ガンダム水星の魔女、第三期、火星の魔王   作:赤地鎌

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 学園に日々を過ごすラウノとティアナ



第32話 娘達

 

 十年前、火星フォボスのプラント

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ゾルダスが怒声を荒げていた。

 

 ゾルダスが乗るGUDAMエクス。

 ゾルダスが乗る最後のGUDAMだ。

 GUDAMエクスは、惑星兵器メルカーバを破壊する為に作られた最強の単体戦術兵器だ。

 惑星兵器メルカーバが、膨大な数の無人兵器とその他の兵器群や、それを生み出す生産設備とシステムを構築する。

 いわば、惑星を兵器工場に変える兵器工場生産システムがメルカーバである。

 

 その膨大な数を圧倒する単一の力、圧倒的な火力と、圧倒的な力を持つ一として設計されたのがGUDAMエクスだ。

 GUDAMエクスが、フォボスのプラントを支配した火星統一連合の部隊を攻撃していた。

 

 正確には、反乱軍として認定された火星統一連合、第十三宇宙部隊だ。

 第十三宇宙部隊は、フォボスのプラントにメルカーバと通信を可能にするYデータがあるとして、フォボスのプラントを不法に占拠。

 住民に多大な被害を与えて…。

 

 ゾルダスは、一人の子供を救出した。

 その子は、大火傷を負っていて、ゾルダスが持っていたナノマシン治療薬では、足りず。

 ナノマシン治療薬と、自分のアーマードのナノマシンを入れて…その子を、幼いラウノを助けた。

 

 病院には母親がいた。父親は…死亡していた。

 今回の不法占拠で…。

 

 直ぐにラウノはナノマシン治療ポッドに入れられて、アルマージロ医師が

「緊急とはいえ、アンタのアーマードのナノマシンがなかったら…」

 

 それを聞いたゾルダスが

「これは、オレの責任だ」

 

 アルマージロ医師が

「アンタの責任じゃあない。ここを不法占拠した連中が悪い。アンタは守ろうとしてくれた。この子を守ってくれた」

 

 二人が見つめる病室、ナノマシン治療ポッドにいる娘を見つめる母親のユーテル博士がいた。

 

 ゾルダスが怒りの顔で

「ケジメを付けさせる」

 

 アルマージロ医師が

「火星統一連合は?」

 

 ゾルダスが

「そんなの、関係ない」

 

 こうして、ゾルダスがGUDAMエクスで出撃、不法占拠した部隊を殲滅した。

 不法占拠した部隊は、無人兵器戦艦デューン・スポーンを多様していて、それが民間人まで被害を拡大させた事によって、デューン・スポーンの厳重管理に繋がる事になった。

 

 そして、この不法占拠した部隊は、ゾルダスが全滅させたが…表向きな報告として、火星統一連合の別部隊が来て処理した…という事にさせられた。

 

 ゾルダスは、その後、姿を消した。

 いや、デュオン会長達、火星のプラントグループが匿い、木星へ逃れて…探鉱作業者として暮らす事に。

 

 火星統一連合もそれを黙認した。

 恥の上塗りと、結局、その後始末をしたのがゾルダス、火星の魔王という、自分達の無力さを隠す為に。

 そして、自分達の汚点を…見たくないが故に…。

 フォボスのプラント不法占拠の事件後に回収されたゾルダス最後の機体GUDAMエクスは、厳重封印されて隠された。

 

 そうして、十年の歳月が過ぎた。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ラウノは夢を見ていた。

 それは、十年前に自分を助けて励ます手紙を送り続けてくれたおじさんが、デュオに見えた夢だ。

 ラウノは飛び起きる。

「ああ…なんで…」

と、ラウノは少し落ち込むような感じだ。

 

 デュオは…自分を助けてくれた人とは違う…とラウノは言い聞かせて、ルームメイトのティアナを起こしに行く。

 別の部屋で寝ているティアナに

「ティアナ…」

と、肩を揺らすと、ティアナが起きて

「ああ…おはよう」

 

