……今回、友人が二名発覚しますが、片方は賛否両論起こりそうだなぁ……
では、どうぞ。
……三人称で書いてるつもりだけど実質ほぼ一人称と変わらないからどうしたもんかと悩み始めました。管理局SIDEの事情とかあんまり分からないし。
「……今更な疑問だが、よくよく考えてみれば私が直接的に闇の書の騎士を手助けした事は無い……ああ、何という事だ。最低ではないか。メレかオーフェであればまた違っただろうに」
「ホー?」
<マスター、自らを卑下してどうしたのかね?>
十二月二十三日の、あと一時間で次の日を迎えるくらいの時間帯での事だ。
寝室として使っている部屋でベッドに腰掛けながらアモンの頭を撫で、ふとした拍子にライネスは誰に言うでも無くそう呟いた。
撫でられている側であるアモンは気持ちよさそうに目を細めながらも、僅かにその目に違う感情を宿し、否定するような鳴き声を上げた。
だがしかし悲しきかな。ライネスにはその意思表示が伝わっていないようである。
そして、今彼の言葉から出たメレ。オーフェというのも、彼の今亡き友人であり、同時に―――夫婦であった二人を。
メレ……本名はメレイドラ・スタデット。
オーフェ……本名をオーフェリンデ・スタデット。
ライネス自身も詳しい事は知らないが、当時復讐を果たしがらんどうになったライネスを救ったフェリアと親しくなり始め、ラズからハルベルトの師事を受け始めてすぐ、二人は彼の元を訪れた。
当時、ライネスはそれなりに有名だったのだ。但し、賞金首としてのという前置きが付くのだが。
それはさて置き。
何故、スタデット夫婦がライネスの元を訪れたのかといえば―――夫のメレ曰く、可能であるならオーフェにかけられた『呪い』を解いてほしいとの事だった。
その『呪い』というのが癖の強い物で、はっきり言ってしまえば、害自体は全く無い。寧ろ、掛けられた者に元々持ち得る寿命はどうにもならないにせよ、身体能力は
問題というのが―――外見だ。
ライネスは病的なほど青白い肌をしているが、あくまでこの『青白い』というのは比喩表現であり、本当に青い訳では無い。
しかし、呪いに掛かったオーフェは、そうはいかない。
本当に、肌が青かったのだ。
変化は肌だけに留まらず、目も白黒逆転した、瞳孔と髪は元の金色から変化は無く、頭からは捻じれた漆黒の角が、尾骶骨の辺りからはスペードの形を思わせる一メートル弱の同色の尻尾が生えていたのだ。
悪魔のような風貌、というのが率直な言い方だろう。
故に、それによって発生するモノは、説明するまでも無い。
ライネスは二つ返事でその呪いを解こうとしたが、待ったを掛けた人物が居た。
なんと、オーフェ自身だ。
『メレ……私は、この姿のままでいいわ。貴方は私の事を助けたい一心だったのでしょうけど、その心意気は私も同じよ。弓の名手である狩人の貴方は相手に近づかれると弱いでしょう? なら、この姿の方が貴方を守りやすいでしょう?』
『オ、オーフェ! でもそうしたら、君が……!』
『それにね、この姿になっても貴方は私を悪魔と蔑むのでなく、
メレは、この日ライネスの前にいるにも拘らず、涙を流した。
それは、自らへの憤りと、深い感謝の念が込められた温かい涙だった。
『すまなかった、オーフェ……僕は君が考えている事にさえ気が付かず、ただ一方的に、僕は……僕は……!』
『いいのよ、メレ。いえ、メレイドラ。貴方が気に病む必要がある事でも無いでしょうに。でも、そうねぇ……そんなに謝りたいなら、これからも、ずっと死ぬまで夫婦として、代わりなんて居ない番として、私を愛してくださいな。私だけの
『オーフェ……オーフェリンデ。ええ、いいですとも。これからも、僕達はずっと夫婦でいましょう、
『割ってはいる様で済まないが。要は、ミス・オーフェの呪いは解かなくても良いという事で構わないのかね?』
相も変わらずに場の空気を読まないというか、ライネスはそういう事を平気な顔で行い、スタンドデット夫婦は
そして、夫婦は行く当ても無かったので屋敷に住む事となり、後に続くように他の友人達も住みだしたのだ。
『ああ……伯爵殿。申し訳ない、オーフェに伝えてくれますか? あの日の約束、守れそうにないと……それと、貴方が無事で良かったです』
