吸血鬼と魔法少女たち ※連載停止   作:眼鏡花

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どーにか復活…そして鏡…リアルが忙しいのはわかるけどさ…
久しぶりの投稿になるので、違和感が盛り沢山かもしれませんが、どうぞ。


吸血鬼のお見舞い

 

「…ここで合っていれば良いが…」

 

『いやいや、流石に居るでしょ。シグナム達の言ってた事を信じるなら、相当拙いみたいだから』

 

「…それもそうか」

 

 時間は大体午後一時を回った辺りだろうか。

 海鳴市のある病院の一室の前にて、少しばかり変わった服装をした男が一人。

 病人よりも病人らしい青白い肌の色をした長身痩躯に、黒いロングコートの上から白いフードローブをマントのように身に着けた銀髪赤眼の男。

 名をライネス・ヴェルバータと言う。

 というか、わからないのであれば病室の中にいる患者が分かるようになっているネームプレートを見れば良いだけの話なのだが、終始気が付くことは無かった。

 コンコンッ、と軽い音を立ててノックする。

 

「どうぞー?」

 

 返事が聞こえた。が、聞こえてきた声は、シグナムでも無く、ヴィータでも無く、ザフィーラでも無く、はやてでも無い―――ライネスの知らない女性の声であった。

 

「失礼する」

 

 言って、ライネスは入室する。

中には、見覚えのある少女が二人。見覚えの無い、金髪の若い女性が一人居た。

 

「あ…」

 

「あれ?確か、えーと、…ライネスさん?」

 

「あら?二人とも知り合いなの?」

 

「ああ、君とは初対面だ。お初に御目にかかる。私はライネス。ライネス・ヴェルバータだ」

 

「あ、どうも。私はシャマルと言います。話は皆から聞いていますよ、ライネスさん。それで、はやてちゃんに何か用でも?」

 

 にこにこと人畜無害の権化のような屈託のない笑顔を浮かべ、ライネスに挨拶をする女性―――シャマル。少しだけ笑顔を作って、ライネスはシャマルに挨拶をした。

 しかしこんな彼女でも闇の書の騎士―――ヴォルゲンリッターの参謀を務めているのだ。尤も、彼にとっては知っていようがいまいが些細な事だった。

 

「シグナムから彼女―――はやてが倒れたと聞いてね。少しばかり様子を見に来たのだよ」

 

「………そういえば、シグナムがそんな事言ってたな」

 

「迷惑かけて本当に申し訳ないなぁライネスさん…」

 

「何、私の物好きで来ただけだ。君が気に病む必要は無い上に、野次馬魂だったか?それに火が付いた様な物だ。寧ろ、軽蔑されても文句は言えんよ」

 

「それでも、来てくれたんは事実やし、私はほんまに嬉しいで?」

 

「それはそれは、恐悦至極。だが、その言葉は私にでは無く君の家族に言ってほしい」

 

 優しく頭を撫でながらそう促すライネスの声を、はやては不思議と懐かしんでいる様な、悲しんでいる様な、言い表せないが、まるで経験談の様にも聞こえていた。

 将来のとある部隊のリーダーを務めるだけあって、人の―――彼の場合は、まあ、人の姿をしているからだが―――感情を読む事の才覚は既に現れている様だ。

 

「君はあの時寝てしまっていたからな。知らないのも当然か」

 

「…それとなく馬鹿にされた気がする…」

 

「む、そのような心算で言った訳では無かったのだが…気分を害したのならすまない」

 

「いや、いい。気にすんな。そんな事一々気にしてたら身が持たないからな」

 

「そうか…ところで、だ」

 

 さらりと吐いた言葉の中に皮肉が混じってる様にも感じたヴィータがそれを指摘すれば、ライネスがそれを悪気が無いと返し、それを何事も無く許す。

 そんな平和なやり取りをしている最中、ライネスが話を切り出す。

 僅かに異物を孕んだかの様な空気に変わり、ピリピリとした肌を刺すような緊張感が場を支配する。

 それは、殆ど一般人と言っていいはやてですら、その空気を感じ取った。

 

「―――何かしら?」

 

「いや、大した用では無い…もうすぐクリスマスだろう?」

 

「…」

 

「……」

 

「………」

 

『はい?』

 

「は?」

 

 だが、しかし。

 その剣呑とした空気は。

 その空気を生み出した張本人によって。

 跡形も無く、ぶち壊されたのだ。

 

「いや、私の知り合いに言われたのだよ。クリスマスの時は親、ないしは年長者が目下の者の欲しい物をプレゼントする、とね」

 

「…緊張して損した…」

 

『は、ははは……』

 

 ヴィータの洩らした事実に、八神家のこの場に居る八神家の面々―――といっても、ヴィータを除けばはやてとシャマルしか居ないのだが―――乾いた笑いの下、内心首を縦に振らざるを得なかった。

 

