3人の転生者 3人の部隊 ~目指せA級1位~ 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「どうしたんだ氏真、浮かない顔して」
「東さん……」
会場の端っこでポツンと輪に入らないで食事をしていた氏真に東が声をかけた
「俺なりに色々と考えて意見具申を柴田隊長にしたのですが……」
「上手くいかなかったか?」
「はい。僕の考えを真っ向から否定されて……それで揉めてしまって……」
「氏真は柴田君とまだ組みたいかい?」
「……いえ、意見を聞き入れてくれないのであれば組んでいても僕の持ち味がいかされないので解散しようかと」
「うん、じゃあどうしようか」
「……東さん、僕、東さんみたいな部隊運用や射撃の腕が欲しいです。そうすれば年齢とかの下らない理由で意見を却下されることもないでしょうし」
「構わないよ。射撃訓練の後に時間を作ろう。教えられることは教えるからその後どうするかは氏真次第だよ」
「はい!」
氏真は数日後に柴田隊を正式に離脱し、東塾に入校
後に入るレイジとさえない女こと鳩原未来(まだ入隊前、1月入隊予定)の3人が東の直属の弟子となり切磋琢磨していくこととなる
「火力不足、私自身の能力不足」
「お姉ちゃんに結局負けちゃったなぁ」
武田夏海と春夏は食事を摘まみながら今回のランク戦の反省会を行っていた
「まず上位陣との実力差とこれといった強みが無いことが問題だよね」
「強い人は持ち味があるもんね。桑原隊は兄さん含め全員が一芸以上の手数の多さで圧倒したし、東隊も東さんはスナイパーとしての腕と戦術能力、二宮さんと加古さんも射手としての能力が高いし、三輪の奴も前衛として確かな強さがあるし」
「新規にメンバーの加入による戦力の増強はチームの雰囲気が壊れるかもしれないから無しとして……やっぱり実力を少しずつ上げるしかないよねぇ」
「何か強み……うーん」
彼女達は小南や太刀川、時には兄に助言を貰いながら地道に努力を続けることとなる
お疲れ様会が終わり数日後、A級昇格試験が始まった
まずは会議室に呼ばれ試験の概要が説明される
まずは幹部と1対1の面接から始まり、次に2部隊合同閉鎖空間試験を1週間、そして48時間の長時間戦闘訓練が行われるとされ、それの総合成績がボーダー上層部が設ける基準に到達すればA級とすると発表された
試験は冬休み期間をメインに行うとされ、学校側からの要望や年末の調整もあるので12月18日スタート、28日に終了と決められた
コンコンコン
「失礼します」
「桑原君席に着きたまえ」
俺の面接官は根付さんの様で面接がスタートする
「面接といってもここは意思表示と意欲があるかどうかの場だ。採点にはそこまで影響は無いから普段通りにしてくれ」
「まずはA級隊員になって何を成したい」
「……普段通りとのことなので口調を崩させて貰いますね。まず俺がA級になってやりたいことは主に3つ、近界の調査、県外へのスカウト、改造トリガーの開発です」
「近界の調査は近界に調査に乗り込みトリガー技術の奪取を行いたいと思います」
「県外のスカウトは技術者、戦闘員問わず優秀な人員のスカウトを行いたいと思います」
「そして改造トリガーの開発を行い、戦闘の幅を広げたいと思っております」
「なるほど、では次の質問だ。桑原君は知っている通り近界遠征を含む防衛任務外の特殊業務をA級は行って貰う。どんな任務が与えられるかは基本的に上層部が決定するが、それは大丈夫かね?」
「問題ありません」
「うむ、次の質問だ。県外のスカウトと君は言っていたがどの様な人物をスカウトする基準等はあるかね?」
「戦闘員はトリオン量が基準値以上あること、本人がボーダー入隊に理解を示すこと、国防や愛国心があることの3点を求めます。トリオン量は計測器で、残り2つは質問を行うことで見極めることは可能かと」
「技術者や後方支援の人物はトリオン量を問わず各分野で優れた能力が有るものをスカウトしたいと考えております。具体的には私自身がコネのある数学オリンピックの出場者、予備自衛隊に登録している者、大学卒業見込みの者、技術高校や専門出身者等を中心に集めてみたいと考えています」
「なるほど、かなり大規模に行う考えなのだね。ただボーダーとしては予算は有限である以上、人数に制限を加えなければならないと思うのだが」
「それなのですが、前々から疑問だったボーダーにおいてのタブレット技術や演習技術を生かした商品化ができないかと考えているのですが」
