ガンダム水星の魔女、第三期、火星の魔王   作:赤地鎌

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 決闘が終わった後…


第30話 キャンピング

 

 イエル・オルグ…シャディク・ゼネリの幼名。

 シャディクがシャディクになる前の幼い頃。

 

「ふざけるな!」と父親が叫んでいた。

 父親は、オックスアースのトップの一人だった。

 

 オックスアースのトップは二人いて、その一人が

「仕方ないだろう。ソロモン」

 

 ソロモン…それがイエルの父親の名だった。

 そして、父親と話しているのは、後の宇宙議会連合のトップとなるユース・ティニアスだ。

 ユースとソロモンの二人がオックスアースのトップとなって活動していたが…。

 

 ユースが

「ベネリットグループのカテドラルの目を誤魔化す為には、オックスアースを解体するしかない」

 

 ソロモンが

「地球から戦う力を無くせと!」

 

 ユースが

「一時的な処置だ。オレが、新たに結成される宇宙議会連合の入ったら、復活させてやる。今は…頼む」

 

 ソロモンは苦しそうな顔をするも

「分かった」

 

 こうして、ガンドARMの廃絶を達成しようとするカテドラルによってオックスアースは解体、イエルと父ソロモン、母のシルヴィアは地球の安全な場所へ行く筈だった。

 

 だが、父ソロモンだけは後になり、母シルヴィアとイエルの二人が輸送機に乗って移動している最中、それは起きた。

 輸送機が撃墜された。

 

 後々になって分かったのは、この輸送機を撃墜させたのは、ユースだった。

 ユースが父ソロモンを狙って輸送機をテロに見せかけて撃墜させた。

 だが、輸送機は機長の操縦によって、陸地に軟着陸し、イエルと母のシルヴィアは逃れたが、その途中でテロリストに扮した傭兵のMSに見つかり、母のシルヴィアはイエルを守る為に囮となって隠れたイエルの前で殺された。

 

 イエルは父ソロモンを憎んだ。助けに来ない父、無惨に殺された母。

 イエルは、父親がこれ程に…情けない人物だったと…思い知らされた。

 

 その後、イエルは逃げて逃れ、スラム街へ流れる。

 そこで懸命に生きている五人の彼女達と出会った。

 ザビーナ、レネ、イリーシャ、メイジー、エナオ

 彼女達と出会って、ベネリットグループのグラスレー社が管理運営している地球孤児の施設へ入り、そこで…イエル・オルグの名と幼少期より聡明だった実力を使いのし上がった。

 そして、グラスレー社のトップ、サリウス・ゼネリと出会い…。

 サリウスは、シャディクに亡くした子達の面影を見いだした。

 シャディクの母親は、サリウスの私生児だった。

 サリウスは、シャディクを見て直ぐに分かった。

 だが、シャディクはそれを知らない。

 サリウスは運命を感じた。この子を自分の後継者にする事が後の使命だと。

 シャディクは、利用する相手であり、拾ってはくれた人という程度。

 

 だが、結局は…それは…

 

 それから年月が過ぎた。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 イオスは流し場で顔を洗う。

「はぁ…」

と、顔を流し、棚に置いたメガネを掛けて

「全く、オレは…イオス・テクラートであって、もう…」

 

 イオスには秘密がある。だが…それは…

 

 

 早朝、ミオリネが気だるそうにベッドにいると、スレッタが来て

「ミオリネ、起きて、朝だよ」

 

「うんん」とミオリネは体を起こして後頭部にあるガンドのスイッチを入れると

「おきろーーーーーーー」

と、エリクトの声が響き渡る。

 

「うるさい!」とミオリネがスイッチを切ろうとしたが

 

 エリクトが

「切るなら、この資料、見てからにしてよ」

 

 ミオリネの視界だけにエリクトから送信されたデータが写り

「何コレ?」

 

 エリクトが

「これ、デュオ・ゼルウスに関する資料。火星のネットワークに侵入して分かるだけ調べたから…」

 

 ミオリネが資料データを確認しながら

「へぇ…凄いわね。コイツ…幾つ名前があるの?」

 

 エリクトが

「ほとんどが、コードネームで呼ばれているけど。共通するネームは、ゾルダス。火星の魔王って事だね」

 

 ミオリネがスレッタに起こして貰いながら

「火星の魔王…偉いぶっ飛びワードね」

 

 エリクトが

「信じられないんだけど…一機で艦隊を破壊したとか…これ、本当なのかなぁ…って報告もあるよ」

 

 スレッタが

「私もエリクトからデータを貰って視ましたが…信じられなくて…」

 

 ミオリネの身支度をスレッタが手伝い、ミオリネもそれに甘えながら

「火星の魔王、伝説の戦士…本人に聞いて確認取れるかなぁ…」

 

 エリクトが

「あ、ぼくのその時につれて行ってね。興味あるんだ」

 

 ミオリネが

「エリクトはキーホルダーのフリして、色々とやれるから…ホント、便利よね」

 

 エリクトが

「だけどね。キーホルダーでも不便があるから、早くぼくの体を作ってねミオリネCEO」

 

 ミオリネが

「アンタのデータ量を収めるシステム開発は難しいの。もう少し待って」

 

 スレッタがミオリネの髪を整え終わって

「はい、じゃあ、朝食にしましょう。お母さんが待っていますから」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 デュオは一人、オデッセウス学園の中を歩く。

 簡単な散歩だ。

 講堂には入らない。

 生徒ではないし、教員でもない。

 

 デュオが散歩する後ろに

「こんにちは…」

と、エルノラが呼びかける。

 車椅子のエルノラの隣にミオリネが立っていて

「こんにちは、デュオ・ゼルウスさん」

 

