オデッセウス学園の理事長室には、火星の実験実働部隊エリシアのイオスがいた。
「初めまして、火星の実験実働部隊エリシアの指揮官をしています。イオス・テクラートです」
車椅子のエルノラが
「初めまして、ここの理事長をしています」
イオスが
「エルノラ・サマヤ様でしょう。お名前は聞いています。その隣にいるのが…」
と、イオスはメガネを押さえてエルノラの右にいるミオリネを見る。
「そちらが…ミオリネ・レンブラン様で…」
ミオリネがイオスを凝視すると、不意に…
「シャディク…」
と、イオスにシャディクの面影が見えてしまった。
イオスは苛立ち
「私は、あの極刑に処した大罪人ではありません。まあ…声は似ていますが…」
ミオリネが
「ああ…ごめんなさい」
シャディク・ゼネリは、去年…極刑に処された。
遺体は高出力のレーザーに焼かれて残らない。
一瞬ゆえに痛みはなかった…と
シャディクは、全ての罪を背負って…それによって
それを思い出してミオリネは嫌な記憶を消すために頭を振り
「申し訳ありません。イオス・テクラートさん」
イオスが
「イオスで構いません」
エルノラが
「では、イオスさん。どうして、このような事件が?」
イオスが
「不運というか…偶然が重なってというか…」
と、イオスは、部屋の端にあるクールさんのマスコット、キーホルダー、エリクトがいるホルダーを見た次にメガネを押さえて
「事情は…」
と、説明を始めた。
キーホルダーのフリをしていたエリクトは、自分の事が気付かれているの察した。
◇◇◇◇◇
スレッタは、とある部屋にいた。
その部屋とはラウノの自室だ。
スレッタがラウノを目の前に
「色々とあったみたいだけど…説明してくれる…と助かるかなぁ…」
ラウノが事細かく説明をして
「そういう事なんです。だから…私にも」
と、ラウノが落ち込むように肩を落とす。
スレッタが頷き
「分かった。でも、勝手にMSで出るのは、いけない。だから罰則として、当面はMSに乗るのを禁止にします」
ラウノが頷き「はい」と答えた。
ラウノから事情を聞いたスレッタが次に向かったのは、MS格納庫だ。
そこで大声が聞こえた。
「はぁぁぁぁ! 渡せない!」
と、ゾフィアの声が響く。
ゾフィアとノディアに、二人の後ろにはガジタールが立っていた。
三人が相手をする人物は、デュオだった。
デュオは淡々と
「ああ…渡せない」
ノディアが
「アナタ…自分が何を言っているのか…分かってます? その機体は…」
デュオがノディアを見る。
その眼光は鋭く、まるで銃で撃たれたような圧が来る。
ノディアが少し引くも前に戻り
「アナタの乗ってきたGUDAMギアントは、我々の所有物であって」
デュオが
「お前達の…火星統一連合の所有物ではない。火星のプラント、テュール・グループのモノだ」
ガジタールが渋い顔をしてデュオをサングラスの瞳から見つめる。
デュオはガジタールに
「オレは、今…デュオ・ゼルウスだ。昔の…アレじゃあない」
ガジタールは静かに視線を落とす。
ゾフィアが
「じゃあ、アレを渡してよ。この機体にあるんでしょう? 例のYデータが…」
そこへスレッタが来て
「何を話しているんですか?」
ゾフィアとノディアがスレッタを見て、バツが悪そうにする。
デュオが
「コイツらが、この機体を奪おうとしている」
ゾフィアが
「ふざけんな! それはそっちだろうが!」
スレッタが
「事情…聞かせて貰えませんか?」
全ての事情は、こうだ。
ラウノは、ティアナを火星に連れて行こうとした。
だが、その最中で、テロリストが放った無人兵器戦艦デューン・スポーンが来て、それに応戦する為に、デュオの機体と合体して破壊した。
ノディアとゾフィアの二人、火星の実験実働部隊エリシアが来たのは、デュオが持ち出したGUDAMギアントを回収する為、その最中、デューン・スポーンのテロと遭遇し協力する事になった。
デュオの目的は、ラウノ・ユーテルとティアナ・テュールを守る事、このGUDAMギアントで…。
そうする理由は、テロリストが放った無人兵器戦艦デューン・スポーンが示している。
MS格納庫での言い争いは、一旦は保留として、スレッタの母親エルノラがデュオと話をする事になった。
理事長室で車椅子のエルノラが
「久しぶりね…シロウ・アマガくん」
デュオは忌々しい顔で
「今は、デュオ・ゼルウスだ」
エルノラがデュオに近づき
「アナタの事は…先生から聞いているわ」
デュオが感情の消えた顔で
「夫と子供を捨ててガンド技術開発に生涯を捧げた毒親なんて、死にましたから…オレには関係ない」
エルノラが車椅子を動かしてデュオに近づき
「先生は、カルド博士は…アナタの事も夫の事も忘れた事はないわ。事実、アナタや夫を救う為にガンド医療の技術を、そして…宇宙で暮らす為に必要なガンダムを作っていた」
デュオが淡々と
「そのガンダムも、オックスアースの兵器として使われるようになって、オレ達と同じアーマードのマシンナーのようになった」
エルノラが
「それは、先生が望んだ事ではなかった。でも…これだけは信じて欲しい。先生は、アナタの母親は、アナタを見捨てていなかった。事実よ」
デュオが
「説教する為に、オレをここへ呼んだのですか?」
エルノラが右手を挙げると立体映像が入る。
そこには白髪で白いヒゲを生やした老年の男性がいた。
その男性が
「久しいな…今は、デュオ・ゼルウスと…」
デュオが固い顔で
「ええ…久しぶりですね。テュール・グループ総帥、デュオン会長。もし、呼び難いなら、昔の名であります。ゾルダスでも構いませんよ」
