3人の転生者 3人の部隊 ~目指せA級1位~ 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
11月に入り第4ラウンドが始まる
玉狛第一、太刀川隊、嵐山隊が勝つために入念の準備をする中、1位通過を確定させたい桑原隊の面々も準備を怠ることはしない
元康は狙撃手タイプにトリガー構成を変更し、近中遠距離全てに対応できる布陣で挑む
運命の日曜日夜の部が始まる
「相手が一番させたくないのは俺達全員が揃うことだろう……が、それをあえて行う」
事前の作戦タイムで天元はそう切り出した
「あえて相手の作戦に乗るってことね」
「作戦が上手く行っていると見せかけてこちらの盤面に持ち込むか」
「今まで俺や淡ばかり目立ってきたからな。最強のスナイパーが誰か教えてやれ、元康」
「おう!」
作戦は決まった
淡と天元が戦っているところを元康が超長距離から狙撃する
ボーダー最長の射程を持つ元康ならば2.5キロの移動目標命中率は80%に迫る
驚異的な数値である
ただそれはスポットできたロックオン状態に限るが……
なので今回の作戦の鍵はいかにロックオン状態の人数を増やすかである
「元康が暴れやすい場を作るぞ淡、葵さんもサポートお願いします」
「OK」
「わかりました」
「全員がエースだ。俺達はな」
玉狛第一が選んだステージは市街地A
可もなく不可もなくの普通の住宅街が並ぶステージである
しかし、天候は暴風雨であり、視界は最悪であった
「ただでさえ高台が少ないマップなのにこの天候かよ……まぁ俺にとっては最高のロケーションだがな」
玉狛第一はスナイパーとしての元康をこれで防げると考えたようである
確かに視界不良の暴風雨ステージだと普通の狙撃手であれば200メートル先を狙うのも困難である
しかし、元康は一度ロックオンしてしまえば問題は無い
風量や雨による弾道計算は必要だがこの状態でも1キロ先の相手をヘッドショット可能であった
元康はバッグワームを身に纏い、転送位置から逆算した敵の居そうな場所に移動する
「葵、誘導頼む」
『了解、このまま東に進んだところにある団地の屋上からスポットできると思う』
「了解、狙撃はしないでスポットに留める」
グラスホッパーで空中移動をして団地の屋上に跳び移る
目視では確認できないのでイーグレットを起動し、スコープを使って目標を確認する
「こちら元康、太刀川とレイジさんを発見、スポットしました」
『了解、直ぐにその場を離れて次のスポットに移ってくれ』
「了解」
グラスホッパーを使うことにより機動力は向上するため、グラスホッパーをレールの様に進行方向に敷き、それを踏むことで通常の走りよりも早く動けていた
ちなみにであるがトリオン体の場合身体能力向上で普通の一般人もオリンピック選手以上に動くことが可能である
トリオン体での実験でこんなことがあった
トリオン体の人間と車での綱引きは可能かという実験だ
結論から言うと可能であり、流石にトラックは無理だが一般的な普通自動車ならば1人でもある程度引っ張り合いになれる事が判明した
それくらい身体能力が向上するのだ
トリオン体での走行速度は個人差が大きいため元康だけに留めるが、元康はグラスホッパーの上ならば時速75キロくらいの速さで走ることが可能である
一気にマップを縦断し、次のスポットポイントに移動した元康は嵐山隊の柿崎を発見したところで2人から通信が入る
『こちら天元、嵐山と烏丸と接敵、交戦を開始する』
『こちら淡、時枝と小南と接敵、佐鳥からの狙撃もあったから近くに居る』
「佐鳥そっちか、あとは出水が場所不明と……あーあ、全員共闘してる臭いな」
『まだこっち巻き込める程メテオラの置き玉を設置できてないから自爆はできそうにないね……ランク戦で弧月使うの初かも?』
『じゃねーか? いつもバイパーやアステロイド、メテオラばっかりだし』
『探知、距離180メートル北東、緑色の小屋の上に佐鳥発見。葵さんピン立てて』
『了解』
「位置情報共有サンキュー、射程圏内まで残り2分、まずは佐鳥から殺る」
「200メートル以内に入ってしまえば狙撃だろうと指の動きで回避は可能」
