ。それに比べて東北は飯やら品を作る側。どうだ?あっちなら中央の眼も届きにくい。与四郎ほどの腕があれば、濡れ手に粟が狙えるんじゃないか?」
「…好きに暴れてしまえ。オマエに望むのはそればかりだ。稼いだ銭で家なき子を養うもよし、己で蓄財するもよし。阿呆のように高い茶器に換えるもよし。」
「夢が広がったか?…ならば、よし。煮詰めておいてくれ。ちょっと出て来るよ。」
「え?仕事かって?アハハハハハッ!そ、それは面白い冗談だ!」
「この俺が働かずとも好い時分に、自ら望んで働くことがあろうか!?…いや、ないな。」
「というわけだ、野暮よ。野暮用だよ。少し帰りは遅くなるけど、飯はちゃんと二人分炊いておいて欲しいかな。うん、任せた。あとは、そうだな…うんにゃ、特に無いなぁ…。」
「ん…ちょっちな、ちと近所の河原まで散歩に…。」
「あぁ、散歩だ。ぐるっとな。」
「どこの河原まで?そりゃぁ…与四郎さん、三条河原までよ。」
「そんじゃぁの。あ、言い忘れてたけど人を遣すから、もし客が訪ねてきたら、いつも俺にしてくれる様にもてなしてやってくれ。」
「帰りは何時か?」
「遅くとも盆には。」
「それまでには、必ずオマエの元に帰ってくる。」
我は神に仇なす者也。
我は霊長史より英霊を奪いし者也。
我こそは天を堕とし、魂と肉体を救済する者也。