 デュオがお辞儀して

「どうも…エルノラ理事長、そして…ガンド医療を運営管理するガンダムのCEOミオリネ・レンブラン代表」

 

 エルノラが微笑み

「アナタの事はデュオン会長から聞いています。緊張なさらずに…」

 

 デュオが微笑み

「今日は、どのような用件で?」

 

 ミオリネが

「アナタの事を調べたですが…少し経歴に疑問がありまして」

 

 ガンド通信で、ミオリネのキーホルダーのフリをしているエリクトが

”そのまま会話を続けてミオリネ、母さん” 

 エリクトがデュオのシステムに侵入しようとしたが。

 

 デュオが

「ミオリネ代表の左腰にある彼女は、自分に何をするつもりなんですか?」

 

 エルノラとミオリネは驚きの顔でエルノラが

「もしかして…分かるのですか?」

 

 デュオにはエルノラとミオリネの間に光輝くデータストームのスレッタ似のエリクトが見えていた。

 デュオは目を細めて

「ええ…自分は、ちょっと特殊な存在…まあ、処置をされているのと…。そういう方達を多く知っているので…」

 かつて、火星にあったデータストーム兵士達の事が…

 

 エリクトも困惑していて

”まさか、知っていて…”

 

 デュオが

「知らないって。キミの事は初めて知ったし、その顔…スレッタ教官の姉妹なのですか? 年齢としては、スレッタ教官より数年上のような…お姉様ですか?」

 

 エルノラが

「本当にエリクトの事が見えて、聞こえて…」

 

 デュオが困惑気味に

「ええ? お二人には見えていないのですか? 自分にはハッキリと…」

 

 エルノラとミオリネ、エリクトも混乱していると

「おーーーーい」

と、デュオの背後からゾフィアが声を掛けてノディアと共に現れた。

 

 ゾフィアが

「デュオ・ゼルウス!って…アレ? 先約がいるの?」

 

 ノディアが目を細めて

「理事長達三人と何か、約束が?」

 

 ミオリネがハッとして

「今、何て? 理事長達三人って」

 

 ゾフィアとノディアが顔を見合わせてゾフィアがミオリネとエルノラの間を指さして

「ぼんやりと、データストーム体の誰かが見えるんだけど…」

 

 エリクトが

「どうして、ぼくが見えるの?」

 

 ゾフィアが

「あ、まってチューニングするから」

と、コメカミを小突いて

 

 ノディアが

「ああ…聞こえました。見える理由ですか? それは…私とゾディアが、アーマードというシステムと30%も融合したマシンナーなので…」

 

 デュオは自分を指さして

「自分は、90%の融合率だから、正確に見える」

 

 ゾフィアが

「あ、そうだ。ちょっとアタシ達と来いよ!」

 

 エルノラとミオリネが呆然としている間に話が進む。

 

 デュオが

「どうしてだ?」

 

 ノディアが

「キャンピングにお誘いに来ました」

 

「はぁ?」とデュオは首を傾げる。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 デュオとミオリネ達は、オデッセウス学園の外にある風景が綺麗な高台の公園で、キャンピングをしていた。

 ガジタールがキャンピングセットを広げて、炭焼きのコンロで串焼きを焼いている。

 美味しそうな肉と油が焦げる音が響く。

 

 デュオが

「なんの、キャンピングだ?」

 

 ゾフィアが

「アタシ達が負けちゃった残念会」

 

 そこへ、イオスがラウノとティアナを連れて現れる。

 

 ノディアが

「イオス、ありがとう」

 

 イオスが頷き

「別に構わないさ。じゃあ、ガジタールの手伝いをするよ」

 

 ゾフィアがキャンピングイスに座って隣の席を叩き

「さあ、ここに!」

 

 ラウノが「ティアナさん、行きましょう」と誘い

「あ…ええ」とティアナがラウノに誘われてゾフィアの隣にある席へ座る。

 

 デュオが頭を掻いた後

「まあ、いいや」

と、イオスとガジタールが焼いているコンロへ行き、串焼きを何本か大皿に入れてラウノ達がいる席へ持ってくる。

 それをゾフィアが「あんがとう!」と、ラウノが「ありがとうございます」と、ティアナが「ありがとう」

 デュオは、ノディアとミオリネにエルノラ、そして

「ミオリネさーーん、お母さーーーーん」

と、スレッタも来る。

 

 ゾフィアが

「お、スレッタお姉ちゃんも来たし、残念会! 始めよう!」

 

 こうして、キャンピングによる残念会が始まった。

 

 スレッタとミオリネ、エルノラが貰った串焼きを食べながら、ゾフィアとノディアは楽しげにラウノとティアナと話ながら食べ、イオスとガジタールにデュオは、キャンピングの料理を運んだり、軽く一杯を飲みながら料理をする。

 

 スレッタが

「こんなの初めてで、嬉しいです」

 

 ミオリネも

「私も…」

 

 そこへ焼けた料理を持つデュオが来て

「さあ、ラウノ達の所へ」

 

 皆、キャンピングで囲んで色々と話したり食べたりして、ノンビリした時間が過ぎる。

 

 デュオが不意に高台の風景を見渡すと、そこには海辺と両脇から海に向かう山岸があった。

 そこに夕日が沈むのを見て

「ああ…どうして、こうも世界は綺麗なんだろうな…」

 過去の火星の戦場でも、木星の採掘現場でも、自然の風景は美しかった。

 どんなに世界が残酷でも…。

 

 イオスが隣に来て

「こんなにも穏やかで綺麗な風景があるのに、世界では…今でも争いが…」

 

 デュオが

「それが人間の業なのだろう。それを無くすには、とんでもない労力が…いや、人の労力だけではムリかもしれない」

 

 デュオは焼けた串焼きを頬張ってその先をふさいだ。

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