吸血鬼と魔法少女たち ※連載停止   作:眼鏡花

3 / 16
うーん。英語訳…アレであってるだろうか…?
ご指摘等あればよろしくお願いします。


吸血鬼の気まぐれ

「……む?」

 

 雲一つ無い空に沈み掛けの太陽によって赤く見える空の領土を、昇り掛けの綺麗な三日月が夜という黒を持って支配しようとしているように見えた、とある日の事。

 掃除を無事に終え、その際にこの建物に未だ水が通っている事が判明してから早数週間。時空管理局に見つかる事無く、ジュエルシードの様な物が再び見つかることはまず無いだろう、と考え直し、この地から離れ館に戻ることを数日前から考えていた。そんなある日。

 ビルの屋上にて―――管理局にばれてもおかしくは無かったのだが、単純に運が良かったのである―――思考に没頭していた彼がふと思考を打ち切り、出来心からビルの屋上より地上の様子を眺めていた―――彼からすれば、高々三十メートル下の出来事は手に取るように見える―――そんなある日。

 あり大抵に言ってしまえば―――彼の見ていた矢先で紫色の髪の少女と金髪の少女がいきなり黒一色で塗りつぶされたワゴンカーに無理矢理乗せられ、そのまま連れて行かれたのだ。

 どこからどう見ても、まごうことなき誘拐である。

 

「どれだけ時代が進もうとも、下卑た考えを持った人間は存在する、と言う事か…」

 

 彼―――ライネスはその言葉と同時にビルの中に入り、自らが使っている最上階より一つ下の階に移動した。

 丁度その階を守っていたのは、彼が最も信頼し、それと同時に他の使い魔たちの中でも特に別格の強さを誇る六匹の内の四匹。

 

「―――ベアード、レオ、アジ・ダハーカ、アモン。手伝ってほしいのだが、構わんかね?」

 

 唯聞くだけで身体が地に沈んでいくような、そんな表現が妥当な声色で、彼は使い魔たちに聞いた。

 

―――誰だ、マスターの怒りを飼うような真似を仕出かしたの…

 

 この時、彼らの中でこの考えが一致し、これから会いまみえる事になる事は確定的な人間たちに僅かながらにも同情してしまった。

 

「グオウ!」

 

 ベアードは一鳴きし、それを肯定した。

 

「……」

 

 背中から骨や内臓が見えてしまっている程に腐敗が進んでいるものの、それを感じさせないほどの力強い眼をしたライオンの使い魔―――レオは、唯首を縦に振り、ベアードと同じく肯定。

 

『グルルルルル…』

 

 数メートルはある巨大な爬虫類の体、茶色と灰色の鱗、蝙蝠のような翼、両腕の持った鋭い鉤爪に、長い尾を持った、いかにもドラゴンらしい外見に、頭を更に二つ―――つまり三頭三口六目。

その名はゾロアスター教に登場する、悪の怪物の名を冠する『タイプ・キメラ』―――アジ・ダハーカはその三つの口から唸り声を上げつつ、頭を縦に振った。

 

「……ホー」

 

 最後に、アモンが鳴き声を上げ、首を振った。ただ、その鳴き声には若干ながら呆れと諦めの念が混じっているようであった。

 

「…よし、では行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、アンタら! 放しなさいよ!」

 

「あ、アリサちゃん…」

 

 場所は移り変わって、海鳴の何処かにある廃墟。ロープでぐるぐる巻きに縛られ、適当に転がされている少女二人の内の一人―――アリサ・バニングスは、誘拐犯に食って掛かった。もう一人―――月村すずかは、アリサを落ち着かせようとしている。

 

「うるせぇお嬢様だなー? 君さー、今自分が置かれてる状況、分かってんの?」

 

 誘拐を実行した、スーツを着込んだ男は嘲笑うように、げらげらと下卑た声を隠そうともせず、そう告げる。一緒に居た数人の男たちもついで、げらげら、げらげらと笑いだす。聞くに堪えない、嫌悪感と不快感だけを心の底から引きずり出してくるような、そんな笑い声が誰もいない廃ビルに響き渡る。

 

「ぶっちゃけさー、君たちのおとーさんとかおかーさんとか快く思って無い人が居るわけよ。だから―――嫌がらせにその子供を拉致って一生もんの傷でも付けて来てくれー、てわけで俺たちにお呼びが掛かった訳なんだわ?」

 

「ヒッ…」

 

「…すずか、大丈夫よ。そんなこと言う馬鹿に限って、そんな事出来やしないから」

 

「―――へぇ。じゃあ、君からヤっちゃうか」

 

