兎使いの死神さん   作:モツ汁

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第3話 大鎌

 私はラビイとの安全地帯での昼食を終え、攻略最前線の迷宮区域の観光及び攻略にいそしんでいた。モンスター兼プレイヤーの不意打ちを防ぐため《隠蔽》スキルを使用し、迷宮区域を移動する。ただ、他の人がこのスキル発動を見ていたならば、突如私が消えてしまったと思っただろう。

 

 現在私が使っている《隠蔽》は一般プレイヤーの使用している《隠蔽》とは違う。おそらくだが、習得者は私一人しかいない。血盟騎士団団長の《神聖剣》や黒の剣士が習得しているだろう《二刀流》と同じ《ユニークスキル》と呼ばれるものだ。

 

 私が習得しているユニークスキル《死神》は、大鎌を武器として自在に操るものである。半年ほど前に迷宮区域での休憩中、何気なくスキルウインドウを確認したところ《死神》が出現していた。突然出現していたスキルを発見したとき、「あたいの外見と合わさってもろに小野塚小町じゃないかっ!?」と 思わず声に出して突っ込んでしまったほどだ。

 

 このスキルの中の一つに私の最も使用する《隠蔽》がある。《死神》が出現し、元々あった《隠蔽》が上書きされたようだ。

 新たな《隠蔽》の効果はいたってシンプルだ。存在が認知できなくなる。姿は消え、足音も聞こえない。もちろん前のスキルより《隠蔽率》が上昇しており、大人数を前にしても全く気付かれることはない。ソードスキル発動寸前まで《隠蔽》が可能であり、初撃がクリティカル判定となる。ユニークスキルの名に恥じない壊れ性能である。このスキルを習得してからは効率が上がり現在のように攻略最前線での戦いを可能とした。

 

 迷宮区域をのんびり探検し、上層へと移動すると、前方に純白と真紅に彩られた騎士服の集団が見えた。アインクラッドにある数多のギルドの内、最強といわれている《血盟騎士団》である。どうやら様子を見る限り本日の攻略が終了し、帰路の途中であるようだ。

 目を凝らしてみると紅白の騎士服集団の中に可憐な少女の姿が見えた。すらりとした体に白と赤を基調とした戦闘服に包み、白銀の細剣を腰にさげている。

  細剣使いの腕前が凄まじく《閃光》の異名をとる血盟騎士団の副団長アスナである。

 

 こちらとの面識はあるのだが事情があり、顔を合わせると非常に不味いことになる。このまま通り過ぎるとしよう。そうこう考えている内に血盟騎士団の集団の真横を通り過ぎた。《隠蔽率》40%を切ると違和感が出てきて相手にばれやすくなるのだが《隠蔽率》は余裕の80%である。いつもは90%を維持しているはずなのだが.....。手を伸ばせば届く距離なのだが誰もこちらには気付くことはなかった。

 私は背後を振り返ることなく迷宮区の奥にへと歩みを進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

「.........っ!?」

 

 突然、気配を感じた。アスナは、一瞬誰かが真横を通り過ぎたような感覚を感じた。気配の正体を確かめようと咄嗟に後ろを向くが誰もいない。人はおろかモンスターすらいなかった。だた、奥地へと続く道だけが延々と続いているだけだ。突如副団長が後ろを向き、通路を睨み付けていたことでギルドメンバーが警戒体勢に入っていた。アスナは考えていた。突然の気配。姿が見えない。《隠蔽》スキル?

 違和感を払拭できず重苦しい沈黙が支配する中、《黒の剣士》が下層側の入口からやってきた。

 

 

 

 

 私は迷宮区域上層にて複数のモンスターを発見した。数は三体。視線を集中しカーソル表示される。モンスターの名前は《リザードマンシーフ》。《武器落とし》を使用する厄介な短剣使いのトカゲ男である。しかもこのモンスター、複数いると連携してスナッチ技まで使ってくるという名前の通りのモンスターである。一人で戦うソロにとって集団の敵を前に武器を奪われるというのは、致命的である。武器を奪われないように、普通なら一体ずつ引き離し処理するのが最善なのだが.....私は違う。 

 

「ラビ、いつものよろしくたのむよ。」

「きゅる!」

 

 快く返事をしてくれた頭のラビィが一瞬発光し、補助スキルを発動させる。そのあと私の体も一瞬光った。この子特有の補助スキルである。

 私の愛用する某鍛冶屋製作の大鎌《三途の大鎌》は見た目の通り結構重たい。十分に扱うにはかなりの筋力値が要求される。筋力値を割くあまり普通なら敏捷度がおろそかになり、素早い動きなどとてもできない。だが、逃げ足がSAO最速といわれる《ラグー・ラビット》の補助スキル受けたらどうなるのか?

 

 とにかく速い。

 

 トカゲ男達の背後から大きく離れたで大鎌を構える。赤い光が鎌の刃に宿る。《死神》の突進技《ソニックサイス》を発動させる。地面を蹴りぬき、無音で獲物の背後に一瞬で肉薄する。

 

「よいしょっとっ!」 

 

 軽い掛け声と共に大鎌が素早く横薙ぎに振り降ろされる。赤いエフェクトを纏う刃が緑色の鱗をもつ《リザードマンシーフ》を背後から同時に二体を軽々と切り飛ばした。

 

 手応えあり!!

 

 血のような鮮紅色の光芒を撒き散らしながら、リザードマンシーフ達は宙を舞った。HPが猛烈な勢いで減っていき十割から六割へ――六割から二割へと―――ついにはゼロになった。不意打ちを食らったリザードマンシーフ達は、そのまま空中でポリゴン片を撒き散らし爆散した。

 

「ぐるぁっ!」

 

 残り一体となった《リザードマンシーフ》改め、トカゲ男が隠蔽の解けた私に気づき、短剣を振り抜いてきた。想定していた短剣による振り抜きは、身体を後ろに傾けることにより回避する。剣尖が目の前を空振りする。そのまま背中から倒れ《体術》の蹴り技《弦月》を発動する。

 

「ぐるうっ!?」

 

 剣を空振り姿勢を崩したトカゲ男の顎へと蹴りが炸裂する。姿勢が不安定なところへ蹴りを放ったのでリザードマンシーフが大きく上空へ吹っ飛んでいった。どうやら筋力値と合わさりクリティカルに入ったようだ。これは好機だ。逃す手はない。

 

 再び《隠蔽》を使用し落下地点へとダッシュして距離を詰め、私は大きく鎌を振りがぶった。赤い光が鎌を包み込む。上空から吹っ飛ばされたリザードマンシーフが落下してくる。

 

「はぁっ!」

 

 落下の瞬間に上位剣技《オーバースイング》を放った。

 ドゴォッ!という重く鋭い斬撃音。軽い地響きが起こった。巻き上がる土煙の中、最後の一体のトカゲ男がポリゴン片となって爆散した。

 

《リザードマンシーフ》というモンスター三体を倒した私は土煙の中、大鎌を肩に担ぎ直した。

 今日は疲れたしもうちょっと奥地へ探索したら帰るとしようかな。

 土煙が収まり、いざ歩き出そうとしたところ、目の前に《黒の剣士キリト》と先ほど通り過ぎたはずの《閃光のアスナ》が立ち塞がっていた。......なんだこれ?

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