3人の転生者 3人の部隊 ~目指せA級1位~ 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
知らない天井だ
俺はバスに乗っていて横から突っ込んできたトラックに潰されて死んでしまったはず……なのに意識がある?
体は動かないがどうやら助かったみたいだ
ここは……病院か?
とりあえず意識が戻ったことを示さないと
「あーあぎゃーあぎゃー!」
なんだ?
声が上手くでない
まるで赤ん坊の鳴き声じゃないか
手足にも全く力がはいらん
ダメだ……意識が持たない……
生まれ変わったということに気がついたのは病院を退院してからすぐのこと
母親におっぱいを飲ませてもらうという羞恥プレイをされた時にあぁ、生まれ変わったんだと認識した
家族構成は父親と母親と自分の3人家族でどうやら自分は桑原天元(くわばら てんげん)という名前らしい
なかなか古風な名前だが気に入っている
もっとも前世30過ぎのサラリーマンに赤ちゃんの現状は羞恥プレイの何物でもない
スッゴく辛い
早く体を動かせるようになりたいものである
転生してからはや10ヶ月
ハイハイを卒業してつかまりながらなら歩けるようになった
言葉も普通に喋れるようになり、今は絵本を読む振りをしながら父親の漫画を読むことにハマっている
そうそうあと友達もできた
「はぁ、転生なら10歳くらいになりたいものね。赤ん坊からやり直しは辛すぎるんだわ」
「全くだ」
隣近所に住む結城淡(ゆうき あわい)と武田元康(たけだ もとやす)
2人とも転生者であり、淡は大学生、元康も大学生だったらしい
共通点は同じバスに乗っていたことと、席が近くトラックに潰されたことくらいである
淡と元康の大学は別だし、俺に至ってはサラリーマン、年齢もバラバラだった
「まぁ転生者同士仲良くしようや」
「そうだね」
「賛成」
家族達も仲の良い感じなので週に2回くらいのペースで顔を会わせる
積み木で遊ぶ振りをしながら親にバレないように小声で会話をいつもする
よく話題に上がるのはこの世界が自分達の知っている地球なのかである
一見少し前の地球の日本であり、特に異世界って感じでもない
年代も1990年代で特に変わったところはない様に感じる
やっていたテレビのドラマや漫画、アニメが少し違ったり、町に出たときにチェーン店やコンビニの名前が少し違ったりしたくらいで別に違和感は無い
「なーにかひっかかるところある?」
「三門市ってのどこかの漫画で見たこと有るような無いような」
「淡ちゃん頑張って! 思い出して!」
「うーん、うーん……」
「まぁ現代日本っぽいし、日本沈没とかじゃない限り大丈夫でしょう」
「絶妙に古い作品持ってきましたね天元さん」
「えー? 古いか? 皆見たこと有るでしょ日本沈没」
「まぁありますが……」
「……さてと、とりあえず転生したんだ。やるならビッグになりたいじゃん! 歴史も少し変わってるし、株とかで稼ぐのは無理そうだし、学生からやり直しができる利点は大きい。医者でもスポーツ選手でも狙ってみる?」
「この時代だと野球、サッカー、テニスかな? 稼げるスポーツだと」
「いやいや、スポーツ選手は運要素が大きい。ここは医者とかを目指すのが良いんじゃないですか?」
「うへぇ今から勉強か」
「まぁどんな世界かわからないし勉強しつつ、運動もして適度に鍛えておくのが良いんじゃないか?」
「今赤ん坊だし、できること家の中を歩くこと位しか無いしな」
「じゃあとりあえず、どんな世界か確認作業を継続しつつ一杯食べて大きくなって、勉強するのが第一で」
