ガンダム水星の魔女、第三期、火星の魔王   作:赤地鎌

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 そこには、因縁が渦巻いていた。


第33話 因縁

 

「お母さん、私のお父さんって、どんな人?」

 小さな頃のヘレナの純粋な疑問だった。

 

 母親のテレイアは微笑み

「凄く、強くて、優しい人よ」

 

 ヘレナが

「そうか…」

 

 テレイアが微笑み

「お父さんは、本当に立派な人だった。仲間の為に一生懸命にがんばって、ツラい事もあったけど、一言も…恨み言なんて言わなかった。強くて優しい人よ」

 

 ヘレナが

「私、お父さんに会えるのかなぁ?」

 

 テレイアが何かを言いそうになったが…

「そうね。何時か…会えるわ」

 

 

 同時期、オックスアースの残党のトップであるソロモンが

「この作戦を決行する」

 

 オックスアースの残党の傭兵達を率いて、火星の施設を襲撃した。

 

 だが、失敗した。

 

 返り討ちにあって、その数を減らして撤退。

 

 敗走して宇宙へ逃げたオックスアースの残党は、廃棄処分寸前のプラントへ。

 ソロモンが、そこのプラントに残された食料生産施設を動かして、食料と…現実の悲惨さから逃れる為に、アルコールに…。

 

 ソロモンは口にしたアルコールのコップをテーブルに叩きつけて

「クソ…」

 

 何も現状は、変わらない。

 やっているのは、野党と一緒だ。

 自分達を維持する為に、裏社会の雇い主から依頼を貰って施設を襲う。

 成功する事もあるが…ほとんどは…失敗する。

 こんな事、辞めればいいのに、辞められない。

 辞めた所で、行く場所も、逃げる場所もない。

 

 ソロモンは、一枚の小さな端末を取り出す。

 そこには、息子と妻に自分の三人が幸せだった情景が残っていた。

「イエル…シルヴィア…」

 

 世界の悪としてすり潰されそうなソロモンの元へ

「どうも…」

 シルクハットを被った悪魔が姿を見せた。

 

 ソロモンが

「誰だ! おい! 誰が部外者を!」

 

 悪魔の紳士が

「部外者ではありませんよ。アナタ方をここ逃がしたのは、私達なんですから」

 

 ソロモンが驚きで

「どういう…事だ?」

 

 悪魔の紳士が笑み

「私どもは、都合の良い傭兵が欲しいのです。我々と契約をしませんか? ソロモン・オルグ・エイルサム」

 

 ソロモンが困惑と驚きで戸惑っていた。

 

 そして、ソロモン達がいる廃棄処分寸前のプラントに、プラントと同じサイズの巨大な宇宙戦艦が停泊する。

 

 悪魔の紳士が、目の前にするソロモンに、停泊した巨大な宇宙戦艦の映像を指さして

「まずは、前金として…あれを贈呈しましょう」

 

 ソロモンは警戒で

「何が…目的だ?」

 

 悪魔の紳士が

「言ったでしょう。都合の良い傭兵が欲しい…と。我々、冥王星圏のプラント、ナインハデスの裏仕事をする部門がね」

 

 ソロモン達に選択肢は無かった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 そして、時は流れて現在。

 オデッセウス学園のMS格納庫、そこのGUDAMギアントとGUDAMケラノスが格納されている場所で、デュオ・ゼルウスは困惑の顔を向けていた。

 

 ケラノスとギアントの足下で、ヘレナがデュオを前に説明する。

「テレイア・アガラスを知っていますよね」

 

 デュオが困惑の顔で

「ええ…誰?」

と、告げる両脇には、ラウノとティアナの二人がいる。

 ラウノとティアナは、デュオを見つめるが、その視線は俯き加減で少し苛立ちと怯えが混じっている。

 

 ヘレナが苛立ち

「二十年前、アナタの婚約者だった女性ですよ!」

 

 デュオが額を押さえて思い出して

「あああ! 思い出した! テレイア将軍か! で?」

 

 ヘレナが

「私の母親はテレイアです」

 

 デュオが関心するように

「ああ…テレイア将軍のお子さんですか…」

 

 ヘレナが

「母は、将校ではなく、補給部隊のシステム管理の一般兵員です」

 

 デュオが淡々と

「あ、そう…」

 

 ヘレナが苛立ちながら

「私は、母とアナタの間に産まれた子供なんですよ!」

 

 デュオが落ち着けるように

「待て待て、オレは二十年前に、テレイア将軍との婚約を解消した。別れたんだ。キミは幾つだね?」

 

 ヘレナが「十九です」と答える。

 

 デュオが

「良いか、オレはアーマードだ。しかもアーマード融合率90%の男性だ。男性がアーマード融合率30%を超えると子孫を残す生殖機能を無くす。女性ならアーマード融合率90%でも生殖機能はある。つまりだ、オレは…テレイア将軍と別れた時には、アーマード融合率90%を超えて生殖機能が無くなった。それ以前に、テレイア将軍の下にいた時にアーマード融合率40%越えしていたんだ。オレは、子孫を残す力は無い。なのに…キミはオレを父親と言っている。おかしいだろう」