 男がそう言うと、アリサの服の胸元を掴み、無理矢理引っ張って、服を破いた。

 びり、と布が破ける音と共に少女の着用していた下着が露わになる。

 

「きゃあ!?」

 

「アリサちゃん!」

 

「ほらほら、さっきまでの威勢の良さは如何したんだい?」

 

 びり、びりびり、と更に服が破かれ、服によって隠されていた素肌がどんどん露わになってゆく。男たちは気持ちの悪い笑みを隠そうともせず―――そしてとうとう彼女の下着に手が付いた。

 

「い、嫌…」

 

「だいじょーぶだよ、だいじょーぶ。―――痛く無いように善処はするから」

 

 アリサが涙を湛えた瞳でそう言うも、男は聞く耳を持たずにアリサの下着をはぎ取ろうとした直後の事だ。

 カツン、カツン…と、何処からか足音が聞こえてきたのだ。しかし、その音源は遠い。

 

「―――They are foolish persons.(愚かしい者達だ)」

 

 流暢な英語で、その言葉が発せられた場所を男たちは見た。

 場所は自分たちの後方。三十メートルほど離れた場所に立つ、白いフードローブを着た男を。

 

「悪いけど、外国語分かんねーんだわ。あと、こんなとこ見られたからには―――死んで貰うしかないんでー、死んでくださーい」

 

 

 アリサの服を毟っていた男がライネスを嘲りながら懐から黒光りする金属の塊―――拳銃を取り出し、そのまま発砲する。だが、狙い打ったはずの男からは血の一滴すら出ておらず、彼が崩れる事も無かった。

 

「Did you come out to that extent and think that I could be killed?(その程度で私を殺せると思っていたのかね?)」

 

 全く効いていない。彼のそう言う意味が込められた言葉を理解できていたのは、恐らくアリサとすずかのみだ。

 

 彼が自らの影に手を翳す。足元の影が蠢くと同時、影の中からライネスの使い魔たち―――ベアード、レオ、アジ・ダハーカ、アモンが男たちに襲いかかった。

 

『グルアアアアァァァ!!!』

 

「な!?バ、バケモンだ!」

 

「に、逃げろ!オレはまだ死にた―――」

 

 ―――くねえ、と取り巻きの男は最後まで言えなかった。その代わり、バァンと、水風船が割れるようにして、男は全身から血を吹き出し絶命した。

原因はライネスが最も得意とする―――水の魔術によって、『体内の水分を』操られた結果、血液が逆流。後は言わずもがな、である。

 

「ヒィ!? た、助け―――ぎゃああああああ!?」

 

 また一人。ベアードによって押さえつけられ、そのまま腹の中身を貪られ、その痛みに耐えきれず。

 

「い、嫌だ! 死に……ぁ」

 

 今度はレオに首を噛まれ、そのまま『ゴキリ』と折れる音と共にその命を終わらせ。

 

「は、はは……。そうだ、これは夢だ。そう、ユメ―――」

 

 そこまで言って、滑空しながら襲いかかってきたアジ・ダハーカによって血痕すら残さず丸呑みにされ。

 

「く、来るなぁ! 殺しちまうぞ!―――ぇ」

 

 この男は、アモンに対しサバイバルナイフを向けていたが―――単に相手が悪かった。気が付けば、額に穴を開け、死んだことすら気付かずに絶命した。アモンの嘴には、血がベッタリとくっ付いている。

 

『……』

 

 少女二人はその残虐極まり無い光景を見せつけられ、意識を失う事も許されず、唯震えているだけだった。

 

 ライネスは自らの使い魔たちによって起こされている大虐殺を気にも止めずに、少女達に手を出した男に接近する。

 

「そ、そそ、それ以上近づくな!こいつがどうなってもしらねえぞ!」

 

 男は拳銃を少女の一人アリサの蟀谷に押し付ける。

 

「A snob -- It is to turn such a thing to a still young girl.(俗物が…女性にそんな物を向けるとは)」

 

 ライネスは口調は冷静だった。あくまでも、冷静―――冷徹であった。

その声を聴いた使い魔たちは、一目散に逃げるように、彼の影の中に飛び込んだ。

 

 ライネスが歩みを止めると男は自分の方が優勢だと思ったのか、手にしていたそれをライネスに向けようとした。

 ―――その瞬間男は冷たさを感じた。まるで、氷に包まれるかのような、そんな冷たさ。それがどんどん足元から昇ってくるようにして、今は腹辺りまで冷たい。

 

「!!」

 

