主人公出てこない(´・ω・`)
「とんでもない《ラグー・ラビット》?」
現在この《浮遊城アインクラッド》は《第59層》まで突破し《第60層》が攻略の最前線だ。一日分の《攻略》を終えたキリトは、自分のホームタウンである《アルゲード》に戻り行きつけのエギルの店へ足を向けた。アイテムの買取のためである。
そこでエギルから奇妙な噂を聞かされていた。
「ああ、『常連客』から聞いた話なんだがな、なんでもそいつらは昨日、迷宮ダンジョンの攻略途中に《ラグー・ラビット》を発見したらしい。滅多にない出会うことのねぇ超レアモンスターだ。慎重に狩ろうと様子を伺っていたらしいが、そん時に信じられない光景を見ちまったらしい。」
エギルの話を聞きながらキリトは《ラグー・ラビット》の情報を思い出していた。
《ラグー・ラビット》
超のつくレアモンスターだ。実物は俺は見たことはない。とりわけ強いわけでもなく、経験値が高いわけではないのだが......。
《ラグー・ラビットの肉》はこの世界に存在する無数の食材アイテムの中で最高級の美味に設定されているS級食材である。だが、その性格は臆病であり、プレイヤーの姿を確認すると一目散に逃げる。おまけに逃げ足の速さは既知のモンスター中最高と言われており、接近戦ではトップレベルの敏捷値をもつ俺ですら剣での戦闘では仕留められる自信はない。仕留められるとしたら気付かれないうちに《投剣》スキルを発動させるぐらいだ。
その兎がどうしたのか?
「いったいなにがあったんだ?」
少しの沈黙のあとエギルが話を始めた。
「俺も信じられないんだがな。《ラグー・ラビット》が他のモンスターを倒していたんだとよ。おまけに《ソードスキル》の様なエフェクトが見えたんだと。」
「《ソードスキル》?」
今まで《ソードスキル》を使うモンスターとは戦ってきた。だが、そのモンスターは2足歩行で武器を持っているか腕などが鎌などの武器になっているかだ。《体術》などのエクストラスキルを扱う四足歩行のモンスターなら考えられるが、《ソードスキル》を扱う小型の獣モンスター。おまけに四足歩行。あのとりわけ強くないと言われる《ラグー・ラビット》が他のモンスターを《ソードスキル》で倒す。そんなことがありえるのか。
「大体ラグー・ラビットがどうやって《ソードスキル》を扱うんだ?武器なんて持てる身体じゃないし偶然そんな風に見えただけなんじゃないか?」
「いやな、そいつらが言うには《ラグー・ラビット》の近くに他の人型mobが一匹いたんだとよ。そいつの回りで《ラグー・ラビット》跳ね回っていたらしい。そのあとにだ.......、一瞬赤いエフェクトが発生。そのあとに爆音と共に人型mobが一撃でポリゴンエフェクトを撒き散らして爆散。そのあとに《ラグー・ラビット》が逃げたんだとよ。隠蔽スキルを使ったように急に消えて。」
――――信じられない話である
《ソードスキル》だけではなく《隠蔽》まで扱う異色のモンスター。この目で確かめてみたい。キリトはこの噂に興味を持った。攻略組の性である。
「何層の迷宮ダンジョンで目撃されたんだ?」
キリトに質問されたエギルは告げた。
「攻略最前線《第60層》だ。」
《第60層》のダンジョンモンスターはつい先程キリトは倒してきた。プレイヤー普通、攻略をするため安全マージンを挑む層+10レベルは取るものだ。その中でも《黒の剣士》ことキリトは攻略組のトッププレイヤーであり、現在LV80である。だが60層のモンスターを一撃で仕留めることなどできない。
それを《ラグー・ラビット》が一撃で仕留めた。他にもこのモンスターのようなイレギュラーなモンスターがいるかも知れない。きを引き締めていかなければ。
キリトに向かってエギルが告げる。
「なぁキリト。もしその《ラグー・ラビット》を見つけても迂闊に攻撃するなよ。どんな攻撃か分からないんだ。もしかしたらおめぇに襲いかかってくるかもしれねぇ。あともう一つだ。《60層》では絶対に油断するな。」
珍しく真剣な顔をしたエギルが俺に警告をしてくる。
「どういうことだ?」
「第60層が《町びらき》されてからそこで度々目撃されてるからだな。」
エギルが重々しい雰囲気で一言加える。瞳から真剣さが伝わっていた。
「《ラグー・ラビット》の他に黒いローブを纏ったプレイヤーが度々目撃されているんだ。初めて確認された武器《大鎌》を駆使し、見たこともないスキルを使うプレイヤーだ。麻痺毒を扱っているところも目撃されている。もしかしたら《笑う棺桶 》かもしれねぇ。気を付けろよ。」
《笑う棺桶》《ラフィン・コフィン》通称《ラフコフ》
SAOに存在するPoHが組織した最大最強の殺人ギルドであり、ゲームオーバーが現実の死となるSAOにおいて公然とPKを行う快楽殺人集団である。今まで様々なPK手段を開発し多くのプレイヤーを殺してきた。最近起こった《圏内事件》でキリトはラフコフのメンバーと対峙し、一触即発の状態にまでなった。
その《笑う棺桶》らしきプレイヤーが度々目撃されている。気を引き締めることに越したことはないようだ。
「警告ありがとなエギル、肝に命じておくよ。もし、出会ったときは捕まえて監獄エリアにでも叩き込んでやるさ。」
「自信満々だなぁキリト、まぁお前ならやりかねないだろうな。....ところでだ?」
「.......?」
先程までの重苦しいい雰囲気から一変、そわそわしだした様子のエギルに俺は眉をひそめた。
「もしもの話だ。もし、《ラグー・ラビットの肉》が手に入ったらオレにも食わせてくれないか?オレたちダチだよな?な?」
先程の真剣さはどこへいったのだろうか、別の真剣さがある。
「感想文を800字以内で書いてきてやるよ。」
少しなら分けてやろうと考えつつ冗談混じりの返事をし、これから向かう迷宮ダンジョンの準備を始めた。