結構グダグダで、内容も薄いような仕上がりです。閑話的話ですので、飛ばしてもらっても結構です。それではどうぞ by眼花
海鳴の中でも、電灯すら碌に立っていない上に、廃ビルなどが乱立していてそこだけ見てしまえばまるでゴーストタウンの様な印象を受けてしまうほど人通りのない夜道を歩く影が三つ。
先頭を歩くのはこの夜に買ったばかりの服を着込み、左耳には六芒星のアクセサリーがぶら下がっている整った顔立ちの銀髪赤眼長身痩躯の男―――ライネス。
その後方五メートル程の距離を歩く影は二つ。片やピンク色の髪をポニーテールにした凛々しい顔をして、右手に鞘に収まった長剣―――デバイスであるレヴァンティン―――を持つ―――烈火の将シグナム。
片や赤髪で背の小さめの、長い髪を二つの三つ編みにし、肩に担ぐように柄の長いハンマー―――こちらも前記としたレヴァンティンと同じく、デバイスであるグラーフアイゼン―――を持った―――鉄槌の騎士ヴィータ。
だが、戦いが終わった後からライネスに来いと言われ、三人揃って終始無言だった為、中々に重い空気が発生していた―――
〈…なあシグナム。結局あたしらも付いて来ちまったけど、本当に大丈夫なのか?〉
〈恐らくは大丈夫だろう。それに、私よりも上の戦闘能力に加え、お前が相手にした使い魔を同時に相手にすることになるのは出来るだけ避け―――〉
―――と思いきや、そんな中でも実は会話を行っていたりする物であった。
「ふむ、何かしらの会話、或いは意思相通の手段を持ち合わせているのかね?」
「…何の事だ?」
無表情のまま表情を変えないシグナムは、内心舌を巻いていた。判断能力に長け、使い魔も相当な強さを誇り、戦闘能力は自身より上。しかも戦闘に関しては息を乱す所か―――汗一つかいていなかった。
しかも、ただ無言で彼の後ろに着いて来ていた筈なのに、ライネスは彼女達の顔を一瞬横目で見て、その疑問を投げ掛けたのだ。
「いや、勘違いならば良いのだがね。どうも先ほどから私が話しかけてもいないのにも拘らず、表情が変化していたのだよ。…ああ、別に気にしなくて良い。似た様な手段なら一応ながら私も持ち合わせているのでね」
「ふーん…そういえば、今更な質問かも知れねえけどよ。…お前、肌が白過ぎやしないか?それじゃあまるで―――」
「―――死人の様…かね?」
「…ああ」
ヴィータはその質問をやや否定気味の声で返答した。無理は無いかもしれない。現に、そう思った相手はちゃんと動いているし、話してもいる。けれども、寝具の上などに寝転がってしまえば、もう二度と起きないのではないかと言うほどに彼は青白い病人のような肌をしていた。
「その質問の回答だが、吸血鬼だからと言えばわかるかね?」
「吸血鬼…?」
ヴィータはいつしかの少女たちの様に疑問を露わにしていた。シグナムも声にこそ出しはしないが、何だそれは?と疑問を膨らませていた。
「その反応からすると君たちはこの世界の住人ではないのかな?この世界では結構有名なのだがね」
「その反応からするに、私達以外のこの世界から来た人間を知っているようだが?」
「ああ知ってるとも。もっとも、時空管理局の者と少し話した程度だがね」
「ほう…」
その言葉を聞いて疑問を抱いていた。ヴィータに関して言えば、目を瞑って「んー…きゅうけつき…キュウケツキ?」等とブツブツ言っている。
シグナムはシグナムで「きゅうけつき…九傑貴?九人の英傑の事か?」と小声である意味彼女らしい事を言っていた。
シグナムの発言が諸に聞こえていたライネスは、変な誤解がこれ以上増幅されるのを防ぐためにこの話題を切り上げる事にした。
「なに、今それほどまで考え込む必要はないよ。…そうだね、後で君たちの主人に聞くといい」
「…分かった」
ヴィータは彼の言ったとおり解決しなかった疑問を胸の奥にしまって後で主に聞いてみようと思った。シグナムは「私の考えで当たっていてくれ…」などと言っていた。
これには流石のライネスも引いた様だ。ヴィータも「悪い癖が…」と頭を少し俯かせ押さえていた。
そして、突如としてライネスが歩みを止める。当然、良くあるパターンの様に彼女らが彼の背中にぶつかったりする筈も無く、彼は自らの住居を見て言った。
「ここが一応だが、私の住居だ」
二人揃ってライネスの示した場所を見た。彼が示した場所は廃墟となったビルだ。見た所七階建てのビルで、窓ガラスは所どころ抜け落ちたり、割れたりしていて何年間も管理されていないことが窺えた。
