とある異界の失速時間《ステールタイム》   作:一途一

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存在確認(オールクリア)

体が消える。

 

意識が消える。

 

魂が墜ちる。

 

 

殺そうとしていたのは姉ちゃんだった。

 

僕は操られていた。

 

最後に救けられたかな。

 

セカイは倒せたのかな。

 

まだ姉ちゃんと居たかったな。

 

これからどうなってしまうのだろう。

 

何も出来ない、あるのは暗闇だけ。

 

次に生まれ変わるなら楽しいとこが良いな。

 

ああ、意識が遠のいていく…

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

気がつくと僕は公園のベンチに座っていた。

 

「…あれぇ!?」

 

びっくりして体中を触る。いつもの真っ黒な格好だ。

 

行き交う人々に、クレープを食べたりして楽しそうな顔をしている子どもたち。

 

「世界は変わったのかな?」

 

前のような混沌はもう感じられない。久しぶりに感じた平和な雰囲気に思わず頬が緩む。

澄んだような青空、話し声が行き交う心地よい雑音。

ここまで心が軽いのは久しぶりだ。

 

今specは使えるかな?指を交差させ、指パッチンをしようとする。

 

「ちょっと、少し良いです?風紀委員(ジャッジメント)ですの。」

 

「え゛」

 

 

 

ぱちん。

 

 

 

 

 

 

 

止まる。子供の手から落ちているクレープが、

    元気そうに走っている子供が、

    怪しんだ目で此方を見ている制服姿の少女が。

 

 

止まった時間のまま思考を巡らせる。確かこの子は白井黒子…そんで、ここは僕が生まれ変わった?新世界。

けいおん!と同時期にやっていたこのアニメの名前は…

 

「『とある科学の超電磁砲』…」

 

いやいや、あり得ない。アニメとか漫画の出来事だし。そんなこと言ったら僕のspecもあり得ないけど。

きっとこれは何かの勘違いで、夢の中か何かなんだ。頬を引っ張ってみたり、目をパチクリさせてみたりする。

 

「いやいやいや…」

 

白井黒子に触れないようにしてベンチから立ち、辺りを見回してみる。奥に例の電撃使い(エレクトリカルマスター)、その近くには佐天涙子が。

逃げようと足を踏み出そうとしたその時、あることに気づいた。

 

「確かあの銀行が爆発するんだよな…」

 

目線の先にあるのは例の不運な銀行。この後無惨に爆散するシーンが想像できた。

 

「レールガン、見てみたいけどなぁ〜」

 

正直、見るもの見たら混乱に乗じて逃げらればいいだろうし、もし僕に何か影響が及んでも時を止めればどうにかなる。

白井黒子の能力は面倒だが、止めてしまえば一発だ。何処まででも逃げられる。

 

「たかまる〜〜えいっ!」

 

指を鳴らす。再び世界が動き始め、クレープが落ち、ベンチを凝視(しているように見える)白井黒子の顔が驚愕の色に染まる。

あ、ベンチ戻った方が良かったかな。

 

「え!?どういうことですの!?まさか貴方も空間移動能力者(テレポーター)…」

 

それと同時に銀行のシャッターが爆発し、中から三人組の男が出て来た。

 

「わーシャッターが急にばくはつしたー」

「…一体どういうことですの!?」

 

僕の方と弾け飛んだシャッターの方を交互に振り向く白井黒子。

キッと此方を睨んだ後、「ちょっとそこで待っているんですの!逃げたら承知しませんわよ!」と言いテレポートして向こうに行ってった。

 

40秒程経ち例の発火能力(パイロキネシス)を持っている能力者が倒されて、もう一人の男が乱暴に車に乗った。

奥には恐らくキレているであろう御坂美琴の姿が見える。

 

「おっ。バチバチしてる。」

 

車が発進し、御坂美琴がコインを打ち出そうと構える。

 

「3…2…1…」

 

瞬間、辺りを爆風が包んだ。道路は剥げ、車は一回転して鉄の塊となり地面に落ちる。

 

「あれが汚い花火ってやつか〜」

 