『そう……。あのお馬鹿さん……それは私の台詞よ、メレの馬鹿……ごめんなさいね、私達の最期の我が儘に付き合せちゃって……でも、貴方は生きなさい、鮮血伯爵。貴方の行く末を、メレと、皆と、見守っていますから』
「―――……すまない。私が行おうとしているのは、君達の安息を奪う事になるだろう。恨むなら、……恨んでくれたまえ」
「ホー?」
<やはり、過去の事か……>
「ああ。気にしないでくれ。少し、昔を思い出してね」
二人の最期を思い出し、真っ黒い感情が顔を出すも、使い魔に心配を掛けさせない為にもその感情を押し殺したライネス。
しかし、アモンは気が付けた。
深く、暗い。海溝の底よりも暗い闇とでも、狂気とでもいうべきものが、瞳に映っていたのを。
「…………ああ、そう言えば前日だというのにクリスマスプレゼントに何を渡すか考えていなかったな。ふむ……そもそも、何が欲しいか聞きそびれてしまったが……少々遅いかもしれんがマフラー等で大丈夫だろう。五人……いや、私の分も作って六人分としよう」
自らに言い聞かせるように、無理に頭の中の話題をすり替えるように言葉を発し、アモンの頭を撫でるのを止め、影から複数の毛糸を取り出し、マフラーを編み出した
十二月二十四日、午前七時半。
ライネスは、未だにマフラーを編んでいた。
「……ホー」
『どうしたのアモ……ン』
絶句。
ヘカトンケイルの五十の顔全てが、その表情に染まっていた。
「……む? お前達、どうしたのかね?」
ライネスはベッドに腰掛けたまま、五つ目のマフラーを殆ど完成させていた。両端に何やら毛糸に見合わない豪華なものが付いているのは兎も角。
完成は、させていた。全て同じようにチェック柄であり形も、崩れている訳でなく、寧ろ商品として売りに出してもそれなりに売れそうな出来栄えである。
だ、が。
『マスター、それマフラーだよね?』
「……それ以外に何に見えるのかね?」
『だったら、さ。一つ二メートル近くもする長さにしなくても良かったんじゃないかな!? マスターははやてちゃんたちをミイラみたいにしたいの!?』
「いや、長い方が多く巻けて、寒さを防げると思ってな」
「…………ホー」
<呆れてものが言えん……>
朝っぱらから、ライネスのプレゼントによってこんな問題が発生するなんて、誰が考えただろうか。
いや、察しが付いたとするなら、使い魔達は察しが付いたかもしれないが、問題無いと踏んでいたのだ。
『ボク、彼是百年とちょっとマスターの使い魔をしてるけど、未だマスターの事をはかり損ねてたと今痛感したよ……』
「それは褒めているのかね?」
『貶してるんだよ! 今の絶対分かって言ったでしょ!?』
一日徹夜のライネスに、ヘカトンケイルは三時間に及ぶ説教をするも、本人に悪気が無かった事に加え、本人の気質からして、結局は柳に風の結果であった。
尚、どうでもいいかもしれないし、そうでないかもしれないが。
はやてには黄色と黒色の、金製の三日月のアクセサリーが付いていて。
シグナムには黒色とピンク色の、片方だけにルビーをどのように加工したらそうなるのか分からない鷲のアクセサリーが付いていて。
ヴィータには赤色と朱色の、片方だけに銀の巨大な牙を交互に重ね合せたようなアクセサリーを。
シャマルには緑色と黄色の、片方にだけエメラルドで出来たアイリスの花が。
ザフィーラには紺色と灰色の、片方にだけサファイアで出来た三本爪の付いた盾が。
また、全て壊れないように、或いはアクセサリーが外れないようにライネスが愛用しているハルベルト並みに幾重にも魔術が掛けられ、下手な攻撃ではもしかすると反射できてしまうかもしれないほどの、最早マフラーの皮を被った何かになった事にヘカトンケイルが気付き、説教の時間が一時間程度伸びたのだが、まあどうでもいい話だろう。
因みに、ライネスのマフラーは赤色と黒色の二色に、ガラスのスターチスが両端に付けられていた。
「包装は……この位でいいか。時間もまだまだ在るが……早めに行くとしよう」
『え? 少し早すぎじゃあ』
時計こそ置いて無い物の、ヘカトンケイルの言う通りだ。
時間は六時半位だ。とはいえ、時期が冬の真っ最中という事もあり、日が沈むのはとても早い。
「包装の紙を買いに行った時に聞いた話なのだがね。病院というのは、時間の縛りが強いらしい」
『グルルルルルルル……』
<オイマスター、また食い物食いに行くのか?>