「汚くて申し訳無い。それと、入る前に忠告しておこう。―――私が合図をするまでは、決して私の後ろより前には出ないでくれ」
「―――あ、ああ」
シグナムは予想とは少し違った住居に困惑しながら返事をした。彼女のイメージ的には自らの主と彼女達が住んでいる物と大体同じような感じだったので、こんなにもボロボロな建物に住んでいるとはとてもじゃ無いが予想していなかった。
「ん?どうしたのかね?」
「…い、いや。ただ、貴方のような方がこんな場所に住んでいるとは思いもよらなかったので…」
「…ああ、呼び方は君達に任せるとしよう。それと、そのことなら気にすることはない。あらかじめ下準備はしてあるのでね。このような場所でも見つかることはないだろう」
一人で先に入り口から入って行く彼の背を追いながら、下準備の意味を考えた。
まず、ビルの一階だが床から天井までがかなり高く、五メートルと少しくらいまで有り、へカトンケイルが真っ直ぐ立ってもぶつからないくらいには高かった。外見に比べると、中は割と綺麗でガラス片などの類は欠片一つ落ちていなかった。
そして―――理解した。嫌でも理解させられた。
ビルに入ってから外部からの魔力反応が一切途絶えたのだ。それ以外にも、音も全て外に漏れださずに反響していた。更に言えば―――入った直後に強烈な腐臭と、幾つもの視線と殺気が感じられた。
しかし、彼女達は気が付いた。その視線と殺気の中に、途轍もない憎しみの感情が込められていたことに。
その腐臭の元であり、視線の元であり、殺気の元であったのは―――
『■■■■!!!』
―――彼の使い魔達だった。一階を守っているのは三匹の使い魔達。胸から頭にかけて長い矢が突き刺さっている大鷲、見る方が痛々しく感じるほどにまで腐敗してしまっている―――皮膚が半分も残っておらず、背骨が剥き出しになってしまっていると言えば分りやすいだろうか―――体をしたドーベルマン、大きさは三メートル程の、右耳は焼けて癒着してしまい、特徴的な長い牙は片方が折れ、体の至る所に銃創や切り傷を刻んだ象―――
「「ッ!」」
一斉に襲い掛かろうとした使い魔達と、それを迎撃しようとした彼女達を止めたのは、言うまでも無くライネスだった。
「―――お前たち、落ち着け」
その一声と、全身を切り刻まれて死ぬ事を錯覚するほどに濃密な殺気を彼は発した。シグナムは改めてその殺気に込められた言葉の重みを理解し、ヴィータは嫌な汗を流しながら顔を青くしていた。
使い魔達は、その言葉の重みで潰れそうになる精神をどうにか支え、次の言葉を待った。そして、発せられたのは―――殺気を全く含まない一声だった。
「彼女達は私の客人だ。襲わないでくれたまえ。更に言えば、彼女達はお前たちを殺した様な人間とは違う、優しき者だ。警戒しなくても大丈夫だ…ああ、ドーベルマン。お前は走って他の使い魔達に知らせて来てくれ。以上だ」
「―――バウ!」
一鳴きと共に、階段に向かって一気に走り抜けていくドーベルマン。丸腰の人間が勝てないと謳われる猛犬の種の名は腐っても伊達では無いようであった。
「…パオーン」
他二匹の使い魔達も、先程までの殺気はなりを潜め、大鷲の方は象の背に乗り、象はゆっくりとシグナムとヴィータの方に歩み寄って行った。
「な、何だよ…?」
いくら長い年月を生きたヴィータであっても、精神的には幼い訳で。
腐ったまま動き続ける『生物』には遭遇したことがなかった様で、気丈にふるまいながらも瞳には涙が溜まっていた。
シグナムは内心この様なモノがいるとは思っていなかったため、これから先のことを考え、警戒していた。特に、タイラント並の強さを持った『生物』がどれ程いるのか、と。
象は象である程度彼女らに近づいて止まった。そうして、ヴィータの前に鼻先を持っていって―――彼女の体に酷い火傷跡の残る長い鼻を絡ませた。
「うわ!?」
「ヴィータ!」
「パオーン!」
そのまま象は彼女を―――自らの背に乗せた。壊れ物を扱うように、ゆっくりと丁寧に。もしも人の言葉を解せる様であれば、楽しそうな声で歌っていたことだろう。大鷲はシグナムの持つレヴァンティンの鞘にとまり、「ギャッギャッ」と金属音の様に高い鳴き声を発した。
「…え?」
「失礼、驚かせてしまったかな?大方、気に入られたのだろう」
「そ、そうか…」
「…えっと、ライネス…だっけ?」
「む?何かね?」
