3人の転生者 3人の部隊 ~目指せA級1位~ 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「今月はまったく侵攻がないな」
「平和なことはよいことじゃないか」
「近界民をぶっ殺したい俺からすると少しな」
夏休みとなり防衛任務に就く人員が多くなったが、なぜか近界からの侵攻がまったくがなかった
その分ランク戦は活発になり、5月入隊の新隊員も2ヶ月が経過したので正規隊員に昇格するのがちらほら出てきていた
正規隊員の数は50人まで増え、その中には昇格した元康の弟妹達も含まれていた
夏休みという稼ぎ時に暇なのは稼ぎたい人員からしたら不満だが、練度が向上するのはボーダーとしてはありがたかった
ではなぜこんなに襲撃が無いか、ボーダーとしては大規模な侵攻の為に時期をうかがっていると考えられていたが、実際は玄界に近い国々同士が戦争中でそれどころではなかっただけだった
そんな裏事情をしらないボーダーは技術スタッフの増員である程度開発力に余力ができたため、狙撃トリガーとオプショントリガーの開発が進められた
近界研究室でもレイガストとスラスターの開発がひと段落し、メテオラの研究をする傍ら、近界での索敵の話題となったときにカクラがとあることを言った
「そういえばトリオン反応を隠すトリガーはボーダーにはないの」
との発言で、近界にはトリオン反応を探知するトリガーが一般的になっていると判明した
旧ボーダーのメンバーも基本防衛でレーダーを頼れば良いので、逆に自身をレーダーから隠すことは頭から抜けていたみたいである
このことをすぐにレポートに書いて鬼怒田さんに提出し、これに併せて、C級隊員にトリオン反応を消すトリガーを付けた方が良いと提案した
これは淡が第二次侵攻で多数のC級隊員が連れ去られた時にバッグワームを着用できていれば敵も目視のみでの回収となり、トリオン兵から逃げられるのではというものだった
遠征艇解析が終わり、トリオン兵の解析を進めていた鬼怒田は近界研究室からの意見書の有効性をすぐに理解した
逆に言えばもし逆侵攻をした際に探知を回避するトリガーが無ければすぐに発見されるということだからだ
こうして8月にはバッグワーム、東の意見で改良されたバッグワームタグ、それのカウンターの強化レーダーが続けざまに発表されたが、強化レーダーはコストが高いことから、基地レーダーの改良で個人携帯のトリガーとしては見送られた
C級隊員へのバッグワームの配布はコストの関係で見送りとなってしまったが……
夏休み、玄界の事をエイスリン達に更に知って貰うために上の許可を取り、海に連れ出した
捕虜を外に出すのは危険ではないか、逃げたらどうするか等の意見が出たが、外に出れないことによるストレスを考えると外出許可を一時的にだした方が良いと最終的に判断され、許可が下りた
ミニバンに大人のスタッフ(山際さん24歳 技術スタッフ)の運転で近くの海水浴場に向かっていた
メンバーは桑原隊の4人にエイスリン達、そして運転手の山際さんの8名である
「本当に玄界は広いんですね」
「車という乗り物は本当に速いですね」
「映像で見ていましたが……これが車」
外の風景にも彼女たちは感動していた
「こんなにも高層建造物があるなんて……」
「玄界……いや日本は本当に豊かなのですね」
「車がいっぱい……」
「……山際さん、スーパーによってください」
「あいよ」
淡は山際にお願いして近くの大型スーパーに寄るように指示する
ミニバンがスーパーに到着し、一同はミニバンから降りる
「「「おお……」」」
「食品日用品を売っている商業施設だ……基地の食事だけでは物足りないでしょ」
「そんなことは……」
「お金の使い方を学んでほしい。物価が分からないと辛いでしょ……はいこれ」
「……1万円……でしたっけ?」
「そうそう。3人に1枚ずつあげるね」