 

 ヘレナが苛立ち気味に

「母は、アナタのDNA情報を元に…生殖細胞をリプリチャイルドして、その精子と母の卵子で受胎して、それで…私が…」

 

 デュオが一歩前に出てヘレナを威圧するように見下ろして

「リプリチャイルド協定ってのを知っているか?」

 

 ヘレナが歯を食いしばる。

 分かっているのだ。

 

 デュオが

「リプリチャイルドして誕生させた子供は、遺伝子元である人物との親権及び、財産権、その他の権利を持たないし持たせない。それを分かっているな」

 

 ヘレナが拳を固くしてデュオを睨み上げる。

 ヘレナとデュオの身長差は頭一つだ。

 

 デュオは淡々とヘレナに

「キミとオレとの親関係はない。それを主張する事はできない」

 

 ヘレナがデュオに飛びかかろうとするが

「やめろ」

と、ブシードが来て、ヘレナの肩を持つ

 

 ヘレナが

「おじさん…」

 

 ブシードが

「ヘレナ少尉、機体の調節がある。今すぐ行きたまえ」

 

 ヘレナが少尉と呼ばれたので軍務である事を優先して

「了解しました。ブシード大佐」

と、走って行くが、睨むようにデュオを見て去った。

 

 ブシードがデュオの前に来て

「久しぶりだな。シロウ」

 

 デュオが

「デュオ・ゼルウスだ。オレは…もう、二度と会いたくなかったさ」

 

 デュオは身長百八十五、ブシードは百七十五だ。

 少しだけブシードがデュオを見上げて

「シロウ。帰って来ないか? オレ達の元へ」

 

 デュオは呆れ気味に

「嫌だね。二度と利用されるつもりはない」

 

 ブシードが

「十年前のフォボスのプラント不法占拠の事件の後、お前は姿をくらませたが…オレ達、火星統一連合は、それを黙認している。その意味が分かるか?」

 

 デュオは呆れた笑みで

「自分達の権力の為だろう。オレは…有名になりすぎた。俺自身もそんなつもりはないのに…周囲がな。オレを火星統一連合の上に据えるべきだったって、オレに交渉を持ちかける奴らばかりで辟易していた。だから、権力を握っている上の連中にとって邪魔だった。だから、そうしてやったまでさ。オレも嫌気が差していたしな」

 

 ブシードが

「違う。お前を守る為だ。フォボスの事件が明るみになった場合、お前を危険視する声が広がった。再び、メルカーバのような事が起こるのでは? それから守る為にお前を…だから、もう…戻って来ないか? オレ達は…仲間だったはずだ」

 

 デュオは面倒な感じで

「もう、仲間じゃあない。そもそも、お前は仲間だった事は無い。本当の仲間達は、ルグスムーンに…」

 

 ブシードが

「姉さんは、お前が帰ってくるのを死ぬまで待つぞ。ずっと、ずっと…人生の最後に…一日でいいから…。シロウ…が帰って来て、共に過ごす事を信じてだ」

 

 デュオがブシードに背中を向けて

「気持ち悪い女だ。いい加減に別の誰かと結ばれて幸せになれば良いのに…。伝えて置け、シロウ・アガマは死んだってな」

 

 ブシードが

「そうか。だがな…オレ達には、覚悟がある。それを何時か…」

 

 デュオが

「うるせぇなぁ…自分の気持ちを押し付ける、お気持ち地縛霊が…お前等のお気持ちなんていらんわ」

 

 ブシードを背に去って行くデュオの目の前には、ラウノとティアナがいる。

 

 ラウノとティアナは、悲しそうな顔をしている。

 それを見てデュオは、二人と同じ視線の高さまで屈み

「ごめんな、嫌な部分を見せてしまって…今日は、これで訓練を終わろう。気分の悪い思いをさせたんだ。二人が食べたい物をおごるよ」

 

 ラウノとティアナは視線を合わせた後に頷き、ラウノが

「あの…色々と聞いて良い?」

 

 デュオは溜息を漏らすも

「ああ…食事をしながらな」

 

 デュオとラウノにティアナの三人が共に去って行く姿をブシードは見つめて

 もう、ゾルダスにとって自分達が必要ではない事、繋がりがない事を知る。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 デュオは、ラウノとティアナを連れて学園の近くにある町へ向かう。

 その最中、学園のベンチに座って、項垂れているイオスを慰めているゾフィアとノディアがいた。

 

「な、なんだ?」とデュオがイオス達に近づく

「どうしたんだ?」

 

 イオスが引きつった顔を上げて

「実は…」

 

 ミオリネにシャディクという烙印を押されて胸ぐらを掴まれてケンカになりそうだったのを、ガジタールとゾフィアとノディアが止めて、ミオリネを下げたが…それでもミオリネの剣幕は止まらず、遂にスレッタと仲間達が来て、ミオリネを引っ張っていた。

 まさに大変な事になって、落ち込んでいたイオスをゾフィアとノディアが慰めているという図式が完成した。

 

 ラウノが

「イオスさんと、そのシャディクさんって人はどういう関係なんですか?」

 