「こ、コイツ、酷い火傷の跡があるだろ?これってどうして…」
ヴィータが最後まで言い切る前に、ライネスは言った。その言葉には僅かばかりの悲哀が含まれていた。
「人間が行った自然破壊と、その牙を狙った密漁…とでも言えば通じるかね?」
「―――それは」
シグナムは、先程使い魔達から憎しみの感情を向けられた理由に気が付いた。ライネスは首を縦に振った。
「…私の使い魔達は殆どが自然死していた動物の魂に、命が欲しいか、と契約を持ちかける。それを死んだ動物の魂が受け入れれば、私にとっては使い魔として、彼らからすれば存命の為に働き続けるのだよ」
だが実際、存命の為と語っているが彼は使い魔との契約を切った事は一度も無い。それは契約に応じてくれた使い魔達に対して無礼な行いだという事と、愛着が湧いてしまって切ろうにも切れない―――元々切る心算は過去において一度も無かったが―――状態になっている。
「だが、何事にも例外は在ってね。その二匹と先ほどの一匹、タイラントはその例外だ。彼らは自然死したのではなく、人間の手で殺されたのだよ。
ドーベルマンは薬の実験体にされ、大鷲は娯楽の為に、象は先ほど話したように自然破壊と牙を狙った密漁、タイラント―――種としていうならばイリエワニは唯日向ぼっこをしていたところを危険だからと射殺…」
「―――」
「とは言え、彼らは頭が良くてね。敵対する必要が無い、或いは好意に準ずる感情を向けられればとても好意的に接してくれる」
シグナムは何も言えなかった。彼らの死した経緯は、どれもこれも差はあっても人間の手で殺された事に変わりは無い。それを否定なんてすれば、彼らに対する侮辱のように感じて。
彼女はそっと、自らの愛剣の鞘にとまる大鷲を撫でた。
「…なあ、ライネス。…タイラントに会わせてくれないか?」
「それは構わないが、何故だね?」
「…ちょっと、話をさせてくれないか?」
ヴィータは謝りたかった。事情も何も知らなかったとはいえど、人間に殺された動物が、人間と同じ姿をした(・・・・・・・・・)存在に攻撃されたのだ。
もしかしたら食われるかもしれないと考えながらも、ヴィータはライネスにそう持ちかけた。
ライネスは少しの沈黙の後、それを認めた。
「私は構わないが、彼とまともな話ができるかわからないがいいかね?」
「ああ」
ヴィータが答えると、ライネスは自身の影に手を翳す。そして、影の中からタイラントがゆっくりと出てきた。
彼女は飛んで移動しようとしたが、象がまた鼻でヴィータを絡ませ、ゆっくりと降ろした。
「…ありがとな」
象に礼を言って、彼女はゆっくりタイラントに歩み寄り、タイラントの顔の前まで来るとしゃがみ、そのまま頭をゆっくりと撫で始めた。
「…さっきは、ゴメンな…俺お前の事、何も知らなかったからって…その…」
ヴィータの予想外の言葉にライネスと影の中で様子を見ていたへカトンケイルは驚嘆していた。シグナムは彼女の性格を知っているため、こんなところだろうなとは予想していたが。
タイラントはよく感情が読み取れないが、彼も驚いているように見えた。というか、驚いていた。
「グルルル…」
タイラントは短く鳴くと、またライネスの影に戻ってしまった。ヴィータは「あ…」と落ち込んでいたが、
「ふふ…何、気負うことは無い。あれは少々照れ屋でね。見られるのが嫌で戻ったのだろう」
「本当か!?」
「この場で嘘を吐く必要はあるまいよ」
ライネスが言うとヴィータの表情は先ほどよりも少し柔らかくなった。
「バウ!」
そんなことをしている間にドーベルマンが戻ってきたようだ。
「ありがとう、私達は上に行くが、ここに残ってここを引き続き警備していてくれ」
使い魔達はそれぞれの表し方でその言葉を肯定すると、それぞれの持ち場へと戻って行った。
「先ほどは失礼した。これでこの階での様なことは無いだろう。安心してついて来てくれ」
「ああ、分かった…それではな」
「ギャッ!」
大鷲はレヴァンティンの鞘から降り、そのまま象の背にとまった。
「…じゃあな」
「パオーン!」
象はヴィータと別れ真際に一層大きな鳴き声を上げ、ゆっくりと後ろを向き、自身の持ち場へと戻って行った。
「…では、行こうか」
ライネスはそう言って、ビルの階段に向かってゆっくりと歩き出した。
誤字脱字等、ご報告をよろしくお願いします。 by眼花
ここはこうした方が良い等のご指摘があればよろしくお願いします。 by鏡