実況パワフルプロ野球 聖ジャスミン学園if   作:大津

14 / 72
第13話 旧友と仇敵と

『夏の甲子園大会、優勝はあかつき大附属高校〜!! 春のセンバツに続き、夏の大会も優勝!! まさに黄金時代です! レギュラーの野手陣は全員2年生、この大会でも大活躍した1年生投手の猪狩も更に成長を遂げるでしょう!! 今後、あかつきの牙城を崩すチームは現れるのでしょうか!?』

 

 テレビからアナウンサーの声が聞こえる。

 夏の甲子園大会。優勝したのは、大方の予想通りあかつき大附属高校だった。選手層の厚さ、恵まれた環境。どれをとっても、他の追随を許さない。

 

 俺たちはこのチームと練習試合をする。自分たちの存在意義を世間に伝えるための試合だ。相手は1年生中心のチーム編成という話だが、それでも脅威には違いない。相手は中学時代からスカウトをが目をつけているような、才能のある選手ばかりだ。それでも、なんとか互角以上の試合をしなくてはいけない。自分のためにも、仲間たちのためにも。

 

 ☆

 

 練習試合当日。俺たちはあかつきの1軍球場に来ていた。

 あかつき大附属高校の1軍は専用球場で練習をしている。甲子園の土と同じものを使用したグラウンド、屋内ブルペン、スタンドには観客席まで用意されている。プロ野球の公式戦が行われてもおかしくないレベルの球場だ。

 

 練習試合をするにあたり、あかつきサイドからいくつか条件が提示された。その1つがこちらがあかつきに出向き試合をする、というものだ。

 聖ジャスミンの地区からあかつきの地区までは結構遠いのだが、こればかりは仕方がない。他には、どれだけ点差がついてもコールドゲームにはならない、ベンチ入りの選手数に上限を設けない、といったことが条件となっている。おそらく入学してから基礎練習で体を作ってきた1年生選手を、試合で試したいということなのだろう。相手がベストメンバーではないからといって、決して試合が楽になったわけではない。あかつきの1年生ということは、全国で1番野球が上手い高校1年生ということなのだから。

 

 今日は俺たち以外にも、女子選手仲間ということで早川さん、高木さんがスタンドに来ている。この試合をセッティングしてくれた橘さんと六道さんも来るらしい。スタンドを見回していると、中学時代に取材を申し込んできた野球雑誌の記者やプロ野球のスカウトなどがちらほらといる。

 内野スタンドにはテレビカメラも来ている。聖ジャスミン学園の地元のテレビ局だ。東京のテレビの系列局ではなく、地元で独立で運営しているローカル局。朝から晩まで通販番組ばかり放送しているようなテレビ局だが、その宣伝力はバカにできない。このようなメディアを動かしてくれたのも橘さんたちのおかげだ。その恩に報いるためにも、勝利を目指そう。

 

 今日は勝森監督がソフト部での活動があり、来ていない。

「練習試合は野球部の命運がかかっている、どうしても私が行かなくては!」と粘ってくれていたが、学園長からの指示ではどうしようもない。監督は本来なら、ソフト部を優勝に導くために雇われているのだから。俺たちのことを案じてくれた監督のためにも、いい結果を報告したい。

 

 俺たちが球場についてしばらくすると、あかつきの選手たちがやって来た。

 先頭には猪狩 守。あいつもこの試合に出場するのだろうか? それ以外にも中学時代の同級生も何人かいる。猪狩と目が合うと声をかけてきた。

 

「瀬尾、久しぶりだな。やはりキミは野球に戻ってきたね。今日はボクが先発することになった。甲子園で活躍したボクが先発なんだ、胸を借りるつもりで挑んでくるといいよ」

 

 こちらの事情を知ってか知らずか、そう言い放つ。相変わらずだな。

 それに、正直驚いた。1年生のチームと聞いて、猪狩は試合に出るのか疑問だったが……。猪狩が先発となると、相当苦しい試合になるだろう。

 一応、試合の映像を見て研究をして来たが、どんな投手かわかっても打てるわけではない。狙っていても打てない、すごいボールを投げる投手なのだから。

 

 そんなことを話していると、

 

「あれ? 瀬尾じゃねーか。お前まだ野球やってたのかよ。あかつきをクビになったポンコツ投手がよ〜!」

 

 あかつきの選手の1人が俺と猪狩の会話に割って入る。

 

「滑川……!!」

「久しぶりだなぁ、おい。お前、女だらけの野球部でリーダー気取りかよ? かつてはあかつきのWエースの片割れだったお前が、落ちぶれたもんだなぁ?」

 

 そう言って笑みを浮かべる。

 滑川(なめかわ)(よう)。中学時代のチームメイトで俺たちの世代で1番の巧打者だった。一緒に野球をやっていた頃から、なぜか俺は目の敵にされている。

 

 言いたいことを言い終えたのか、滑川は歩きだす。すれ違い様に「お前の弱点は知り尽くしているからよ〜、俺相手に投げる時は気をつけた方がいいぜぇ?」と言い残し立ち去っていった。

 

 猪狩は「……あまり気にするなよ」と短く言って滑川に続いて歩いていった。

 

 その様子を見ていた太刀川さんたちは、心配そうな、それでいて少し怒っているような表情をしていた。俺は、「大丈夫、問題ないよ」と目で伝える。それを見て彼女たちの表情も少し和らいだようだった。

 

 俺が誰に何を言われようと、どう思われようとそんな事は問題じゃない。この試合で結果を出す。それが1番重要なことなのだから。

 

 試合開始はもうすぐだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。