 男がやっと自分の置かれた状況に気づいたようだった。足元からどんどん凍らされていたのだ。

 

「う、嘘だ……ろ……ぉ―――」

 

 男は声をあげようとした直後、一気に凍りつく速度が速まった。

 ―――間もなく、人間で出来たオブジェが出来上がった。それと同時に、一人の人間の生が終わりを迎えた。

 そして彼はオブジェに、影の中に入れ―――オブジェは、使い魔たちが欠片も残さず食ってしまう事であろう―――そのまま少女達に歩み寄る。

 そして、もう大丈夫だ、安心していいと伝えようとして―――。

 

「―――す、すずかに手を出すな!」

 

「ア……リサちゃん?」

 

 ―――酷く、拒絶された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(当然か……)

 

 口には出さない物の、一人であるなら溜息を吐いていたであろう彼―――ライネス。見ていた傍で誘拐された少女二人を助けようと、こうやって行動していたわけだが……。

 思考を切り上げ、改めて前を見据える。そこには、服を破かれ、下着や素肌が晒された金髪の少女が、後ろでへたり込んでいる少女を守ろうと立ちふさがっていた。―――まるで、姫を守る騎士の様に。

 原因はわかりきっている。使い魔たちと共にあんな理解の外にある現象で、惨たらしい事この上ない事を仕出かした男が目の前に居るのだ。安心できる訳が無い。

 だが、同時に思った。

 

「―――君は、強い子だな」

 

「え?」

 

「…失礼、考え事が口に出ていたようだ。更に言えば、私は君たちに害を為す気は無い。その口が言うと思うかもしれんが、安心してくれ。それと―――」

 

 そこまで言って、彼は再び少女らに歩み寄る。アリサは涙目になりながらも、腕を広げて、すずかを守るように彼の前に立ちはだかっていた。

 

 だが、それも気苦労で終わる事となる。

 バサッという音と共に、アリサの視界が白く塗りつぶされる。

 

「きゃあ!? な、何すんのよ!」

 

「着たまえ。時期が時期とはいえ、流石にその恰好は不味いだろう?」

 

「―――あ」

 

 夏に突入したばかりとは言え、半袖で過ごすにはまだ少し肌寒さを感じる中途半端な時期。故に彼は、単なる心配で自らが来ていた白のフードローブをアリサに掛けたのだ。

 

「あ、ありがと…」

 

「何、気にすることは無い。…寧ろ、済まなかった。あのような光景を見せてしまって」

 

『……』

 

 再び、少女たちは固まった。正直な話、彼女らはこの場で殺されるんだろうな、と幼きながらに諦めていたのだ。故に、まさか謝罪を受ける事になろうとは、全く持って、思いもしてなかったのである。

 

 さらに言えば、もう一つ理由があった。ライネスの姿だ。

 死人の様に青白い肌、額を隠し肩位まで伸びた銀髪に整った顔立ち、左の耳朶には六芒星の形をしたアクセサリーがぶら下がっている。

 だが、最も彼女らの目を引いたのは―――その眼だった。

 あかく、赤く、紅い。鮮血よりも紅い真っ赤な双眼。その眼に、まるで引き込まれるかのような印象を受けていた。

 

「……大丈夫かね? 先ほどの事を引きずっているなら、忘れさせることもできるが…」

 

「だ、大丈夫、です」

 

「こ、こっちも大丈―――あれ?」

 

 ガクリ。と、膝から崩れ落ちるようにアリサは倒れこんでしまった。すずかはどうやら腰が抜けて立てないらしい。

 が、ライネスはそれを受け止めるようにして支え、ポフッと擬音表現を用いても問題無い程に軽く、受け止められた。

 

「あ、アリサちゃん!」

 

「ふむ、どうやら疲れが一気に回ったようだな。…ああ、無理はしなくて良い」

 

「だ、大丈夫よ。それに…」

 

 そこまで言って、無理に立ち上がろうとしたアリサは立ち上がろうとするのを止めたが、言葉を区切り、今まで聞いていなかったことを、ライネスに聞いた。

 

「まだ、アンタの名前、聞いて無いじゃない」

 

「……成程。失礼を重ねて申し訳ない。私の名は、ライネス。ライネス・ヴェルバータと言う。吸血鬼……と言えば通じるかね?」

 

「な……っ、あ、あたしはアリサ。アリサ・バニングスよ」

 

「わ、わたしは月村すずかと言います…その、助けて貰って、本当にありがとうございました!」

 

 アリサはその顔に驚きの表情を作るも、すぐにその顔を崩し、すずかも緊張しながらも、しっかりと自己紹介をした。

 同じ場所にて、一方的な虐殺が発生したとは、とてもでは無いが思えないだろう。

 

