実況パワフルプロ野球 聖ジャスミン学園if   作:大津

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2年目
第31話 2年目の始まり


3月末。

今日は野球部で視聴覚室を貸し切り、ある試合を観戦していた。

 

春の選抜高校野球、決勝戦。

あかつき大附属高校 対 帝王実業高校の試合。

スターティングラインナップは以下の通り。

 

あかつき大附属高校

1番 センター 八嶋

2番 ライト 九十九

3番 キャッチャー 二宮

4番 レフト 七井

5番 ファースト 三本松

6番 ピッチャー 猪狩

7番 サード 五十嵐

8番 セカンド 四条

9番 ショート 六本木

 

帝王実業

1番 ライト 下田

2番 ショート 村井

3番 サード 木下

4番 セカンド 蛇島

5番 ファースト 綾部

6番 レフト 上川

7番 ピッチャー 山口

8番 センター浦野

9番 キャッチャー 嶺

 

あかつきは「黄金時代」のメンバーが名を連ねている。

先発はエースの猪狩。

 

帝王のスタメンは地区大会で戦った時と同じ並び。

決勝までの全試合で山口が先発しているが、疲労の蓄積が不安要素となる。

 

「プレイボール!」

 

試合が始まった。

 

 

「ゲームセット!」

 

『あかつき大附属、優勝〜!!

先発の猪狩、決勝戦の舞台で快挙を成し遂げました〜〜!!!』

 

試合終了。

結果は14-0。

あかつきが圧倒的な力を見せ勝利した。

打線の破壊力はもちろんだが、その点差以上に衝撃的だったのは猪狩のピッチングだった。

 

9回を投げて無安打無失点、1四球。

試合終盤に与えたフォアボール以外では1人のランナーも許さない完璧なピッチングだった。

 

打撃陣はと言うと、3番の二宮から6番猪狩までがホームランを放つなど打棒が爆発。

特に4番の七井は広角にホームランを打ち分け2ホーマー、6打点と活躍を見せた。

 

「圧倒的でやんすね…」

「あの山口があそこまで打ち込まれるとはな…」

「うちの野球部より帝王の方が強くて、帝王よりあかつきの方がもっと、も〜っと強い……こんなの反則だみゅん!!」

 

あかつきのベンチにはまだ、2年生の控えや滑川と麻生たち1年のホープが控えていた。

スタメンも控えも、帝王とは選手層の厚さが違う。

 

「山口を引っ張ったのは失敗ね。

明らかに調子がよくないのに、試合が決まるまで代えなかったんだから」

「山口に続く投手がいなかったんだろうね…」

 

決勝戦まで残ったチームにこれだけの力の差があるのか…

今の2年生が最終学年になる時には、個々の選手の能力は更に上がっているだろう。

高校野球史上最強のチームになるのではないだろうか。

 

「もしも僕たちがあの舞台に立っていたら、もっとひどい負け方をしたのかな…?」

 

雅ちゃんの弱気な言葉を、太刀川さんが珍しく強い口調で諌めた。

 

「そんなことないよ!

打力では帝王に負けるかもしれないけど、投手力ではうちの方が上だよ。

あたしたちだったら、もっと拮抗した試合ができたはずだもん!」

 

…確かに投手力に関しては、俺たちは帝王に勝っているだろう。

だがそれでも、あかつきの打線を抑えられたとは思えない。

今は勝てない。

100回戦っても100回とも負けるだろう。

勝ちたいなら、俺たち投手陣がもっと力をつけるしかない。

相手を0点に抑えれば負けることは無いのだから。

 

 

4月。

入学式を迎え、学園内は新入生たちの初々しい笑顔が溢れていた。

 

「新入部員、入りますかねー?」

 

大空さんは素振りをしながらそうつぶやく。

聖ジャスミン野球部の部員は全部で9人。

戦略の幅を広げるためにも新しい戦力が必要なのは明らかだった。

 

「入ってくれたらいいけどね…」

部員が増えたら、キャプテンの仕事は更に大変になるだろうが、だがそれは嬉しい悲鳴なのだろう。

…本当に入ってくれないかな。

せめてベンチ入りを目指して競争があるくらいには人数が欲しいところだ。

 

と、そこに「た、大変ッスー!!」とこちらを呼ぶ声が飛び込んでくる。

 

「な、なんだ!?」

 

「みんな〜、入部希望者がいっぱいッスよ〜!!」

 

手をぶんぶん振りながら川星さんがこちらに向かって走ってくる。

彼女の後ろには 1年生とみられる体操服姿の男子生徒が十数人ついてきていた。

 

「おおっ!」

「すごいでやんすー!」

「キャプテン、挨拶するッスよ!」

「そ、そうだね。

じゃあ…初めまして、野球部でキャプテンをしている瀬尾 光輝です!