「「賛成」」
1歳になり、体がしっかり動かせるようになると俺は自分が増える感覚がした
その事を皆に報告すると他の2人も不思議な感覚があるとの事
「多重人格ってやつか?」
「いや、俺がメインPCだとするとサブPCみたいな感じ? 並列処理の手伝いをしてくれるみたいな?」
「それすごく良くない? 超能力ってやつ?」
「かもしれん。そんな世界って有ったか?」
「超能力バトル系漫画の可能性が出てきたね。あ、ちなみに俺なんか名前とレーダーチャートが見えるわ」
「なにそれ?」
「俺にもわからん。ちなみに俺ら全員1つだけ10であと残り全部1が並んでる」
「なんじゃそら?」
「私はなんていうか空間把握っていうの? 部屋の中に何がどこにあるか手に取るようにわかる感じ」
「淡……なんかそれ」
「将来苦労しそうじゃない?」
「私もそれ思った。でも便利よどこに誰が居るかわかるから」
「もの隠しても全部バレるじゃん」
「というかそれお祭りの紐くじとかやったら最強じゃね?」
「あ! 確かに!」
「えぇ、もっと有意義なのに使えよ……」
2歳になると3人とも自重を辞め、普通に中学レベルの問題を覚え直していた
親達はびびっていたが、隣近所の子供達(というか隣の2人)も同じレベルということに安堵しつつ、自由にさせた
「うーす! おばちゃんこんにちは」
「こんにちは!」
「あら淡ちゃん、元康君こんにちは! 天元友達が来たわよ!」
「はーい! よう! 二人とも」
「「お邪魔します!」」
3人で親が居る家に遊びに行き、数学のドリルをやったり、英語や漢字を覚えたり、本を貸し有ったりしながら勉強をする
「スイッチとかプレ5とかでゲーム慣れてるから今のゲームは辛いわマジ」
「今スーファミだっけか? ドットグラフィックのゲームは遊び辛いわな」
「というかこういう勉強道具は買ってくれるけど俺の家はゲーム系は小学校からって言われたわ」
「あー、元康ドンマイ。まあ俺もそうだけど。それより町の探検してーわ、淡は何か感じるのがあるんだろ?」
「まー、三門市ってのをどこかで聞いたことが有るような無いような……」
「思い出せないものはしゃーない」
「でもなんかきっかけが有れば思い出せそうなのよねぇ……」
「まぁでも直ぐにどうこうなる感じじゃないでしょうに……」
それから幼稚園に通い始めた頃には地元では有名な神童3人組と呼ばれるようになっていた
幼稚園で高校レベルの問題を解け、一部は大学の領域にまで到達していたからである
幼稚園が終わると価値観が同じ3人でやはり遊び、色々な場所に行くようになっていた
活動範囲も広くなり、家から半径5キロを活動範囲として行動していた
図書館に入り浸ることもしばしばであった
「あぁ~歴史が一部違うから過去の歴史が邪魔して頭に入り辛い!」
「しゃーない。でも歴史と地理以外はほぼ同じで助かった。地理も少し名前が違うからごっちゃになるわ」
「確かになぁ……でも子供の体に大人の精神だと勉強が必要とわかってるから頭に詰め込めるし、記憶力も良いから本当助かるわぁ」
いつものように3人で勉強をしていつもの様に家に帰る
何の変哲もない日常のハズであった
帰り道、人気の少ない場所を歩いているとき、淡が何かに気がついた
遅れて俺と元康もそれに気がつき咄嗟に物陰に隠れた
白く、小型犬ほどの大きさの6足で甲羅を背負ったような見た目の一つ目のそれは全員見覚えが合った
その瞬間に全員がこの世界が何かを思い出した
(((ワールドトリガーだ!)))