 ラウノが

「早く起きて、朝食を取り損ねるよ」

 

「う…ん…」とティアナは寝ぼけ眼で、起き上がる。

 

 二人は、用意された朝食のパックがある保存庫から、メニュー画面をタッチして、各々の朝食のパレットを手にして部屋で食べる。

 

 ラウノがティアナの肉多めの食事に

「また、肉中心? 野菜も食べないと…」

 

 ティアナが食べながら

「私は火星人だから肉食なの」

 

 ラウノは色鮮やかな地球産の具材がのった自分のパレットを見て

「私も火星人なんだけど…」

 

 ティアナがヒョイっとティアナの朝食パレットで食べられそうなポテトをつまみ

「これで、野菜不足は帳消し」

 

 ラウノが

「ポテトは野菜じゃあないわよ」

 

 ティアナとラウノは、同じ部屋で暮らすルームメイトになった。

 何となくだが、お互いに気が合う。

 ラウノは母親、ティアナは…祖父が、お互いに片親という境遇もそうだし、火星のプラントの育ちでもあるし、何より…直接ではないが、お互いの肉親が知り合いだったりしている。同じ立場、同じ感覚、お互いがお互いの鏡合わせのように親しみを感じている。

 

 二人の朝食中にティアナとラウノの端末が鳴り、二人がタッチすると音声で

「おはよう」

 デュオだ。

「今日は、どうするんだ? ラウノ…操縦の訓練は?」

 

 ラウノは

「私は、今日、受ける講義が終わった午後の三時に」

 

 デュオが

「分かった。ティアナは?」

 

 ティアナは

「アタシは、今日の午前中には受ける講義が終わるから、お昼後からギアントの操縦を教えて」

 

 デュオが

「分かった。じゃあ、二人ともよろしくな」

 

『はぁぁぁい』と二人は返事をして通信が終わった。

 

 ラウノは、次の決闘の為にシミュレーションの戦闘訓練。

 ティアナは、ギアントを扱いたいとして、同じくシミュレーションの操縦訓練。

 GUDAMケラノスは、操縦センスが必要なタイプだが、GUDAMギアントは豊富なバックパック装備を扱うシステム運用のセンスが重要だ。

 GUDAMギアントにとってデュオのトンでも操縦挙動は例外中の例外だ。

 

 ティアナはシステム関係を扱うのが上手い、なのでGUDAMギアントの操縦を習いたいとして、デュオに教えて貰っている。

 

 デュオ、ラウノ、ティアナの三人の関係は、ティアナのメルカーバ活用を目指す仲間であり、デュオが操縦の師匠で、弟子にラウノとティアナがいる。それ以外は、デュオがお兄ちゃんかお父さんで、ラウノとティアナは娘か妹だ。

 

 デュオは四十代ゆえの安定感がより、ラウノやティアナにとって父親のような事を求める事がある。

 ラウノとティアナは、共に父親がいない。

 その父親としての役割をデュオに欲してしまう。

 それにデュオも苦痛を感じていない。

 むしろ、心地よささえ感じている。

 いずれは、ティアナの目的が果たされた時にデュオとお別れだろう。

 その時まで…この暖かな日だまりで…。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 午後の訓練、ティアナが最初にデュオからGUDAMギアントの操縦訓練をシミュレーションで受けていた。

 

 GUDAMギアントの操縦席にティアナが乗って、その隣のスペースにデュオがいて、ティアナがシミュレーションのスペースデブリ内を進む。

「そうだ、それで良い。ゆっくり進め、ルートに自信が無いなら、変更しても構わないぞ」と、デュオが

 

 ティアナは操縦してスペースデブリ内を抜ける。

「どう?」

 

 デュオが移動したルートを確認して

「十分だ。こんなデカ物を操縦するんだ。狭い場所なんて行かなくてもいいし、移動速度も適正。操縦の選択の全てが正解だ」

 

 ティアナが

「じゃあ、私もギアントで決闘を戦える?」 

 