『アジ・ダハーカ、違うから少し待って。へえ、そうなんだ。ボク達も付いて行った方が良い?』
三頭を持つ悪竜の愚問をヘカトンケイルが流し、尋ねる。
それに対し、ライネスは首を横に振った。
「構わんさ。それに、だ。偶には私の目の届かぬ場所で、自由にしてみたいと思う事もあるだろう?」
『―――それって、まさか……』
「なに、お前達の為でもあるが、『嫌がらせ』も含めての行為だ。今日は私の事を気にせず、自由に過ごせと伝えて置け。ああ、生殺与奪の類の事は行うなと念を押しておいてくれ。朝方までには戻るようにとも伝えて置いてくれ。分かったな?」
『も、勿論だよ! ほら行くよ、アジ・ダハーカ!』
『グルオォォォ!!!!』
<言われなくとも分かってらぁ!>
こうして、ライネスの使い魔達は明日の朝まで自由に過ごせる事となった。
どうでもいいが、朝までに戻った使い魔達は四十二匹中二十一匹であり、後日ライネスが溜息と同時に殺気をダダ漏れにしていたのは、余談だ。
「……さて、体を変える必要も無いだろう」
ライネスは一人ごちて、夜道を歩く。
コートにフードローブ、徹夜して作った自らのマフラーを首に巻き付け夜道を歩く姿は、何処かもの悲しさを思わせる。
これで空に雲がかかっていれば近い内に雪が降っただろうが、生憎空には雲一つない、月と星が輝く漆黒の空が在った。
「……ああ、そう言えばあの日もこれほど寒かったな」
ふと、昔の事を彼は思い出した。
珍しい事に、イギリスで雪が降った日の事だ。
ライネスとシェリア。
その日は二人で買い物を楽しむ予定だったのだが、本当に珍しく雪が降った。
ライネスは年がら年中黒い、ゆったりとした上下で過ごして居たが、シェリアは薄手の格好であった。
それ故、ライネスが後日にしようと提案したのだが、シェリアはそれを蹴って買い物をする事になった。
とはいえ、やはり寒いのか肌を白くさせ、両手を口元にやって温めていた。
ライネスがシェリアの隣を歩いていると、シェリアは僅かに躊躇ってから、彼の腕にくっ付いたのだ。
驚いたライネスの眼を見ようとせず、シェリアはぽつぽつと小声で語る。
『貴方は吸血鬼だから風邪を引かないでしょうけど、私は純然な人間なのよ―――あ、ああ、泣きそうな顔をしないで! 嫌みで言った訳じゃ無いの。唯その……』
―――こうしてた方が、私も貴方も温かいでしょう?
「……シェリア」
愛しき妻の名を、ライネスは噛み締めるように呼ぶ。
されど悲しき哉。答えるのは人通りの少ない道の薄暗い電灯の光の瞬く音のみ。
ライネスの隣を歩く彼女は、既にこの世に居ない。
共に寄り添い、二人で歩く事は、今は叶わない。
(……いや、今はその事を考えるな。クリスマスプレゼントを渡しに行かねば。過去に縋るのは、その後だ)
思考を切り替え、鉄仮面を被ったかのような無表情で夜道を歩く。
無心で歩く事、十分。僅かに人が歩いている姿がチラホラと見受けられるようになり、もうすぐ病院だと思っていた。
「……どうやら私は最近で言う所の『巻き込まれ体質』とやらでも持ち合せているのかね?」
気が付けば、結界に閉じ込められていた。これで三度目だろうか。
しかし、これまでと違う点を挙げるなら、結界を使った本人が姿を現さない。尤も、それが普通なのだろうが。
感じられる魔力は二つ。しかし、近くにある魔力よりも、遠くにある魔力の方が圧倒的に上であった。
「……む?」
「――――――!」
「―――――」
「――――!」
それほど遠くない場所から、少女程度の年齢と思しき声が三つ聞こえる。
それも、何たる偶然だろうか、はたまたライネスが忌み嫌う神の悪戯なのか。
ライネスには、三つの声に、覚えがあった。
「前言を撤回しよう。私だけでは無く、彼女達『も』だ」
呆れたような苦笑いに鉄仮面だった表情を染め、声の聞こえた方へ歩き出す。
やはり、そこに居たのは―――
「やはり君達か、すずか、アリサ。それに―――なのは、だったかね?」
『え―――』
ここ最近はよく会うようになった二人の少女と、半年ほど前に一度、顔を合わせた程度の認識であった茶髪の、今現在は白い可愛らしい服装に、機械的な杖を持って二人の前で構えていた少女、なのはであった。
誤字脱字・ここはこうした方が良い等あれば、是非ともよろしくお願いします。