「でも…そうやねぇ。こうしてお見舞いに来てもらっただけでも十分嬉しいし、気にせんでもええで?」

 

「ふむ…では、保留とさせてもらおう」

 

(クリスマスでプレゼントを渡す事は既に決定事項なんやね)

 

そう思いつつも嬉しく思えた彼女には、そうだと思い至り、ライネスに尋ねた。

 

「じゃあ、ライネスさんは何か欲しいものでもあるん?」

 

「―――欲しいもの…か。そうだね」

 

 目を瞑り、僅かに思案する表情になる。

 その時。

 真っ先に思い浮かんだのは―――友人達だった。

たとえ周囲から罵られようと、殆ど不可能な事と分かっていても、欲しいもの…いや、取り返したいものならある。

だからこそ、彼はこう言った。

 

「ああ、有るとも。だが、『欲しい』と言うよりは、私からすれば『取り戻す』の方が些か正しい気がするがね」

 

「へえー…正直、ライネスさんは吸血鬼には見えへんわ」

 

「褒め言葉と受け取らせてもらう」

 

 はやては、深く言及はしなかった。出来なかった、とでも言うべきなのかもしれない。

 話す際、まるで現実を認められない子供の様な顔をしていたライネスに何て言葉をかければいいのか迷った事もある。でも、それ以上に、直感的に、彼女には理解できた。

 これ以上深く聞くのは、ライネスを傷つける行為であると。

 

「ああ。それとだ」

 

 今度は何だと思いヴィータがライネスの方を見てやれば、彼の足元の影が不規則に歪んでいるではないか。

 

(コイツ!今までのは全部あたし達の注意を逸らすためのブラフ―――)

 

「ここに来る前に、翠屋という喫茶店に立ち寄ったのだが…想像以上に美味しくものでね?店のおすすめだったシュークリームを買ってきたのだよ。良ければ食べてくれたまえ。では、失礼するよ」

 

 影に手を寄せ、出てきた紙箱をベッドのすぐ傍にある机の上に置くと、ライネスはそのまま扉に手を掛けて病室から出て行った。

 

「………」

 

「…ヴィ、ヴィータ?そないな顔してどないしたん?」

 

「ヴィ、ヴィータちゃん、落ち着いて。ね?」

 

「シャマル…銀の杭って手に入るか?」

 

「え?」

 

「ヴィータ!?」

 

 と、まあ。ライネスが去った直後に一悶着あった訳だが、それはさて置き。

 こうして、ほのぼのとしたような、一人が胃の痛みを覚え始めた事を除いてしまえば、八神はやてという少女の視点からすれば、足の事さえなければ充実した平和な、少しだけSFファンタジーの混じったほのぼのとした日々であると言えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 病院から離れ、廃ビルの付近まで戻ってきたライネスとヘカトンケイル。

 ライネスとしては、午前中に翠屋で新しい友人たる高町士郎と、その息子高町恭也、食事会の際には友達らと出かけていて参加しなかった恭也の妹、高町美由希と話しつつ、食事会で言っていた得物を交える約束を年明けにでも実行しようと話してきたのだ。

 尚、美由希から試作品のケーキとしてコーヒーと練乳の入った甘いのやら苦いのやらよく分からないケーキをライネスが食べたり、士郎に『なのは』と呼ばれる娘がもう一人居る事を知ったのだ。

 ライネスは、『なのは』という名前を何処かで聞いた様な気がしていたのだが、生憎思い出すことは無かった。

 

「…さて。ヘカトンケイル、お前はどう思った」

 

『どうにも何も、その前に言わせて欲しいんだけど…いいの?あの子―――はやてちゃんにマスター、魔術掛けて来ちゃったけど』

 

「ああ、その事か。何、少しばかりの実験だよ」

 

『…外道』

 

「何とでも言ってくれたまえ。自覚はある」

 

 とは言いつつも、ヘカトンケイルはライネスがはやてに掛けた魔術の内容を大よそ看破していた。

 

(…とはいえ、マスターの実験は基本的にほぼ失敗しないって確信が出来てから実行されるから、運がよかっと言えば良かったね、はやてちゃん…にしても―――)

 

『それでもさ―――普通だったら体に直接硫酸を流し込む様な真似をするのは流石にどうかと思うよ?』

 

「あくまで、侵食に対してのみ効く物だったがね。侵食が魔力とはいえ部分的に実体を持っていてくれて助かったのも事実だが」

 

 要は、術者が不純物と認めた物を溶かす溶解液をはやての中に流し込んだようなものだ。

 とはいえ、その魔術は溶かす対象が魔術の発動対象の体内に存在しなければ意味を為さないのだ。

はやての体の事こそ考慮してライネスが作った魔術だったが、言い方を変えれば、ライネスが不純物と認めさえしてしまえば、対象の体内は内側から溶かされる事にもなり得るのだが。

 

『まあ、そうだけどね…所で、さっきから言いたい事が在ったんだけど』

 