「しかしだねボーダーの技術、特にトリオン関連も扱うのは機密事項に該当するのは桑原君ならわかっていると思うが」
「いえ、そちらではなくタブレットのアプリケーション開発能力のことです。ボーダーについて世間ではよくわからない組織という印象が強いです。悪い言い方すれば少年兵を扱う民間軍事会社でしかありません。ボーダーの事を知って貰いながら知名度の向上、そしてアプリケーションを通じ資金源にできないかと考えております」
「そんなことができるのかね?」
「できます。今は携帯電話が主流ですが、海外、特にアメリカではタブレット端末のシェア拡大が起こっております。日本企業側も危機感を抱きつつあります。試案ですが一応資料を纏めてみました」
「見させて貰うよ……バーチャルアプリケーションネットワーク……VAN構想?」
「タブレット技術を国内企業各社と業務提携を行い、ボーダーに付与されている国防的特別特許使用権を活用し、純粋な技術力で雛型を各社に技術提供します……」
桑原の見立てではボーダーの技術力であれば2018~20年くらいのタブレット技術を持っているハズであり、その技術を売れば国内のシェアはある程度握れると思われた
それに魅力的なアプリケーションをボーダーが作れれば莫大な富が転がることができる
スマートフォンアプリケーションを見ればわかる
ボーダーは淡曰くバランス度外視のクソゲーだが演習ゲームを作ることができる能力がある
なのでそれを上手くゲームに落とし込めれば2010年というまだスマートフォントゲーム黎明期に爆弾を落とすことができる
天元達は2023年までのスマホゲームの流行り廃りを知っているのでどんなゲームが売れるのかわかるのも強い
それに加えトリオン体を使ったVチューバー擬きもできるだろう
トリオン体は体の部位をいじることができる
戦闘体だといじる幅が大きいと戦闘に支障がでるが、広報のみに役割を絞れば問題ないだろう
娯楽を通じたボーダーの知名度と独自の資金源の確保がVAN構想の柱である
「なるほど、桑原君の考えはわかった。上でも話してみよう」
「ありがとうございます」
「最後に君の目指すべきボーダーは何かね?」
「奪取、開発、発展。まずはトリオン技術を近界に追い付ける、そして独自開発による集団戦闘向きトリガーの量産、そしてボーダーの更なる発展です。まぁ軍事技術だけでなく、最終的には三門をトリオン技術を使ったボーダーの街にすれば安泰でしょうかね。トリオン技術を奪おうと産業スパイとかも出てくるでしょうし」
「敵は国外にもかね」
「はい」
「よう柳田さん、近本さん、近藤さんすまないな通話に応じてもらって」
『なんだよ水くさいじゃないか、数学オリンピックに一緒に出場した仲だろうが』
『今年は出なかったが調子でも悪かったのか? 桑原が居なかったから今年は団体順位1つ落ちたんだぞ』
「悪いな」
桑原隊のメンバーは算数オリンピックに出ていることは話したが、天元は中3と高1で数学オリンピックに出場していた
特に高1の時は三門が被災した中での出場だったので新聞にも取り上げられたりしたし、2年連続出場も相俟って仲が良い友達ができていた
淡と元康も転生したからなのか、サイドエフェクトによるものなのか、それとも幼少期に鍛えまくったからなのかIQが130を超えているが、天元の演算能力には敵わないため、天元単独での出場であるが
「今俺は三門の準軍事組織のボーダーで室長をやっているんだが先輩方の協力を要請したいのですが」
『ボーダーか、噂は聞いているよ。自衛隊が壊滅するような化物と戦う組織だってな』
『トリオン物質だったか? 俺も研究したくてウズウズしていたからな。協力するぜ』
「それとアプリケーションを作りたい。近藤さんはゲームのプログラムを勉強していましたよね」
『おう、そうだが』
「俺と売れるゲームを作りませんか?」
『どんなゲームだ?』
「選手育成ゲーム、カードゲーム、シミュレーションゲームです」
桑原天元は先に自分のスカウトしたい人物に連絡を取るのだった
柳田光夫(東大工学部)
近本実光(京大工学部)
近藤輝也(慶應環境情報学部)
彼らは天元の説得とボーダーの利点、デメリットを含めて説明し、スカウトの話を持ち出した
「春までには権限を持てるようにするから、そこから本格的に頼みます」
『『『おう!』』』
天元も天元で人を惹き付けるカリスマを元康には劣るが持っているのだった