「―――何、気にすることは無い。早く電話を掛けると良い。両親が心配している筈だ」

 

「あ、ありがとうございます…えっと、ライネスさん」

 

「む、何だね?」

 

 ここで何故自分に用があるのか、とライネスが一人思考を開始するよりも早く、すずかは言った。

 

「わ、わたしは、何のお礼もできません。ですから―――今度、わたしの家に来てもらえませんか?ちゃ、ちゃんとお礼がしたいんです」

 

「ちょ、ちょっとすずか!?何言ってんのよ!こんなときに―――」

 

ライネスは彼女の申し出について少し驚いた様子だ。が、それもそうだ。再度言うようだが、理解の外にある現象を使い、あれだけの虐殺をした怪物が、目の前に居るというのに。

 それ故に、彼は驚き―――その顔を微笑ませた。

 

「ふっ……面白いことを言うな、君は。―――良いだろう」

 

「え……?」

 

 アリサは予想外の彼の反応にキョトンとしていた。断られる事を前提にしていたのだから、ある種当然とも言えるのだが。

 ゆっくりとアリサを地面に降ろしながら、彼は訪ねた。

 

「む? 何だね? その意外そうな顔は? では仮にだが、私が望めば君は血を飲ませるとでも言うつもりかね?」

 

 吸血鬼に血を吸われた人間は、運が良ければそのまま吸血鬼になれる。なってしまう。が、アンデッドになってしまう可能性の方が限りなく高い。

 それは、ライネスのような長く生きた吸血鬼でない限りは、日の下で暮らせなる事と同義であり、更に言えば―――

 

「そ、それは……」

 

「……いや、今のは失言だったな。言いなおさせてもらおう。―――是非ともお願いしよう」

 

「――――は、はい!」

 

 ―――今の発言には彼個人の私情が混じっている。

彼は一度人間の血を吸ったことがあり、その際の味を今でも忘れる事が出来ない。吸えば吸うほど止められなくなる。彼にとって血とは麻薬のような物だ。

 そして―――彼は恐れているのだ。もしも、自身の友人を、愛した妻を蘇らせられた場合、彼らの血を自ら求めてしまう事を。

 彼女が答えたあと彼は続けて言った。

 

「尤も、私とこれ以降は会うことはないかもしれないが」

 

「……で、でもそれじゃあお礼が……」

 

「そう気にすることもない。寧ろ、謝罪をしなければならないのはこちらだ。申し訳なかった。そして―――礼を言わせてもらおう。おかげで、今の人間のことを少し知ることが出来た」

 

「……え?」

 

「それってどうゆう……」

 

 その発言の意味を尋ねようとした二人であったが遠くから「すずかー!!」「アリサー!! 居るなら返事をしてくれー!」と、彼女らの姉と父の声が聞こえてきたため、その意味を聞くことが出来なかった。

 その声に反応して声が聞こえた方を向いた二人。

 

「おや、ご両親が来たようだ。……では、私はこれで―――」

 

 ライネスはそう言うのが聞こえて、二人そろって彼の方を向いたが、彼が立っていた場所には誰も居なかった。

 

 

 

 

 

 

「す、すずか。これ、どうしよう……」

 

「ど、どうしようか……」

 

 そう言って、アリサは今は自分が来ている―――と言うよりは袖もだぶだぶで、立っても丈もどうにか地面に付いていないくらいだったが―――フードローブの事をすずかに聞いた。が、すずかもアリサと同じ様に悩みこんでしまった。

 

「いつか、絶対に返さないと……」

 

 アリサはそう呟いて、彼が立っていた場所を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼が住み着くビルとはまた違うビルの屋上にて、一旦体を戻した彼は、思い出すかのように言っていた。

 

「いつの時代にも汚れた人間はいるものだ―――まあ、それも仕方が無い事か。いつの時代も、欲に溺れた愚か者の結末は―――滅びと相場が決まっている」

 

 だが、と言葉を区切り、自らの前に立ち塞がった金髪の少女を思い出し、僅かに微笑んだ。

 

「―――時が経っても、彼女のような友人思いの少女もいるのだな」

 

彼はそう呟くと彼はまた体を霧に変化させ、自らの住むビルに向かい、ここを後にした。

 

 

 

 

 

 




誤字脱字等あれば、ご報告をよろしくお願いいたします。


2012.10.15 ご指摘があったので、加筆、修正を行いました。…これで、大丈夫か?

2013.4.10 修正しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。