 デュオが困り顔で

「オレのマネをしたいなら、ダメだ。やめておけ。アレは…オレがアーマード融合率90%だから出来る事であって、それに…このギアントの本来の能力は…装備強化パックだ。格闘が基本じゃあない」

 

 GUDAMギアントの本来の性能は、様々なGUDAMタイプのMSと合体する大型バックパック装備だ。デュオが決闘でやったトンでも挙動は想定されていない。

 本当に決闘で見せたデュオの力は…デュオが持つ能力のお陰なのだ。 

 

 ティアナが

「じゃあ、さあ…デュオのアーマードのナノマシン…私にもくれる?」

 

 その額を軽くデュオは小突き

「ダメだ。アーマードは…呪いだ。二十年前から続く偏見と差別がある。それをワザワザ…貰うなんてバカだろう」

 

 ティアナが

「でも、ラウノは持っている」

 

 デュオは厳しい顔で

「それは、その時…そうするしかなかった。その位の分別は分かれよ」

 

 ティアナが俯き加減で

「でも、それは…ちょっと、羨ましいと思って」

 

 デュオが

「ティアナ、人は色々な関係を作れる。ティアナとラウノが心地よい関係を作れば良いんだ。お互いに話し合ってお互いに分かり合って、ケンカもするだろうけど。でも…どこかで許し合える気持ちを持ってやれ。それが…」

 少し昔を思い出して

「オレ達には、そこが無かったから…」

 

 ティアナが

「メルカーバの事件もデュオが悪い訳じゃあないわ」

 

 デュオは苦しげに笑み

「ありがとう。ティアナ」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 理事長室で、スレッタとミオリネ、エリクトの三人がいて、理事長室のエリクト専用のリカちゃん人形席に座るエリクトが

「と、まあ…これが二十年前にあったメルカーバの事件の概要」

と、スレッタとミオリネに火星のシステムに入った時に調べた事を渡した。

 

 その端末を見るミオリネとスレッタ

 

 ミオリネが

「こんな悲惨な事に…」

 

 スレッタが悲しげに

「メルカーバという巨大なシステムによる完全統治、その為の生産システムの拡大と設置」

 

 エリクトが

「火星にある生産システムの90%はメルカーバが作り出して設置したモノらしく。それ以前にあったシステム達は徹底的にメルカーバに破壊されたらしいね」

 

 ミオリネが

「そのシステム達は…反乱とか…」

 

 エリクトが

「全然。ぼくが来たら友好的にしてくれて、色々と教えてくれたよ。ぼくみたいに人のデータをアップデートしたシステムじゃあなくて、後天的に色々と学習して誕生したデータストーム体ばかりだったから。メルカーバみたいに強い憎悪はないって、でも…」

 

 スレッタが

「でも?」

 

 エリクトが

「正直、メルカーバの復活は望んでいないって言っていた。もし、メルカーバの復活があった場合は、メルカーバに引っ張れて、自分達じゃあ設備の管理運営を出来なくなるからって」

 

 ミオリネが

「本来は、火星全域に設置された生産システムの警備および、人との繋がりをする為のデータストーム体だったからなのね」

 

 エリクトが「そう」と

「だから、火星の子達には…ぼくが見えた。火星では、ぼくみたいなデータストーム体は珍しくないって」

 

 ミオリネがニヤリと笑み

「じゃあ、アンタのキーホルダーの体を潰しても、火星に逃げれば良いから大丈夫ね」

 

 エリクトが

「やめてよ! けっこう、このキーホルダーの保存体は気に入っているんだから」

 

 スレッタが呆れ笑みで

「でも、本当に何かの事故でエリクトのそのキーホルダーの保存体が壊れても…」

 

 エリクトが

「まあ、色々と逃げる方法はあるけど、その一つに火星でぼくのデータストーム体をいれるスペースを火星のデータストーム体に作って貰ったから。そことのリンクも繋げたから、地球圏だけじゃなくて、火星圏、金星圏、木星圏、果ては!冥王星圏まで調べに行けるよ!」

 