 イオスが

「私は人工生命体、データストーム体であるのは…ご存じですよね」

 

 ラウノとティアナが頷く。

 

 イオスが

「私が人の人格を学ぶ際に提供されたデータストームの記憶メモリー達の中に、シャディク・ゼネリがいたのです」

 

 ラウノが

「ああ…なるほど、学習した人物で、もっともクセが受け継がれた記憶メモリーが…」

 

 イオスがメガネを押さえて

「全く、私はシャディク・ゼネリではありません。シャディク・ゼネリの記憶メモリーから学んだ。データストーム体ではありますが。それ本人とは別の存在です。それが…」

 

 ゾフィアが

「声と雰囲気が似ているから…って、あの暴力女が掴みかかったんだよ」

 

 イオスが

「私を作ったのは、冥王星のナインハデス社です。そのナインハデス社が管理する。データストーム体を学習させる故人のデータストーム体の幾つかに、シャディク・ゼネリがいただけで…それを…」

 

 デュオが

「記憶があったとしても…故人と同じではないからなぁ…」

 

 ノディアが

「そんな事は分かっていると思うんだけど…」

 

 デュオが

「もしかして、エリクト・サマヤの件が大きいんじゃないのか?」

 

 イオスが

「エリクト・サマヤは特別です。信じられないほどのデータストーム適正があったから、フルデータストーム体になれただけであって、それ以外の人間は、記憶だけが抜かれた記憶メモリーのデータストームになるだけです」

 

 デュオが悲しそうな顔で

「そうだな。ルグスムーンも死者の記憶、メモリーデータストームの塊であって、命があるわけではない。記憶を幾つも連結して、シミュレーション演算している。システムでしかない」

 

 ティアナが「デュオ…」とデュオを見つめる。

 

 デュオは微笑み

「その膨大な怨念の記憶共が、二十年前のメルカーバの事件を起こしたから…バカにできないが…」

 

 イオスが自分を指さして

「それと、私とでは、規模が違い過ぎますよ。私はそれよりも遙かに小規模で一個人のデータストーム体が限度です」

 

 そこへ「あの…」とスレッタが来る。

「すみません。ミオリネが…あんな事を」

と、頭を下げる。

 

 イオスが

「んん…スレッタ教官。私は、シャディク・ゼネリではありませんから。そこだけはご理解ください」

 

 スレッタが頭を上げ「はい」と

「あの…詳しく…お話を聞かせて貰えないでしょうか?」

 

 イオスがデュオを見ると、デュオが

「ああ…全員の用事をまとめよう。オレ達全員で、どこかのレストランへ行って…そこで…」

 

 イオスが答える前にゾフィアが

「賛成!!!!!!!」

 

 大きな食事会となり、一同は近くの町へ繰り出した。

 

 大人数が入れるレストランに来ると、ゾフィアが主導で色々と頼み。

 大きな食事会の中で、イオスがスレッタに色々と説明した。

 

 自分は人工生命体のデータストーム体で、人格や知識学習の為のサンプルの一つにシャディク・ゼネリのデータストームがあっただけで、シャディク・ゼネリとは無関係だと。

 そして、そういう人工生命体のデータストーム体は、火星では珍しい事ではない…と。

 

 そして、スレッタは驚きの事実を知る。

 シャディク・ゼネリは、極刑を受ける前に、データストームの実験体として志願して、データストーム汚染や、生体の変化のサンプルにされた後に…レーザーで焼き殺された…と。

 そして、それは何時かのエラン四号とは違う事実があるという事を…。

 

 

 次の日、デュオとラウノとティアナの三人は、次に決闘する十人と顔合わせをした。

 次の決闘の相手は、火星統一連合所属、ブシード大佐の精鋭部隊、アレウスだ。

 

 アレウスにブシードを除く九人、女性が六人、男性が三人。

 その女性達がデュオに対して鋭い視線を向けている。

 

 デュオは訝しい顔をする。

 ヘレナの事で、アレウスの女性陣が敵愾心を向けているのが分かる。

 

 ラウノとティアナもそれを分かっていた。

 

 デュオはそれをどうこうするつもりないが、煽るには使えるとして

「へぇ…本当の事を言って逆恨みされちゃあ、かなわないぜ」

と、舐めた態度を取る。

 

 アレウスの女性陣の殺気が上がる。

 

 ブシードが

「安い挑発に乗るな!」

 ブシードの言葉は正しい。

 だが、アレウスの女性陣達は、デュオの考えがどうしても許せないのだ。

 

 デュオは感じる。

 こんな簡単な挑発に乗るようなら、勝負は目に見えている。

 一番の問題は、それに動じないブシード達男性陣だ。

 それさえ…

と、デュオは内心で勝つための算段をしていた。

 

 ブシードは予感する。

 冷静さを欠いた状態で勝利はない。

 負けた後の算段を用意して置いた方が無難か…と。

 

 

 その頃、巨大なプラントサイズの宇宙戦艦がステルス航行して地球へ近づいていた。

 そのプラント型宇宙戦艦は、オックスアースの残党のモノだ。

 オックスアースの残党が目指すのは、地球、オデッセウス学園だ。

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