半径200メートル以内での淡に勝つには淡よりも高い技量で押すか、物量やトリオン量で押し潰すしかない
更に空間把握で200メートル以内での出来事はほぼ全て把握できるので奇襲が効かない……スナイパー殺しでもある
いつのも淡であればここまで近づいてきている佐鳥をバイパーで攻撃するが、バイパー操作時に片手で防御する必要がある
それを許してくれるほど小南と時枝は弱くはない
「1対1対2……普通小南先輩から狙わないの時枝」
「あいにく一番厄介な結城さんから落とさないと試合にならないのでね」
「で小南先輩もそれに乗ったわけ?」
「不本意ながらね。これ以上あなた達には点数を取られるわけにはいかないから」
「なるほど……じゃあ全力で遊ぼうか!」
小南との1対1の勝率は現在3:7で淡が勝っているが、時枝と佐鳥の掩護射撃がある状態では正直淡でも厳しい
小南との斬り合いが発生しており、時折アステロイドで牽制を加える
ここで淡の弱点が出てくる
高トリオン、高い身体能力、強いサイドエフェクト……戦闘員において完璧に近い淡であるが、空間把握はオンオフができない
常に頭のリソースの一部を空間把握に持っていかれるのだ
1対多の状況においてコロコロと変わる状況変化に頭の処理能力が厳しくなり始める
そう、淡は近距離も中距離も雑魚相手なら幾らでも相手をすることができるが強敵と言える相手が複数人相手するのが苦手なのである
勿論普通の人間よりは頭の処理能力は高いが、視界不良の暴風雨の雨や風までも空間把握に影響しているので余計にリソースを割かれてしまっていた
ザシュ
均衡が崩れたのは何気ない小南が繰り出した牽制の一撃
普通の淡なら確実に防ぐことのできる攻撃だったが、ほんのコンマ数秒淡はアステロイドを放とうとしていた時に処理落ちしてしまった
右腕の肘下を切り落とされた
アステロイドは放たれること無く暴発する
「綺麗に入った?」
「淡さんがダメージを!?」
敵であるハズの小南と時枝が驚く始末
しかし、時間稼ぎは成功した
バシュン
奥の建物からベイルアウトの光が見えた
佐鳥を元康が狙撃したのだ
元康から通信が入る
『淡の直接支援できるまで1分かかる! 持たせられるか!』
(右腕をやられた。片手で相手できるほど甘くは無いね)
『何とか持たせろ』
小南が壁を使い壁ジャンプからのアステロイドを放ってきた
それに呼応して時枝が2丁の突撃銃で支援射撃を行う
(ここでフルアタック! 時枝め、隠してたか!)
2方向からの攻撃に淡はフルガード(両手シールド)を強いられる
ただガードの隙間の左足首を時枝に持っていかれ機動力を削がれた
そこに小南が突っ込みシールドに弧月で直接斬りかかる
「あんたのシールドが幾ら硬くても直接弧月での攻撃なら通る!!」
バチバチと2秒拮抗した後にシールドがバリンと割れる
その間も時枝が射撃を続けているためシールドを解除できない
「見事!」
ザシュ
『戦闘体活動限界ベイルアウト』
淡陥落、時枝はそのまま銃撃を小南に向け、小南のガードが間に合わずに小南が時枝に落とされた瞬間に時枝は長距離からの元康による狙撃で時枝も陥落する
桑原隊 2点
嵐山隊 1点
玉狛第一 1点
太刀川隊 0点
モニタールームにて東隊が第4ラウンドを観戦する
「攻略の鍵は暴風雨か」
「結城さんが自爆以外で落ちた」
「東さん、説明をお願いします」
東は淡のサイドエフェクトを踏まえて仮説を交えながら、淡が落とされた要因を説明する
「つまりキャパオーバーと言うことですか」
「そうだ。警戒範囲が全方位かつ200メートルと膨大だから近接戦闘は本来彼女の間合いじゃないんだろうな。それでも弧月で1万点以上を確保できるだけの実力はあるんだが……多分雨粒とかも感知してしまうんだろう。玉狛はその事までは知らなかったと思うが、天候によって結城は弱体化することが判明したな」
「ただうちの隊だと暴風雨や雪は東さんの活動を制限してしまうのでは?」
「粉雪程度ならバッグワームを白くすることで隠密性を上げられる。結城の間合いの200メートルの外から狙撃することは可能だろう」
「動くぞ」
二宮の言葉に場面が動く
逆にこの状況にて圧倒的な強さを発揮するのが天元という男である
