ガンダム水星の魔女、第三期、火星の魔王   作:赤地鎌

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 新たな決闘に関する事態が進んでいた。


第31話 新たな決闘

 

 二十二年前の火星

 

「どうしてだよ!」

 若き日のブシードが叫んでいた。

 

 その言葉を背中で浴びるのはゾルダスだった。

 ゾルダスは無言で通路を進んでいた。

 

 ブシードがその肩を掴み

「なあ、姉貴を…信じてやって欲しい。ゾルダスの…アンタの婚約者だろう!」

 

 ゾルダスがその手を払いのけて

「もう、婚約者じゃあない。他人だ」

 

 ブシードが

「確かに、色々と問題な事はあった。でも姉貴の立場なら仕方ないだろう」

 

 ゾルダスが背を向けたまま

「仕方なかった? もう…オレと同じマシンナーは、オレ一人だけになった。一億二千万だ。その全員がデータストーム兵士となって死者の月(ルグスムーン)に…」

と、告げる口調は重く、拳が硬く握られる。

 

 ブシードが

「それでも…アンタは生き残った。姉貴は…アンタを信じていた。そして、アンタだけは…だから」

 

 ゾルダスは

「オレは、もう…愛想が尽きた。テレイア将軍にとっては、愛情なんてコマを扱う手段でしかない。それが分かったよ」

 

 ブシードがゾルダスの前に来て、ゾルダスを殴るが

「がああああああ!」

 ゾルダスを殴った手にヒビが入る。

 

 ゾルダスは冷徹な目で

「テレイア将軍のお陰で、オレは…金属と有機体のバケモノになった。これがあの女の答えだよ。バケモノになって消費されろ。テレイアさんは、自分の出世しか考えない。まさにお偉い様だ。そういう事だ」

と、ブシードを過ぎ去った。

 

 ゾルダスの婚約者にして、火星統一連合の前の、火星連邦軍の将校テレイア・アスレシア将軍は、他の敵性勢力を潰す為に、ゾルダス達、アーマード部隊にその敵性勢力の艦隊壊滅をさせた。

 その結果、ゾルダスのアーマード融合率は90%を超えて人を外れ、苛烈な敵性勢力の艦隊壊滅任務は、ゾルダスの仲間達全員をデータストーム兵士にしてしまった。

 

 この戦場の勝利後、火星統一連合という火星全体を掌握した組織が誕生、火星の統一はなされて、火星宇宙域にある、火星圏のテュール・グループは火星統一連合へ合流した。

 その立役者であったテレイア将軍、彼女は、数日後に降格処分を申し出て、補給部隊のシステム管理部門がある火星圏のプラントへ出向した。

 このまま将軍として在籍すればテレイアは火星統一連合で絶大な権力を手にできる筈だったが、その全てを捨ててしまった。

 その理由は…。

 彼女自身が一番の味方でありたかった彼、生涯を共にしようと本気で思っていた人物との未来が途絶した事が…。

 そして、彼女は二年後に一人の娘を出産した。

 父親は、誰なのかは…不明のままだ。

 ゾルダスとも言われたが…ゾルダスと破綻して二年後の出産であり、ゾルダスはアーマード融合率90%を超えたので子孫を残せない体だ。

 その可能性は皆無であると…

 その娘が生まれた年にゾルダスを起動キーとしてルグスムーンを組み込んだ。

 巨大な惑星防衛システム、惑星間戦略兵器メルカーバの起動が行われて…悲劇が起こり、終焉して二十年後の…

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ブシードは火星の軍事プラントにいた。

 そこで、回収しようとしていたGUDAMギアントの戦闘データを見ていた。

「やはり、か…」

 交戦して直ぐにゾルダスと分かった。

 

 そこへ、一人のパイロットの女性が入り

「失礼します」

 

 ブシードが

「敬礼はいい。ヘレナ」

 

 入った女性ヘレナは笑み

「はい、オジさん」

 

 ブシードが笑み

「体調はどうだ?」

 

 ヘレナは

「うん、もう大丈夫だよ。でも、まさか…回収する任務が…」

と、思い出して苦々しい顔をして

「火星の魔王が…乗っていたなんて…」

 

 ブシードが苦しそうな顔で

「誰の手筈かは…分かっていない。現在、GUDAMギアントは地球にある」

 

 ヘレナが少し視線を落として

「オジさん。私は気にしていない。私達は私達の任務を果たそう」

 

 ブシードはヘレナがムリをしているのを分かるが、それを…

「そうだな。そして、地球へ行く事になった」

 