1万円札3枚……天元、淡、元康の3人がそれぞれのお給料から出した物だった
「とりあえず買い物をしましょう」
ちなみにエイスリン達の服は半袖短パンでラフな格好をしていた
決してボーダーの隊服とかではない
一応トリオン体なので服も含めてトリオンでできているが攻撃、防御のトリガーはセットしていないトリオン体になるだけのトリガーを渡されていた
理由としては翻訳機能が無いとまだ言語が怪しいからである
自動ドアを通り、中に入ると心地よい冷風が体を包み込む
トリオン体だと温度機能も備わっているため暑い寒いは無くなるのだが……気持ちの問題である
ちなみにエイスリン達捕虜組の他のメンバーはトリオン体ではない生身なので普通に蒸し暑さを感じていたが……
「「「お、おお!?」」」
「物資がいっぱい!?」
「す、凄い! これ全部食べ物!?」
「まずはカゴを持ちますよー」
「緑色のカゴ? これか?」
「それをカートに乗っけて移動するよ」
「カートは……これか? 本当にトリオンでできてないんだな」
「この車輪が回ることで動くのか……」
「おーい、感心するもの良いが行くぞー」
天元達が各自エイスリン達の補助に付く
「野菜がいっぱい……これ根っこ? 天元、玄界だと根っこも食べるのか?」
「これはゴボウだな。豚汁を食べた日にシロも食ってるぞ」
「……? え? あの茶色い少し固いのこれなの?」
「スライスしたあれだな。味が良くなるんだよこれを入れるとな」
「ほへー」
「淡、淡、普通の葉っぱが売ってるよ?」
「大葉だね。味がさっぱりするんだよ」
「これは?」
「豆苗だね。水が有れば切ってもまた生えてくるんだよ」
「私達の部屋でも育てられたりする?」
「するよ」
「美味しい?」
「うーん、人によるかな? 好きな人は好きだし」
「1袋買ってみよ。えっと……75円? 1万円から75円引くと……9925? 円かな?」
「合ってるよ」
「まだまだ買える! 凄く安い! ……あ、でも1万円ってお給料どれくらい?」
「私達だと月に貰えるお金の15分の1くらいかな?」
「淡達は月に15万円くらい貰っているってこと?」
「そうだね」
「元康! 葵! 果物がこんなにいっぱい!? 知ってるのも有るけど知らないのがいっぱい!? このシマシマで丸いのなに?」
「スイカだね。せっかくだし買ってみるか?」
「3000円……ちょっと他のを見てからにする!」
「了解」
そのままコーナーを進んでいく
「これは? 麺? ……へぇ、色々な麺があるんだ……太いのから縮れてるの、固いのもある」
「どれか買う?」
「この安くて3つの麺は? そば?」
「焼そばの麺だね。買うんだったら調理してやるが」
「焼そば……これを焼くのか」
「……あ、でもこれから行く海の近くでもお店で食べられるぞ」
「おお! 本当! じゃあ買わなくて良いかな」
「さ、魚がこんなにいっぱい!?」
「えっと……オリクトは魚少ないの?」
「取れるには取れるけど腐りやすいからあんまり食べられる機会は少なかった。燻製とか干物は食べたこと有るけど……ここみたいに生は無いね」
「食べてみたい?」
「……うーん、保存できるのが良いなぁ」
「じゃあ缶詰めコーナーに行ってみようか」
「缶詰め?」
「お肉がいっぱい!? しかも安い」
「オリクトは肉は高いのか?」
「高い! 下等国民は屑肉でもご馳走だったけど、玄界だとこんな上等なお肉が500円でこんなに買えるの!?」
「聞けば聞くほど近界はトリオン技術が高いだけで食文化とか食糧生産力は低いんだね」
「こっちでも100年前とかはそうだろ。200年前かもしれないが」
「お肉♪ お肉♪」
「天元これは?」
「牛乳だな。牛の乳を飲みやすい様に加工した飲み物だな」
「牛乳……美味しいの?」
「美味しいぞ。骨を強くする成分が入っているから体にも良いぞ」
「へぇー……こっちは?」
「ヨーグルトにチーズ、バターだな。どれも牛の乳からできるものだな」