デュオン会長が
「いや、デュオの方が呼び易い。あの悪魔の兵器をメルカーバを動かした魔王の名前で呼びたくはないからな」
デュオが淡々と
「で、通信に出たという事は…」
デュオン会長が
「ああ…火星統一連合との話し合いが済んだ。火星統一連合の将軍フリディットは…こう…持ち出してきた」
◇◇◇◇◇
ゾフィアとノディアが、オデッセウス学園の遙か上空、オデッセウス学園専用の宇宙港衛星プラントで、自分達の火星統一連合からの話を宇宙戦艦の艦橋で聞いていた。
ノディア、ゾフィア、イオス、ガジタールの四人が見つめる画面には、スキンヘッドの六十代の男性で目を機械化している。
この男性こそ将軍フリディットだ。
フリディットが
「GUDAMギアントの内部に保管されているYデータに関してだが…テュール・グループの会長との話し合いによって決闘という方法で勝利した場合、獲得する事になった」
この事態の数時間前
デュオン会長側のテュール・グループと、火星統一連合の将軍フリディット側の応酬があった。
通信の会議の場で
火星統一連合が
「あの忌まわしい兵器メルカーバのYデータをそちらが持っていたと言う事は、それを使った火星の支配を目論んでいる!」
テュール・グループは
「それは全くの間違いだ! そもそも、メルカーバは、そっちが作った兵器だろう! 火星統一連合が自らの支配を強めようとした結果、あの大惨事が起こった。それに…そちら側には、あのオックスアース残党と繋がっているかもしれない疑念がある!」
言い合いの状態で、デュオン会長と将軍フリディットが黙っていると、そこへティアナ・テュールが通信で入った。
デュオン会長が
「ティアナ、どうした…ここはお前が」
ティアナが
「私は、昨晩の事件に巻き込まれました」
その報告は双方に来ていた。
ティアナが
「我々、火星圏に暮らす者達にとって、あの大惨劇を起こしたメルカーバは…忌々しい記憶です。そのメルカーバのYデータもあった…それも問題です。そのまま…恐れたままで良いですか?」
火星統一連合の一人が
「ティアナ殿、火星で生まれたアナタなら、あのメルカーバがどれ程の脅威か知っているはずだ。ならば…何処かへ封印されたままになっているなら、いずれは」
ティアナが堂々と
「我々は、何時までも恐怖に支配される訳には、いきません! ここに、あの兵器…いや…惑星間戦略兵器メルカーバの平和利用を推進するべきです」
火星統一連合が
「しかし、平和利用など…到底、ムリな話だ!」
ティアナが
「メルカーバには、無限にエキゾチックマトリックスを生成する完全真空相転移エンジン、パーフェクトゼロがあります。それを使って、膨大なパーメット粒子を生成して、パーメット物質を作れます。これを使わないで、火星の復興はありえません!」
ティアナが手を上げて
「私は、ここに宣言します。メルカーバのYデータから太陽系の何処かに封印されたメルカーバを見つけ出して、それを平和的に活用します」
将軍フリディットが
「ティアナ嬢、キミの崇高な理念には敬意を示そう。しかし…だ。それを担保する保障は何処にあるのかね?」
ティアナが将軍フリディットを見て
「いちいち、担保だ、保障なんて講釈を並べて、うるわいわよ。ロジクソ親父が!」
将軍フリディットが少し右頬を引きつらせて黙る。
「なら、こうしましょう!」とティアナが提案した。
◇◇◇◇◇
デュオはデュオン会長からの話を聞いて頭を抱えた。
そこへティアナが来て
「アンタ…」
デュオはティアナを見て
「デュオだ、デュオ・ゼルウスだ」
ティアナが
「デュオ、アンタが乗るGUDAMギアントとそれと合体するGUDAMケラノスの二機を合わせて、火星の実験実働部隊エリシアのGUDAM、ゼファーダとゼオラスと決闘して、勝って!」
デュオが頭を抱えて
「なんで、そんな事になった?」
ティアナが
「かつて、地球圏のアスティアシア学園ってプラントでは、MS同士を戦わせて、物事を決めた事があったわ」
デュオが
「つまり、それを見習った…と」
ティアナが
「ええ…だから、勝って! MSの決闘で」
デュオが
「つまり、あのエリシアの部隊にいる二人を殺せ…と」
ティアナが
「いいえ、これは決闘というMSのスポーツなの。人殺しとは違うわ。MSだけ破壊して勝つの!」
デュオが頭を抱える。
面倒事が更に加速していった。
◇◇◇◇◇
ゾフィアとノディアがオデッセウス学園を隈なく歩いて、とある人物を探していた。
その人物を見つけて
「あ、スレッタ、みっけ」
と、ゾフィアがスレッタに駆けつける。
スレッタが
「ああ…どうも」
ゾフィアがスレッタの腰を抱いて
「ねぇ、スレッタお姉ちゃん! アタシ達に決闘ってどんな感じなのか? 教えてよ」
ノディアも来て
「すいません。なぜか…決闘するって事態になって」
スレッタがゾフィアとノディアを見ると、とある二人と被るソフィとノレアだ。
ゾフィアが野生の勘でスレッタの心中を察して
「もしかして、ソフィ・プロネとノレア・デュノクと被ってる?」
「ええええ!」とスレッタは内心を読まれて驚く。
ゾフィアが
「スレッタさんは、私達のオリジナルとあった事があるんですよね?」
スレッタが戸惑いで
「オリジナル! え?」
ゾフィアが
「アタシ、ソフィ・プロネのリプリチャイルド」
ノディアが
「私はノレア・デュノクの方です」
スレッタが
「えええええええええ!」
と、叫んでしまった。