嵐山と烏丸、途中参戦した太刀川とレイジ相手に足止めとはいえほぼ無傷で凌いでいた
「流石に4対1はきちーよ。おじさんを虐めないでほしいなぁ」
「おいおい冗談キツいぞ桑原、なんで俺と1対1と同じ処理できるんだよ」
「太刀川、俺は逆に1対1が苦手なんだよなぁ」
現在天元は並列処理を16並列で処理しており、嵐山と烏丸が包囲をしながら射撃し、太刀川とレイジが近接戦闘を行っていたが、4人相手でも的確に迎撃を続けていた
というか射手トリガーの発射速度が異常である
通常射手トリガーは弾丸の威力、推進力、外膜のパーセントの設定、分割数、狙いを付けるなど複数のプロセスが必要な為にどうしてもタメの時間が必要だが、天元はそれがほぼ無い
というかタメの時間も普通に近接攻撃を継続してくるし、分割シールドで守ってくる
分割シールドは通常のシールドより防御力は落ちるが、複数枚展開できる利点があり、さらに弧月は威力のオンオフ機能が搭載されている
他から見ると弧月はブレードが出しっぱでもオフ状態であればシールドや射手トリガーを使うことができる
見せ札的な使い方ができるのだ
4名からしたら片手ずつの2つしか同時に使うことのできないトリガーを天元は4つや5つ使っているように見えて仕方がない
しかも天元自身が足止めに徹しているため余計に崩れない
(この場に柿崎と出水が居ないってことはその2人がどこかで戦っているな。そいつらは後で元康が片付けられるだろうから……元康! こっちに来るまで何分かかる!)
『5分で到着する』
(5分か、余裕だな)
一方出水と柿崎の戦いは大方が予想していたとは逆の人物が勝利していた
「おいおいマジかよ……柿崎さん、いつの間にそんなに上手くなったんだよ」
「こちとら師匠が桑原隊の3人だぞ、そりゃ成長するわ!」
柿崎はこの時アステロイド×アステロイドの徹甲弾を銃トリガーにセットしており、他の弾種が使えなくなる代わりに強力な合成弾を使える隠し球をここで切った
銃手トリガーに合成弾が使えることはまだ技術部しか知らないことであり、それを近界研究室の寺島経由で聞き、今回の使用に踏みきった
結果射撃戦において出水のシールドを貫通し、僅か15秒の攻防で決着を付けることに成功した
「急いで嵐山に合流しねーと! 桑原さんは合成弾じゃねーと倒せねぇ!」
柿崎も急いで嵐山の戦う場所に駆けつける
先に戦場に到着したのは柿崎であった
「おいおい、マジかよ」
分割シールドで柿崎の弾丸を守ろうとした天元はアステロイドなら守れたシールドが貫通して天元の体をぶち抜いた
「嵐山待たせた」
「柿崎!」
「あーあ、おじさんを倒すのが柿崎とは……柿崎成長したな……まあ、勝つのは俺達だけどな」
『活動限界ベイルアウト』
天元がベイルアウトし、その場で全員が臨戦態勢に入ったが、嵐山の顔面が吹き飛んでいた
『活動限界ベイルアウト』
「狙撃!?」
全員が物陰や室内に一旦隠れる
太刀川とレイジが同じ家屋に入ったことで戦闘が開始され、柿崎も裏路地にて烏丸と対峙するが
「行き止まりだぞそこは?」
烏丸に声をかけられたが
「いや、硬いかべじゃないと」
ズドン
「武田さんなら壁越しでも狙撃してくるからな」
「ち、柿崎硬い壁の所に隠れやがった……太刀川とレイジさんは太刀川が勝ったか……まあ、その家の壁は薄いぞ」
バシュン
ロックオン状態の太刀川を狙撃し、残りは柿崎と一騎打ちである
柿崎は正面を構えているだろうからグラスホッパーで上空からズドンだ
距離を詰め柿崎が移動していないことを確認し、屋根を走りながら柿崎の真上に飛び出した
「アステ!」
バン
柿崎の銃撃の方が早かった
「武田さんなら真っ正面ではなく上から来ると思いましたよ!」
「読み負けたか……」
『活動限界ベイルアウト』
嵐山隊 5点(生存点含む)
桑原隊 4点
太刀川隊 1点
玉狛第一 1点
勝者 嵐山隊
1位桑原隊 26点
2位嵐山隊 15点
3位太刀川隊11点
4位玉狛第一11点
5位東隊 11点
6位弓場隊 9点
7位沢村隊 7点
8位柴田隊 7点
9位松坂隊 6点
10位安藤隊 6点
11位円道隊 5点
12位三好隊 4点
13位山本隊 2点