「奇遇だね。それは私も―――」

 

 ライネスが言葉を紡いでいる最中、世界が、切り替わった。

 いや、切り替わったのではない。唯、指揮性のある魔力によって閉じ込められただけで。

 

「…結界か」

 

『毎度思うんだけど、魔法の方の結界ってすごく効率がいいよね。応用も聞くと思うし。ボクも見習いたいよ…』

 

「お前はその分強固なのだから気にする事は在るまいよ―――さて、私をどうするつもりかね?追跡者」

 

 そう言い終えたのとほぼ同時、突然何もない場所から現れた光る輪に拘束され、虚空に縛り付けられたように動けなくなった状況で、背後から青髪の仮面を付けた者が迫っていた。

 

「―――消えろ、化け物」

 

 仮面を付けた者が迫った勢いを殺さぬまま拳を突き立てようとしたが、それは防がれた。

 影の中に居た第三者―――ヘカトンケイルの巨大な手によって。

 

「な!?」

 

『痛ッ…』

 

「良くやったヘカトンケイル。それと、腕を切り落とされたくないのなら―――」

 

―――今すぐ戻せ。

 

 言った瞬間だ。拘束魔法―――バインドをさも何も無かったかのように力技で壊し、何時の間にと言わんばかりに右手に握られていた黒一色のハルベルトで―――炎を纏った横凪を、追跡者―――襲撃者に食らわせた。

 

「―――!!!」

 

 仮面が無ければ、さぞ驚愕に顔を歪めた素顔が拝めただろうなと、ヘカトンケイルは影の中から防御魔法をぶち壊されて吹き飛ばされた襲撃者を覗き見て、思った。

 

(それ以前に、あの炎。魔術じゃないんだよね…あのハルベルト自体も魔術で強化されてると言っても、対外だよねえ…)

 

 襲撃者に対して、僅かばかりに同情の念を捧ぐヘカトンケイル。

 ライネスが浴びせた一撃は、空気摩擦で炎を纏うほど、速く、速いという事は同時にそれだけ重い一撃だという事だ。

 だが、それはライネスからすれば本当に隙だらけであり、言うなれば力任せな一撃と呼べる。そこに技量を交えてこそ、ライネスの本領が発揮されるのだが、少し考えてもみてほしい。

人間の膂力では無く、吸血鬼―――人外の、西洋の鬼の名を冠する化け物の、力任せ―――言い方を変えれば全力とも取れる一撃を食らい、無事でいられる存在がある物なのか。

たかが一撃。されど一撃。

 すぐさま腕を引っ込めて助かったと切実に思う、五十顔百手の巨人であった。

 

「グッ…ぅ…」

 

 立ち上がろうとしていた襲撃者は、起き上がろうと腕に力を籠めようとするも、予想以上の一撃に力が入らず、再び這い蹲りそうになるのを、殆ど同じ見てくれをした者が支えた。

 

「大丈夫か?」

 

「…す…まな……い…」

 

 それだけ言って、一撃を受けた襲撃者からは言葉は聞こえなくなった。胸が上下しているので、一応息は有るらしい。

 

「悪いが、引かせてもらおう。お前の様な化け物になど付き合っていられるものか」

 

「君達が勝手に襲って来ただけだろうに…引くなら、早めに引いてくれたまえ。私は我慢強い方では無いのでね」

 

「…覚えておけ」

 

 そう言い残して、片にほぼ同じ見た目をした者を担いだ人物は、足元に魔法陣を出現させ、消えた。

 同時に、結界も消えたが、ライネスは難色を示した。

 

「…捕らえて、尋問でもすれば良かったか?」

 

『それ絶対尋問じゃ無くて拷問すれすれの脅迫だよね…』

 

 まあ、この一人と一体が気が付いたのは、病院の外に出る前から―――八神はやての病室に入ってからなのだ。闇の書を利用しようとする輩であるなら、このまま捕まえても何ら問題無い。いっそ、直接闇の書の騎士に渡すという選択肢もあったのだから。

 

「まあ良い。とにかく一度戻ろう。…それにしても」

 

『…どうしたの?』

 

 また何か場違いな事を言い出す事を経験則として察知したヘカトンケイルは、何となく分かりながらも、ライネスに尋ねた。

 

「…クリスマスプレゼントはどうするべきだと思うかね?」

 

『自分で決めなよ…それとさ』

 

「うん?」

 

 ヘカトンケイルは言葉を区切って、少しばかり―――いや、大分嫌みを込めて、ライネスに尋ね返す。

 彼のマスターたるライネスは「尤もだ」と笑っていたのだが。

 

 

 

『マスターが聖夜に人の事を思うなんて、皮肉な話だと思わない?』

 




ご指摘、誤字脱字、ここはこうした方が良い等あればよろしくお願いします。
…作者の片割れがお気に入りが三百件超えているのについさっき気が付いたというのは他言無用な方向で……
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