 ヘレナが鋭い顔で

「奪取するの?」

 

 ブシードは首を横に振り

「いいや、決闘という戦いをして勝って手に入れるそうだ」

 

 ヘレナが腕を組み納得いかない顔で

「それでオジさんは納得しているの?」

 

 ブシードが

「フリディット将軍や上層部も、それで構わないと…判断した」

 

 ヘレナが

「甘いね。もし、悪用されたら…」

 

 ブシードが頬杖をついて

「心配ない。ルグスムーンとゾルダスがリンクする事は永遠にない。止める時にそれのリンクが永遠に繋がらないようにした。悪用されるとしても…所詮は、エネルギー供給程度だ」

 

 ヘレナが

「抜け道とか…そういう事を上層部は考えないの?」

 

 ブシードが

「もしかしたら、上層部は永遠にメルカーバが戻らなくても良いと思っているのかもな」

 

 ヘレナが悲しい顔で

「そんなに二十年前の事が…」

 

 ブシードがデスクから立ち上がり

「オレ達、火星の最大の汚点であり、最悪の恥部なのさ。メルカーバってのは」

 

 ヘレナが

「私は赤ん坊の頃だったから、憶えていないけど。でも…その時の…メルカーバによって残された遺産達のお陰で火星が維持されているんでしょう。それ程の力を秘めているなら…」

 

 ブシードがプラントの町並みを見下ろして

「そうさ。それだから、余計に…直視したくないのさ。自分達が無能だって証を…」

 

 ヘレナが少し黙り次に

「了解です。ブシード大佐。地球への派遣時まで待機しています」

 

 ブシードが微笑み

「そういう事だ。ヘレナ少尉、待機を命じる」

 

「は!」とヘレナは敬礼をした。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 地球、オデッセウス学園では

「なんで! シミュレーションじゃあ、勝てんのよぉぉぉ!」

と、叫んでいるゾフィアは、GUDAMゼファーダのコクピットから出てきた。

 

 同じく隣に立つGUDAMゼオラスのコクピットからのノディアが出て

「十戦五敗、五分五分なんて…」

 

 その二機の後ろにいるGUDAMギアントにいるデュオが通信で

「シミュレーションで戦えばこんなモノだ」

 

 ゾフィアとノディアは、デュオとシミュレーションの模擬戦をしていた。

 

 ゾフィアがデュオがいる通信画面へ

「じゃあ、実戦でやろうぜ!」

 

 デュオが呆れ笑みで

「許可が出ればな」

 

 そのMSの下で、MS達を繋げているシステムの操作をしているガジタールとイオスの二人がいた。

 イオスが、システムを操作するガジタールに

「どうだ?」

 

 ガジタールが

「どうだ…と言われてもな」

 

 イオスがデュオの戦闘データを見ていると、そこへMSエレベーターから降りてきたノディアが

「どう? アイツの強さの秘密が分かった?」

と、ノディアがデュオの強さの理由を聞く。

 

 イオスが

「このデータを見てくれ」

 

 イオスがノディアにデータを見せる。

 

 ノディアが眉間を寄せて

「これって」

 

 ガジタールが

「分かっていた事ではあったが、その再確認でしかない」

 

 イオスが

「デュオ・ゼルウスが実戦で、アレほど強い理由は、相手の未来予測が優れているからだ」

 

 ノディアがデータを見ながら

「アーマード融合率90%以上という事が理由ではなくて?」

 

 イオスが

「それも理由の一つでもあるが…大本の強い理由は、デュオ・ゼルウスが相手の動きを先読みして動いている。それもかなりの手数を予測してだ。だから…攻撃が放たれる前に回避される」

 

 ノディアが

「でも、シミュレーションでは私達と同じだったわ」

 

 イオスが

「シミュレーションは、シミュレーションであって現実ではない。シミュレーションの演算に速度が依存する。シミュレーションの演算以上の速度でデュオ・ゼルウス…ゾルダスは反応して動く。本人も分かっているはずだ。シミュレーション内では、鉛のように重い動きしかできない」

 

 ノディアが納得していない顔をしていると、そこにラウノが来て

「こんにちは」

 

 そこへMSエレベーターから降りてきたデュオとゾフィアが

 デュオが

「授業は終わったのか?」

 

 ラウノは微笑み

「はい、だから…」

 

 デュオが

「訓練をしたいんだな」

 

 ラウノは頷き

「まだ、私は…デュオに勝ち星をあげた事がありませんから」

 