ワールドトリガー……一時期はジャンプ本誌に連載され、作者の体調不良などで別誌に移動した後も根強いファンに愛され、遅効性SFと言われたり、人物の多さから何度も読まないと頭に入らない、ファンブックが異次元のクオリティ等と呼ばれる作品である
このワートリは異世界の近界と呼ばれるもう一つの世界が玄界……地球に侵略や人攫いを密かに行っている世界線である
「ふぅーふぅー」
「落ち着け……気づかれる。居なくなるまで待つぞ……」
3分後にはラッドと呼ばれる小型トリオン兵(近界の偵察兵器)は居なくなり、俺達は淡の家に逃げるように移動して情報のすり合わせを行った
「そうじゃん! 三門市ってワートリの舞台の市じゃん!」
「淡落ち着け、まず確認だ。ワールドトリガーを淡は知ってると思うが元康も知っているか?」
「勿論。だだ大まかな流れは知っているけど細かいところや作中の人物全員の暗記はしていない」
「俺はファンブックは買ったりしたが、コアなファンではないな。淡は?」
「バッチリと言いたいけど転生してから約5年近く経過しているから所々穴抜けになってる」
「なるほど……さっきのトリオン兵はラッドで合っているか?」
「うん。小型偵察型トリオン兵ラッドのハズ」
「……現状ワートリの主人公達が所属するボーダーだったか? 近界への防衛機構はニュースとかで聞いたこと無いよな」
「無いな」
「あの建物40階近くある巨大施設だから市のどこからでも見えるくらいデカイ施設だから見えないってことは原作前でしょう」
「原作の始まりは市の壊滅から始まるだろ。いつか淡わかるか?」
「正確な年表は出てなかったハズ……誰かしら作中キャラが出てくれば年齢から逆算してこの年ってわかるんだけど……」
「それがわからないと怖いよな」
「……いや、1つわかることがある。確か地図が……有った有った。ワートリの話で主人公の1人である雨取千佳がショッピングモールを爆撃したシーンが有るだろ。つまり大規模な侵攻時にはショッピングモールが有ったハズ」
「……ん、あるか無いかの話で思い出したけど玉狛支部……主人公チームが所属するボーダーの支部だけど、旧ボーダー時代の基地だったって話が載ってたと思う。川の上の基地だから探したらわかるかも」
「「ナイス淡!」」
「えへへ」
「でもちょっと待てよ……ワートリってわかったのなら三門市以外は安全が確保されてるよな。というか旧ボーダーに積極的に関わる必要は無いんじゃないか? 下手したら死ぬし」
「「確かに」」
あーでもないこうでもないと話していると全員落ち着きを取り戻していく
「まずわかったことはこの世界がワートリの玄界であること、原作のかなり前であること……くらいか?」
「原作知識で川の近くに界境防衛機構……ボーダーの前身の組織が有るかもしれないこと、将来三門市は戦場になり、多大な死傷者を出すこと……か」
「問題はその戦場となる三門市に居ること、幸いなのは三門市でも比較的郊外地域だから市外に大人の徒歩なら30分で抜けられる事かな」
「市街地だと香取達(作中の女性隊員)みたいに侵攻直後に家の下敷きにみたいなのは避けられるかな」
「でだ、旧ボーダーには関わらないで良いな」
「「異議なし」」
3人で話し合った結果わざわざ死亡リスクが高い旧ボーダーに関わるよりはボーダーが正式にできてから関わる方が良いと判断
トリオン(この世界の人間皆が持っている生態エネルギーのこと)の量によっては技術者やオペレーターになることを視野に入れつつ、体を鍛えていくと言う風に決まった……が
「となると超能力じゃなくてサイドエフェクトかよ」
「あー! このレーダーチャートもしかしてあれか! ファンブックのデータベースのレーダーチャートかも!」
「「嘘! マジ!」」
「マジマジ、全員サイドエフェクト持ちならこの10ってのがトリオン量で……あとなんだっけ?」
「右上が攻撃、右が防御・援護、右下が機動、下が技術、左下が射程、左が指揮、左上が特殊戦術よ」
「それ見えるって強くね?」
「敵の能力の可視化とかヤバイじゃん」
「となると全員トリオン量が最低10あることになるわよね?」
「あ、いや、今俺含めて11になってるよ」
「成長したってことか?」
「じゃない? 未成年のうちはトリオン量成長するって書いてなかったっけ?」
「筋肉と同じらしいから鍛えれば成長するって作者がどこかのQ&Aで書いていたわね……元から多い人は自然成長でも微量なら多くなるってことかもしれないし、鍛えればもっと伸びるわね」
「鍛えるってどうやって?」
「あっ……うーん」
「それこそ俺らの場合はサイドエフェクトじゃね? トリオンに関連してるってなってたハズだし」
「「おお!」」
「よし、やることが見えたな! サイドエフェクトを鍛える! 体を鍛える、勉強する!」
「やっぱりそれに行き着くよね」
「でも強くなれるのがわかっただけでも良しとしましょ!」
「あ、でも単独行動厳禁な」
「「?」」
「トリオンが多いほどネイバー(近界民)から狙われやすいから」
「確かに雨取ちゃん狙われてたもんね」
「まぁ基本3人で遊ぶし大丈夫じゃない?」
「まぁそうだな」
こうして俺らは1ワートリファンとしてボーダーに入ることを夢見て鍛えることを始めるのだった
別に将来ボーダー関係の職に付けば安泰だとかそういう考えも少し……いや、かなり有るが……