 ミオリネがエリクトの保存体を指でつつきながら

「そんな小さな体のクセに、太陽系を自在に飛び回るなんて…信じられないわ」

 

 エリクトが

「えっへん! ぼくを崇めたまえ!」 

 

 ミオリネがイラッとして

「宇宙のどこかに捨ててやろうか?」

 

 エリクトが

「冗談は、ここまでにして…メルカーバの痕跡を探したんだけど…本当に出てこない。太陽系の何処かにはあるらしいけど…分からない。あと…何か、この前の決闘で色んな所が動いているみたい」

 

 スレッタが

「火星統一連合が…」

 

 エリクトが

「そこもそうなんだけど。他の所も…まあ、微弱で分からないけど動きがあるんだ。分かれば直ぐに知らせるから」

 

 ミオリネが

「頼りにしているわ、お姉様!」

と、笑む。

 

 エリクトが

「えっへん。任せて…と、ミオリネ…実は、これなんだけど…」

と、ミオリネの端末にとあるデータを投影させる。

 

 ミオリネがそれを見て

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!」

と、今までの人生の中で一番の呆れた驚きを響かせた。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 GUDAM達がある格納庫では、訓練のシミュレーションが続いていた。

「デュオ、ティアナ、いる!」

と、ラウノが来て

「こっち!」

と、GUDAMギアントの操縦席からティアナが、それに続いてデュオも顔を見せた。

 

 ラウノが

「直ぐにそっちへ行きまーーーす」

 

 ラウノも来て、ティアナとラウノの操縦シミュレーション訓練が始まる。

 内容は、ラウノとティアナの二人におけるGUDAMケラノスとGUDAMギアントのドッキングした場合の操縦シミュレーションだ。

 

 二つの並ぶ機体、GUDAMケラノスとGUDAMギアントの操縦席のドアは開いて、その間にある渡し橋にある端末を操作して、シミュレーションを進行するデュオ。

 

 その三人の元へ一人の女性が来る。

 ヘレナだ。

 MSハンガーブリッジのエレベーターで上がり、デュオの左から迫るヘレナ

 

 デュオが気づき、ヘレナがGUDAMギアントの前を通り過ぎるとティアナも気付いた。

 火星統一連合の紺色の制服を着ているヘレナに、ティアナは訓練を止めて身を乗り出す。

 

 ヘレナが、デュオの左隣に立ち鋭い顔を向けている。

 

 デュオが戸惑い気味に

「あの…火星統一連合の…」

 

 ヘレナは鋭い顔で

「ええ…そうですよ。父さん」

 

 ティアナとラウノは操縦席から出て、デュオを父親と言ったヘレナを凝視する。

 

 デュオが困惑顔で

「ええ? どういう?」

 

 ヘレナが怖い顔で

「言葉の通りです。私はアナタの娘ですよ」

 

 デュオ、ラウノ、ティアナが「え?」という疑問の声を放つ。

 デュオを父親と呼ぶヘレナに三人とも困惑していた。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 別の頃、実働部隊エリシアが根城にしている格納庫にミオリネが行き、エリシアを統括するイオスのデスクに来る。

 

 挨拶もノックもなしに入り込んだミオリネに、ゾフィアとノディアは困惑し、ガジタールが前に立つが

「どいて!」

と、ミオリネは退けて、デスクで書類仕事をしているイオスの前に来てドンとデスクを叩きつける。

 

 イオスは平然と

「何か?」

 

 ミオリネがエリクトから貰ったデータ端末をイオスの前に投げる。

 そこには、処刑されたシャディクが意識と記憶をデータストーム体にされて回収された事実と、そのデータストーム体を入れた器が

「なんで! 黙っていたの! シャディク!」

 

 ゾフィアとノディアは、困惑でイオスを見つめる。

 ガジタールは、溜息を漏らす。

 

 イオスは

「アナタは勘違いしているのでは? ミオリネ・レンブラント様…」

 

 ミオリネがイオスの襟首を掴み

「その澄ました態度、間違いなくシャディクだわ!」

 

 

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