 デュオが

「ラウノも、その内に勝ち星をあげられるさ」

 

 ゾフィアが

「実戦じゃあ、勝ち星になれないけどね」

 

 デュオが

「ラウノも二人とも相当な腕前だぞ。オレなんかと…戦闘マシンになったオレと比べるな。この体だからこその技術であって…」

と、自分の手を見つめる。

 人の皮を被ってはいるが、その中身は細胞サイズまで融合したナノテクノロジーのバケモノ、アーマード融合率90%だ。

 デュオがラウノとゾフィアとノディアを見つめて

「オレみたいな人の皮を被ったバケモノになるな…人として生命として…次を残せない体なんかに…」

 

 重い忠告にノディアとラウノは黙ってしまい。

 ガジタールとイオスは、無言だが。

 ゾフィアが偉そうな顔で

「そのバケモノをアタシが戦って圧倒すれば、アンタも人になる。アタシだけじゃあない。ノディアやラウノっちだって、アンタを倒せば、それはただの人が通過する道標になる。今はシミュレーションだけしか勝てないけど、絶対にアタシ等は、アンタに勝つ」

と、告げてラウノとノディアの肩を抱き

「舐めんなよアタシ等を」

 

 デュオがプッと吹き出して

「ははははは! そうだな。期待しているぞ」

 

 ラウノが真っ直ぐとデュオを見つめて

「私も…何時か…デュオを倒して見せます」

 

 ラウノの真っ直ぐな視線にデュオは微笑み

「ああ…期待して待っているよ。ラウノ」

 

 ラウノが嬉しげに微笑む。

 

 デュオが

「ところで、ティアナは?」

 

 ラウノが

「ティアナさんは、また…お爺様と話し合いって事で」

 

 デュオが顎を摩り

「また、面倒事かなぁ…」

 

 ラウノが苦い顔をして

「かもしれません」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ティアナは通信室で

「お爺様…それが次の…」

 

 ティアナが通信している相手は、デュオン会長だ。

 デュオン会長は厳しい顔で

「そうだ。次は火星統一連合の本格的な部隊が来る」

 

 ティアナが真剣な目で

「火星統一連合でも指折りの部隊、アレウスですか」

 

 デュオン会長が

「アレウスとは火星統一連合で称号のようなモノだ。火星統一連合や火星のどの部隊の中でも最も強い部隊が名乗る事が許された称号、正式な部隊名称は、火星統一連合、第七宇宙部隊」

 

 ティアナが

「第七宇宙部隊、優秀なMSパイロットの輩出、MSの戦闘において火星で最も最強とされる部隊。それが…」

 

 デュオン会長が

「そう、次の決闘の相手だ」

 

 ティアナが厳しい顔で

「こちらは二機、相手は…十機以上」

 

 デュオン会長が

「なので、こちら側は、決闘中で自由に補給という事を許されてはいるが…その数の差が認められた理由は、デュオ・ゼルウス…ゾルダスが原因だ」

 

 ティアナが

「それ程にデュオは強いと…」

 

 デュオン会長が真剣な顔で

「ティアナ、火星の魔王という俗称には、それ相応の力がある。つまり、それを証明し続けた実績があるという事だ」

 

 ティアナが

「デュオは、自分の事を脱走兵っぽいような退役兵って言っていましたが…」

 

 デュオン会長が目を瞑り

「火星統一連合でも、その力と影響力から扱いに困り、放置した…という所が本音だ。それに二十年前の事もあるしな。色々とあって…そういう事にされた」

 

 ティアナが

「だから、お爺様達が隠し持って」

 

 デュオン会長が

「監視はしていたが。デュオを正式に雇っていたのは、冥王星の企業、ナインハディスという遠方のプラント・グループだ。冥王星や他の星、プラントグループに木星で採れた資源を採取輸送する会社をナインハディス・グループは作っていて、そこにいた」

 

 ティアナが

「じゃあ、探鉱作業者をしていたのは…」

 

 デュオン会長が頷き

「事実だ」

 

 ティアナが

「十年も実戦から外れていて…それでもデュオは…」

 

 デュオン会長が

「自分が得意とする分野と、自分が好きな分野は一致しないモノだ。そういう才覚を持った男だったという事だ」

 

 ティアナが

「分かりました。とにかく、次の決闘に備えます」

 

 デュオン会長が

「すまんなティア…迷惑をかける」

 

 ティアナが微笑み

「構いません」

 

 こうして通信を終えてティアナが

「戦う為に生まれた人生…そんなの…」

と、悲しげだった。 

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