「全部元を辿れば1つの材料なの?」
「加工品はそういうのが多いな。大豆からは醤油と味噌、豆腐といった物ができているし……美味しいは色々な組み合わせでできているぞ。小麦だってパンになれば麺になったりもするし」
「なるほど……」
「淡、これが缶詰め?」
「そうだね。食材を常温で保存できるようにした物だよ。近界だと食材はどうしていたの?」
「トリオンを使った冷蔵庫で保管したり、瓶詰めにしたり……かな?」
「瓶詰めを発展させたのが缶詰めかな。色々あるよ。魚とかはこっちの方が良いかな」
「サバ、サンマ、ツナ、貝……へぇー、魚だけでも色々あるんだね」
「こっちはフルーツ缶、桃とかみかんとかりんごとかパイナップルとかあるけど……おすすめはこれかな」
「これは?」
「牛乳寒天のフルーツ入り。あとフルーツミックス。色々なフルーツが入っているよ」
「へぇー……こっちは?」
「お惣菜の缶詰めだね。おでんとか肉じゃがとか……他には……あ、コンビーフ! これも美味しいよ」
「コンビーフ?」
「ひき肉の塩漬けだね。パンに挟んでもよし、ご飯と一緒に食べても良しだよー」
「塩漬け肉か……祖国の保存肉と違いを比べられるから買ってみようかな」
思い思いにカゴに入れていった3人だったがカゴいっぱいに買っても1万円には届かない
「余った……」
「余ったのは貯めておこうか。そのうちボーダーの基地の中の売店とかも行けるようになると思うからさ」
「良いの?」
「いいの、いいの……さて、もう少し車を走らせたら海だ! 遊ぶぞ!」
「「「おー!!」」」
海……玄界(特に日本では)当たり前に広がる広大な水は近界で海を見たことが無かったエイスリン達に衝撃を与えた
「お、おお!?」
「広ーい!?」
「全部水!?」
「さぁさぁ水着に着替えて」
男共(山際を含む)はミニバンから追い出され、近くの海の家で着替える
「山際さん肌真っ白だねぇ」
「外出てます?」
「最近は外に出るのが少なくてね。基地に籠りっぱなしだったから今回しっかり焼くよ」
「気をつけてくださいよ火傷しそうで怖いですわ」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと火傷しないように調整するから……俺はビーチで椅子借りて寝てるから皆で遊んできな」
「「うーす」」
「お、ま、た、せ」
「「海坊主だ!」」
バゴンと淡に殴られる天元と元康
「誰が海坊主だコラ!」
「一度言ってみたかっただけだってば」
「全く……」
「あの、玄界だとこんなに服の面積が少ないのを着ていて恥ずかしくないのですか?」
「エイスリンちゃん、これは水着って言って泳ぐのに適した服なんだよ。まぁトリオン体だから水着もへったくれも無いかも知れないけど」
淡は麦わら帽子に白いツーピースの水着で、上半身、下半身共にフリルが付いていた
葵は青色と黒のチェク柄の一体型の水着
エイスリンは黄色の水玉模様のビキニ
シロは水色のストライプのビキニ
カクラは赤のラインが入った競泳水着を着用していた
淡が約2メートルあるせいか他のメンバーが小さく見える
葵とエイスリンは160、シロは158、カクラは150なのでカクラと淡には50センチ近くの差があり、小人と巨人でしかなかった
「男どもは見事にボクサー水着か」
「山際さんは普通の海パンだけどな」
「そういえば山際さんは?」
「あそこで日焼け……爆睡してるな」
「疲れてるんだろ」
「まあいいや、さてじゃあ皆遊ぼう!」
「「「おー!!」」」
「おお、凄い! この水しょっぱい」
「波~」
「あぶぶぶぶ」
「わぁぁ! シロ溺れとる」
「助けないと」
「トリオン体で溺れるとか相当なカナヅチだな」
「「あぶぶぶぶ」」
「エイスリンとカクラもかい!」
「こりゃ水泳を覚えさせないとダメだなこりゃ」
「ダメだこりゃじゃなくて回収手伝え!」
ハチャメチャの海編続きます