暫く経ち、三人組が警備員(アンチスキル)に連れて行かれた。騒ぎですっかり人の居なくなった公園を歩き、朱色に染まり始めている空を見上げる。僕の目の覚めた時間は夕方に近かったようだ。

 

「ここは本当に超電磁砲の世界の世界なのかな…」

 

あの八咫烏も居なければ、ずっと恨まされ続けてきた姉ちゃんも居ない。

多分specホルダーの居ないであろうこの世界で、これからどうすれば良いんだろう。

この能力は最強だという自負がある。しかし、この世界でその力を使う意味は一体何なのだろう。

復讐は真実を知ったお陰でやる気が失せているし、なにせこの世界の能力者と違って『成長の余地』という物が存在しないのだ。

 

「…これだけ考えられるってことは、僕も大人になったのかな?」

 

まあいいや、能力の使い道は今後ゆっくり決めよう。バレない内に此処からトンズラしないと…

 

「あ!居ましたわ!」

 

やっばい。見つかった。気づかない振りをしてそのまま前に進む。

 

「ほう?無視とは。貴方も良い度胸してますわね?」

 

白井黒子は急に目の前にテレポートしてきた。

 

「貴方一体何処の人ですの?怪しさしかありませんわ。こんな真っ黒な服装は学園都市の中でも中々見かけないですわよ?…聞いております?」

「聞いてる聞いてる。」

「じゃあ答えてくれますの?」

「そうだね…」

 

なんだか面倒くさくなってきたから名前だけ言っといてさっさとspecを使って撤収しよう。

 

「名前だけなら良いよ?」

「名前以外のことも聞きたいのですが…取り敢えず聞きますの。」

 

「僕の名前は一十一(ニノマエジュウイチ)、時を止めるspecホルダーだ。」

 

時が止まる。再び自分だけの世界が動き出す。帰路に就こうとする御坂美琴の姿が、爆発の残滓を連想させる炭の粒子が、夕方を知らせる太陽の光が止まる。そして、そこにニノマエはもう居なかった。

 

小軽い指パッチンの音が鳴り響き、時間が再び進み始める。

 

「時を止める?すぺっくほるだー?一体どういうこと―――って、何処に行ったんですの?ニノマエさん?」

白井は辺りを何回かテレポートしてニノマエの姿を探してみるが、見つからなかった。

「一体何者何ですの?ニノマエジュウイチ…」

 

 

 

白井黒子の目には探究心が芽生えていた。

 

 

◆◇◆◇

 

 

―――とある操車場、ニノマエはそこを生活の拠点にしていた。操車場自体は現役だが近くに管理室跡が丁度あったので使わせて貰っている。

あれから3日、現在は中古のテレビを弄ってインターネットに繋げられるようにし、この世界の情報(主に二次元)を調べている。

 

椅子がギシギシと鳴る音だけがカーテンの閉められた狭い室内に響く。

 

「お金と、住む場所、後は…特に無いかな…」

 

幸いお金はスキルアウトの方々からこっそり拝借()しているので問題ない。

今日も今日とてこの世界の事を調べていると、急に照明とパソコンの電源が落ちた。午前中に使うとブレーカーが上がっているのがバレてしまうので夜しか使えないから勘弁してほしい。

 

面倒くさいと思いながらも外に出る。壁に付いているブレーカーを上げ、管理室跡に戻る。パソコンも照明も問題なく点いてくれた。

再び検索サイトを開き、今度はこの学園都市について調べてみる。この世界のことは漫画では読んだことがないし、アニメ版も一話しか見ていない。登場人物と内容を少しでも覚えていた僕を褒めてほしいぐらいだ。(やっぱりけいおん!見てたからな…)

 

暫くパソコンと睨み合っていると、とある掲示板の書き込みに面白いものを見つけた。

 

幻想御手(レベルアッパー)…?」

 

 

時間は無情にも進んでいく。例え一時的に止めたとしてもその効果はシナリオに大きい影響は及ぼさない。

 

 

幻想御手編、開幕。

 

 

 

7月19日―――停止

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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