兎使いの死神さん   作:モツ汁

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第5話 脱兎の如く

 さて、今の状況をまとめてみよう。

 私は、リザードマン・シーフ達をお得意の隠蔽を用いた奇襲であっという間に倒した。最後に使用したスキルによる土煙が晴れ、いざ歩き出そうとすれば前方にプレイヤーが二人、道を塞ぐ形で立っている。

 

 一見したところ、黒い髪に、全身黒色の装備の男性と、栗色の長いストレートヘア、白と赤を基調とした騎士風の戦闘服の女性。

 ....ってこの人ソロプレイヤーの《黒の剣士》キリトだ。隣の女性は、さっき通り過ぎたはずの友人の《閃光》のアスナじゃないですか。

 どうして二人とも道を塞いで私を引き留めているのか....?というか、さっきの戦闘見られたよね?この大鎌とか、ユニークスキルとか。

 キリトが話しかけてきた。

 

「あんたが最近攻略組の間で噂になっているプレイヤーだな?」

 

 突然の噂のプレイヤー認定された私。

...どういうことなんだろうか?全く身に覚えがない。

 

「高度な隠蔽....俺の完全習得した索敵スキルに全く引っ掛からなかった。そして大鎌にローブ、他のプレイヤー達の目撃証言通りの姿だ」

 

....なるほど。

 

 どうやら私は、知らないうちに攻略組での間で噂になっていたようである。

 夜は危険度が上がるため街に帰還するプレイヤーが多い中層ゾーンと違い、最前線は夜中も攻略に励むプレイヤーが沢山いたようだ。多分その時に私の姿を目撃されたのかもしれない。

 

「大鎌なんて武器今まで見たことがないわ。それに、先程あなたが最前線のモンスターを一撃で倒した所を見たわ。」 

 

 ....あちゃあ。

 やっぱりアスナさんまで見てらっしゃいました。

 

 最前線に興味を持ち、安全マージンが充分だからといって、迷宮区へ来たのは失敗だったようだ。

 攻略組の噂になっているということは、公にばれてしまうとさらに面倒なことになるかもしれない。希少な使い魔とユニークスキルで。

 

 こうなるとやることはただ一つ。

 

 .....逃げてしまおう。

 

 生憎今の私は、全身を覆うローブを装備しているので、容姿と性別は分からないだろう。頭に乗っているラビも、ばれていない。プレイヤーの特定はできていないはずだ。このまま転移結晶を使用して逃げ、噂が収まるまで下層にいれば問題ない。

 

 大鎌を片手に担いだまま、善は急げと腰のポーチにある転移結晶を掴み出そうとしたのだがうまくはいかないものである。

 

 ぶん、と空気が震える音がした。

 

 次の瞬間には、すぐ前に私の転移結晶へ手を伸ばしているキリトの姿があった。 転移結晶をはたきおとして転移を妨害するつもりらしい。

 

 転移結晶を使用する暇ないじゃないですかやだー。

 

 私は後ろへ飛び退いた。ラビの助けもあり、一瞬で数メートル後ろへと後退することに成功する。

 

 「なっ....!?」

 

 転移結晶へ向かうはずだったキリトの手が空を掴む。相手からしたら一瞬でかなりの距離を飛び退いているからびっくりするよね。

 

 作戦を変更。脚力に任せて逃げよう。

 

 着地と同時に腰を落とし、重心を前へ傾け、全力で地面を蹴り抜く。私は沈み込んだ体勢から一気に飛び出した。

 

 キリトの方へ向かってギリギリ地面を滑空して疾駆する。

 

 だがそれはあながち間違いでもない。ラビの能力と私の筋力値を合わせて本当に跳んでいるのだ。

 その動きは脱兎の如く素早い。

 

 そのままキリトの真横を通り抜けた。

 

「させるかっ!」

 

....と思ったのだがそう簡単にはいかなかった。なんとキリトが私の動きに反応したのである。

 さすが原作にて全プレイヤーの中で最大の反応速度を持つプレイヤーである。

 だが、その最大の反応速度を使った行動が問題であった。

 

 

 

 

 

 

......滑空する私の足を引っ掻けてきやがったのである。

 

「うわっ!?」

 

 さすがに想定外である。思わず声が出てしまった。足を引っ掛けられたことにより滑空していた姿勢が前のめりになる。

 このままでは顔面からの着地&転倒してしまい逃げられなくなる。

 

 咄嗟に片手を地面につき、勢いを殺さずに体を押し出す。軽業と筋力補正によって体がバネのように跳ね上がる。そのまま空中で数回転を行いすたん、と綺麗な着地をきめた。

 軽業を完全習得していてよかった。あのまま転倒していたら二人に捕まるとこだった......っと二人?

 

 はっ、となり顔をあげると目の前にはアスナが立っていた。だが、様子がおかしい。驚いた顔をしてこちらを見つめている。

 

 私の顔に何かあるのだろうかと思い顔を触る。何もない。

 顔を隠すフードがない。さっきの動きで捲れたようだ。....ということは。

 

 思いっきりアスナに素顔を思いっきり見られてるのである。おまけに頭の上にしがみついていた相棒ラビもである。

 状況絵を理解していくにつれ自分の顔がひきつっていくのが分かる。

 

「え......えーと、......」

 

 あちらもなぜか気まずそうである。声を掛けようとしているのだが次の言葉が続かないようだ。

 もうどうにでもなれ。

 

 私は結晶を握り締め、コマンドを唱えた。

 

「転移! リンダース!」

 

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