よろしくお願いします!」

 

『うおー!

ホントに女の子ばっかりだ!』

『みんな可愛いじゃん!』

 

野球部…と言うより女子部員に興味があるように見える新入生たちが、テンションを上げている。

 

「…この中に野球経験ある人っているかな?」

 

手を挙げる人が出揃うまでしばらく待つ。

…が、挙手をする者は1人も現れなかった。

経験者は1人もいないようだ。

 

「じゃ、じゃあ、予備のグラブがいくつかあるしノックでも受けてみる?」

 

『え〜…ボール打ちたいっす〜』

『ノックとか… マジないわ』

『しんどいのとか勘弁してよ〜』

 

「な、なんでやんすかコイツら…!

瀬尾君、オイラこんなやつらが後輩になるのはいやでやんす…!」

 

矢部君が内緒話をするくらいの声のボリュームでこちらに不満を訴えてくる。

だが、せっかくこんなにも人が集まっているのだ。

態度が気に入らないから帰れとはとても言えない。

 

「矢部君、我慢だよ我慢!」

そうやって矢部君をなだめながら、考えを巡らせる。

…彼らの要望を聞いた方がいいだろうか?

 

「そ、そっか…じゃあ俺が…」

 

そう言って俺がバッティングピッチャーを買って出ようとすると、太刀川さんと小鷹さんがそれを制止した。

 

「…瀬尾君、いいよ。

あたしが投げる」

「野球を舐めてるようなやつには一発かまさないとね」

 

ジャスミンの黄金バッテリーが位置につくと、おちゃらけた男子生徒が打席に立った。

 

『バッティングセンターと同じだろ?

女が投げる球なんか軽く打ち返してやるぜー!』

 

その生徒の友人と思われる生徒が『いいぞ!』『やっちまえー!』と囃し立てる。

 

「ちょっと…!!」

俺が注意しようと一歩を踏み出した、その時。

 

太刀川さんは全力でボールを投げ込んだ。

 

『う、うわぁ!!』

男子生徒は大袈裟に仰け反る。

 

「…ど真ん中よ?打たないの?

あんた、いろいろ言ってたわよね。

ねぇ、女の投げる球が…何だって?」

 

小鷹さんの眼光が男子生徒、そしてその仲間たちを射抜く。

 

「野球は遊びじゃないんだ。

危険なことだってあるし、怪我だってするんだよ。

君たちにその覚悟があるの?」

 

太刀川さんの言葉に入部希望者たちが後ずさる。

ああ…2人ともマジになっている。

こうなったら俺にも止められないぞ…

 

そんな中、入部希望者の誰かが、聞こえるか聞こえないかくらいの声で「女のくせに…」とつぶやいた。

 

「……何だとコラーー!!

ナメてんじゃねぇぞぉぉぉーー!!!」

 

その瞬間、大空さんが普段の穏やかな笑顔とは似ても似つかぬ、鬼のような形相で叫び声を上げた。

 

『う、うわぁーっ!!』

 

入部希望者が蜘蛛の子を散らすように去って行く…

 

「お、大空さん…?」

 

「ハッ……!?

な、なーんちゃって♡」

 

「あーあ…出ちゃったね」

「出ちゃったッスね…本性が」

「さすが番長だな…」

 

「番長…?

番長って……?」

 

「さ、さあ?

ミヨちゃん、わかりませんー♡」

 

ギロリッ!!

 

「ひいっ…!!」

 

今、大空さんがみんなを睨んだように見えたけど…

 

「瀬尾君?

どうかしましたかー?(ニッコリ♡)」

 

そんなはずないか。

 

「にぶいな…」

「にぶいッスね…」

 

「ねぇ…ミヨちゃん、あなたたちにちょっとお話があるんですけどー?」

 

「ひいっ…!?」

「ひいっ…!?」

 

「入部希望の1年生、1人もいなくなっちゃったね…」

この独り言のようなつぶやきに、小鷹さんは俺の肩に手を置きながら言った。

 

「まあ、いいんじゃないの?

うちの野球部は、少数精鋭ってことで」

 

小鷹さんの睨みと脅し文句も、あの人たちが逃げた原因の一つなんだけどな…

 

結局、新入部員は0人に終わった。

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