兎使いの死神さん   作:モツ汁

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第2話 兎との出会い

「あたいはどうしてこうなったんだろうね。ねぇ?ラビィ?」

「.....きゅる~?」

 

 私は60層の安全地帯で昼食を取りながらラビィに話しかけていた。今日は自前の料理スキルで作ったサンドイッチだ。仮想空間の中だといってもお腹は減るものだ。ゲーム中でもしっかりおいしいものを食べて鋭気を養っておかないとね。

 しかしあれだ......、現実のサンドイッチ違ってこのサンドイッチはなんとも表現しにくい味なんだよね。茅場さん、リアリティー溢れる仮想空間を作るのもいいけど、食べ物もリアルな味として再現してほしかったよ。......ああ、現実のサンドイッチが恋しい。サンドイッチを頬張りながら今度自前のソースを作ろうと検討する。

 

 私の肩から頭へ移動したラビィはリラックスした姿勢で乗り掛かってくる。まるで潰れた饅頭のようだ。

 自分の頭上にご飯の野菜をちらつかせてみると、ラビィはリラックスした体勢 のまま野菜を食べ始めた。いつものことだけど頭から降りて食べないのかね?ラビィの食べかすなのか、光輝くポリゴンの破片が目の前に降ってくる。......なぜそこはリアルに表現してるし。力いれるところ間違ってますよ茅場さん。

 

《komachi》こと私と相棒の使い魔の《ラグー・ラビット》ことラビィの付き合いはすでに1年が経過してる。時が流れるのは早いものだ。 私は追加の野菜を頭上に掲げつつ、ラビィとの出会いを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《第20層》ひだまりの森

 ここでは虫型のモンスターが多く出現する。私は《隠蔽》スキルを駆使し背後からの奇襲でモンスターを倒していた。

 今の私はLV32。安全マージンを十分に取れている。現在の最新層は《28層》であり、ソロプレイヤーの私は攻略組には追い付けていない。戦法は相変わらずの《隠蔽》による後ろからの《両手斧》での奇襲だ。安定した戦闘を行えるのだが.....、効率はあまりよくないのよね。

 

 私は、モンスターでの戦闘の他、移動でも《隠蔽》を使用している。犯罪プレイヤーとモンスターの不意打ちを防ぐためだ。《探索》をとっていない私は不意打ちにはめっぽう弱い。不意打ちされるのは絶対に避けなくてはいけない。

 そこで私は対策を考えた。

 

《隠蔽》スキルを使うと視界の下側に《隠れ率》インジケータが浮かび上がる。これは%で表示されており、プレイヤーやモンスターの視線を受けると数値が減少し、0%になると《看破》され、スキルが解除されてしまう。これを《探索》の代わりに使えないだろうか?と私は考えた。軽い実験のあと《探索》もどきとして運用が可能と判明。

 私は《隠蔽》を使うことで、誰かに見られているのか常に確認している。いつも《隠蔽》を使っているので現在熟練度がMAXなのはいうまでもない。全プレイヤーの中で一番最初にMAXにしてしまったのではないだろうか。

 ........まぁ序盤のダンジョンでの道端で他のプレイヤーとすれ違った際に偶然《看破》されてしまいある女の子を驚かせてしまったのは余談である。

 

「およそ10メートル先に一匹、巨大カマキリ発見。よしっ、狩ろうかね。」

 

 私は《隠蔽》により姿を隠す。視界の下側に100%と数値が表示される。隠蔽中は他のスキルが使えない。そのため私はゆっくりと息を殺しながら相手の後ろに近づいていく。手を伸ばせば届く距離まで近づいた私は《隠蔽》スキルを解除し、旋風のように回転する《両手斧》スキル《ワールウインド》を発動させた。

 

「――はぁっ!」

 

 筋力値にものをいわせ両手斧を下から上へと振り抜く。両手斧の初撃が成功し、派手なエフェクトとともに巨大カマキリのHPを五割減らした。私は、敢えて両手斧を振り抜いた勢いに逆らわずに後ろへ倒れ、右足を振り上げた。爪先に黄色い光をまとい半円の弧を描く。エクストラスキル《体術》の蹴り技《弦月》を発動させ、巨大カマキリの後ろ右足を思いっきり蹴りあげる。

 

「キシャァッ!?」

 

 突然の背後からの攻撃に加え、体を支える足への全力の蹴りだ。ドスンッ、と鈍い音が相手の足から響き渡り、巨大カマキリが悲鳴をあげ横へと転倒する。羽のない虫型モンスターは転倒状態からの立ち直りが遅い。

《軽業》を取得している私は、蹴りの余韻を利用して着地しつつ、前方で横転しているカマキリの上へと勢いよく両手斧を振りかぶり飛び上がった。

 

「――おらぁっ!」

 

乙女らしからぬ声が響き渡る。

 

 緑色のエフェクトが斧の先端に生まれる。落下の勢いをつけ《両手斧》スキル《グランド・ディストライク》を仰向けとなった巨大カマキリの腹へと叩き降ろした。ドゴォッ!!と爆音が響き渡り土煙が巻き上がる。直後、巨大カマキリは無数の破片になって爆砕した。

 

 土煙の中ゆっくりと身を起こし、ひゅんひゅんと両手斧を軽そうに回し背中に引っ掻ける。凛とした佇まいは黒いフードも合わさり、まるで《死神》のようだった。一方彼女の内心はというと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ......あー、怖かったわー。やっぱり虫系モンスターは叩きつけでとどめ指すのやめようかな。リアルだったら色々ぶちまけてそうだもん。一回家に出てきたゴキブリを丸めた新聞紙で潰したあれはトラウマものし....。でもとどめのさしかたは格好いいしね。.......でも中身が飛び散るイメージが頭から離れないし.......。

 

 色々と残念であった。

 

 結局ポリゴン片になるからいいや、と結論づけた私は《隠蔽》を使用し帰路に着いていた。   

 

 自作の手作りサンドイッチを頬張りながらのんびり歩いていると、突然視界下の《隠蔽率》が95%から90%へと減少した。―――何かいる。頭の中を戦闘モードへと切り替えた。身構える。―――サンドイッチを頬張ったまま。しまらないものである。耳をすませて辺りの音を聴くと、かさ、かさという草の擦れる音が五メートルほど先の草むらから聞こえてきた。茂みの大きさからして中型の獣.......いや、小型の獣モンスターか?

 茂みからうさぎの耳のようなモンスターの姿がでてきた。私は、そいつを見た瞬間驚きで目を見開いた。

 

 おお.....!!あれって....あの驚くほど美味しいと知られるS級食材の超レアモンスター《ラグー・ラビット》じゃないか!

 

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